「おかしさ」の伝染
2019/10/09 00:05
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読む前はバートルビーがおかしいのだろうと思っていたが、読むうちに語り手の「私」もおかしいのでは?と感じ始め、変な人と対応しているうちに引き込まれていくのかと考えた。あと、私も訳は国書刊行会の酒井訳の「ありがたいのですが...」の方がよかった。
酒井雅之訳の方がいいと思います
2015/11/18 04:19
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
「書記バートルビー」の主人公はすべてを拒絶する男だ。仕事を投げ出して他者と距離を置き、ついには自らが生きることも止めてしまう。本書では「そうしない方がいいと思います」と訳されているが、1988年の国書刊行会版では「せずにすめばありがたいのですが」と翻訳されている。バートルビーの深い虚無感が伝わってくるのは、後者のほうではないだろうか。
訳の違いの楽しさ
2015/12/18 11:29
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投稿者:アトレーユ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『幽霊船』は岩波文庫も重版再開になるらしく、なぜ今、メルヴィル祭?(笑)『バートルビー』の決め台詞は好みの問題ながら、以前読んだ別の訳の方が好きかな。何を御願いするにも冷静に、丁寧に、真剣に『しないで済めばありがたいのですが…』と返すバートルビー。無気力なことをひたすら真剣に主張。そこについ笑ってしまう。
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これは面白かった。バートルビーのおよそ理解できない行為。バートルビーを許すどころか助けようとする雇用主。同僚たちの奇行。謎解きのように語られる過去。それでも理解は進まない。こんな不可解な話なのに先を読まずにいられない。
漂流船は実話にもとずく作品だが、巧妙に仕掛けられた作者の罠によって、疑心暗鬼を深める。そして最後のどんでん返し。やられました。
原題:BARTLEBY,THE SCRIVENER/BENITO CERENO
書記バートルビーーウオール街の物語
漂流船ーべニート・セラーノ
著者:ハーマン・メルヴィル(Melville, Herman, 1819-1891、アメリカ・ニューヨーク、小説家)
訳者:牧野有通(1943-、アメリカ文学)
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両作品ともミステリー仕立てのように読んでみると面白いと思う。特に書記バートルビー。不条理の世界に生きているかのように描かれるバートルビーだが、実はこの世の中そのものが不条理であったのだという真実が明かされるのが鮮やかだと感じた。
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2019年12月9日(月)に読み始め、12月11日(水)に読み終えた。『書紀場バートルビー』は2019年12月9日(月)に読み始めてその日のうちに読み終えた。『漂流船』も同日読み始め12月10日(火)に読み終えた。
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ブンガク
かかった時間 たぶん180分かそれ以上
さいきん、『文学こそ最高の教養である』という新書を読んでいる。光文社古典新訳文庫の編集者が、各作品の翻訳者と行った対談を書籍化したものだ。
せっかくなので、その中からいくつか気になるものを買って読んでみることにした。そのひとつが本作品。
メルヴィル、知らなかったけど、ものすごく謎が多くて、ホラー?サスペンス?だ。あ、ミステリーか?(違いがわからん)
書記バートルビーは、表面的には今でいうコミュ障の話として読むこともできるが、翻訳者の力で「それだけではない」感が残る。語り手の弁護士自体もそうだが、全体的に奇妙。そして、「お分かりにならないのですか」のくだりはやっぱりゾッとした。
不思議なチカラは覗くことで効力を失う、というモチーフも印象的だ。あと壁ってなに?先のない資本主義?(適当) …みたいに、再読すると解釈がまだできそう。
漂流船は、まじでミステリー。キングオブ「信頼できない語り手」が語り手となって話が進むが、それが功を奏しているとか、それでも「奇妙さ」を全部キャッチしてるのはすごくないか、とか、あとがきに書いていたけどベニートはほんとうに「被害者」なのか、とか、これもいろいろ考えられそう。
ちょっとこれ、次は「白鯨」ですかね…
(※追記 「白鯨」は長かったので購入を延期…笑)
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こんな人いたら嫌だ。でも結構近しい人って仕事してると見かけるし、自分も他人からするとそうかもしれない。
バートルビーは結局何を求めていたんだろう??
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メルヴィルと言えば白鯨。書記バートルビーは初読。
仕事はできるのに、一切を拒絶するバートルビー。生きることさえ拒絶し餓死する。不条理がおもしろい。
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雇い主の弁護士の善意も常識もまったく通じないバートルビー。こんな人物が現実に現れたら、私も翻弄され、ただ腹を立てるだろう。人間社会のルールに従わないと、生きる権利を失う世の中。説明可能な言動以外は許されない。人間が常日頃、いかに四角四面の生き方を強いられているかを実感した。
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バートルビーは、主人公の心の広さや葛藤が細やかに描かれており、感情移入ができます。結果のところバートルビーがなぜ頑なのかはわからないままではあるが、読み手の感情を揺さぶる人物であることは間違いなく、作者の意図にまんまとかかってしまいます。
漂流船は、なんだか方向感がない展開でめんどくさくなって読み飛ばしました。ミステリーだったんですね。展開次第ではもっと魅力的な作品になりそうな題材ですが話の筋に関係ない部分が多く注意散漫になってしまいました。
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kindle unlimited。
「バートルビー」有名なタイトルだけど、読んでなかった。今回読んでみて、はじまりはポーの小説のようなおかしな仕事仲間がいる会社だな、ではじまり肝心のバートルビーはカフカのような人物だった。なにもしない人。カフカだと最後に死ぬのはあれこれと手を尽くした法律事務所の所長となるのだけど、本作で死ぬのはバートルビー。
「漂流船」は、奴隷船を黒人奴隷が乗っ取るはなし。この小説が書かれたのは、南北戦争が始まる少し前。実際にあった事件をモデルにしているらしい。時代の空気としてそういった黒人の反乱への恐れみたいなものがあったのだろう。
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バートルビーだけ読んだ。
「そうしない方がいいと思います」
バートルビーは一般社会の人間からするととてもおかしな人に見えるけど、本当にそうなのかなあと考えたり、雇い主である語り手のバートルビーに対する態度が複雑で、でも分かる気がする感じがしたり。届かなかった手紙を処分する郵便配達人だった過去も意味深。喜劇要素が絶妙で、どんどん読めてしまう。
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「書記パートルビー」を読んだ。
原文が良いのか、訳が良いのか、現代の日本文学ばかり読んでいる私でもすらすら読めた。
バートルビーの不可解な行動は読んでいる間何度もイライラさせられたが、最後まで読むとなぜこのような行動をとっていたのか少し理解できた。
デッドレターズを処理していた前職をクビになり、自身をデッドレターズと重ね合わせるようになった、哀れなバートルビー。
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著者のメルヴィルさんは、1819年、NYで生まれ、ここに収められた2つの作品は、代表作『白鯨』(1851)のあと、「書記バートルビー」(1853)、漂流船(1955)ー30代前半に、書かれたそうです。
時代設定が気になるので、解説を少し見てから読む。
1953年とは、ペリー来航の年だ。アメリカは、建国からどれぐらい発展してたのだろう。
トクヴィルの本は、出版は1935年だ。リンカーン大統領の奴隷解放宣言は1863年。
_かくして「漂流船」という作品は、南北戦争直前の時期に出版されていながら、奴隷制の本質をすこしの弛緩もなく描いているだけでなく、一般の白人層には直接的に反発させないだけの仮装劇として提示されているのである。「書記バートルビー」と「漂流船」。メルヴィルは、すでに十九世紀中葉の段階で、不条理演劇や内的独白、そして通時的時間の破綻の手法などを駆使して、同時代の白人社会の現実や、複雑怪奇な人間の心理を妥協なく描き出そうとしている。ー「解説」(牧野有通)より
1891年に亡くなられた際はほとんど無名だったメルヴィル。再評価され始めたのは1920年代らしい。
たしかに内容は、怪奇というかなんというか、娯楽として単純に楽しめるものではない。『白鯨』を読んでいないけれど、小説に出てくる象徴的なキャラクターや設定を通して、社会を皮肉にも映し出す、ブラックユーモア的なもの。
時代も国も違う分、細かい比喩が出てきたときは、え、何のこと?全然分からん!というのもあるけれど、それもまあ、雰囲気を味わうことに。
「書記バートルビー」
バートルビーの対処に迫られつつも、なかなか切り離せない状況に陥る、ウォール街でうまくやっている弁護士。たしかにどんどんゾンビ的になっていくバートルビーの存在は、彼の幻覚的にも感じてくる。当たり前、を、ぶち壊してくる声。150年以上たった私たちの社会でも、まだバートルビーの幻影に付きまとわれている人はいなくないんじゃないかと。資本主義はさらに加速して広がっているのかもしれない。でも隙間も探せば色々と出てきているに違いない。それに絡み取られて、うまく生きれたり、厄介なバートルビーに悩まされたり。隙間を見つけて生きていたり、隙間でなかなか大変な思いをしていたり。なんだか脱線してきたけれども、「~しない方がいいと思います」の不穏な響きはいったん読んだら消えないですね。
ある種、機械的に発せられるような、すでに答えが分かり切ってる感と、そんなはっきりとした答えへの期待感は、今の時代の相談系のYouTuberの高需要な今の風潮と重なる…
「あなたはその理由をご自分でおわかりにならないのですか」
自分で考えるより、出してもらった答えに従うほうが楽だしすっきりするし、
でもこの弁護士は、自分ではたと思いついたみたいですね、その理由を。自身の常識内で考え付いたことを。
「漂流船」
もともとこちらは全く知らずに読むことにしたのですが、
わりと強烈でした。ミステリー、わたし的には。
こちらも、大部分が、語りのデラーノ船長の視野で、思考解釈���で、話が描かれていって、
最後に謎が明かされる、証言抄本(供述書)がある。この設定、「ザリガニの鳴くところ」でもあったのを思い出す。アメリカ…昔からなんだね。
西アフリカから、南米、北米… 具体的に、セネガルやアシャンティ王国、チリなど、出てくる。本当にあった奴隷船での反乱の記録が、実在のアメイサ・デラーノ船長によって出版された『公開及び旅行記実録』(1817)に掲載されているらしく、それをもとにさらに小説として構想を深めて作品にされたらしい。
カナダの歴史を学んだ時の黒人奴隷の話とか、難しかったなーと思い出し、
まさに、講義の課題教材になりうる内容では、と思いながら読んだ。
ぜんぜん想像を絶する状況があったんだろうなー。普通なら知らないままだな。
小説すごいね。