「炎蛹」とは何か
2023/07/24 16:53
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投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
複数の事件が並行して起こり、それぞれが絡み合いながら物語は進んでいく。新宿鮫第5弾。ストーリーが秀逸だ。また、魅力的なキャラクターも登場する。そして、いつも思うのだが、タイトルがいい。「炎蛹」などという言葉はない。でもこの言葉が物語の通奏低音として鳴り響いている。
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はまり小説第五段!毎回切り口が変わるのが新宿鮫の魅力ですが、今回は更に趣向を変わり、ちょっと博識な気持ちになれます。(あくまで個人差があります)直木賞を考えるとややGooです。
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J様後追い第5弾
何度同じ事を書けば良いのか。
シリーズを読み進めるたびに、前作より面白さが増している。
今回は正に新宿、東京を舞台にして、しかもいくつもの事件が絡まりあって非常に面白かった!
またネタバレになるけど、重要人物で死人が出ないことも読後感が良くて良かった。
また次の作品が楽しみで睡眠時間が削られそう。
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いきなり私事ですが。
過去2~4週間くらいか、ちょっと仕事がばたばたして、落ち着かない時期がありまして。
合間の時間でも落ち着かないし、どこか脳みそが仕事を離れきれない。
誰にでもそんな時期は、濃淡ともあれ、あると思うんです。
そうなると、なんていうか...むつかしい本、読み応えのある本、を読み辛くなってしまうんですね。
でも、一方で、そんな時期だからこそ、いつでもどこでも短時間でも、スマホさえあれば電子書籍で楽しめる「読書」というのは、大切な息抜きで、気分転換。
「アタマ空っぽに、わくわく楽しめるような、男の子的な、娯楽小説を読みたいな」と。
それで、
「新宿鮫シリーズでも読むか!」。
でも、という言葉は大変に失礼なんですが。
これが、ハマりまして。
仕事都合で、けっこう「待ち時間」があったり。
そこは、ぼーっとしてても良かったりするので。
そんな「合間」含めて、するする楽しめて。
割と忙しい中でも、気分転換、日々のヨロコビでありました。
感謝感謝。
僕と同じような、時間を切り売りする会社員労働であれ。
自営業とか、専業主婦、家事仕事であれ。
カラダなり神経なりが、疲れて疲れて、やっと自分の時間が出来たときに。
わずかな時間でも、お気に入りのタレントさんとかが出ている情報番組とか、
お気に入りのチームが快勝したスポーツニュースとか、
そういうのを楽しむ時間って、ものすごく貴重だなあ、と思うんですね。
(そういう時間を、近くに居る人が尊重してくれないと、すごく腹が立ったりするぢゃないですか(笑))
それと同じような感じですね。
それはそれで、素晴らしい、読書の快楽。パチパチ。
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大沢在昌さん、「新宿鮫シリーズ」第5作。「炎蛹」。1995年。
今回は、「三つの事件が錯綜する」という、かなり変化球な手法が特色です。
イラン人絡みの、組織的な集団窃盗団を追い詰める話。
これは、組織はそれなりに潰したものの、首謀者の仙田というなんだか魅力的な中年男はとり逃す。
それから、歌舞伎町の外国人娼婦連続殺害事件。
これは、哀しい身の上の日本人のおっさんが犯人で、犯人側の心理も描かれる。
それから、歌舞伎町などのラブホテルで起こる、連続放火事件。
これは、家庭環境のせいか、女装しての放火行為に走る歪んだ若者の独白も入ります。
それから、日本の稲作に壊滅的な打撃を与えかねない、外国から持ち込まれた害虫の蛹を抑える仕事。
これは、甲屋、という名前の、防疫官が魅力的なゲストとして出てきて活躍する。
割とパラレルに複数の事件を(基本的な関連がない事件を)描くというのは、犯罪捜査職業の人の現実はそうかもしれないけれど、
物語としての「探偵もの」では、ほとんどタブーと言って良いものだと思うのだけど、そこそこ面白く描けています。
なんだけど、大沢さんもこの方式は、この後のシリーズでは一度もやっていませんね。
それに、正直、面白いのは、
●主人公と同じく、「公に奉仕する専門的なシゴト」に、プライドと喜びを持っている、甲屋という防疫官のおっさん。主人公との弥次喜多風の道中記。
(同時に、消防の中の放火捜査官も描かれて、これも面白い)
●外国人犯罪組織に君臨する、ダース・ベーダー的な(パルパティーン的な、というべきか)仙田という男の存在感。
●いつもながら、違法行為に堕ちる可哀そうなヒトの独白的なエンターテイメント。今回は、娼婦に恨みを持つ、惨めな中年男...。女装しての放火に走る歪んだ青年...。
(良く考えたら、「新宿鮫」シリーズを貫くこの手法って、煎じ詰めれば、ドストエフスキーさんの「地下室の手記」、なんですよね)
という三点だと思います。
それぞれの事件の解決への終盤戦は、それなりにドタバタと。
並行して描かれる分だけ、良く考えたら雑なところもちょっとあります。
まあでも、そこを突っ走れる中心線(ヒーロー)がいるから、出来る試みですね。
それでも、ヒッチコックの映画「ロープ」が、彼の最高傑作ではないのと同じで、そんな素晴らしいってわけでもないと思います...。
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前作「無間人形」では、主人公の恋人さん(ロック歌手さん)が、事件に巻き込まれて大いに関係しました。
そこでもう、やりつくした感があったのか判りませんが、「炎蛹」では、それほど絡んできません。
なんていうか、アクセント、というくらいですね。
これはこれで、別段、恋人さんとのラブロマンスにはさほど嗜好の薄い、ハードボイルド志向のおっさん読者の僕としては、大歓迎でした(笑)。
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仙田、という魅力的な犯罪者を作って、
捕まらずにこの作品を終えているんですね。
完全に、「シリーズもの」ということを意識した世界観の作り方。
こういうのは、好きです。楽しめますねー。
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構成がだんだん巧みになっていく。
今回はラブホテル連続放火事件と、コロンビア人娼婦連続殺人事件と、稲を壊滅させるほどの繁殖力を持つ害虫の蛹の確保という3つの事件が同時に進行していく。
鮫島は基本的にひとりで行動するのだけど、放火事件は消防庁と、殺人事件は機捜と、そして蛹捜索は植物防疫官と連携しながら捜査をする。
消防庁予防部調査課の吾妻もいいキャラクターなんだけど、植物防疫官の甲屋が本当に面白いキャラクターで、鮫島よりも押しが強いのには笑ってしまう。
研究者肌で公務員としてはかなり異質、けれど子どものような好奇心で鮫島の仕事に興味津々で付いてくる厄介なおじさん。
3つの事件はそれぞれに全く別なのに、少しずつ重なりながら終焉に向かう。
ともするととっ散らかってしまいそうなストーリーが、失速することなく最後まで。
殺人犯も放火犯も途中でわかるんだけど、このシリーズは犯人当てが目的ではないので。
どういう人間がそんな犯罪を犯すのか、そこにどれだけの説得力を持たせられるかが、このシリーズの肝。
そいう言った意味では、放火犯がどういう人間か途中で想像はついたけど、その心のうちの悲しみは静かに染みてくるものだった。
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前作から1年間空けて読んだ新宿鮫第5弾。面白い!ひょっとしたらナンバー1かも。シリーズの代名詞(はぐれモノハードボイルドや、恋人・晶の扱いなど)の観点からは推しづらいが、発想やサブキャラの濃さはじめ、無視するには惜しいカラフルな逸品。読者の皆様は、ぜひこの作品まで読み進めていただきたく。次の6作目も楽しみです!
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新宿鮫シリーズは外れなしで安定感はあるのだが…。今回、かなり地味な話だった。どうしてもカッコいい鮫島が見たい私としては、いささか物足りなかったかな。
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再読5作目。炎蛹。着実に捜査は進み、気がつけば犯人はすでに詰んでいた。そんな話。防疫、消防など新たな犯罪を盛り込んだ意欲作。しかし消化不良で、躍動感も足りない鮫前半5作では最下位かな〜
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3.8
新宿鮫シリーズ第五弾
電気製品を中心にした大掛かりな窃盗品密売グループの被疑者であるイラン人を尾行していた鮫島は、敵対する台湾グループの襲撃に巻き込まれる。
一方、新宿では放火と思しきラブホテル火災と、コロンビア人娼婦の殺害が同時に起きていた。
複雑に絡み合う三つの事件。その上、二人目の被害者が日本に持ち込んだ恐るべき害虫の捜索も加わり益々混沌として行く。
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様々な事件が交わり繋がっていくストーリーが
巧みだった。
そして鮫島と同じように職務に対して情熱を持って取り組んでいる魅力ある人物が増えていて
読んでいて気持ちよかった。
今回は一匹狼の鮫島に相棒がついた。
2人の会話を通じて多国籍になりつつある新宿を筆者がどう考えているのかがわかる。
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キャリア警察官僚ながら、新宿署生活安全課ではぐれ状態で活動する鮫島警部を主人公とする「新宿鮫」シリーズの第5弾。
「新宿鮫」シリーズを通読しているわけではなかったが、本作は、公務員が読んで面白く、ためになるという話を聞き、閲読した。
刑事小説としても、三つの異なった事件が絡まり合いながら、最後に一つにつながる構成で、とても面白く読み進めた。
公務員として読んで面白い部分というのは、今回の相棒的登場人物である農林水産省植物防疫官の甲山の存在である。非常に独特であるが愛すべきキャラクターであり、彼の任務にかける誇りや思いを感じるとともに、公務員らしからぬパワフル(?)な言動にちょっとしたあこがれを覚えた。
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再読。たまきさんはうっすら思い出せた。また出てくるか?甲屋さんは無事でよかった。なぜか記憶の中では虫が見つけられなかった展開が浮かんでいた。
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毎回、趣が変わるシリーズで、今回のテーマは…ん?ない?
今までは一つのプロット上で話が展開していたが、今回は複数事件の同時進行。それも(いくつかは重なるとはいえ)3つ4つもある。
イラン人と中国人グループの盗品強奪に端を発した対立抗争、ラブホテル連続放火事件、娼婦の連続殺人事件…と話が錯綜する上に、タイトルともなる(南米から入ってきた稲を全滅させる可能性がある害虫の)蛹探しがプロットに関わってきて、何より鮫島が正反対のタイプの植物検疫官とコンビを組むという設定が面白い。
シリーズで一番話の展開が凝っているし、のちに再び登場しそうなキャラも多い。ただあまりにも盛りだくさんの内容のため、晶の登場シーンが少ない…のが嬉しい。
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新宿鮫シリーズ第5作。
南米から日本に持ち込まれた「火の蛹」をめぐり、鮫島と植物防疫官の甲屋がコンビを組んで事件を追いかける。
単独捜査が基本の鮫島と組むパートナーのおじさん・甲屋がいい味を出しているが、これまでの作品のような緊迫感はやや薄め。
複雑に絡み合う事件や人間関係に重点を置いた作品というイメージ。
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新宿鮫シリーズで一番おもしろいかもしれない(毎回書いてる気がするが)
昆虫や海外から来た娼婦が絡む、ちょっぴりグローバルな新宿鮫。おもしろい。今回は、農林水産省のお役人が良い味を出していてよかった。