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電子書籍
砂上【電子書籍特典付き】 (角川ebook)
著者 著者:桜木 紫乃
冬の雪が降り積もる北海道・江別。柊令央は、ビストロ勤務で得る数万円の月収と、元夫から振り込まれる慰謝料で細々と暮らしていた。いつか作家になりたい。そう思ってきたものの、夢...
砂上【電子書籍特典付き】 (角川ebook)
砂上
商品説明
冬の雪が降り積もる北海道・江別。柊令央は、ビストロ勤務で得る数万円の月収と、元夫から振り込まれる慰謝料で細々と暮らしていた。いつか作家になりたい。そう思ってきたものの、夢に近づく日はこないまま、気づけば四十代に突入していた。ある日、令央の前に一人の編集者が現れる。「あなた今後、なにがしたいんですか」。責めるように問う小川乙三との出会いを機に、令央は母が墓場へと持っていったある秘密を書く決心をする。だがそれは、母親との暮らしを、そして他人任せだった自分のこれまでを直視する日々の始まりだった。自分は母親の人生を肯定できるのか。そして小説を書き始めたことで変わっていく人間関係。書くことに取り憑かれた女はどこへ向かうのか。
【電子書籍特典: 作中作『砂上』の手書き原稿!】
※本書は2017年9月29日に配信を開始した単行本「砂上【電子書籍特典付き】」をレーベル変更した作品です。(内容に変更はありませんのでご注意ください)
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紙の本
巧すぎるのも時には考えものだ
2017/10/31 15:46
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
巧い書き手というのは、ほとんど動かない物語であっても、短めの長編小説ぐらいには仕上げるものだ。
直木賞作家桜木紫乃の、デビュー以前の女性作家の作品執筆にかける思いを描いたこの作品がまさにそうだ。
主人公柊令央(ひいらぎれお)が雪の降り始めた北海道の町の喫茶店で東京の出版社の女性編集者と対面するところから物語は始まる。
令央は四十になる女性で、今は離婚した前夫から幾ばくかの慰謝料と幼馴染が経営する料理店の臨時雇いの給料で生活している。
彼女は以前から小説を書いては新人賞に応募をし続けていたが陽の目を見ることはなかったが、東京から訪ねてきた編集者小川乙三はその落選した作品ににわかに注目し、改稿することを求めてくる。
その物語が「砂上」というタイトルだ。
そこには令央自身の半生が投影されている。つまり、自身が身ごもり生んだ娘が妹として育てられた事実、令央の母がまだ十代だった令央の代わりに母となった事実、それらが虚実ないまぜになった物語。
おそらく、令央が書きつつある物語の方が動いていたはずだが、この作品はそれを描くのではなく、それを書きつつある令央の心情をくどくどを書きつらねていく。
令央の母の若かりし頃のことが描かれる場面が出てくるが、その時に俄然輝いているのは、おそらく物語が動いているからだろう。
桜木はあまりにも巧すぎて、動かない時間も言葉を重ねることができてしまう。
この作品ではそれが裏目になってしまったような気がする。
紙の本
物書きとは
2018/08/21 01:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:リンドウ - この投稿者のレビュー一覧を見る
全ての物書きに捧げる物語。
小説とは、時間、知力、体力、魂すの全てを削り、産みの苦しみを持って書かれたものであるということを考えさせられる作品でした。
桜木紫乃先生ならではの人間の心理描写が生々しく感じられました。
紙の本
成り上がり小説。熱い!
2017/10/19 00:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
あくまでも主人公は地味な女性作家なのだが、でも際立つのは主人公に小説を書かせていく女性編集者。文芸編集者ってそうとう切れないとできない職業なのだとつくづく実感。本書と文中の小説とどちらも舵を取っているのは、この編集者なんだ。すばらしい。主人公女性も徐々に自分を見出し強くなっていく。とても気持ちがよかった。私は強い女性の話がやっぱり好きなんだな。ひとつ、夫が不貞を犯して離婚に至ったのだから貰える物は貰って当然と思う。ここに負い目を感じていたがそうじゃない。成り上がって行く様がぞくぞくするほどかっこいい。
電子書籍
匠のワザ
2019/06/08 16:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみしま - この投稿者のレビュー一覧を見る
桜木さんの作品をこれまでかなり読んできましたが、本当に上手い書き手であることがよくわかります。この作品は、小説家志望の中年女性と編集者のやり取りが微細にわたりリアルであると感じさせますが、それこそが匠のワザたる所以ではないかと思います。そう思わせる筆致、長い物語を読ませる力がある文体が、すっかり本の世界に入り込ませるのだと思います。最初はどことなく頼りなく輪郭がハッキリしないような小説家志望の女性が、鋭い切り込みの編集者によって、どんどん強かに太い輪郭を持っていく過程が本当に上手い。ますます、今後の作品を読みたくなりました。