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黒いスイス(新潮新書) みんなのレビュー

  • 福原直樹 (著)
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みんなのレビュー5件

みんなの評価4.2

評価内訳

  • 星 5 (3件)
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3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本黒いスイス

2004/05/08 18:21

黒白を正すべきはどの国についてなのか

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:伊豆川余網 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 簡潔だが、内容をよく象徴した書名だ。「白」には「潔白」のように、無実、無垢、さらには清潔などのイメージがある。アルプスのような雪山を連想して「崇高」さを付加する人もいるだろう。「黒」はその対極。「容疑」「不正」など犯罪の象徴。「暗黒」という言葉も単なる真っ暗ではなく、「非道」「暴虐」など、人間の価値を否定する有様を想起させる。
 第1章ではまず、20世紀前半まで猛威をふるった優生学思想による、スイス国家挙げての「ロマ(ジプシー)族殲滅」運動の凄まじさが描かれる。劣悪とされた彼らを断種に追い込むため、子供を親から隔離(誘拐)し、収容・監視して、結婚・職業も自由にさせなかった。続く第2章で語られるのは、ナチスへの感染。ナチスへの恐怖よりも共感から、スイスは国としてユダヤ人排斥に加担した。ナチスの魔手を恐れてスイスへ逃れてきたユダヤ人をドイツへ追い返すため、いや追い返し易くするため、腰の重いナチス側をむしろ焚きつけて、「在ベルリンのスイス公使館を通じ、ユダヤ人かどうか、簡単に識別できる『印』を旅券につけるよう要求したのだ」(p41)。1938年のことである。
 第3章では、こうした「黒い国」に反旗を翻したスイス人の運命が描かれる。1938年ヒトラー暗殺を企てた神学生は、ゲシュタポに捉えられ死刑に処されたが(享年25)、その逮捕にはスイス警察が協力した。いっぽう、自国の定めに背き、3000人あまりのユダヤ難民に滞在許可証を発行したスイス人警官もいた。リトアニアの杉原千畝領事代理と同じ勇断である。だが、その後の運命も杉原と似ており、この「元警官」は公職追放のみならず、あらゆる定職への道を塞がれた。
 第4章は、核開発。広島・長崎からこの国が得た教訓は、その後の戦術革命を予期した自家製の「新兵器製造」だったという。
 第5章では「相互監視」社会、第6章ではネオナチの一大拠点をもつ「民主主義」社会と大胆な麻薬対策、第7章ではコソボ難民への対応、第8章では、有名というか悪名たかいマネーロンダリングが描かれていく。ここまで読んで来た読者は、もはや「白いスイス」に対する幻滅以上のものを感じる。いわば、国家間で国家が生き抜くということの意味である。
 著者は、支持率を上昇させてきた右派の国民党代表ブロハーへの取材に成功し、次のコメントを得ている。「EUに加盟すれば、他の国がスイスの政策に介入したり、スイスが自ら決めるべき政策も、他の国が決めるようになる。EUは中央集権的で、反民主的な官僚機構だ。加盟すれば、政策論議の場に、スイス国民の一人一人が参加できなくなる。」(p167)
 本書の著者は、世の黒白の狭間を取材するいわゆる事件記者から外信部に転じ、ジュネーブ特派員として6年間のスイス生活を体験したジャーナリストだ。おそらく多くの日本人にとって“あこがれの国”であるスイスの黒白を正した本書は、好著といっていい。
 では、その“あこがれ”とはなんだろうか。美しい景観(これを観光資源とした国策の見事さは、本書ではとくに触れていないが、本書の知見から類推できよう)とともに「永世中立」という国是もあるだろう。だが、中立ということは、無防備とは違う。国防は国民皆兵制が支えている。そもそもスイスという国は、中世のハプスブルク帝国支配への抵抗から生まれたのである。
 また、スイスの銀行(2002年時点で約300兆円、世界の企業・個人の海外運用資金総額の30〜40%が集まるという)は、「14世紀以降、欧州各国にスイスが傭兵を送った際、傭兵の給料送金を請け負う個人金融に端を発している」(p200)と聞けば、まことに感慨深いではないか。
 総面積は九州よりもやや小さく、人口は福岡県・佐賀県・長崎県の合計にほぼ等しい「美しい小国」。読み終わって改めて、我々が黒白をつけるべきは果たしてどの国についてか、考えさせられる。

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紙の本黒いスイス

2017/02/27 13:01

10年のズレ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ももたろう - この投稿者のレビュー一覧を見る

2006年に書かれた本だ。
つまり、今から10年ほど前である。
当時は、「グローバリズム」の最盛期だった。
従って、自国と自国民の利益を第一に考えるということは罪深いことで、後ろめたい感じさえあった。

結局、この世の中の紛争は宗教と民族に関わることだ。
それが原因で戦争が起きる。

スイスは永世中立国で平和の国の象徴のようである。
美しい自然、のどかな農村風景に雪を抱く山々。
誰でも一度は訪れてみたい憧れの国だ。

しかし、観光客としての立場から抜け出したら、そこにな何が見えるのか?
「黒くて怖いスイス」があった。
それは平和ボケした日本人には想像もつかない世界だ。

国家の使命とは国民を守ること。
そのためにはどんなことでもするという、非常にしたたかで強い戦略があった。
また。国民も最低限、自分の身は自分で守るという意識が当たり前になっている。

この本が出版されてから10年経った今、「グローバリズム」から「ナショナリズム」へと世界の風向きが変わってきた。
そんな今こそ、日本人はこの本を読むべきだ。

「平和=軍隊がいない、戦争をしない」ことではない。
決して「黒く」ないスイスに学ぼう。
目を覚ませ、日本人よ。

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紙の本黒いスイス

2015/09/21 11:51

スイスの負の面が書いてる貴重な本。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:命"ミコト" - この投稿者のレビュー一覧を見る

日本、韓国、欧州のメディアではアメリカや欧州(ロシア除く)の負の側面を取り上げない傾向が強く、特に欧州(ロシア除く)を批判する書物が少ないのが現状である。
本書はスイスの負の歴史や何故、スイスが国際組織に入らないかを取り上げた本であり、同時に国連やWTOなどの国際組織、EUの出鱈目ぶりがスイスが嫌がる要因なのだと感じられる1冊である。

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