紙の本
過去が現在に追いつく時。
2022/03/14 00:10
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投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在とは過去が堆積したものに過ぎない。
過去からは何人たりとも逃れられないのだ。
本作は、そんな過去と現在の関係性を巧みに活かしたミステリーである。
大学卒業間近の青年ハリーは父の訃報を知らされ、帰郷する。
実家で彼を待っていたのは継母アリス。
父よりも随分と若いこの継母に対し、ハリーはやましい感情を抱き懊悩する。
そんなハリーの葛藤と父親の死について描かれていくのが現在のパート。
一方、過去のパートでは少女時代のアリスが描かれている。
自身の母親にうんざりし常に倦怠感を身にまとっているアリスは、どうも現代パートの彼女と結びつかない。
この抑制された違和感こそが、物語の核でもあり推進力でもある。
現代と過去、それぞれのパートにおいてそうした小さな綻びや不穏さが滲み出ており、張り詰めた空気が常に漂っている。
また現代と過去が繋がりが一向に見えてこない、もどかしさも物語のリーダビリティとして見事な役割を果たす。
得体の知れない不穏さと些細な違和感。
それら点と点が繋がった時、上記したように現在は過去から逃れられないことを痛感するはずだ。
そしてミステリー要素以外にも本作には特筆に値すべき点がある。
それは、登場人物たちが抱える孤独だ。
誰もが誰かを求め結ばれたしても、いつかそれには終わりがやってくる。
そしてまた新たな誰かと出会い、といった風に幾度となく孤独から逃れようとしても、それは決して消えることなどない。
登場人物たちは皆、その事実を心の奥底で知っていたのではないか。
そう思ってしまうほどに本作の根底からは、凪のような寂寥感や諦観が感じ取れる。
孤独がもたらす寂寥感や諦観が積み重なった結果、私たちにどのような影響を及ぼすのか。
孤独と過去の重みが人を狂気に駆り立てるのか。
見事なプロットと確かな人物描写を兼ね備えた本作は、ミステリー好きなら満足すること間違いないだろう。
紙の本
繰り返される歴史
2023/10/21 19:11
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
良質なサスペンスミステリーでした。過去と現在に登場しているアリスは、果たして同一人物なのか?おそらくこの物語を読むと、誰もがまず、そのことを思うと思います。これは、過去と現在のシーンで繰り返される構成の妙といったところ。また歴史は繰り返すというのも、この本のテーマの一つ。最後まで読むと、アリスと一緒に長く生きてきたような気になりました。
紙の本
色々と気持ち悪い
2022/02/15 13:04
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投稿者:きり - この投稿者のレビュー一覧を見る
感情移入できる登場人物が一人もいなくて、事件の真相があきらかになっても(一応「そういうことか」と驚く)、結末を迎えてもすっきりしない、なんとなくイヤミス感がある作品でした。
「そしてミランダを殺す」が好きすぎたので、ピーター・スワンソンのその後の作品にはかなり期待してしまうのですが、個人的には今のところ
ミランダ>アリス>ケイト
です。
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ゲラ先読みキャンペーンにて、読ませていただきました。待望の新作。過去と現在が交錯する彼の筆致が快感で、まさに一気読み。驚きの展開登場も、ザ、スワンソンワールド。呆れや怒りなど様々な感情に絡め取られつつラストへ。そこで感じたことのない心情に包まれました。ミステリーでは初めてです。いやー、新しいステージに連れて行ってくれましたね!次作が待てませんよ!
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親が事故死し故郷に帰ってきた息子
のハリーは、父の死が事故ではなく他殺の可能性があることを知る。
ハリーはしばらく継母のアリスと二人で暮らすことに…だがアリスには秘密が…
現在のハリー視点、過去のアリス視点が交互に展開
何となくトリック自体は読めて少し当たったけどほぼ外れ…
異常心理を淡々と描写していく「冷たさ」のある文章がやはりスワンソンさんの持ち味、少し肩透かしでしたが面白かった。
なんとなく、少し前に読んでたクーンツに
出てくる悪役や、サスペンスに出てくる母親達とキャラが重なる感覚があった。
今のところ
1位ミランダ
2位アリス
3位ケイト かな。
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最愛の父が転落事故で亡くなった… 事故ではなく事件だと知ったハリーは父の葬儀に現れた黒髪の女性を追う!
作者はサイコパスっぽい美女にトラウマでもあるのか?っていうぐらい、またもや美しき継母アリスが事件を引っ掻き回す。過去と現在を行ったり来たりして人物を深掘りしていくのは楽しかった。
中盤くらいで犯人の見当がついたけど、最後にもうひと展開あってニヤリとしました。
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後半一気読みしちゃった!
このシリーズやっぱ「そしてミランダを殺す」が一番面白いな。
事件の起こり方と回収の仕方が流れるようでテンポよくて好き。
倫理的にはだいぶ吐きそう。少女愛の系譜が…。
オチが毎回ひんやりするが、おおむね因果応報なのも皮肉で良い。
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CL 2022.4.24-2022.4.27
父親が事故死したところから始まるけど、単純な謎解きミステリではない。すべての登場人物がおかしい。とにかく気持ち悪い、いろんなことが。でも、面白い。いや、だから面白い。
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購入済み
2022.06.16.読了
うわぁ。すごい。初めから最後まで、ずっーとドキドキハラハラの連続だった。
ピーター・スワンソン、私史上1位かも!
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人間ドラマ要素も強く途中まであんまりミステリーでもサスペンスでも無いかな?と思ってたけど、さすがピーター・スワンソン期待を裏切らない。確かに2回衝撃を受けた。
現実と過去から展開される物語からアリスという女性の闇深い人間性がだんだんと浮き彫りになっていく。美しくてミステリアスな継母の正体が気になってたまらず引き込まれていった
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名前は知っていたが初読みだった。
訳者の力量もあると思うが、分かりやすく素直な文章で物語に没入しやすかった。
内容は、とにかくみんな関係を持ち過ぎ!(笑)
というのはさておき、「アリスが語らな」かったことというのがそういうことなのか、というのが分かったとき、どこで彼女は道を誤ってしまったのか、どうすればこのような結末にならなかったのだろうと、彼女の人生を憂う気持ちが強かった。
最後の場面のとあるモノローグが印象的で、「そうなんだけどそうじゃないんだよなー」というか。
物語を通してずっと不穏で、海辺の街が舞台なのだけれど、爽やかな感じではなく、じめっとした、曇りの日に香ってくるなまぐさい潮風を感じているような小説だった。
最後は静かに衝撃的な幕切れ。哀しみもあるが、アリスに相応しいだろう。
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どの辺が「3部作」なのかが私には今一つピンとこないんですが、メイン州の架空の町が(ほぼ)舞台のケネウィック・サーガ、ってことかしらん。(でも、第二作はほぼボストンか……)
個人的にはこの第3弾が1番良かった…と言うよりはやるせなく、後味をひいた。タイトル(邦題)が効いているし、ジーナのエピソードが最後の最後でこう効いてくるとは予想外の展開だったし。でも、ジェイクを刺殺したアリスが(自分の写真を回収しに)ジェイクのコンドミニアムへ行けるのが、そもそもおかしくない?自己防衛だと警察に拘束されないの?それに、バージェロン夫妻にはどうしてアリスがジェイクのコンドミニアムへ行くってわかるの??
まあ結局、すべての惨劇の元凶って言うか、この薄気味悪い連鎖の種を蒔いたのは、幼いジェイクにイタズラしたエマ・コッドなのかねえ。この連鎖がハリーに引き継がれないように、ポールが配置されてるのかな。
ところで、ビルの散歩道に置かれていたブーケは、結局何だったんでしょうか?
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やっぱりおもしろかった!
この人の作品は外れがないというかわたし好みというか…。
屈折した感じがなんともいえぬ。
そしてラストもなんともいえぬ。
すごくいい。
すごくいいけれどネタバレしたら読む気が失せてしまうからなにも言わないでおこう。
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内容は面白かったけど、タイトルからアリスを疑っていたので第一部の終わりはあまり衝撃がなかった。このタイトルは何も知らないで本屋さんで見たら気になるし、読んだあとになるほどと思うけれども、展開がバレるのが残念。
原タイトルだったら、もっとハラハラしたと思う。
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大学の卒業を控えたハリーは父が死んだと連絡を受ける。
卒業式もパーティーも投げ出して、故郷に帰った彼を出迎えたのは父が再婚をした女性アリス。
彼女は父が死んだのはいつも散歩をしていた道で転倒したからだと彼に告げるのだが……。
ハリーの視線を中心とした現在の事件と彼の継母であるアリスの過去が交互に描かれるミステリ。
アリスがとても歪で好きになれなかった。と、いうかこの作品に出てくる人物の多くがそうなんですが。
ミステリとしては、お! と思うところもあり、楽しむことはできました。
ですが、愛憎ドロドロの作品はしばらくいいかもしれないと思ったりしましたね。