- 販売開始日: 2021/05/28
- 出版社: PHP研究所
- ISBN:978-4-569-84926-3
流転の中将
著者 奥山景布子(著)
「なぜ、朝敵と言われなければならないのか。我らに何の罪があるというのか」幕末、火中の栗を拾うようなものと言われながらも、京都守護職を拝命した会津藩主・松平容保の弟である桑...
流転の中将
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商品説明
「なぜ、朝敵と言われなければならないのか。我らに何の罪があるというのか」幕末、火中の栗を拾うようなものと言われながらも、京都守護職を拝命した会津藩主・松平容保の弟である桑名藩主の松平定敬は、京都所司代として、兄と共に徳川家のために尽くそうとする。しかし、十五代将軍・徳川慶喜は大政奉還後、戊辰戦争が起こると容保、定敬を連れて江戸へ戻り、ひたすら新政府に恭順。慶喜に裏切られる形となった定敬らは、恭順を認めてもらうには邪魔な存在として遠ざけられてしまう。一方、上方に近い桑名藩は藩主不在の中、新政府に恭順することを決める。藩主の座を追われた定敬は、わずかな家臣と共に江戸を離れることに・・・・・・。朝敵とされ、帰るところも失い、越後、箱館、そして上海にまで流浪した男は、何を感じ、何を想っていたのか――。新田次郎文学賞&本屋が選ぶ時代小説大賞受賞作家が、哀しみを心に宿しつつ、転戦していく松平定敬の姿を感動的に描く歴史小説。
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初めて知りました
2021/12/31 20:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ずんのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
松平定敬、歴史好きの人には松平容保の弟で佐幕派の有力大名の一人として知られるが、箱館戦争以降の足取りについて触れられた記録は少なく、自分も全く関心がなかったが大名まで努めた人物が上海まで流れついていたことを初めて知りました。幕末の人物の中で決してスポットライトの当たる人物ではないが、波乱万丈の人生を送った点では有名な偉人と並ぶくらい印象的な生涯が描かれていたと思います。
幕末の混乱ぶりを象徴する大名を描く
2021/11/16 09:07
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
奥山の時代小説なのだが、本書は珍しく幕末モノである。主人公は幕末の桑名藩主であった松平定敬である。といっても幕末通以外にはあまり名の知れていない大名かもしれない。実兄が松平容保で、こちらの方が名が通っている。どちらも王政復古の折に幕府側として抵抗する。
最後の将軍徳川慶喜を頂点とする幕府は戊辰戦争などでほぼ崩壊していたが、慶喜自身も幕府の総括者としての自覚を失いかけていたようで、幕府側の指揮命令系統は行方が定まらない。主人公の定敬も慶喜について江戸に出てみたり、新潟・柏崎の領地に転じてみたりで腰が定まらない。最後は函館から上海に逃亡するというように逃げ回っていたようにも見える。
特に定敬自身に問題があったとも思われないのだが、尊王攘夷の運動に翻弄されたのであろう。徳川慶喜ではなく、定敬を主人公に持ってきたところが面白い。この逃亡の過程で様々な史上の有名人とも邂逅する。勝海州、幕府艦隊の榎本武揚などもその例であるが、武揚には相手にされない。
武士の政権にしては、幕府側に潔さが感じられないが、世間の動きには抵抗できないし、時代の波に呑まれた名門大名だったことが納得させられた。大河ドラマなどで幕末モノがよく取り上げられているが、明治の草創期が為政者達に如何なる混乱をもたらしたかを教えてくれる歴史小説であった。
悪あがきの中将
2021/09/07 09:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
幕末期の桑名藩主松平定敬は、神輿となり担がれただけか、あるいは必死に生きようとして、みっともなくても悪あがきしただけなのか。物語を読み終えて、後者だと思う。時代に翻弄されたと言ってしまえばそれまでだが、自ら生きた証は、悪あがきの軌跡でしかないのだから。