電子書籍
何度読んでもおもしろい
2018/02/09 19:01
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hontoカスタマー - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書を手に取った多くの読者がすでに、結末を知った状態で読み始めたのではないでしょうか。完全版第1段のときもそうでしたが、読み返してみると結構忘れていて、どの部分が加筆されているのかよく分かりませんでした。
本作品はライザのアイルランド時代と現代の事象が交互に章立てされていて、互いに絶妙に絡み合っている構成は、ライザの背景と詩人との関係を効果的に知らしめています。また、ライザと技術班主任の鈴村との過去と現在に関係が幾層にも重なり、二人の関係性に厚みが生まれています。
巻末にはおまけとしてシリーズ短編集『機龍警察 火宅』の自作解題が収録。その中で「〈特捜部は機甲兵装を使った犯罪に対処するために設立された〉などという設定はないし、そんなことは作中どこにもかかれていない」とある。本書の紹介文に繰り返し出てくるフレーズだそうですが、そんなに単純な背景ではありません、それはこれから(もう?)明らかになっていきますよというメッセージのようです。最新作『狼眼射手』に機龍兵が出撃視せず、「敵」の姿がより濃くなってきているのは今後の展開のフリの気がします。なおこの自作解題はネタばれ万歳なので、ぜひ短編を読んでから目を通すことをお勧めします。筆者自身も再度読み返してみたくなりました。
紙の本
元IRF、ライザが引き連れてきた負の連鎖。
2018/11/30 22:06
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
「機龍警察(完全版)」のシリーズ第二作です。
オリジナル版がヒットしていて、順調にシリーズ作品が発刊され、
さらに第一作と第二作は大幅な改定版である完全版が
リリースされました。
第三作以降の完全版は、いまのところ予定がないようです。
それにしても第一作と同様、見事にドラマチックでした。
機甲兵装、通称キモノという身長3mちょっとの
パワードスーツに乗った警察官たちの話です。
機甲兵装による犯罪が増え、警察も対抗するのですが、
国際テロリストたちとの戦いでは劣勢を強いられています。
そこに、沖津の率いるはみ出し者の特捜が、
特別仕様の機甲兵装を駆使して立ち向かっていくという
ストーリーです。
パトレイバー的設定ですが、背景の重厚感を感じますし、
登場人物たちに重々しさがあるので独特の世界観を築いています。
本格的なロボットアニメが好きな人にはツボでしょう。
今回の主役は、元IRFのライザ・ラードナー部付警部です。
元IRFの警察官という非日常性が物語を面白くしてくれます。
特捜の機甲兵装パイロットは合計三人、
いずれも特別採用者です。
ライザ、プロの傭兵、ロシアの特別任務に就いていた警察官。
いかにも的な素性の人たちです。
IRFの怨念につきまとわれているライザ。
その灰色の過去が、ライザに陰を落としています。
ありそうな設定ですし、暴力の世界にある独特の迫力は、
カッコつけやくざ映画と変わらないのですが、
不思議な魅力に包まれているんですね。
機甲兵装というメカ部分も重要だと思うのです。
物語のそんな小道具たちを集めてみると、中学生男子が
好きそうなもので練り上げられていることが分かります。
ましてライザは憂いがあって、細身で背の高い
金髪女性という設定ですし。
なんだかんだ言って読み始めると止まらなくなるのです。
アイテムに心が躍りますし、話の展開がスピーディーで
人間関係も分かりやすいです。
そんなエンタメど真ん中のシリーズです。人気がうなずけます。
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「機龍警察」シリーズの第2作の完全版です。
本シリーズは、現在までに、
長編4編、短編集1編が上梓されていますが、
このうち、第1~3作は、
「龍機兵」の3人のパイロットについて、
それぞれ一人ずつ、物語の主軸に据えて、
それぞれの過去と現在を交錯させながら、
警視庁特捜部(架空)での任務が、
リアルテイストで描かれています。
第2作となる本作品では、
「龍機兵」唯一の女性パイロットとなる、
ライザ・ラードナーの物語となります。
ライザの設定は、
10代で、北アイルランドのテロリストとなり、
ある事件を転機としてテログループを離脱し、
警視庁特捜部に入隊した、といぅ設定ですが、
本作品では、
第1章 現在:序
第2章 過去:生立ち~テロリストになるまで
第3章 現在:破
第4章 過去:テロ活動~転機となるある事件
第5章 現在:急
の5章構成で、ライザの半生を描いています。
この後、シリーズ第4作『未亡旅団』では、
女性だけのテロ集団との攻防となりますが、
その中で見せた、冷徹なライザの「苦悩」の、
その理由が、本作品で明らかにされています。
また、正反対の生立ちと、同様の転機を経て、
「龍機兵」のメイン・メカニックとなった、
カウンターパートとなる鈴石主任との関係も、
今後の展開の中で、注目ですね。
本シリーズは、
安定感のある設定と作風も相まって、
作品の世界観にもグッと引き込まれ、
また、考えさせられる部分もあって、
エンターテインメント小説としては、
抜群に面白いシリーズだと思いますが…、
特に、本作品は、シリーズ中で、最も哀しく、
そして、一縷の救いと不安とともに終幕した、
物語かもしれません。
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初版、文庫化に続いて三度目の読書。
同じ作品を三度読んだのは、前作を除くと「鷲は舞い降りた」ぐらいだと思う。最近翻訳がまったくないジャック・ヒギンズを読みたくなった。
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厚みと重みが好み。
重層的に綴られるエピソード。
ライザと緑ちゃんの関係がたまらんなー。
ライザ妹ちゃんと緑ちゃんの名前が!
それすらうまいこと使うとこが好き!
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ライザの物語。元本よりライザについての背景が書き込まれている(ような気がする)。北アイルランドのテロ組織,黒社会,中国諜報組織が入り乱れての大活劇。ストーリーはほぼ同じなのにページを繰る手が止まらない。「詩人」の真の目的は?
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月村了衛、2016年発表の小説。2011年発表作品に加筆したもの。
近未来警察小説シリーズの第2作。「龍機兵」と呼ばれる近接戦闘兵器を擁する警視庁特捜部の活躍を描いた群像劇風の作品。面白いけれど、官僚機構としての警察の抱える問題とか、北アイルランドのテロリストの物語りとか、何処かで読んだことのあるようなストーリーで、陳腐かつ冗長。特にテロリストの過去の物語りは不要と感じました。
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10月31日午後、横浜港大黒埠頭の一角で起きた大量殺人。同時に発覚する、軍用有人兵・機甲兵装の密輸事案と北アイルランドのテロ組織IRFによる英国高官の暗殺計画。
沖津旬一郎率いる警視庁特捜部が捜査に乗り出すが、すぐに中止命令が下る。
日本政府の沽券にもかかわるこの事件には、日本国の警察庁だけでなく、首相官邸、外務省、経済産業省、北アイルランド、イギリス、果ては中華民国国家公安部、その黒社会まで、あらゆる国家と組織の複雑な駆け引きと暗闘が絡んでいた。
そして一連の事件のシナリオを描き出すIRFの立役者キリアン・クイン。国際指名手配のテロリスト。彼もまた日本に密入国し、かつての同志、今は特捜部付警部補竜機兵〈バンシー〉の登場要因である裏切り者、ライザ・ラードナーの前に現れる。
汚名を負ったひとりの少女をテロリストに成らしめたもの。繰り返される惨劇、その過程で喪われてゆく友人や父親たち。そして一線を越えた妹の死。
ライザの壮絶な過去に寄せて淡々と紡がれる謀略の終焉は――。
いつもそうだった。頭の中でジャムの感触。悪運が人生の流れを堰き止める。無残な形で爪痕を残す。
自分の人生は際限のないジャムの連続なのだ――
人生の排莢を運命が嚙み潰す。そしていつも、大切なものを喪う。止まない雨に打たれながら、深い闇の底のヒースの原を彷徨い続ける人生。約束した、けれど永遠にやって来ることのない水曜日を、諦めながら忘れられない人生。
――ライザような壮絶なものでなくとも、誰もみな、人生の流れが不意に止まってしまった、歪められたと思う一瞬を感じた経験はあるだろう。
それが自分の人生に常に付きまとう悪運だとして、みな、どのようにその後の人生を過ごしていくだろう。自分はどうだったろうか。そんなことを考えながら読んだ一冊。
シリーズ二作目だが、第一作の機龍警察すっとばしていきなり今作から読んでしまった。Production I.Gかサンライズ制作、ノイタミナ枠でいけそうな内容と世界観。パトレイバーやガサラキを思い出した。
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「機龍警察」シリーズ2作目の完全版。
機甲兵装同士の戦闘シーンの迫力も、特捜部部長・沖津とテロ組織や闇社会との諜報戦も1作目より遥かにスケールアップ。
さらに今作の主役・ライザの少女時代から「死神」と呼ばれたIRF時代の壮絶な過去も丹念に描かれており、かなり濃い読み応えのある一冊に仕上がっている。
特にクライマックスの首都高上でのバトル、ライザをテロの世界に導いた〈詩人〉キリアン・クインとの対峙はヒリヒリする臨場感。
ストーリー展開の上手さと非現実的なのにどこかリアリティのある設定、登場人物の心理描写も洗練されていてラノベ好きにも警察小説好きにもオススメできる作品。
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シリーズ2作目。主役級登場人物ライザの過去と現在進行しているテロ事件が複雑に絡み合った物語。
シリーズ2作目と言うこともあり機甲兵装の戦闘シーンもシンプルで読みやすくなっている。
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機龍警察第2弾、いよいよ勢いに乗ってきてボリュームが増大するのが本作かららしい。確かに勢いがあり、読んでいてもその圧が感じられた。
本作の主人公は、メイン人型兵器「機甲装兵」搭乗者の一人、ライザ・ラードナー。彼女には北アイルランド独立機関のテロリストIRF活動家としての過去があった。そのIRFの最高幹部、銀髪詩人の異名を持つ「キリアン・クイン」が彼女と日本の警察に迫る。
ライザの過去と、IRFと日本警察の戦いが縦横の糸となり、重装なタペストリーを織りなす。スピード感と閉塞感それぞれの緊張感が続き、ページを繰る手が止まらない。
鉄腕アトム鉄人28号に端を発する人型兵器(所謂ロボットモノ)は、日本を中心に数えきれないほどの名作を生み出してきたが、この作品もその1つなり、またSF小説、冒険エンタメ小説としても歴史に残る傑作になった。
続編まだまだ刊行済、そして新作予定もまだまだあるらしく、大いに期待して追いかけていきたい。
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機龍警察の2作目。月村さん女戦士書かせたら抜群に冴える。今回はアイルランドの元テロリスト、ライザ・ラードナーの過去を軸に物語が進んでいく。
機甲兵装つまり人間が乗るタイプの戦闘用ロボットが、このシリーズのツボなんだけど、このロボットがこれまで他に出てきたガンダムなどのモビルスーツより案外、脆弱なのが面白い。銃で撃たれたり、ナイフで刺されたりして中に乗っている人間が割と簡単に死んでしまう。人間が乗るところを、もっと固くガードしてしまう設計になっていればいいんじゃないの?という疑問はあるけど、人間がいるところを狙ったらOKみたいな、頭を刺せばゾンビは死ぬみたいなところがいいのかもしれない。
次作も読む。
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機龍警察シリーズの第二作目。完全版が出ているとあって、そちらを読んだ。機甲兵装を使う龍騎兵…つまり操縦者の一人、ライザ・ガードナーの過去を主軸に、お話が展開されていく。彼女はアイルランドのテロリストだったが、今は警視庁に雇用されて龍騎兵になっている『兵隊』。彼女の過去を知る大物テロリストの魔手が、東京に伸びている。その目的は―。というお話。
警察・あるいは何らかの戦闘・諜報組織の活躍するお話を読みたかったのだが、久しぶりに読んで大満足。月村さんは上手な執筆者だけど、すこし筆にあざとさがある気がしていた。今作ではそれが綺麗に払拭されていて、重厚なお話にグイグイ引き込まれていく。ライザの過去は特にそう。詩情があって、とても繊細だ。戦場や暗殺、テロが描かれているのに、とても悲しい。
敵の大立者、キリアン・クインの最期は、もっと違った展開でもいい気がするが、機龍警察が追う事件の薄暗さ、怖さが引き立って、あれでもよかったのかもしれない。戦闘場面の迫力もさることながら、警察内部・関係する官公庁の、人事・政治的駆け引き、沖津さんという、組織のリーダーの魅力なども、たっぷり読ませて、組織小説・冒険・スパイ小説としても楽しませてくれるのがいい。
戦場における冷徹と、捜査官たちの人間味のバランスも非常に良くて、人物に感情移入するシリーズの醍醐味を、2作目にしてたっぷり味わわせてくれる。彼らは人が死ぬことや傷つくことを容認しているわけではなくて、兵装を纏ってなお、脆いいのち。しかも罪なき人の命が散ることへの怒りをちゃんと持っている。壮絶な、ある覚悟を持って、戦っている人々だから。そこがたぶん、読んでいて嫌にならないところ。そして、敵であるテロリストさえも、同様に儚い。そこを見逃さずに描いているから、重いお話なのに次も読みたくなるのかな。
ともかく、読むかどうしようか迷っている方、1作め読んで、そうでもなかったなー、って思ってる方。ここからぐっと面白くなりますから、ぜひぜひ読んで下さい。読み終わるまで止まりませんよ。
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超一級品のエンターテイメント作品。
普段あまり読まないタイプの設定だったが、お見事なストーリー展開と確かな筆力にぐいぐいと引き込まれた。ラスボスのキリアンクインを含むIRF一味のあっけない最後には物足りなさを覚えたものの、それ以外の部分、特にライザ-ラードナー警部の人間ドラマには機微もあり重厚で、その痛みを十二分に味わうことができた。
ところどころの何気ない文章、フレーズも秀逸。すごい作家さんだな、と感嘆した。
ミリーと緑。意図的な命名に違いないが、「運命」の演出はとても効果的だ。
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10月-16。3.5点。
機龍警察第二弾。アイルランド出身の女性刑事に焦点を当てるストーリー。元テロリストの出自、逃亡の理由など。
引き込まれるストーリー、スピード感あり。
次作も期待。