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  • カテゴリ:一般
  • 販売開始日: 2011/03/01
  • 出版社: 文藝春秋
  • レーベル: 文春文庫
  • ISBN:978-4-16-752809-6
一般書

電子書籍

陰陽師 生成(なまな)り姫

著者 夢枕 獏

陰陽師シリーズ初の長篇。すべてが始まったのは、いまから12年も前のことだった。月の明るい晩に堀川の橋のたもとで、心のおもむくまま笛を吹く源博雅。その音色に耳を傾ける姫。名...

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陰陽師 生成(なまな)り姫

税込 770 210pt

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陰陽師生成り姫 (文春文庫 「陰陽師」シリーズ)

税込 770 7pt

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商品説明

陰陽師シリーズ初の長篇。すべてが始まったのは、いまから12年も前のことだった。月の明るい晩に堀川の橋のたもとで、心のおもむくまま笛を吹く源博雅。その音色に耳を傾ける姫。名前も知らない、淡い恋だった…。思い悩む友を、そっと見守る安倍晴明。しかし、姫が心の奥底に棲む鬼に蝕まれたとき、2人は姫を助けることができるのか? 急げ博雅! 姫が危ない──。主人公・安倍晴明はもちろんのこと、無二のパートナーである源博雅の清澄な魅力も全開の作品です。

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みんなのレビュー75件

みんなの評価4.1

評価内訳

紙の本

いい漢(おとこ)の切ないはなし。

2003/08/08 15:56

4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:purple28 - この投稿者のレビュー一覧を見る

「博雅は、いい漢だな」
 晴明の口癖である。
 紅をさしたような赤い唇に、うっすら笑みを浮かべる晴明。
 博雅は、照れたように「うむ」と言うか、「そうなのか?」と尋ね、「そうだ」と言われれば、はやり「うむ」と唸るのであった。

 四季の移ろいに心打たれ、美しい月を観ると笛を吹く。感極まると、人目をはばからずにはらはらと涙を流す、心優しき人物。
 源博雅。
 いかに高貴な生まれでも、人を思いやり、世の中を儚み、美しいものを愛でる、愛すべき人物なのである。
 宮中で面倒なことが起こった際に、誰もが相談しやすいのが博雅。
 晴明をして、「お前が俺のそばに居てくれて良かったと思っている」と言わしめるのも博雅。

 ますます博雅に心惹かれてゆく。

 一条戻り橋の下に式神を住まわせているだとか、おそろしい術を使うだとか、誰もいないはずの晴明の屋敷でいつも人の声が聞こえるだとか、さまざまに噂される陰陽師・安倍晴明は、人々の拠り所ではあっても、心置きなく接することのできる人物ではなかった。
 母親は信太の狐だともいわれる、当代きっての陰陽師ともなれば、それもいたしかたないこと。
 そう悟ってはいても、いや、だからこそ、晴明だって求めるのである。
 “いい漢”を。

 晴明と博雅。
 晴明の屋敷の濡縁で2人が酒を酌み交わすとき、ときは静かに流れてゆく。
 あるときは庭に咲く草花を眺めつつ、あるときは露に濡れる草花を眺めつつ、あるときは月を見上げつつ。
 そうして、博雅は晴明に告げる。
「最近俺は思うのだよ。朽ちてゆく草花は、いとおしいものだなあと」。

 いい漢のセリフは、心に響く。
 
 しかし、今回のストーリーはあまりに哀しすぎた。
 晴明が言う。
「誰の心にも鬼は棲むものなのだよ」
 博雅は問う。
「俺の心にも、か?」
「そうだ」
「そうか」
 決して博雅は「俺の心に鬼なぞ居らぬ」とは言わない。
 晴明も、博雅だけを区別するようなことはしない。
 芦屋道満は結末まで悟ったうえで、「人のことには関わるな」と言う。
「人に関わるということは、それは哀しみに関わるということぞ」

 “生成り”とは、女が般若になりきる手前の状態にある存在を指す言葉。
 人であって人でないもの。
 鬼であって鬼でないもの。

 けれど、もとは、人。


 博雅は、心のままに笛を吹き続けている。
 12年前、一人の女性と出会ったときも。
 美しい月に誘われた夜も。
 晴明と濡縁で庭を眺めているときも。
 蝉丸法師の琵琶を聴いたときも。
 鬼を見たときも。
 そして今も。
 博雅は、心のままに笛を吹き続ける。

 かの人が現れ、また去ってゆくまで。


(紫微の乱読部屋)

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電子書籍

なるほどなあ

2024/03/19 15:12

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:宮村みやこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

男に裏切られた女が鬼になるというストーリーは古典にあったと思うが夢枕獏は引用したんでしょうが安倍晴明と源博雅に絡める事でオリジナルが生きたと感じた。

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電子書籍

博雅は本当に「いい漢」

2018/12/06 06:58

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る

『陰陽師』シリーズ第5巻『生成り姫』は、4巻までとは違い、短編集ではなく1冊で一つのお話になっています。第3巻の短編「鉄輪(かなわ)」の長編版とのことですが、第2巻に収録されていた「源博雅堀川橋にて妖しの女と出逢うこと」も物語の一部としてリサイクルされてます。男に捨てられ、それを恨んで貴船神社へ丑の刻参りをする徳子姫が般若になりかける「生成り」というわけですが、なんとも哀れな女性です。

このエピソードでは安倍晴明の活躍の場はそれほどなく、源博雅の笛と琵琶、そしてその純粋な思いが憐れな女の魂を救います。博雅は本当に「いい漢」ですね。

徳子姫の境遇は世の無常を体現しているかのようです。人がいとも簡単に流行り病で亡くなり、家があっという間に没落し、住居も瞬く間に荒れ屋と成り果てる無常。その「いかんともしがたい」人の生にあって、楽を奏で、草花を愛おしみ、人を愛おしむ心を忘れない優しさがなおも溢れている時代。

現在の医学・科学が進歩してものに溢れた世にあって、「自己責任」と弱者叩きをする思いやりのない冷たい世の中と比べると、平安時代のいかんともしがたい無常さが何と豊かに感じられることか!

そんなことを考えさせられた作品でした。

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紙の本

色々と感慨深い

2019/05/28 13:18

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:fmsonet - この投稿者のレビュー一覧を見る

博雅の初々しい恋事情にほっこりしていたら、いつの間にやらおどろおどろしい話へ。その中でも、情の深さを見せる博雅はすごいです。最後は涙を誘われました。

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紙の本

般若

2015/08/28 02:27

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夜メガネ - この投稿者のレビュー一覧を見る

牛の刻参りの「鉄輪」を長編化した今作。
個人的に短編では物足りなかったので、じっくり読ませていただいた。

さて、人から鬼へと変貌する過程は、能面なくして語れない。
梨木果歩・著「からくりからくさ」の後半で細かな説明があった。

平安女子は両家の子女程、家にこもりっきりで心のバランスをあっけなく欠く。
清明の元に持ってこられる相談話に、両家の姫君がなんと多い事か。
どのような案件でも、清明が動じるということはなく、ただ、目の前で起きている物事を見据え、
さっさとさばいているように感じられる。 そのくらい、あとにも引かないし、迷う事もない。

むしろ、あとを引いてあれこれ考え込むのは、いつも博雅の役割。

「博雅(はくが)は、いい漢だ。」

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紙の本

切ない

2023/05/25 19:44

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みみりん - この投稿者のレビュー一覧を見る

夢枕獏さんの陰陽師シリーズの中で、一番切ない(と私は思っている)話。
陰陽師の安倍晴明ですら救えないものもある。
けれど源博雅は、純粋な心と琵琶、笛で、切ない形ではあるが、徳子姫を最後は救った。
12年前に二人が心を通わせていれば・・・・・・
せめて徳子姫の魂が成仏せんことを願う。

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紙の本

一粒で二度おいしい….

2003/08/03 11:15

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:miyuki - この投稿者のレビュー一覧を見る

どこかで聞いたようなキャッチフレーズですが…
「陰陽師 付喪神ノ巻」に載っている「鉄輪」の長編版がメイン。
新しい(話の)「陰陽師」だと思って買った人には「あれ?」と思われるかもしれません。新しいエピソードも追加されているし、私のように何度も何度も読み返すタイプの人なら、「一粒で二度おいしい」本であると思います。

このシリーズは二人のコンビが絶妙で大好きです。晴明は「クールビューティー」の一言だし、博雅はまっすぐで、ひたむきで、かわいいし。今後の活躍にも期待します。

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2004/12/27 01:26

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2005/02/16 08:55

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2005/05/03 18:28

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2005/05/15 11:08

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2005/10/26 08:03

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2005/11/17 20:35

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2005/11/27 15:50

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2006/03/14 13:44

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