電子書籍
【期間限定価格】桜田門外ノ変(下)
著者 吉村昭
水戸の下級藩士の家に生まれた関鉄之介は、水戸学の薫陶を受け尊王攘夷思想にめざめた。時あたかも日米通商条約締結等をめぐって幕府に対立する水戸藩と尊王の志士に、幕府は苛烈な処...
【期間限定価格】桜田門外ノ変(下)
桜田門外ノ変(下)
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桜田門外ノ変 改版 下 (新潮文庫)
商品説明
水戸の下級藩士の家に生まれた関鉄之介は、水戸学の薫陶を受け尊王攘夷思想にめざめた。時あたかも日米通商条約締結等をめぐって幕府に対立する水戸藩と尊王の志士に、幕府は苛烈な処分を加えた。鉄之介ら水戸・薩摩の脱藩士18人はあい謀って、桜田門外に井伊直弼をたおす。が、大老暗殺に呼応して薩摩藩が兵を進め朝廷を守護する計画は頓挫し、鉄之介は潜行逃亡の日々を重ねる……。
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紙の本
その時歴史は動いた!
2018/05/12 06:22
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉村昭氏はあるインタビューで、この作品を新聞に連載するにあたって二度大きく書き直しをしたと告白している。
そのうちの一回は252枚も描いた原稿を燃やしたという。
書き直しの理由は事実に反したことが判明した場合や自身が納得しない場合だそうで、例えばこの作品に登場する西郷隆盛は当時吉兵衛と呼ばれたいた時代でよくいわれる吉之助ではなかったとか、そういう細かい事実の積み重ねで、吉村氏の歴史小説が出来上がっているといえる。
歴史上有名な大老井伊直弼の暗殺を描いたこの作品でも、その首謀者である関鉄之介を主人公に据えたのは、彼の日記が多く残されていたからと「あとがき」に書いているように、日記という事実があればこそ吉村氏の筆が動いたのであろう。
いよいよこの下巻で、タイトルの「桜田門外ノ変」が描かれているが、400ページほどのこの巻でそれは前半100ページほどで描かれてしまう。
あとは関鉄之介の逃亡生活がほとんどである。
つまり上下二巻の全体を見ると、最初の300ページほどが変に至るまでの背景、そして真ん中100ページは変そのもの、あとの300ページは逃亡と事件に関わった藩士たちのその後を描いていると、大きくいえばそうなる。
それにしても変そのものの描写のすさまじいことといったらない。
桜田門に向かう井伊直弼の一行とそれを襲う藩士たち。ましては、その朝は大雪。
まるで吉村氏自身が現場にいたかのような、そしてそれは読者である私たちにもある現場感覚こそ、この作品の醍醐味ともいえる。
電子書籍
幕末の激動の中に散っていった無数の無名の男たち。
2015/08/23 19:23
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:historian - この投稿者のレビュー一覧を見る
襲撃は成功し、井伊大老の首を挙げた水戸浪士。しかし、それは必ずしも彼らの輝かしい未来を約束しはしなかった。共に決起するはずだった薩摩藩は裏切り、水戸藩も彼らを見捨てる。運命に見放された浪士たちは或いは戦死し、或いは自刃し、或いは捕らわれて処刑されていく。そして鉄之介にも追捕の手が迫っていた・・・。変こそ成功したが、時代の波に飲み込まれていった男たちの悲哀と運命を描いた傑作ドキュメントである。
紙の本
「幕藩体制再構築」のために水戸藩が体系だてた尊王攘夷論が「倒幕」の理論と転化されたことから生まれる水戸藩の悲劇
2011/11/02 21:57
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
水戸藩の尊王攘夷論は日本史を動かす理論として展開をはじめるのだが、それは桜田門外の変を実行したものたちによる全国行脚の遊説活動があったからに他ならない………と私には思えた。『桜田門外の変』の後半三分の一は事変後、幕府ばかりでなく、水戸藩からも追われる鉄之助の逃避行が丹念にたどられる。飢え、寒さ、病魔。彼は必死の逃亡を続けながらも、なお北陸、中国、四国、九州の各藩へ工作活動を試みようとする。感情は語られず、淡々と過酷極まりない事実を積み上げるだけの叙述には鉄之助の一徹さと無念の思いがにじみ出て哀しい
桜田門外の襲撃は、金子孫二郎、高橋多一郎という冷静沈着なリーダーが薩摩藩と手を組み、薩摩藩士3000人を京に集めて朝廷を固め、東西相応じて幕府改造を断行する大規模な作戦であり、緻密に周到に準備された戦闘行動であったことがよくわかった。なにしろ各地を実際に訪ねた著者が膨大なデータを分析した上での詳細な叙述であるから説得力がずば抜けている。「所詮フィクションだろう」などと疑問が起こる余地はない。私は歴史に「もしもこうだったらこうなったかもしれない」などと空想するたちではない。ところが「襲撃は完璧に成功していた。だからもし薩摩が動いていたら幕末史もかわっていたろうに」と想像を楽しくさせてくれるほどの迫真のストーリー展開だ。
読んでいてこちらも神経を逆なでさせられる襲撃直前の緊張、そして襲撃シーンが凄い。金子、高橋の首謀者は京で薩摩との連携、関鉄之助は現場に潜んで襲撃の指揮をとる、実行者は水戸藩士17名と薩摩藩士1名。赤穂浪士の吉良邸討入り、荒木又衛門の鍵屋の辻など集団の剣戟は時代小説ではおなじみだが、これほど徹底したリアリズムで血みどろの激闘を描いたものは読んだことがなかった。おそらく真剣での立会いなど経験したものはいなかったろう。切るというよりも体ごとのぶっつけあいとするのがピッタリの激突だ。文字通りのつばぜり合いに指をおとし、耳がそがれる。闇雲だから同士討ちもおこる。
彼等には約束事があった。重傷をおったものは自刃。軽傷のものは幕府に自首して井伊直弼討取りの意義を述べ、用意した「斬奸趣意書」を提出。無傷で現場から離れることができたものは京へ向かって潜行する。結果、討ち死1名、自刃4名、深手による死亡3名。死を覚悟したとしか言いようのないこの約束事は、正気を失った殺し合いであったにもかかわらず、ほとんどが守られた。襲撃の具体的手順も決められた役割どおりに確実に実行できていた。大義に殉ずるという精神が恐ろしいまでに貫徹していた死に物狂いの集団だったのだ。振り返れば、熱に浮かされた一瞬の狂気にすぎないのだが、読むものを彼等の心情と共振させ、やむにやまれぬ大和魂とはこれかなどと、その気にさせるのは吉村昭氏の筆力であろう。
西南雄藩による明治新政権の樹立のなかでその理論的根拠となったのが尊王攘夷論である。ところで「尊王攘夷論」を体系として整理したのは水戸学であった。列強の侵略を目の当たりにしてこれに対抗する軍事力を備えるとともに、朝廷という権威の下に諸階層を束ね、統一国家として幕藩体制を再構築しようとする理論である。その実践として水戸藩主・徳川斉昭の国防の強化を含む藩政改革があった。歴史の中でもっと浮上してもよかったはずの水戸藩が皮肉なことに、幕府からも、朝廷からも敵視されたあげく、有為の人材はことごとく抹殺され、歴史に埋もれてしまった。「幕藩体制再構築」のための尊王攘夷論を「倒幕」という錦の御旗に、コペルニクス的な転回をなした西南雄藩に対して、純血のままにむしろその呪縛に囚われたのが水戸藩である。水戸藩そのものの存在に内包していた限界、それが水戸藩の悲劇であった。それはそのまま主人公・関鉄之助の悲劇だったのだ。
(上巻よりつづく)
紙の本
上巳の変
2020/07/20 05:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
事件のその後の過程に重きを置いた作品の後編。犯行主導者の結末やいかに、といったところ。かかわった者のその後を知る機会は少ないはずだ。