夏と花火と私の死体
著者 乙一
九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく――。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄弟の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危...
夏と花火と私の死体
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商品説明
九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく――。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄弟の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか? 死体をどこへ隠せばいいのか? 恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作品。
著者紹介
乙一
- 略歴
- 「夏と花火と私の死体」でジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞しデビュー。
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DeathNoteの作者?
2006/10/03 09:59
12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Rista - この投稿者のレビュー一覧を見る
今や知る人ぞ知る有名な漫画「Death Note」。
本来、努力・友情・勝利というジャンプ作品の必須テーマの中、それらを歪んだカタチで表現したということでも有名である。
とくに数々のトリックや心理学を取り入れたこの作品には、原作者の才能とこだわりとを垣間見ることができる。
しかし最近原作者である「大場つぐみ」という女性は、「乙一」という作家ではないかという説が浮上してきているのだ。
その説を確証付ける作品の一つが、「夏と花火と私の死体」である。
単純にまとめると小学生の兄妹が、殺した一人の少女の死体を巡って死体の隠蔽処理を行うという設定だ。
サスペンス小説はたいてい追い詰める側を主役としているが、この小説は逆で、追い詰められる側を主役としている。
そのため、ハラハラドキドキするスリルを演出できるのかもしれない。
また普通の小説は生きた人を視点をするのに対し、この作品では死体の視点で書かれているのだ。
このような視点で書かれている作品は、この本の他に数冊あるかどうかも疑わしい。
以上のように、この作品は文体も内容も他のサスペンスとは一味違うのである。
ここまでの説明ではまだ「大場つぐみ」と「乙一」を繋ぎ合わせることはできないだろう。
だが、問題は登場人物なのだ。
そのキーマン、つまり重要人物が先頭をきって死体処理を行う兄なのである。
物語で繰り広げられる彼の隠蔽処理の仕方や土壇場での冷静な判断は、小学生とは思えないほどである。
そこからまるでDeath Noteの主人公、夜神月を沸騰させられるのだ。
この本の中には、「夏と花火と私の死体」の他に「優子」という作品も編集されている。
家政婦である主人公が、屋敷内にいる一度も顔を見たことのない謎の女性「優子」の正体を探るという話だ。
一応トリックは使っているが、ジャンルはサスペンスというよりホラーが近いだろう。
この作品に「大場つぐみ」と「乙一」を繋ぎ合わせるキワードはない。
しかし、後半でのトリックは中々見物かもしれない。
乙一は第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞し、一七歳でデビューしている。
そしてそのデビュー作が、この「夏と花火と私の死体」なのだ。
デビューしたのが一七歳ということは、一六歳、もしくはそれ以下の頃からこの文章を書いていたことになる。
また描かれる情景や物語もその豊かさに圧倒されていたこともあり、評論家はよく彼を天才だと褒め称える。
確かにすごい才能だ。
が、天才は何もないところからは生まれない。きっと乙一なりの試行錯誤と努力があったに違いないのだ。
彼はそれを身をもって証明し、文学を目指す者に年は関係ない、ということを暗に示したのである。
この姿勢には文学だけでなく他のことも当てはまる。
努力あってこその天才、そこに我々も見習うべきところがあるのではないかと思う。
うなってしまいました
2006/02/27 01:26
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
乙一さんのデビュー作です。初めてタイトルを見たとき、私はうっかり「夏と花火と私と死体」だと思い込んでいて、「へ〜、私と死体かぁ」って思っていたのです。でも、よく読んだら違う!「私の死体」なんですよね。どうやら今回は死体が主役??って驚いてしまいました。この本にはタイトルの作品ともう1編「優子」というものが収録されています。もちろん表題の作品もよかったのですが、私は優子という2つ目の作品も「おぉ!」と衝撃を受けました。かなりおもしろいです。
9歳の夏休みに少女は殺されます。あまりにあっさりと無邪気な殺人者によって。そして、その幼い兄と妹によって隠されてしまった私の死体はどうなるのか・・・。
ということで、本当に私の死体のタイトル通り語り役は死体です。殺されてしまった少女が、殺した少女とその兄をずっと追いかけて語るんです。別に恨みとかそういう感じではなくて、とても淡々と兄妹を見続けながら読者にそれを伝えていくんですよ。兄と妹は必死で死体を隠そうとするのですが、小学生なのでこれがまた大変で・・・。あんまり書くとあれなのですが、ラストは意外な結末でした。死体の目線から物語がすすむという話の作り方もなかなか面白かったし、これが本当にデビュー作?といった感じです。
2作目の優子はとても短い作品なのであらすじは書きません。書くと解ってしまってつまらないから。でも、最初「なんじゃこれ?」と思いながら読んでいたんですけど、最後まで読んで「すごい・・・」とつぶやいてしまいました。思い返してみればいたるところに伏線が張られているんです。でも読んでいるときはまったく気がつきませんでした。普通の会話の流れの中に、実はとても重要なキーワードがいっぱい隠れているんですよ。「ウムム」って感じです。
乙一さんって私より2つほど年下らしいのですが、ものすごい才能だよなぁと感じました。これ、おもしろいです。どちらかというと黒い乙一なのかしら・・・。グレーくらい?ってところでしょうか。
設定の奇異さより、それを奇異さと感じさせない奇異さに引きずり込まれる。
2011/12/03 19:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アヴォカド - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏はいつだって、少年少女にとってどこか少し甘くて怖くて、奇怪だ。9歳の少女と、その死体をめぐる兄妹。
奇異な設定である。なにせ「死体」が一人称で語るのだから。
なのに、そんな設定に度肝を抜かれている暇を、読む者に与えない。ずるずると引きずり込まれる。
淡々と語り、読んでいる者を迷わせない。
自分が死ぬところ、死んだあとに見ているものを語る9歳の「わたし」の、視点にも語り口にも、ちっとも無理がないのだ。
そして、読み終えた時にも嫌な後味は残らず、不思議とすこんとした感じなのは、淡々とした語り口のなせるわざだろうか。
ずいぶんたってから、この設定には、吉村昭「少女架刑」という先行作品があることを知る。 でも、それを知っても、この作品が色褪せるわけではない。
「少女架刑」のことを乙一が知っていたかどうかはわからないが、最早それもどうでもいいこと。
知っていながらこれだけ自分のものにしていたら、それはそれで凄まじい根性だし、知らずに書いていたなら、その想像力も凄まじい。
それほど、乙一は、その奇異な設定をすでに自分の世界にしてしまっている。
才能とは、こういうものを言うのかな、とちらと思う。思ってしまう。
計算を感じさせない。誰にも真似できない。
この時点でこのような文体を既に身につけ、乙一は、最初から乙一として完成していたことを、知る。
読んでない人は、読んだ人よりひとつ損しているはずだ。
2003/01/26 23:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:勤続15年。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一ページ目に目を通し、わたしは「この人には、絶対に才能がある!」と確信した。
そして、やはり直感をなめてはいけない。今まで読んだ話の中で、わたしをこれほど魅了した話は他にいくつとない。数あるホラー小説にこれほどおもしろいものはごくわずかであることは、読んだ人の共通の感想ではないかと思う。
怖いだけではない。「怖い」というひとつの言葉では締めくくれないほどのものが詰まっている話だ。すべては読めばわかることだろう。
『夏と花火と私の死体』
2002/05/23 15:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:AKIZAWA - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレしてしまっては、作者とこれからの読者に失礼だと思いますので、慎重に書きます。
『夏と花火と私の死体』
突然、亡くなった少女。
少女の死体と過ごすことになった兄と妹。
兄妹は、少女の死体をどうすればよいのだろう…。
『優子』
ある屋敷に住み込みで働くことになった女。
屋敷の旦那様は、いつでも優しい人でした。
ただ、旦那様の部屋だけは、決して開けてはいけないと言われておりました。
その部屋には、優子という名の妻がいるそうです。
けれども、その姿を1度も見る機会がありませんでした。
ある日、好奇心に駆られた彼女は、こっそりと部屋を覗いてみます。
そこで、彼女が目にしたものは…。
たぶん、読み手の予想とは異なる結末が待っています。
夏と花火と私の死体
2021/08/29 14:31
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yami - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分が20歳の時に、知り合いから貰った小説。
何故このチョイスだったかは未だ不明(笑)
殺された少女の視点で語られる物語に圧巻。
ラストにも驚き!もう1つの短篇「優子」が好きです。
小説は苦手だと思っている方におすすめしたい一冊です
2019/01/18 01:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:おもて - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏と花火と言う定番の言葉から繋がる異質な“私の死体”という言葉。
なぜタイトルにその言葉が含められているのか、終盤に得られるカタルシスの気持ち良さを是非感じてください。
花火大会、ラジオ体操、登校日……そして殺人
2015/08/13 16:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:L'arancia dolce - この投稿者のレビュー一覧を見る
某新聞で紹介記事を読み、興味がわいたので、遅ればせながら読みました。
他のレヴューにもあるように、この作品が弱冠16歳(執筆時)のデビュー作とは驚きました。
登場する人、もの、事柄がすべてストーリーに関連していて、描写に無駄がない、
短編ミステリーのお手本のような作品です。
情景描写もやや類型的かなとは思いますが、田舎の夏の景色をよく映していて
美しいし、主人公の一人、小学5年生の健の、少年らしからぬ落ち着き、
危機が迫れば迫るほど、楽しげに策を練っていく様子がとても恰好いいです。
おすすめです。
この本はスゴイです!
2003/06/08 20:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:スミ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルからしてすごいなあと感じましたが、16歳の時にこれを書いたというのがすごいです。こんなミステリー小説今まで読んだことないですね。なんなんでしょう、発想もさることながらキャラクターがいい! 犯人がだれかなんて最初からわかっているのに、「これからどうなるの?」「ああ、そんなことしたら!」とか一々考えてしまって(苦笑)死体の隠し場所を転々とさせていくその様を思い浮かべただけでもぞっとします。これはぜひ読んで欲しい一冊です。そして、読み終わったあと、なんだかうすら怖さがこみ上げるそんな作品です。
天才の始まり。
2005/05/13 09:53
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作者の作品、どれも設定が面白いのだが。デビュー作となる本作品
も非常に面白い。物語を語っていくのは、死体なのだ。
と言ってもゾンビのように生き返って復讐を・・・といったようなありきたりなB級ホラーではなく、ただ淡々と死体が自分のおかれた状況を説明し、物語は進んでいく。幼い小学生の兄妹が犯してしまった罪、秘密
それが見つかりそうになる、ハラハラ感。そして考えていたよりも驚きのラスト。
細かいツッコミを入れればキリが無いが、作者十七歳の時の作品と聞いて驚いた。天才の始まりが、確かにここにある。
☆2作品収録☆
2024/04/20 22:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ACE - この投稿者のレビュー一覧を見る
2作品収録されています。
面白かったなぁ~。
----------------------------------------------
【夏と花火と私の死体】
物語の視点(主人公)が死んだ《私》(から抜けた霊魂的な何か?)で淡々と展開されていくのがよかった。ある兄妹の感情がどう動いていくのかが物語の軸とはなるが、伏線として張られている誘拐事件が、直接的には言及していないものの、上手く回収されていたのがよかったと思いました。
【優子】
古典和風ミステリーです。話の運びは王道的でしたが、何となく残るおどろおどろしさがよかったです。
☆2作品収録☆
2024/04/20 22:55
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ACE - この投稿者のレビュー一覧を見る
2作品収録されています。
面白かったなぁ~。
----------------------------------------------
【夏と花火と私の死体】
物語の視点(主人公)が死んだ《私》(から抜けた霊魂的な何か?)で淡々と展開されていくのがよかった。ある兄妹の感情がどう動いていくのかが物語の軸とはなるが、伏線として張られている誘拐事件が、直接的には言及していないものの、上手く回収されていたのがよかったと思いました。
【優子】
古典和風ミステリーです。話の運びは王道的でしたが、何となく残るおどろおどろしさがよかったです。
活字で綴る“絵”。
2003/07/25 13:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:purple28 - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏休み。9歳の五月は友達の弥生に突き落とされて死んでしまう。
五月の死体「わたし」が語る、一夏のお話。
まず、絵が浮かぶ。
おかっぱの、さらさらの髪を揺らす「わたし」の死体。
弥生と弥生の兄・健のしぐさ、表情。
そして、暗闇。お宮。石垣。花火。
活字を追っていながら、絵を見て物語を読んでいたような気がする。
今でも思い浮かぶ。
利発な顔を歪め、汗を吹き出しながら暗闇を走る健の姿が。
今にも泣きそうな顔でその後を追う弥生の顔が。
流れた血は黒く固まり、白濁した目を見開いた「わたし」の死体が。
おどろおどろしい描写も、恐ろしい事件も起こらないのに、背筋が寒くなるのは、淡々とした語り口だからか。
いや。
拙さの残る表現が、子供の残酷さを強調しているからではないか。
そこまで計算されているとするならば、やはり乙一は素晴らしい。
同時収録の「優子」もしかり。
優しく、愛情あふれる旦那様の笑顔が、絵としてしっかり目に焼き付いている。
しかしこちらは、人形に取り憑かれた哀しいストーリー。
短編の“絵”は堪能した。
長編では、どんな“絵”を見せてくれるのだろう。
HPはこちらです。
紫微の乱読部屋
若い才能に食われたひと時。
2001/09/15 02:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:竹井庭水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私の名前は五月。九歳の夏休み、私は死んだ。友達の弥生ちゃんに木の上から突き落とされて。弥生ちゃんは兄の健くんと私の死体を隠そうとするのだけど、大人たちも私を捜しはじめて…。
と、いうふうにこの物語は「死体の一人称」。死をきっかけに登場人物が神の視点に舞い上がるのがなんとも奇妙。その淡々とした語り口とのんびりとした田園風景、そして死体を扱うにはあまりにドライな感情の兄妹というミスマッチが読者の居心地を悪くするのに大成功。
タイトな展開にハラハラし、ラストは普段なら想像の範囲内のはずなのに驚いてしまって、これは作品世界に引き込まれすぎて考えも及ばなかったのかなぁとため息。執筆時作者は16歳。若い才能に食われたひと時。
見事な二編
2022/11/22 22:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちーかま - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作は中編でラストの展開に衝撃を受けた。ただ個人的には二話目の短編「優子」のほうが面白かった。古き良き昭和ミステリーの味があり、因縁とかそういう話はゾクゾクしてしまう。