人間の本質に迫る短編集
2023/06/18 13:06
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投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
6つの短編がおさめられた1冊。
モームの作品とあってどの物語も面白かったが、読後には人間ってほんと愚かだなぁと感じさせられた。
そして、この短編が書かれた時代も、今も、人間の本質は基本的に変わっていないなと思った。
自分かわいさに他人を傷つけてまで保身にはしったり、他人を自分の思うように動かそうとしたり、自分の考えているようなことを他人も同じように考えているだろうと勝手に決めつけたり。
テクノロジーは進化し、世の中はどんどん先に進んでも、人間だけが進歩せずにずーっと同じような過ちを繰り返し続けているなと感じ、物語にして傍から見たらこんなにも見苦しいものなんだなと気付かされた。
この物語の登場人物のようにはなりたくないものだ。
『ジェイン』の大人の会話満喫
2022/07/06 00:00
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投稿者:象太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
モームの短編6作品を掲載。冒頭作品の『ジェイン』を推す。
英国の大人社会の会話が何と言ってもいい。毒と品とテンポが心地よく、読んでいて楽しい。読後、大人の趣味を満喫した気になる。
主要人物のジェインは、本当のことを言うだけで周囲の人を笑わせ魅了して急に人生の階段を駆け上がっていくのだけれど、本当のことは、どんな飾られた話よりも、面白いのかもしれない。
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「人間の不可解さを浮き彫りにする珠玉の6編」とあるように、まともだなぁと思っていた登場人物が話の進展に伴い黒い面を見せてくれる。個人的に良かったのは、「雨」「掘り出しもの」だろうか。今までミステリは避けて通ってきたが、これだけ面白いなら手を出してみようかな、と思う。思うだけでもある。
人間の醜く卑しい面を見せつけつつも、どこか笑い飛ばせるような読後感。「雨」のデイヴィッドソンなど、どんなオチで締められるのかと思ったら、まさかそこまで堕ちるとは・・・聖人なんていないよね、と思ってしまう。
人間と絆、月と六ペンスを読んだ際に感想を書くのを忘れてしまったのが悔やまれる。もう一度読み直してみようか
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とにかく読みやすくて面白い海外古典文学ならモームで間違いないのを再確認。
訳者があとがきで書いているように、僕も「モームは通俗的」との評価を聞いて、読みだしたのがずいぶん遅くなった口ではあるけど。これから海外古典文学読み出すならモームからは本当におすすめ。
この新訳はまたさらさらとした日本語で読みやすいけど、その分、不気味さが薄まっているかも知れない。
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ここ最近まとめてモームを読んでいての感想。
他の出版社から出ている同じ短編を読んでいるが、訳の違いで随分印象が変わっている。この古典新約文庫は柔らかい翻訳、ハンマーで棘棘していた日本語をならしている感じがした。例えば「ジェイン」なんかは、他の文庫では印象的な言葉だった単語が言い換えられていたりして、インパクトは減っている。流れをとるかパンチ力を取るかというところだった。こっちの方が後から読んでしまったというのもあるけれど、もう少し、尖っててもよいと思う。語り手の距離感が微妙に近くなり、個人的にいくつかの、良さが消えている気がした。
内容は文句なく面白いです。
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サマセット・モームといえば10代の時に読んだ「月と6ペンス」しか知らなかった私にとって、彼の優れた短編小説に出会えた一冊です。人間の愚かさ、醜さ、そして滑稽さを見事に書き綴った作品であると同時に、ミステリ小説としても楽しめました。
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正直おもしろくなかった。
もしかしたら、おおざっぱに言って、英文学よりも米文学のほうが好みなのかもしれない。あと時代背景が問題。
語りがしつこい。会話分で説明しようとしすぎる。作者の女性に対する考えが(時代が違うからか)腹立たしい。
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ミステリィっぽい短編が6篇入ってるんですが、どれも面白かったです。退屈する間などなく、グイグイ引き込まれますね。
特に表題になってる「パーティの前に」は極上ッ!
赤道直下ボルネオの駐在員でアル中の男と、その妻の話。
僕もご多分にもれず酒は好きなのですが…適量守ろうっと。我が身を省みつつ、本気でオススメの短編ですッ
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『ジェイン』『パーティーの前に』は素晴らしく面白かった。『パーティー』は、寸劇にピッタリ!って思った。
どの作品もオチが良かった。
読者の予想の範囲内で、しかも上手くオチていた。
素敵なオチのいい例でしたね。
『月と六ペンス』読んでみたい。
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正直、名作とか、古典の香りを感じることはなかった。普通。
不気味ではあっても、それこそ上には上がいくらでもいる。
不思議な話にしても惹きつける力があまりない。
メイドとか、お茶、植民地、体裁、外聞を気にする気質はイギリスだなぁとは思う。
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ジェインの進行と謎
光文社古典新訳文庫のモーム短編集から冒頭のジェインを昨夜読んだ。この短編集では広い意味での謎解き作品を集めたと訳者木村氏が書いている通り、この短編もなんでジェインがいきなり義姉を出し抜いて変身したのかがさっぱりわからない。そんなこと気にせずに台詞の素早さを堪能すればいいだけ…劇作家として成功したモームはそう考えているのかも。そこでもう一点、この作品一応「私」が語り手として登場するのだが、「私」がその場から退場してからも、本来なら見ることのできないその後の経過が事細かに書いてある(後で伝聞したとかいう説明も無し)。視点が曖昧…というか舞台の天井に貼り付いている感じ。ここでも劇的。「私」も単なる一登場人物なのだ。
(2017 05/02)
パーティーの前に幸せな二人
昨日未明から昨夜にかけて、モーム短編集から「パーティーの前に」と「幸せな二人」の二編を読んだ。前者はボルネオ北サバ州舞台でこの時期はイギリスから委託された会社の駐在員が現地裁判権も行使していた。そんな駐在員が有能なんだけど飲んだくれで、何度も裏切られた妻が殺してしまう…という筋。それがイギリスに妻が戻ってきて、病死とか自殺とか言われていたその死の真実を語るのが、パーティーの前だった、というのがポイント…でも、もしここで殺してなければどうなっていただろう、と考えると…あとは打ち明けられた父親は法曹界の人間みたいなんだよな…
「幸せな二人」は、リヴィエラの別荘生活を背景にした、とある資産家女性殺害事件の話。解説にある通り、もしその女性と後のグレイグ夫人(当時は処女と認定された)が同性愛関係だったら、ルンドンの説は間違っていることになるけど、それでなくとも読者には状況証拠がいろいろ。夜逃げしたグレイグ夫妻がこれまでの費用を残していったこと(それを記述していること)、ルンドンという判事?が女性に対して古い価値観をちらつかせるなどしていること、それから小説の構造上の証拠なんだけど、別荘生活の女友達の空想したグレイグ夫妻の愛の物語が虚構であるなら、ルンドン判事?の事件推理も対照に虚構ではないだろうか。
でも同性愛説が正しいとすれば、タイトルの「幸せな二人」とは…
(夫妻になってからは子供もできてるけど)
(2017 05/06)
「雨」と「掘り出し物」とその後
昨日はモーム短編集から「雨」と「掘り出し物」。これであとは解説だけ。前者も実は再読もの。後者はほんとは残しておくはずだったのですが…
「雨」はデヴィッドソンに最後に何が起こったのか、「わかったのである」と唐突に書かれて終わっているけど、読者としてはわからないまま突き落とされた感じ(傾向はわかるけど、何故かは謎)。
「掘り出し物」は短編集冒頭の「ジェイン」と似た語り口のスピード短編。これに挟まれるようにいわゆる謎解き短編が並ぶのは…たぶん狙ったのだろう。
「雨」の語りで気になるのはどこの視点だろうということ。第三者的語りなんだけど、誰の内面にも入り込み、そして出ていく。この当時(1921年)には既に語りに重きを置く作品が結構出てきていると思われるだけに…他の謎解き系作品とも見比べたいなあ。
あとはその謎解き系作品のその後…そのあとどうなったのか、気になるなあ…特に「パーティーの前に」と「雨」…
(2017 05/09)
最大の謎
モーム短編集の解説を昨夜読んだ。モーム作品の翻訳家としても知られる中野好夫氏は正反対の性格を併せ持つ(持ってしまう)人間そのものを最大の謎であると「サマセット・モーム研究」という本で述べている、とか。
この短編集にはそうした側面が強く出た作品が並んでいる…それともモーム作品のほとんどがそうしたものなのかな。
(2017 05/10)
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巻末の解説の冒頭に「数あるモームの短編から,『ミステリ』をキーワードに六編を選び一冊にまとめたのが本書である。」とあるが,いずれも不思議な味わいのある話である.
とにかく訳が良くって読みやすい.いや,他社の文庫も別に訳が悪いわけではないが,本書は古典の格調は残しつつ,カビ臭が一切感じられない.実は6編のうちの2編は他社版で読んだことがあるのだが,読み比べてみようと思う.
一番のお気に入りの短編はスーパーメイドを描いた「掘り出しもの」である.
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人間の心理的暗部を炙り出す短編集
美徳と背徳、高貴と下劣
相反する概念が同居する人間観が胸に迫る
閉鎖した深層に読者を誘い込み
放置する展開も作者の悪戯心が垣間見れた
時に主体を隠した挑戦的な翻訳は
作品を俯瞰的な解釈へと誘った