- 販売開始日: 2016/03/25
- 出版社: 偕成社
- ISBN:978-4-03-750080-1
守り人シリーズ電子版 7.蒼路の旅人
舞台となるのは、異界と人の世界が交錯する世界 ── 。対岸の大国であるタルシュ帝国の勢力が増し、不安がたかまる新ヨゴ皇国。皇太子チャグムは、罠と知りながら、祖父とともに海...
守り人シリーズ電子版 7.蒼路の旅人
商品説明
舞台となるのは、異界と人の世界が交錯する世界 ── 。
対岸の大国であるタルシュ帝国の勢力が増し、不安がたかまる新ヨゴ皇国。皇太子チャグムは、罠と知りながら、祖父とともに海軍を率いて、タルシュの圧力がかかるサンガル王国の救援にむかう。
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
チャグムとともに海を渡る
2008/07/18 15:15
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:菊理媛 - この投稿者のレビュー一覧を見る
シリーズを通してそうだったと記憶している(未確認ごめん!)のだが、この作品の「目次」の次のページに「地図」があり、次に「登場人物紹介」がある。こもまではファンタジーならママある構造かもしれないが、さらに次のページには「用語集」が載っている。
国が違えば言葉が違う。言葉が違えば当然独自の名詞があって然るべきという、この当たり前のことが、ちゃんと整えられているあたりが、このシリーズのリアリティを強力にバックアップしているように思う。「ヨゴ語」については、この物語の世界に慣れ親しんでいる読者ならば、すでに自分たちの世界でも使われている言葉を話すかのように、自然に読めてしまうかもしれない。しかしながら、「タルシュ語」は今回が初見である。であるにもかかわらず、私のファン心理の成せる業ならまことに恐縮ながら、「砂漠」や「山脈」に当てた言葉などは、いかにもそれらしく、なにか土台にしている原語があるのだろうかと思ってしまうほど「それらしい言葉」が当てられている。世界観として実にすばらしい。
しかしながら単語はともかく、話す国民が変わるたびに別の言葉で語られるわけにもいかないので、当然のことながら物語りは日本語でつづられる。それでも、その中でちゃんと「ヒョウゴが、クルーズの挨拶をヨゴ語になおすのを聞きながら、」というように、通訳が入っていることをさりげなく、話の筋にまったく邪魔にならない体を保ちながら、うまく言語の使い分けが表現されている。
話を目で追いながら、読者はストーリーとともに、その情景から異国情緒を味わえるような、実に巧みな文章で、あたかも外国を旅しているような感動をチャグムとともに体感しているようで楽しい。
また、人物描写についても、一人一人の人格が鮮明で、それぞれに魅力的だ。どうして一人の人間が、これほど多重の人格を操れるものかと不思議に思いながら読み進める。不都合なことや、痛い思いはなるべくしたくない私などは、こういう話は逆立ちしてもあみだせないなと、読みながらつくづく思った。
登場人物は、それぞれにとても個性的で各人に魅力があり、その描かれ方も鮮明でわかりやすい。たとえば、タルシュの第二王子(ラウル)の馬番の男など、この王子が馬から下りる場面で、まさにチラっとしか出ないのだが、その寸の間の行動や態度で、この男の置かれた状況、さらにいかに馬主であるラウルに恐怖を感じているかを表現することで、ラウル王子がいかに恐ろしい男かが読者に十分伝わってくる。しかしながら、ただ「恐ろしい」というだけでなく、この王子は(好き嫌いは別として)非情に優れた男である事も感じさせる描かれ方である。
今回、初登場のなかにも、今後のシリーズでも活躍するのだろうなと思わせる人物も何人か思い当たるが、そういう素人想定をはるかに超えて、このドラマは最終話に向かって漕ぎ出してゆく。
「がんばれ!」と、これ以上がんばれないほどがんばっていると思いながらも、声をかけたくなるような物語だ。
チャグムの未来に幸あれ!
2019/02/07 14:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぱぴぷ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「チャグム、そんなこと言ってはいけないわ!」とか「そんなにパッと色んなことが理解できて、賢い子ね、チャグム。さすが皇太子ね。」などと思いながら読んでしまう。バルサの話だけでも十分面白いが、チャグム目線の旅人シリーズの存在で、この守り人シリーズがさらに厚みを増している。チャグムのこれからが気になり過ぎる!
引き込まれました!
2016/09/30 12:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:eri - この投稿者のレビュー一覧を見る
本当に、みずみずしい物語だと思います。読み直していると、当時は圧倒されたのか、読み飛ばしたのか、気が付かなかった所にも目に留まります。ジンの『子どもの夢だ…』という思いにもはっとさせられました。
もう一つの現実を作る想像力
2024/12/17 10:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
守り人シリーズは文化の描写が巧みだ。衣食住に、その土地独自の生活・言語・慣用表現を反映させるのはもとより、この蒼路の旅人からはヨゴ語の訛りまで登場している。新ヨゴ訛りは元の言葉よりおっとりしているのかな、など、想像を膨らませるのが楽しかった。
今作では、異界の気配が控えめ。今後の動きに向けた布石を打ちつつ、綺麗な負け方を模索するチャグムの葛藤に焦点が当てられている。前巻もビターな結末だっただけにそろそろ息が詰まりそうだが、大海原に放たれた一粒種がどう伸びるか、期待しながら物語を追いたい。
そういう意味では、シリーズの区切り方が下手な気がする。個人の感想の域を出ない話で申し訳ないが、綺麗な負け方を探る展開も嫌いではないものの、その手の負の展開は大きな章の中の一篇でこそ活きるものだと考えている。次回から天と地の守り人の幕が上がる。なら、そこに蒼路の旅人を加える方が綺麗だと思う。タイトルにしても天と地と海がかかわることになるだろうから、わざわざタイトルを分ける必要性を感じない。
前巻、神の守り人のレビューでも言及したことだが、一つの物語に綺麗にまとめていて、完成度の高さに没入できたシリーズだからこそ、守り人シリーズを楽しんで読めてきたところが自分にはある。だからこそそれぞれの巻でタイトルが異なっていても気にならなかったのだが、そのスタンスが今になって微妙な違和感を私の中にもたらしてきた。実際、この本の展開から結末も、次に繋げて化ける類のものだ。それを一つのタイトルとして独立させる意味がどれだけあるのか、これまでの守り人シリーズのあり様からは離れた……悪く言えばズレた感じを受けた。
前向きに解釈すれば大きく舵を切ったとも言える。精霊たちの隣人という牧歌的で小さなエリアでの幼年期を終えて、物語は大国と争乱へと否応なしに拡大していく気配が漂う。チャグムが登場人物たちをして「成長した」と評したように、ここから物語が飛躍するという啓示をもたらすことが、蒼路の旅人の役割かも知れない。