紙の本
見慣れた日常が静かに異界の色を帯びる不思議なストーリーです!
2017/09/22 09:03
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、芥川賞受賞作の「穴」のほかに、「いたちなく」と「ゆきの宿」の二作を収めたものです。本書は、小山田氏の日常世界の中と隣り合わせの異界とも言える世界を見事に描いています。表題作は、仕事を辞め、夫の田舎に移り住んだ主人公は、ある日、みたこともない獣を追っているうちに、穴に落ちてしまいます。また、夫の兄という奇妙な人物にも会います。これらの穴や義兄は一体何をほのめかしているのでしょうか。それは読み手によって変わってくるかと思います。私は、「時間」のような気ががしてならないのですが。。。ぜひ、読んでみてください。
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平凡と思える出足に騙されてはいけない
2019/02/04 21:25
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
夫の転勤先についていくことになった私は義父母のとなりに住み始めた。そして静かな日常が始まるという私小説的純文学かなと「穴」を読んでいると、何かが違う。犬でもタヌキでもない、ましてや狼でもない謎の生き物が徘徊していたり、一人っ子だと聞いていた夫に兄がいて、その存在を夫も義父母も口にしないとかいう不思議な話になっていく。たくさんの子供たちが魚用や虫用の網を振り回して遊んだり、石を投げたりして遊んでいるという光景も田舎町にそんな原始的な遊びをしている子供がそんなにたくさんいるのかなと首をかしげながら読んでいく。そのうちに、この小説はあったかいものではなくてホラーなのだと気づく、きっと義兄も子供たちも・・・・
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2014年度芥川賞受賞作品
2018/05/01 05:39
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
夫の実家に移り住んだ女性の奇妙な体験を描く、表題作が良かったです。日常か非日常へと引き込まれていく、不思議な味わいがありました。
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これを読んだあとにホラー小説読んだからか「こえーよ!」な記憶で上書きされてしまった。
いや、怖くはない。不気味で不穏ではあるけど。
異界とこちらを行き来する。
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とある呟きを見て「そういや買ってたな」と思い出してタイトルだけ読む。そしてさっぱりわからんかった(笑)虫嫌いな方には全くお勧めしない。しかし、こういうものを読んでしまうとますます俺は小説って向いてないのかなと思ってしまう。何回か読めばまた違う世界が見えてくるのだろうか?
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読後が不思議な感じ。一緒に収録されてる、いたちなくと、ゆきの宿がこれまた良かった。この方の他の作品も読んでみたい。
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黒い獣を追い私は穴に落ちた。不思議な出来事と風変わりな人々が田舎町の日常に夢幻を誘う。奇想と魅惑にあふれる芥川賞受賞作。仕事を辞め、夫の田舎に移り住んだ私は、暑い夏の日、見たこともない黒い獣を追って、土手に空いた胸の深さの穴に落ちた。甘いお香の匂いが漂う世羅さん、庭の水撒きに励む寡黙な義祖父に、義兄を名乗る見知らぬ男。出会う人々もどこか奇妙で、見慣れた日常は静かに異界の色を帯びる。芥川賞受賞の表題作に、農村の古民家で新生活を始めた友人夫婦との不思議な時を描く2編を収録。
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なんというべきか…曖昧さの漂う雰囲気。
表題作「穴」:非正規雇用労働の話とか、夫の実家の隣で家賃ゼロで世話になるので姑問題なのかな…と思いつつ、義祖父や義兄への気がかり(主人公は淡々としてるが)…ん?幻想?等 色々思って読んでいるうちに終わってしまった。
まるでろうそくがす~っと静かに消えたような感じ。
…なのだけど、主人公はラストには違う自分にシフトしてる。
激動があるわけではないが、物事は確かに終わっている。
ずっと読んでると正直疲れるのだが、何故か読みたいと思わせられる。
不思議な惹きつけ感があるが、浸りすぎると憂うつになる;
とりあえず、表題作のみの感想。
小山田作品、好きです。
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郊外に格安で戸建を借りることができ、
自分が仕事をやめてもそれほど不自由のない生活が約束されている。
夫婦関係も良好で、夫の両親も気のいい人たち。という、
基本的に幸福であろうはずの環境のなかで、
言い知れぬ不穏な空気が終始漂い続ける不思議なお話。
不穏な空気は主人公の不安そのものと言ってもいいのかもしれないけど、
それがあるとき夢とも現実ともつかない不思議な形となって目の前に現れる。
それは穴であり、家族に存在を認められない浮世離れした義理の兄であり、
突然現れる謎の生き物であるのだけど。
それらは何かを示唆しているようでいて、特に何の役割も果たさない空虚な存在で。
わけのわからないまま翻弄される事になる。
生活環境が変わることで主人公の前に突然現れた無限とも思われる時間。
その自由そのものが不安の元凶で、主人公を苛んでいる物の本質であるように思う。
そこから逃れるすべは、時間を消費することしかなくて。
必然的に主人公の最後の決断を導いていく。
それが良いとか悪いとかではないんだけど、
きっともう大丈夫。と思える結末。
自由は恐ろしい穴のようなものなんだ。
それを持て余すくらいなら、
何かで埋めてなかったことにしよう。
ってことだと解釈しましたよ。
女性の方が感情移入しやすそうだけど
色々思うところあり、楽しめました。
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いつの間にか平穏な日常から不思議なところへ迷い込んでいる、なんだかものすごく不気味で、自分にもそんな日が来るのかもしれない、と思わせられた。
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芥川賞受賞の表題作含む短編3作。
表題作は普通の女性がごくごく一般的な理由の転機を迎え、そこから物語が始まる。
主人公が周りや出来事に対して、取り立てて好感も悪感も表す風もなく、淡々と人生の一幕が展開する。
短文が連なりテンポよく進み、どこにでもありそうな出来事だけが起こっていくのに何かしら不穏な空気が漂う印象。
その中にあれば、何だかよくわからない生き物も、突然登場する義兄も、夏のこれでもかというくらい暑い描写に混じって自然に見える。
そしてまたありがちな出来事から急にそれらが虚像になる。
それすら受け流す主人公が、際立つわけでもないのに余韻が残った。
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『穴』
第150回芥川賞受賞作
帯の一文は
「奇妙な獣のあとを追い、私は得体の知れない穴に落ちた」
主人公は仕事を辞めて、夫の実家の隣に移り住んだ主婦。
見たこともない黒い獣のあとを追って土手の穴に落ちてから不思議な人や風景に出会っていく。
始まりはこの主人公が辞める会社での仕事仲間との会話のように、リアリティのあるものである。
夫の実家の隣に移り住んで、義兄と名乗る男の人だったり、ずっと庭に水を撒いている義祖父だったり、謎の黒い獣だったり、少しずつ風景が現実から異世界のものになっていく感覚が心地よかった。
「家庭」「家族」を作っていくということ、血の繋がりがない他人と一族になっていくということを様々な立場から考えさせられると思った。
希望でもなく、絶望でもなく。
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すごい才能の塊、って感じです。一気に読みました。ストーリーは曖昧なのに、主題がじわりじわりと来る。芥川賞、ってかんじ!(((o(*゚▽゚*)o)))
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芥川賞。
だけど、こういう作品を楽しめるほどの、気分でも、趣向でもないのか楽しみきれなかった。
テーマが好みではなかったからなのかもしれない。
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数年前に読んだ時、なんだか妙な気持ちになったのを覚えている。そして、なにかの拍子にまた手に取ってしまった。
この本の良し悪しを語るには時間が必要だと思う。
初めて読んだ時、意味のわからない奇妙な余韻が残った。少し怖いような、寂しいような、グロテスクなような。
ただ、記憶に残る。
記憶に残っていたからこそ、数年ぶりに手に取ったのだと思う。
穴に落ちて以来、世界が変わったのか、それとも主人公自身が変わったのか、それは誰にもわからない。ただ、なにか、ボタンのかけ間違えたような違和感だけが残る。
この本について、まだ評価ができない自分がそこにいる。良かったのか、悪かったのか。
もっと長い時間を経ることで、この本の真価を知れる気がする。
この本はそういった本であり、良い悪いではない、ただ読んだ余韻が残る、そういった本。