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銀色のステイヤー
著者 河崎秋子(著者)
非凡な力を秘めながらも気性難を抱える競走馬・シルバーファーンが、騎手、馬主、調教師、調教助手、牧場スタッフ、取り巻く人々の運命を変えていく。===北海道・日高の競走馬生産牧場で、「幻の三冠馬」と呼ばれた父馬・シダロングランの血を引いて産まれたシルバーファーン。牧場長の菊地俊二は、ファーンの身体能力に期待をかけつつも、性格の難しさに課題を感じていた。この馬が最も懐いている牧場従業員のアヤが問題児であることも、悩みの種である。馬主となったのは、広瀬という競馬には詳しくない夫人。茨城県・美浦にある厩舎を擁する二本松調教師とともに牧場を見学に訪れ、ファーンの購入を決めた。不安を覚える調教助手の鉄子(本名:大橋姫菜)に、二本松は担当を任せることを告げる。ファーンは、俊二の兄である菊地俊基騎手とのタッグで、手のかかるヤンチャ坊主ではあるものの順調に戦績を重ねていくが、あるレースで事故が起こり……。手に汗握る競走展開、人と馬の絆。わずか数分のレース時間には、全てが詰まっている。「――それでいいよ。最高だ、お前。」一頭の馬がこんなにも、人生を豊かにしてくれる。『ともぐい』で第170回直木賞を受賞した著者による、感動の馬物語!
銀色のステイヤー
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2024/09/10 16:45
令和時代の『優駿』の誕生だ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
競走馬を描いた宮本輝さんの長編小説『優駿』が刊行されたのは
昭和61年(1986年)秋のことだった。
ベストセラーとなり、宮本さんはこの作品で第21回吉川英治賞を受賞。
のちに、映画化もされた。
昭和世代にとって、主人公ともいえる競走馬の名前「オラシオン」とともに
忘れがたい競走馬小説といえる。
それから月日が流れ、時代は昭和から平成、そして令和となった。
今、令和の時代の新しい競走馬小説が生まれた。
それが、河崎秋子さんの『銀色のステイヤー』。
「ステイヤー」というのは、競馬用語で「長距離レースが得意の馬」のこと。
競馬の世界では、馬を生産する生産者とその馬を所有する馬主、
その馬を調教する調教師、そしてレースでその馬に騎乗する騎手と
多くの人間が関わっている。
その中心にいるのが、馬そのもの。
河崎さんのこの作品では、シルバーファーンと名付けられた気性の強い馬。
この馬に翻弄されるようにして、人もまた成長していく姿が描かれる。
なかでも、調教を担当する鉄子と呼ばれる女性がいい。
それと生産者の牧場で働き始めた問題児であるアヤという若い娘。
ともに女性ながら、馬への愛情は深い。
「最も強い馬が勝つ」といわれる坂のある3000メートルを走る秋の桜花賞で
物語はクライマックスを迎える。
「人に愛されようが愛されまいが、その馬はただ走る。そして人を変えていく。」
こんなメッセージを残した河崎秋子さんの長編小説は、
令和時代の新しい競走馬小説といっていい。
2024/08/18 09:06
競走馬と人と
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
北海道の零細牧場で産まれたやんちゃな牡馬を、生産牧場や調教師や馬主などのさまざまな関係者が競走馬として育んでいく、人と馬が紡ぐ心動かす物語。
大前提として、馬好きが携わる仕事だが、その「好き」にも色々な形があり、好きだからこそ受け入れられない仕事内容など、綺麗じゃない部分もしっかりと描かれたリアルさが良い。
人も馬も抱える性質の違いによる衝突や、うんざりする破天荒さにそれでも何故か惹かれてしまう心理描写が鮮やかで、情熱を注ぎ込みたくなる気持ちがわかった気がした。
競走馬に携わる専門職の人達の苦悩と歓喜を少しだけお裾分けしてもらえる作品。
2024/08/26 22:10
スターホースシステム
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うーよー - この投稿者のレビュー一覧を見る
馬を扱う作品は自然に群集劇になる。馬はしゃべらず悠々自適、スターシステムよろしく周りの人間たちは翻弄されるだけ。例えばじゃじゃ馬グルーミンアップには明確な主人公とヒロインがいたけれど、それでも群集劇だった。そして銀色のステイヤー、この作品は競走馬のドラ夫が主人公であり、メタ的にはその性質が表現されるけれど、作中の人物達にはそれぞれのドラ夫像があり、それぞれの思惑でこのスターを取り巻くのだ。とにかく強くて気まぐれでやんちゃ。まさにスター。まるでゴールドシップだ。