奇想不条理デスゲーム
2022/02/07 04:45
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投稿者:HR - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分の予想を完全に超えて展開していく物語っつうのは楽しいものです。
極度に不条理な状況で極度に想像力を暴走させたような小説。仮に似たようなアイデを思いついても、こうした形で結晶化することは今後二度とないのではないでしょうか。それぐらい独特の読みごこちで、大変おもしろかったです。
最初はちょっと読みづらいかなと思った文体が終わりのほうではすっかり癖になっていたのも不思議でした。
人数無限型バトルロワイアルの集大成
2019/06/27 03:02
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投稿者:つきたまご - この投稿者のレビュー一覧を見る
百合SFフェアで買った本でしたが、そんなに百合っぽさは感じなかったです。確かに、女子しか登場しないのですが。
少女庭国が好きでした。
「一人だけ生き残れ」的な卒業試験の内容で、中三女子がどうするか、どんな心理になるのか、ハラハラしながら読めました。
一瞬しか出てこない登場人物も多いですが、その一瞬にそれぞれの生がこもっていて、皆を好きになれました。
補遺は、最初は良かったのですが、私には少々難解でした。少女庭国よりは王道のSFっぽい話だったのかもしれませんが。
とはいえ、伏線がいろいろ張られていたり、様々な出来事が起こったり、読むのを止められない物語でした。そして、少女庭国もですが、登場人物の名前が個性的ですね。
補遺については、何を言ってもネタバレになりそうなので、迂闊なことは言えないので残念です。
気が遠くなる展開ぶり
2020/03/29 13:27
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
卒業式に向かうはずが気付くと密室に閉じ込められていて、隣の部屋には別の学生が…(部屋の数)ー(生存者)=1にしなければ部屋から出られない。ここまではまぁ有りそうな話ではあるけど、この小説は何しろ「補遺」がすごい。その設定を活かしたまま、何パターンも展開する。
ある世界線では、何千回も扉を開け続けて、学生同士が捕食者ー被捕食者/支配者ー奴隷の関係性が生まれる社会が構築されたり、ただひたすらに扉を開けずに壁を掘削・探求したりしてる。設定が少し粗いけど、単純な舞台設定から、ここまで展開するのは見事。展開されすぎて読んでると気が遠くなってくる。
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投稿者:yukiちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「百合SF」という帯に惹かれて買ってみたが、百合っぽい要素は皆無。ただ単に、登場人物が中3女子のみ~というだけ。
それはそれですごいことだが、中身はもっと、想像の遥か斜め上を行っている。
いや、行っちゃている。
増殖する卒業性。カニバリズム。連綿と続く一方通行の部屋。ドアを開けないと起きない女子。謎は数々あれど、一つとして解決されない。
話の内容は、好き嫌いがはっきり分かれるところだが、私はフィフティフィフティ。
殺し合い、自殺合い(?)の描写は嫌いだが、どこから出現したのか、土と花の描写は好き。
円城塔か草野原々ばりの不条理、素頓狂ドラマはある意味、抱腹絶倒。「補遺」の方がずっと長いなんて、何の専門書かと思ったもの。
しかし、もし、こんな世界があったらと思うと、鳥肌が立ちました。
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投稿者:gambling1156 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間味の薄い無機質かつ説明的な文体の合間合間にケータイ小説のような崩れた表現が挟まる。早々にダウンした。
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〈ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ。時間は無制限とする〉という卒業試験に放り込まれた中3女子たちのお話。
〔少女庭国〕よりも〔少女庭国補遺〕からが本番でした。
大叙事詩…勃興と滅亡を繰り返す中3女子たち。
世界には部屋と扉と中3女子しかなくて、生きていくとしたらそれらでどうにかやっていくしかない。食べ物飲み物、生活の道具…部屋と扉と中3女子しかないので“それらでやっていくしかない”。
レポートのように書かれる子もいれば、しっかりストーリー仕立てで描かれる子もいました。
SF、デスゲーム系、百合、架空の歴史書…どれにも当て嵌まるし、でも初めて読む質のお話。終わらない小説でした。
過去方向へ進んでいった子たちが、一面に花々が咲き乱れる部屋に辿り着くのが良かったです。(何から生えてんだ…)と思ったので、その感慨もちょっとで終わりました。
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Jコレクションが刊行された時から、何となく気にはなっていた1冊。文庫になったのでいそいそと購入した。
設定……というか、物語の冒頭自体はさほど珍しいものではない。所謂『●●すれば、×人だけ脱出出来る』という、『デスゲーム』ものと呼ばれるジャンルのお約束を踏襲している。しかし殺し合いが始まるのかというとそうではなく、登場人物の人数が増えるに従って記号的な要素を増してゆく。描写の多寡はあれど、『補遺』に至っては完全に『記号』だと言えるのではないか。
さて、『デスゲーム』と言うからには、何らかの形で、脱出するなり、死ぬなり、場が破綻するなり、いずれにせよ、その世界が永劫に続くわけではない……というオチを想像する読者が大半だと思う。が、本書は『デスゲーム』としての『ラスト』を迎えることはない。ひょっとすると、この『〔少女庭国〕 』という小説自体も、本当の意味で『終わり』を迎えることはないのでは……?
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卒業式会場へ続く通路を歩いていた少女は、ふと暗い石造りの部屋で目覚める。この部屋には二つの扉があり、片方にしかドアノブがない。ドアには以下のような文面の張り紙がある。「ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n‐m=1とせよ」。扉を開けると次の部屋にも少女がおり、張り紙があり、また次の部屋にも少女がいる。
このシンプルな条件から、どんな物語を想像するだろう。この物語は、おそらくその想像の通りには全くならない。
異常な世界に突如放り込まれた少女たちの思考と行動はリアル。羅列された「生命行動」はデスゲーム系への否定的命題を投げかけるし、それは「物語」というもの自体に対してまで波及する。
クローズサークル化での卒業試験は、世界のルールであり、この物語の上ではそれ以上の何も表していない。だからこそラストの展開はどこか理不尽な世界への一つの答のような気がしてくる。
この理不尽で広大な密室は、我々が住む世界と本質的にどれほど違うのだろうか。そんなことを想う。
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ハヤカワ文庫の百合SFフェアに伴い、早川書房の単行本から文庫化された作品。
とある女学院の卒業生である少女は、卒業式が行われる講堂へ向かう途中、気付くとうす暗い部屋に寝かされていた。その部屋にはドアが二つあるばかりで、一方のドアにはドアノブがなく、もう一方のドアには張り紙がされていた。張り紙には「ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ」と書かれている。つまり卒業生の寝ている部屋が次々と続いており、ドアを開放することで、2人の少女が目覚めたならば1人が、5人の少女が目覚めたならば4人が死ななければその空間から脱出できないというのである。
100頁に満たない短編「少女庭国」はそのような状況で目覚めた13人の少女が、互いに殺し会うのか、それとも別の選択をするのかといった物語である。この物語の結末は気持ちのよいものとは言えないかもしれないが、心に響く良い結末だったと私は感じた。
しかし圧巻なのはこのあとに続く「少女庭国補遺」である。例えば先ほどの状況で12人が死に1人が生き残った場合、13人目の次の部屋で眠っていた14人目の少女が、また1人目として目覚める。そのように無限に空間が続いていくのだ。
そしてこのような状況設定の中で、どのようなことが起こりうるのか網羅的に語られるのが「少女庭国補遺」なのだ。少数人数で話し合うか殺しあうかして、1人を選ぶのが基本的なパターンだが、時として国が成立することもある。当然構成員のすべてが少女となるため、帯に書かれているとおり「百合SF建国史」が描かれることになる。
限定的な状況のなかでどこまで可能性は広がるのか、想像力の極地を体験してほしい。しかし、食糧もない空間での生き残りとなるため、必然的にグロテスクな描写がかなりの頻度で登場する。苦手な方は注意されたし。
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【不条理?道理?ありえない?おそろしい、、、】
これから長く続くであろうとクリーム色のページをまた1Pめくっていたあなたは気がつくと壮絶な「教科書」「史記」「申し送り事項」「伝説」「とんち」「過去と未来」「エトセトラ」を読んでいた。
顔の前に本があり、月か太陽か蛍光灯か、ぼんやり周囲の明るさを感じ、ほんの微かでも何も匂わなかった。腕時計はしていなくて、何をするにも中途半端な時間だということは感覚的にわかっていた。まぶたの上から眼球をもみほぐし、体を伸ばして頭に触れた。知っている自分の、でもこんなのだったけなという髪質で、読んでいる間に体が緊張していたことに気づいた。
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色々な意味で問題作だよなぁ、と思う。少女庭国にしろ、補遺にしろ。表題作は短くて、むしろ補遺が本番って感じ。
生活の描写が出てきた後に、それについて詳しい解説がなされるのは、報告書を読んでいるような気分で不思議な感じがする。それがなぜか、っていうのは、読み進めていくと、ああ意図的だったんだな…って分かった。
壮大なエピソード集(短編集とは違う。叙事詩が近いかな…?)って感じなんだけど、百合として読むのにもSFとして読むのにも、どちらにも明確な結論みたいなものが用意されてなくて、ちょっと消化不良な感じが残る。風呂敷広げるだけ広げて、放ったらかして次を広げるみたいな。ただ、オチは余韻があって…というか、この一連の物語に唯一意味が生まれたと言えるような関係性が育まれていて、良かった。むしろもう最後のエピソードだけでいいと思う。
SFというジャンルは、ストーリーの面白さのみならず、舞台設定でどれだけ魅せるかという点も重要なジャンルだと思っている。その点、本作の作り上げた世界は斬新であると思う一方、今一歩自分はそれを面白く見ることはできなかった。
また、ありがちなバトルロイヤルものに対する、豊富なバリエーションの思考実験を試みた小説でもあるのかな、という風に読める部分もあって、そこは面白かった。
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女の子が閉鎖空間に閉じ込められるサバイバルゲームものかと思いきや、そう単純には行かず、思いもよらない方向へと進んでいく。
設定があまりに異質なのと、キャラクターの名前の適当さのためか、悪趣味な仮想空間を観察させられているような気分になる。
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何かの記録文書を読んでいるかのような気分になった。
様々な考察ができるのかもしれないが、自分はこの本の独特な雰囲気が楽しめたのでそれでいいかな、と思う。
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・ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ。時間は無制限とする。その他条件も試験の範疇とする。合否に於いては脱出を以て発表に代える。
・三九〔浮島茉莉子〕
「十五歳の母!?」
世界は救われたが数億年で滅んだ。
・六十〔東南条桜薫子〕
「…きっとどこか高み的な外部から眺めてるんだろう。今この瞬間もね」
「…基本的にはやっぱ私らは二人に一人脱出するのが一番なわけじゃない。一番手早く一番利がいい、合理的な振る舞いを前提とするなら二三行で話は終わることになる。…」
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まあこのタイトルでこのイラストなら興味持たないわけないよね。で、
奇書が読みたいアライさん
が勧める一冊に入っていたので、読んでみた。
すごかった……。
すでに熱量の高い感想はたくさんアップされている。たとえば、
物語はいかにして充足しうるか?――矢部嵩『〔少女庭国〕』における服従の論理、オタクの欲望、観測者不在の百合
というページ。
ので以下メモ。
・映画「キューブ」。と思いきや。
・筒井康隆の実験と、グロテスク趣味。
・冗談の人類史。
・ボルヘスとか……無限や迷宮といえばという安直な連想だが。
・ネーミングセンス素晴らしい。
・こやまけんいちで脳内再生。
・文体が微妙にてにをはが合っているのかどうか。でも中毒性高い。