紙の本
相川英輔を発見!
2023/07/25 16:04
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ツクヨミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日曜日の次の日がまた日曜日だったら?
引っ越したばかりのマンションで、半透明の前の住人と同居しなきゃならなくなったら?
まるで生きているかのような絵を描ける魔法の鉛筆があったら?
どの話も意外性があって面白く、結末はバッドエンドじゃない。
ゲラで読んだんだけど、この作家はめっけもんです!
あとがきによれば、海外で結構翻訳されているそうで、いわば逆輸入って感じですか。
好きな作家が一人増えてしまった。
紙の本
新しい作家を発見!
2023/07/29 07:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:書店員X - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネットギャリーのゲラで読了。
どの作品も、一見ありえないストーリーなのだけれど、こういう事もあるのかもしれないと、思え、話に引き込まれてしまう素晴らしいストーリーテリング。リーダビリティにとても優れていて心地よく読める。
6編どれも面白かったけれど、特に「ハミングバード」は出色。あとがきによると、英訳されて海外でも読まれ評価されたようだ。ある意味日本的な物語に感じたけど、他の国にも共通する面白さがあるということなのだろう。
短編が多い作家さんのようだけれど、今後も読んでいきたい。
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味わい深いSF短篇集
2023/09/20 07:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
平凡な日常の近傍に潜む小さな不思議を描いたSF短篇集。
「有り得ない」と言えばそうであるし、「ちょっと先の現実世界」と言えばそうも思える、日常と非日常の絶妙なバランスに酔わされる。
進化しすぎた2つのAI物語。ちょっとした繋がりと、感情を持たないと思われているAIの行動から垣間見える絆の様なものに、何故か安堵した。単純に効率的な方に転んだ結果だったのかもしれないが、人はそこに理由をつけたがり、救いを求めてしまう。人間の弱さが逞しく描かれていてとても良かった。
表題作「黄金蝶を追って」では、描いたものが紙から飛び出す魔法の鉛筆を通じ、不思議な距離感で育んだ少年たちの友情の形が印象的だった。
自分だけの「一日」が追加されたりと、求めているものに近付く「魔法」を得られても、使い道次第で大きく変わる。「黄金蝶を~」は本来の使い方と違う気がするが、寧ろ一番正しい使い方の様な気もして、発想にただただ驚かされた。
奇抜な発想なのに現実味が伴った温かさがある物語たちにどっぷり浸かれる、満足の一冊。
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不思議系としての『世にも奇妙な物語』
2023/09/02 13:41
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投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は6話からの短篇小説です。個人的に最も気に入った話は第1話の『星は沈まない』でした。
コンビニでのAIマシンと店長のストーリー。AIマシンのキャラが非常に印象的でした。現実のコンビニ店舗は無人レジが導入されてきている為、かなりリアリティを感じました。chatGPTもまだ途上にあるとはいえAI技術は今後はよりレベルが高くなってくるでしょう。
第1話以外に興味深かったのは第5話の『シュン=カン』でした。第1話との関係です。しかも『シュン=カン』は瞬間と誤認していた私は思わず「あぁ、成程」と膝打つ様相となりました。
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日本より海外とは
2024/04/19 11:08
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本では、そこまで知られてないよね?
海外(どこだか知らないけど)のほうが先に評価されたってことかな。
いろんなタイプの話を書ける作家さんなんですね。
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過去、現在、未来。様々な時代を舞台に描かれるSF短編集。
しばらくSFから離れていたが、この本を読んでSFの面白さを再認識した。
いずれも日本が舞台なので想像しやすい一方で、現実から少し浮いたような、ふわふわする感覚がある。
夏休み、少しいつもと違う雰囲気の中で、この浮遊感を楽しむのも面白いのでは。
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6作品収録されている短篇集で、どれも面白かった。平易だけど美しい文章。SF要素やファンタジーが日常に入り込んでくるものの、主人公たちはそれを大げさに騒ぎ立てないので、奇抜な設定なのに奇抜さを感じずに読める。1話目の「星は沈まない」は2021年に小説すばるに掲載された作品のようだけど、今は実際にコンビニエンスストアにAI店員が導入されつつあり、近い未来を先読みするような興味深さがある。しかも、あとに出てくる短篇で驚きの展開もあった。最後の話も驚いた。
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内容紹介で数話の物語の設定が「問い」の形で書かれていて、回答を知りたくなってしまう。読んだことない著者だが、妙に気になるのでこの直感が正しいか確認するために読みたい
#黄金蝶を追って
#相川英輔
23/7/31出版
#読書好きな人と繋がりたい
#読書
#本好き
#読みたい本
https://amzn.to/3qbt11S
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短編集。『あとがきに代えて』ではSF・ファンタジーの作品集とされていて、確かにそうなのだけれど、最初に収録されている『星は沈まない』が小説すばるに発表された作品であるように、文芸誌に載っていても違和感ない味わい。作者の関心は一貫して人と人との繋がりにあるように思える。あさま山荘事件を彷彿とさせるエピソードが織り込まれた表題作がひときわ印象的。
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国内より先に海外で評価されたというニューカマーによるSFの短編集。とはいえ最先端科学や、テクノロジーに関する尖った議論などとはあまり縁のないファンタジーよりの作風。短編としても、オチの意外性より人間ドラマで勝負するタイプで、基本ハートウォーミング系。渋くてそつがない、いい意味でも悪い意味でも新人さんらしからぬ作風。いいんだけど、新人でこの感じは却ってつまらんと言う人もいそうな感じかな。個人的ベストは「ハミングバード」。
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やっぱり好きだな、相川栄輔さん。文章が合う。
「ハミングバード」は「惑星と口笛ブックス」で二度ぐらい読んで、英訳の朗読されたやつもたしか聞いて、だから4回めぐらいだったのだけど、なぜか今回が一番感動した。奇妙な設定ながら、出てくる人がみんなまっとうで、理性的で、だからついつい「やさしい世界」と評したくなるんだけど、何回か繰りかえして読んでいると、そうは言ってもそれぞれに後悔や不安や行く先の不安定さを抱えていて、それがあんな形で表現されていることがすごくグッと来るようになった。そのせいか、大江さんのポエトリーリーディングが、なんか心に響いたりして。よい短編。
それからなんといってもやはり「黄金蝶を追って」が傑作。才能を持つということ。それをつらぬくこと、信じるということ。どれも十字架を背負って歩くような重荷になり得るんだよなあ。記憶のなかの黄金蝶とついに対面する強さを持ち得たことが、成長の証しなのかもしれない。これもいつか読みかえしたい作品。
「シュン=カン」は、そう来るか!という発想の妙味。「俊寛」高校生の時歌舞伎教室で見たなあ。あの最後の場面がこの短編でもきちんと解釈されていて、そうかーとなった。
「引力」は、ヒドゥン・オーサーズ以来2度目。これも今回のほうがえぐられるものがあったな。さほど大きく絶望しているわけではないのに、静かにじわじわと追いつめられた感覚。これ、だれもが何かしらの形で持っているんじゃないだろうか? だからみんな、どこかでアポカリプスに惹かれるのかも。(子どものころだったら学校が火事になれば、とか、台風で休みになれば、とかね)
すごく好みの短編集でした。
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☆3.8
SF・ファンタジーに属する作品群六編が収録されている。
どの作品もどこかノスタルジーを感じさせる。
掴みたいのに掴めない何かを、この中に探してしまう。
そんな気持ちになった。
読み終わって考えると、その何かとは「希望」なのかもしれないなと思った。
「星は沈まない」
長くコンビニ業界の会社に勤めそれなりに出世するも、ある事件から不採算店の店長に降格され十年。
この店はAIを導入することでほぼすべての業務を代行できるシステムのモデル店舗になると決定された。
AIシステムの「オナジ」と働き、その能力に驚かされつつ気味悪くも思うのだが…
予想以上のコミュニケーション能力を持つオナジに、恐怖や危機を感じるのもわかるなぁと思いつつ、他の誰よりも結果側にいるオナジに心を寄せるのは当たり前のことなのかもしれない。
オナジとのやりとりの中に、確かに想いを見た気がするのは私も希望を持ちたいからなのかもしれない。
「ハミングバード」
一月ほど前から私は幽霊と共に住んでいる。
この部屋の前の持ち主が、突然半透明の姿で日常生活を送りはじめたのだ。
触れられないし、話もできない。
半年ほど前、手続きの時にはお元気だったのに。
それとも自分は精神に異常をきたしているのか?
これは妄想を見ているだけなのか…
ちょっとしたおかしみが感じられる一編。
半透明な幽霊姿なのに、機械のように決まりきった行動を繰り返すばかりなのが、幽霊らしくなくてちょっと変。
部屋の記憶を見てるんじゃないかと思うくらい。
このちぐはぐな印象がおかしみの元かな。
後輩の樋川の明るさもカラッとしてて好ましかった。
「日曜日の翌日はいつも」
水泳の五輪候補選手ではあるが今一歩頂点の選手たちには届かない、そんな位置にいる宏史だったが、ここ最近タイムを縮めている。
それには理由がある。
彼には日曜日の翌日に、自分以外が存在しない空白の一日が来るようになったのだ。
その空白の日を使い、練習を重ねていく…
まずはこのタイトルが良い。
単純に一日増えたよやっほー!ではなく、次第に増える空白の日への恐怖や、泳ぐ先に見据えた目標の想いの要である谷川との大事な時間など、その繊細さや葛藤をとても愛おしく思う。
ラストの解釈も人によって違いそう。
話し合ってみたい。
「黄金蝶を追って」
小さい頃から絵を描くのが好きで得意だった尾中は、特別授業で壁画を描いたとき、今にも壁から飛び立ちそうな黄金の蝶に目を奪われた。
この蝶を描いた達也を訪ねてスケッチを一緒にするうちに大事な友人となっていく。
そして達也は、自分の描く絵には秘密があると打ち明ける…
達也が一体どんな人生をおくってきたのか。
中学生の間に育んだ二人の友情は何より大事な思い出であり、大事であるからこそ、今頼ることで壊すようなことには決してすまいぞ、と思ったのではないか。
スケッチブックから飛び出した吹き込まれた生命は、今も何処かでひらひら舞っているかもしれない。
「シュン=カン」
シュン=カンは開拓惑星ニョゴ61にて無謀な資源採掘をさせられている。
不正を行うタイラーを摘発しようとして失敗し、部下のナリツネと共に流刑に処されたのだ。
補給船が二ヶ月止まっており、囚人は反乱を企てている。
しかし看守のマーダーマシン〈オナジ〉を倒せるとも思えない…
ここで〈オナジ〉が出てくるとは!
想いは繋がる。
決してその形は見えなくとも。
そしてそれは魂も同じこと。
「来世で会おう」は心から出た言葉であろう。
オナジの想いを受け取ったのだから。
それでも、その痛みもまた本物に間違いないのだ。
「引力」
ノストラダムスの予言の日まで一週間をきった。
そんな朝、餌をあげていたが懐かれなかった野良猫が庭で死んでいた。
葉子は猫を埋葬するため、車を持っている宇佐に連絡を取り、山へ連れて行ってもらう。
年の離れた宇佐は就活が始まり「予言が当たれば就活しなくて済むのに」と愚痴をこぼす…
猫が死に、宇佐は就活が始まり、弟は結婚を考えマンションを買う。
周りの人に大きな変化が訪れた葉子は、自らの変わりのなさにうんざりしていたんだろうか。
だから彼女は祈ったかもしれないなんて思いつつ。
それは何気ないほどに軽く、ある意味とても純粋な祈りだ。
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たまたま書評を読んで面白そうだったので読んでみました。ノスタルジックなSFでちょっとウエット。面白かった。他の作品も読んでみよう。
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収録作「ハミングバード」が日本人で初めて米英のSF誌に掲載されたという宣伝句に惹かれて購入。この日本的なオフビートさが海外で好まれるのは少々意外だったが、確かに斬新なアイデアではある。市井の人々を主人公に据え置くノスタルジックで感傷的な作風はどことなく伊与原新氏に通ずるものを感じるが、SFやファンタジーの要素が入ることで、新たなドラマ性を生み出している。魔法の鉛筆を題材に男同士の友情を描く表題作や歪んだ次元に飲み込まれた競技者の孤独を描く「日曜日の翌日はいつも」も実に読ませる。他の作品も読んでみたい作家。
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すごいSFを見つけたかもしれない。淡々とした描写なのになんてハートフルなんだ。ヤングの小説にも似た暖かな読後感がある。
でも、後書きで出版社(しかも他社)の名前を誤字るのはちょっと興醒めなので星を引きます。