紙の本
好きな一冊
2021/01/15 04:31
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投稿者:ゆかの - この投稿者のレビュー一覧を見る
どのお話も、共感できる部分や嫌悪を抱く部分があり、とても人間らしい作品集だと思う。
昔から女性でいることに違和感があり、しかし、男性になりたいのかと問われればそれもまた何か違う気がする…解説にもあったように、境界があやふやな状態でいたい自分には、登場人物たちの気持ちが結構わかる気がして。
なんというか…いつか体を脱いでしまえる日がくるといいな、って思えた一冊でした。
紙の本
若手女流作家である彩瀬まる氏が描く、「私」という違和感に優しく寄り添った不思議な物語です!
2020/12/08 09:59
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『花に眩む』や『暗い夜、星を数えて』、『あのひとは蜘蛛を潰せない』などの作品で知られる若手女流作家の彩瀬まる氏の作品です。同書は、自分でいることに窮屈さを覚えた人々が夜な夜な掲示板に集うという物語です。例えば、自分の顔がしっくりこない男子高校生、50過ぎに始めた合気道で若い男の子とペアを組むことになった会社員、恋人の元カノの存在に拘泥する女子大生、妻も部下もなぜ自分を不快にさせるのかと苛立つ銀行支店長などです。こうした人たちは「手の画像を見せて」という不思議なネット掲示板に辿り着いていきます。「私」という違和感に優しく寄り添う不思議な物語です。
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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
身体は精神の檻。
という言い方があったような気がするけれど。
自分自身、
この乗り物でうまく生きられそうな気がしたのは大学生になってから。
一時だけでも身体性をなくして外界と関わってみたいというのは、
だれもが考えることなんじゃなかろうか。
作品としては、すこし出来過ぎな感じもあったけれど、
短編のつながりもきれいに回収されるいい作品だった。
紙の本
彩瀬さんは本当にいろんな人物になれる視点を持っている。
2021/05/16 09:41
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投稿者:びずん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この短編集の名でも少なくとも10人の役を持っている。全ての人の気持ちを説明してくれている。その一つ一つの気持ちをすんなり理解できるようになった今の自分が、誰かを助けるお手伝いをする仕事ができるという自信につながっている。彩瀬さんがその自信を確認させてくれる。いろんな人が、いろんなことを考えていて、いろんな思いを持っているから、助ける時は私がどうしたいかという自分の考えはほとんど要らない。だからもっと柔軟でありたい。
電子書籍
ネット掲示板
2023/04/26 20:04
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネット掲示板は、時々あけて見ていますが、こんなこと、不思議すぎます。「手の画像を見せて」という?なメッセージがあるネット掲示板に、それぞれ、自分に、違和感や不快感などなどさまざまな悩みを持つ人たちが。
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5編どれもとても良かった。体のコンプレックス・・・というか、自分のありようと客観との間にあるギャップに、戸惑う気持ちがいろいろな方向から繊細に描かれている。どのお話を読んでも少しずつ、あ、なんだか分かるな、と思ったり、戸惑う人がいたら、こんなふうに接すればいいのかな、と思ったり。
ふだん生きる社会と、自分の内面とがなんだか噛み合わないと思う人は多いのかな。程度の差はあれ。その感覚に対して、どう向き合うのかも人それぞれ。「認めていいんだ」と思えるようになる高校生の和海。すでに飲み下して、「変わってる」と言われることに何かを感じることもなく日々の楽しみを見つけている50代の真知子。私が一番気持ちを寄せたのは真知子だった。欲しいもの、なくてもいいものを、きちんと見分けられるようになって、幸せな夜を過ごせたらいいな、と思う。
客観的な要請に合わせれば過ごしやすくなるのかもしれないけど、それが生きやすさに繋がらないならしんどい。そこに目を向け、息をつける瞬間も与えてくれる、そんな物語。
いい言葉もたくさん。
「息抜きしたり、自分を作り変えたり、そういう力をあんただけじゃなくて周りも手に入れて、優しくなるから。」
「新しい価値を不快に感じるのは、それまでのルールに上手く乗ってこられた奴だ。」
「愚かな熱病に、一度ぐらいかかってみても良かったのかもしれない。そうでなければ、他人の病を許せないのかもしれない。」
あと、各話に共通して出てくる「手を見せてほしい」のスレ主に『マリアを愛する』の香葉子だけが違和感を覚えている。「労力と成果の帳尻が合っていない」と。スレ主が目指した女の子と香葉子が近い世代だからかなと思うとおもしろい。
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とても良かった。オムニバス形式の本ですが、どの話にも好きなポイントがあって、結果全部好きです。たぶん作者さんの根底にある価値観というか、人間性というか、そういうものがすごく自分に合っているんだと思う。日常の中でいろんな想いを抱えた人たちの、当たり前みたいな関わり合いの中で生まれていくきらきらしたものが、心を癒してくれました。彩瀬まるさんの話、これからもっと読みます。
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何かしらのコンプレックスを持った人達がどう向きあっていくのかを描いた物語です。
題名に「体を脱いで」という表現がありますが、最初これはピンクっぽい?という内容あのかと思いました。しかし、読んでみると、これは「素の自分」になることで、イメージや偏見を脱ぎ捨てたい思いが込められているかなと思いました。
現実の世界では、それぞれの登場人物は特に繋がりはありませんが、唯一共通しているのは「手の画像を見せて」という掲示板を見ていること。ただ、主人公が変わるごとに掲示板の存在が薄くなっていく印象でしたが、最後の章では、掲示板を作った本人が登場したので、掲示板の存在感が印象強くなりました。特に掲示板を作った本人の正体にちょっとした衝撃があったので、面白かったです。その後にまた最初から読むと、なぜかクスッとしたくなる自分もいました。
誰にでも何かしらのコンプレックスを持っていると思います。それは、何かと比較することで生じます。他人からは羨ましいかもしれないが、本人にとっては嫌な部分かもしれない。そのあたりのナイーブな部分をしっとりとした文章で支えていたり、共感する部分もあったので、読了後心が少しだけ軽くなった感じになりました。
自分は自分のままでいいのではないかと教えてくれたような感じにさせてくれました。
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「手の画像をください」というスレッドに立ち寄った人々の5つの物語。しっくり来ない現状、夜のネットサーフィン、感情の移ろいが我がことのよう。
「マリアを愛する」が好き。
無理に馴染まなくても、いい。
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秋の夜更けに読みたいような本。
「小鳥の爪先」と「マリアを愛する」が好き。
周りから受ける評価に違和感があったり、自分の目指す「自分」像と違っていても、自分を認める。好きになる。
難しいことなんだけど、意外とこんなささいなきっかけで出来る様になるのかも。
スレッドの主にはびっくりだったけど。
またいつかふらっと読みたい。
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様々な違和感を持った人達のお話。
なかなか人に理解されない悩みだからこそ、この本に共感できる部分こそ少ないけれど、「人それぞれの違和感」という意味ではとても共感したし心温まるお話でした。
短編だけど全てが一つのことに繋がっていて、その繋がり方も他の物語にはあまりないように感じたので面白かったです。
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連作短編集、になるのかな。
みんないろいろあるけど、どうにかこうにか折り合いつけて生きていくしかないのよね。
最後の話が面白かった。
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「手を見せて」と不思議な盛り上がりを見せる深夜のネット掲示板。そこに集った人々の「私」という違和感に寄り添う物語。〈解説〉吉川トリコ
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短編集。あいかわらず異色な感のあるお話を書かれてるけど、この作品は少し抑えめな感じで親しみ易さを感じた。
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*小鳥の爪先
顔がイケメンな事がコンプレックスな男子高校生の話。綾瀬さんは本当に人間、男、女の湿っぽい嫌なところを表現するのが上手で、主人公が抱く、彼女に対する何となく嫌な感じにあー、って共感してしまった。明るい結末で大人が読んでも一歩踏み出す勇気をくれる
*あざか薄れるころ
合気道の習い事をする50代独身女性の物語。母親と同居していてぼけている訳では無いがだんだんと言動に不安を覚える日常に共感もしたが、いくつになっても悩みは絶えずないものねだりなんだなぁと思い、主人公のように「かっこいい」女性になりたいと思った
*マリアを愛する
彼氏の亡くなった元カノへの嫉妬から起こるファンタジー。前半の元カノについて調べたりどうすれば嫉妬しないのか、苦しくなくなるのか、悩む主人公の姿は恋する人なら1度は味わう苦しさだろうなって思った
*鮮やかな熱病
仕事一筋で男は働くもの、古風な考えの主人公が現代の価値観にいらつくお話。途中で出てくる「男女比率って役割を脱いで、ただの対等な大人同士として、尊重しあえる関係を作りたいんだと思います」という言葉が良かった
*真夜中のストーリー
これまでのお話の共通点は全て主人公たちがたまたまたどり着いた「今起きている人の手の画像を見せてください!」という掲示板。この掲示板を立ち上げた主人公のお話。
綾瀬さんらしい、伏線というかお話が繋がるストーリー、面白かったです。
総じてどれも一瞬、人間や社会の仄暗い部分が描かれても希望を感じる結末でとても読んでて明るい気分になれる本でした