レ・ミゼラブル みんなのレビュー
- 著者:ヴィクトル・ユゴー, 訳者:永山篤一
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レ・ミゼラブル 上
2024/04/18 14:46
本筋が良いだけに脱線が気になる
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投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
言わずと知れた古典的名作。平凡な男、ジャン・ヴァルジャンが悪に堕ち、どん底から再生し、天国に召されるまでの生涯を描く作品という風に読んだ。
自論だが、キリスト教文化圏の善悪観は結構な矛盾を含んでいると思う。同じ教理に従わない人間の善意を信用できず、しかし同じ教理に従う人間の悪意に対しては異教徒のように扱う。そして善意は神によってもたらされ、本人の努力が及ぶべくもない……この本にも書かれている醜悪な固定観念があると思う。そういう教義の矛盾にもめげず慎ましく善を全うするジャンの強靭な意思が実に胸を打つ。
古い作品を読む際にできるだけ気をつけていることが、当時の流行や時代に想像を巡らせることだ。例えば、本書では風景描写が最低限な反面、やたらと具体的な地名や通りの名前が出ているが、これは旅行が一般的でなかったからこその娯楽ではないかとか。例えば、革命の描写が事細かなのは、切っても切り離せない時代の傷だったからではないかとか。時代も文化も異なる世界の小説の読み味はやはり独特で、現代日本人の私には相容れない部分も多々あるが、そういう差異を楽しむ視点はできるだけ持っておきたいと、改めて考えさせられた。
抄訳の割には話がそれる場面が度々あったのが気になった。ジャンやコゼットから視点が離れる期間の長いこと長いこと。もっと端役の背景は端折っても良い気がする。
作者の自我がしゃしゃり出たり、物語に没入しているところに読者へ語りかけてきたり、充分描写できているところにわざわざ無粋な説明を加えてしまうあたり、ユゴー御大も不安を払拭できない一人の人間だったのだろう。
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