警視庁失踪課・高城賢吾 みんなのレビュー
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裂壊
2011/02/08 19:18
どうも詰まらない署内恋愛ものになるんじゃないか、って心配していたんですが、軌道修正があったのか、英国の警察小説に似て実にいい味を出し始めました。法月馬鹿親子が動き回らないだけで、こんなにも話がまとまるなんて、立派・・・
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
鹿島茂の『「ワル姫さま」の系譜学 フランス王室を彩った女たち』を読んでいると、「ヤメラレナイ、トマラナイ」という表現がよくでてきます。この本には、それ以外にも私たちが日常的に使う言い回しが「 」にくくられて頻繁に登場します。それが悪ふざけになることなく、文章に親しみを覚えるようになる、これは鹿島の学識と性格あってのことなんだろうなあ、なんて感心します。
で、私がいま「ヤメラレナイ、トマラナイ」状態なのが堂場瞬一の小説、もっと限定すれば警察小説ということになります。なかでも、私が堂場本と付き合い始めるようになった「警視庁失踪課・高城賢吾」は、出来不出来はあるし、大人の皮をかぶったガキみたいな愚かな人物が登場してリアリティを失ったりもしますが、でも、その文章の読みやすさと頁の多さもあって、いつのまにか私は彼の作品に「ヤメラレナイ、トマラナイ」思いを抱いてしまったわけです。
そういう私の願いが通じたのか、もとからいいカバー写真を使っていたこのシリーズですが、今回はその中でも、もっとも写真の質が高いのではないでしょうか。佐々木光の写真もいいことは間違いありませんが、ブックカバーとしてみた場合、モノトーンに近い色合いと被写体の数のバランス、タイトル文字のレイアウトとグレーの使い方が上品で、「壊」の字の中に白で小さく「れっかい」とあるのも好ましいわけです。もう、完全に坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの逆パターン。そんなカバーデザインは、松田行正。
カバー後ろの内容紹介をそのまま利用させてもらえば
*
半年に一度の失踪課課長査察を間近に控え、
室長の阿比留が忽然と姿を消した! 自宅に
急行した高城たちだが、私生活を隠す阿比留
の失踪の原因は掴めず、その行方は杳として
しれない。同時期、一人の女子大生の捜索願
が出された。ストーカーによる拉致も疑われ
たが、二つの事件を追ううちに意外な接点が
判明する。 書き下ろし長篇第五弾
*
となります。小説全体として浮ついたところがなくなり、今までも何度か仄めかされながら真面目に取り上げられることになかっら真弓室長の私生活の謎が前面にでてきます。私などは、真弓の家庭と綾奈の失踪、この二つがはっきりしない限り、このシリーズは終わらないのに、と思っていたので、今回その一つが扱われたこと、それを巡る人間の動きが、海外小説並みになってきつつあることを素直に喜びたいと思います。ただし、最近の『沈黙の檻』を読む限り、良くなったのは『裂壊』だけだったのかも、なんて思っています。
内容についてはあまり触れずに、登場人物について語れば、主人公の高城賢吾は、45歳、7年前に7歳の娘・綾奈が行方不明になり、未解決のまま酒に溺れ、捜査一課を外れ、今は新しく出来た失踪人捜査課三方面分室の刑事となっています。地位としては、管理職にある警部ですが協調性はなく、マイペースで捜査をしています。
7年前の事件では、他の事件を優先したために娘を発見できなかったと今も悔やんでいますが、すでに彼の中で娘の影は薄くなっているようです。でも、7年なんてあっという間です、この状況は不自然だし、賢吾の人間性を疑わせることにもなりかねません。海外の小説では、絶対にないことですし、藤沢周平だってこんな馬鹿な設定はしません。それと今回は、賢吾に対する周囲の評価が高くて、逆に違和感を覚えます。
阿比留真弓は、失踪人捜査課三方面分室室長で賢吾の上司にあたります。高城より三つ年上、とあるので48歳。上昇志向は強いですが、権力に迎合するタイプではありません。ただし、問題は私生活を部下に全く見せないこと。今回、登場する場面は少ないですが、名前の出る頻度は高いです。イアンランキンの小説でいえば、リーバスとテンプラーに近い関係ですが、恋愛感情はありません。私としては高城と真弓の年齢を同じにしたほうが良かった気がします。
ランキンの小説でいえば、クラークに当たるのが明神愛美でしょうか。失踪人捜査課三方面分室の刑事で、失踪人捜査課に配属されたことに不満を持っていて、高城に厳しく当たりますが、前巻でだいぶ打ち解けるようになってきています。年齢的には、シボーンとリーバスは相棒に近く、賢吾と愛美は上司と部下ですし、ここにも恋愛感情はありませんが、堂場がイギリスの警察小説に倣ったな、と感じさせます。
今回、存在感を示すのが失踪人捜査課三方面分室庶務担当の小杉公子です。年齢不詳で、存在感があるものの今までは活躍の場が少なかったのですが、今回は特に前半での活躍が目立ちます。公子に対し、中盤以降で活躍をするのが同じ失踪人捜査課三方面分室の刑事六条舞と森田純一です。舞が合コン大好きのお嬢様で、夕方になれば、デートのことで頭が一杯という今までの巻に対し、今回は、時間通りに帰ろうとする姿勢はともかく、合コンの気配もなく、どちらかというと習い事で忙しいというのが面白い。
純一は舞より年下? なのか、今までは舞にいいように扱われるという設定でしたが、今回はそういうシーンは一度も出てきません。むしろ、役立たずとして相手にされないことが多く、でも最後にキラリと光る美味しい役どころを割り当てられています。私としては、毎回不自然な言動で話からリアリティを失わせている法月父娘が登場しないことと、真弓に光があたったことがこの小説の成功につながった、と思っています。
ただし、堂場はマクベインの87分署のように、各巻で順繰りに登場人物に焦点をあてていこうとしているようですから、法月馬鹿親子の再登場もあるのでしょう。定年間際の愚かな人間の行動に振り回されるといった展開や、なんでも他人に責任を負わせずにはいない気の強いだけの弁護士との恋愛なんて、ケッ、です。賢吾が取り戻すべきは失われた家族であるべきなんだから、安直な再婚話はやめてくれい! そんなアホな展開はジョン・ハート『ラスト・チャイルド』だけで結構です!
闇夜
2020/08/18 10:35
堂場瞬一氏の人気シリーズ第9弾です!高城刑事の執念が実るのでしょうか?
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本書は、人気の警察小説を次々に発表され、特に「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズでは大ヒットを飛ばされている堂場瞬一氏の作品です。同書は、『蝕罪』、『相剋』、『邂逅』、『漂泊』、『裂壊』、『波紋』、『遮断』、『牽制』に続くシリーズ第9弾です。内容は、娘・綾奈と悲劇の再会からふたたび酒浸りの生活に戻り、無断欠勤を続けていた高城ですが、失踪した七歳の少女の捜索に引きずり出されます。しかしなながら、少女は絞殺体で見つかり、事件の担当は失踪課から捜査一課に移ってしまいます。娘を失った両親に自身を重ねた高城は犯人を捜し出すことを誓い、わずかな証言を元に執念の捜査を続けていきます。一体、高城はこの事件を解決できるのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
献心
2020/08/18 10:21
堂場瞬一氏の人気「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの第10弾です!
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本書は、「真崎薫」シリーズ、「汐灘サーガ」シリーズ、「アナザーフェイス」シリーズなどで知られる堂場瞬一氏の作品です。同書は、人気の「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの一冊で、内容は、「綾奈の死の真相を知る」と決意した高城に長野が目撃者情報を持ち込むところから物語が始まります。十数年を経て得られた新しい証言なのです。しかし会社員だというその男は一転証言を曖昧にした上で、弁護士を通じて抗議をしてくる始末です。不可解な態度を不審に思いつつ、地道に当時の状況を洗い直す高城は、綾奈の同級生母子を追って一路東北へ向かいます。一体、この事件はどうなるのでしょうか?男の証言は真実なのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
漂泊
2020/07/27 10:49
堂場瞬一氏の人気の「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、『蝕罪』、『相剋』、『邂逅』に続く第4弾です。
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本書は、『天国の罠』、『棘の街』、『約束の河』といった傑作をはじめ、数々の刑事小説を紙シリーズで刊行され、読者から大好評の堂場瞬一氏の作品です。同書は、大人気の「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズで、『蝕罪』、『相剋』、『邂逅』に続く第4弾です。内容は、ビル火災のバックドラフトに巻き込まれ負傷した明神ですが、鎮火後の現場からは、殺しの痕跡のある身元不明の二遺体が出ます。犯人による隠蔽目的の放火だったのでしょうか?傷つけられた仲間のため、高城は被害者の身元を洗う決意をします。調査の中で、ひとりは捜索願の出されていた作家ではないかとわかり、事態は思わぬ方向に進んでいくことになります。一体、この事件の背景には何があるのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
相剋
2020/08/04 10:37
堂場瞬一氏が読者に贈る「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの第2弾の傑作です!!
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本書は、「アナザーフェイス」シリーズ、「捜査一課・澤村慶司」シリーズ、「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズなどの大好評シリーズ作品を次々に発表されている堂場瞬一氏のこれまた読者から大好評を得ている「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの第2弾でもあります。同書の内容は、捜査一課から失踪課に来た協力要請による事件がテーマとして繰り広げられる物語です。情報提供して消えた目撃者捜しだというのですが、筋違いと主張する高城を制し、阿比留は法月と明神に捜査を命じます。時を同じくして、ある一人の少女が失踪します。友人が訴え出るものの、親族以外からの捜索願は受理できないと拒みます。しかし、少女の家族の態度に違和感を感じた高城は、醍醐と共に非公式に調べ始め、そこには大きな謎が隠されていたことが分ります。一体、この謎とは何なのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
裂壊
2020/08/04 10:31
堂場瞬一氏の大人気シリーズ「警視庁失踪課・高城賢吾」の第5弾です!
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本書は、「刑事・鳴沢了」シリーズや「汐灘サーガ」シリーズなどの人気作品を次々に発表されている堂場瞬一氏の一冊です。同書は、読者から大好評を得ている「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの第5弾でもあります。同書の内容は、半年に一度の失踪課課長査察を間近に控え、室長の阿比留が忽然と姿を消してしまいます。自宅に急行した高城たちですが、私生活を隠す阿比留の失踪の原因は掴めず、その行方は杳としてしれません。同時期、一人の女子大生の捜索願が出されます。ストーカーによる拉致も疑われたのですが、二つの事件を追う内に、意外な接点が判明してきます。果たして、どのような接点なのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
牽制
2020/08/04 10:26
堂場瞬一氏による大人気の「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの一冊です!
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本書は、読者から大好評を得ている「刑事・鳴沢了」シリーズ、「真崎薫」シリーズ、「汐灘サーガ」シリーズなどを次々に発表されている堂場瞬一氏の作品です。同書は、また大人気の「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの一冊でもあります。同書の内容は、高城は娘・綾奈の失踪事件と向き合うことを決意するのですが、拳銃を所持した若手警察官とドラフト一位の高校球児の失踪が立て続けに起こります。キャンプイン目前に姿を消した選手を捜す高城は、元プロ野球選手の醍醐とともに高校時代の監督やチームメイトたちの事情聴取に奔走します。一方、警察官の行方は誰も掴むことができないでいます。一体、この事件はどうなっていくのでしょうか?高城はこの事件を解決することができるのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
波紋
2020/07/27 10:42
警察小説、スポーツ小説で次々に傑作を発表されている堂場瞬一氏のこれまた傑作です!
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本書は、もと新聞記者で、現在、警察小説、スポーツ小説などを中心に次々に傑作を発表されている堂場瞬一氏の作品です。同書は、現在、全10巻からなる人気の「警視庁失踪課・高城賢吾シリーズ」の第6弾です。同書の内容は、ある事件で昇進の道を絶たれた阿比留は、法月の異動を止めようとせず、失踪課内部には亀裂が広がりつつありました。腐る高城に法月は5年前に交通事故現場から消えた男に関する事件の解決を託します。高城の調査が始まった直後、男が勤めていた会社で爆発事件が発生し、犯行声明には失踪した男の署名が記されていました。一体、どういうことでしょうか?また、高城はこの事件を解決できるのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
邂逅
2020/07/27 10:36
堂場瞬一氏による人気の「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの一冊です!
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本書は、「刑事・鳴沢了」シリーズ、「真崎薫」シリーズ、「警視庁追跡捜査係」シリーズなど数々の刑事小説シリーズで名声を馳せている堂場瞬一氏の作品です。同書も、同じく人気の刑事小説シリーズ「警視庁失踪課・高城賢吾」の一冊です。内容は、大学理事長が失踪したと捜索願が出されたことからこのストーリーが始まります。しかし、捜査を始めると母親の態度は一変し、非協力的になっていきます。大学関係者も言を左右し、状況は遅々として掴めないままです。一方、女性の遺体が仙台で見つかり、法月の担当していた大学職員の失踪者だと判明します。胸に爆弾を抱えながら、自分を苛めるように捜査する法月を気遣う高城だが、一体、何がどなっているのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
蝕罪
2020/07/27 10:36
刑事小説で、その名を不動のものとされている堂場瞬一氏の人気「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの第1巻目です!
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本書は、次々に興味深い刑事小説を発表されている堂場瞬一氏の人気の「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの一冊です。内容は、行方不明者を捜す専門部署として、警視庁に失踪人捜査課が設立されたことを発端としてストーリーが展開していきます。実は、失踪人捜査課とは名だけのもので、実態は厄介者が寄せ集められたお荷物部署なのでした。ある事件により全てを失い酒浸りになった刑事・高城賢吾が配属されます。着任早々、結婚を間近に控え、なぜか失踪した青年の事件が持ちこまれるのですが、高城賢吾は一体、この事件を解決できるのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
遮断
2020/07/25 10:20
警察小説で大人気の堂場瞬一氏の「警視庁失踪課・高城賢吾シリーズ」の傑作です!
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本書は、「刑事・鳴沢了シリーズ」、「真崎薫シリーズ」、「警視庁追跡捜査係」、「捜査一課・澤村慶司」などの警察小説シリーズでお馴染みの堂場瞬一氏の作品です。同書も読者から大好評の「警視庁失踪課・高城賢吾シリーズ」の一冊です。同書では、厚労省高級官僚である六条舞の父親が失踪します。事件性はないと思われたのですが、一億円の身代金要求が届き様相が一変します。現金を用意して引き渡しに挑むものの、あえなく失敗に終わってしまいます。同時期にくせ者新メンバー田口はインド人技術者の失踪事件を調べていました。鍵は外国人労働者の就労斡旋なのでしょうか。また、二つの事件の間に関係性はあるのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
漂泊
2010/10/04 20:05
本当は☆一つ追加したいところ。前作では登場人物たちのあまりの嘘っぽい動きに、レベルが下がったと書きましたが、くだらない登場人物を整理したら持ち直しました。めったにシリーズものを評価しない私ですが、これは楽しみなものになりそうです。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本のカバーのフォーマットが好きです。写真の選択、使い方、フォント、全体の色調、どれもいい。シリーズものは、読者も全作品を買う傾向が強いので、統一されたフォーマット、しかもレベルの高いそれを持つと、揃えた時の満足感はひとしおです。例えば早川書房のディック・フランシス作品や、講談社ノベルズの京極夏彦・西尾維新作品、集英社の嶽本野ばらの本のカバーデザインを思い起こせばいいでしょう。堂場の本のカバーデザインは、松田行正+相馬敬徳、カバー写真はKAN SAKURAI/SEBUN PHOTO/amanaimages です。
で、警視庁失踪課・高城賢吾シリーズですが、私は第二作『相剋』から読み始めたので、第三作『邂逅』が二冊目、第四弾の今回は三冊目となります(どうでもいいけど、ややこしい)。つい先日、第五弾『裂壊』を読み終えたばかり。ということで現在、第一弾『蝕罪』だけが未読という状態。ま、いつか機会があれば読むことになるでしょう。
読み終えた作品に点数をつけると、最高が『裂壊』で、次が今回の『漂泊』、次が『『相剋』で、もっともレベルが低いのが『邂逅』となります。評価の基準は、高城と女性陣の絡み方で、もっともいい加減なのが第三作。それを改善し、さらに整理したのが『裂壊』となります。ここらは、実際に読まないと分からないので、この程度にしておきますが、明らかに差があります。バロメーターとなるのが、法月さやかの扱い、とだけ言っておきましょう。で、今回の『漂泊』、カバー後ろの言葉は
*
ビル火災のバックドラフトに巻き込まれ負傷
した明神。鎮火後の現場からは、殺しの痕跡
のある身元不明の二遺体が出た。犯人による
隠蔽目的の放火だったのか。傷つけられた仲
間のため、高城は被害者の身元を洗う決意を
する。調査の中で、ひとりは捜索願の出され
ていた作家ではないかとわかり、事態は思わ
ぬ方向に進んでいく。書き下ろし長篇第四弾
*
です。あれ、どこかで読んだような設定・・・。レジナルド・ヒル『ダルジールの死』は、主人公が爆発に巻き込まれて死んでしまう話で、確かに似ていると言えないこともありませんが、ちょっと違う(ま、弔い合戦、と言う意味では似てるんですが)。もっと感動的な上司と部下の話があったような気がするのですが、自分のメモを検索しても空振りばかり。なんだったかな、英国の警察小説だったことだけは確かなんだけれど・・・
事故に巻き込まれた明神愛美は、失踪人捜査課三方面分室に配属されたことに不満を持っている27歳の刑事です。吹き溜まり的な部署への異動したことで、上司の高城に厳しく当たってきましたが、最近はようやく仕事のやりがいを見つけたような気配があります。どうも、ここらの感じは、日本のというよりは英国の警察小説に学んでいる気がします。例えばイアン・ランキンんのリーバス警部シリーズに登場するエレン・ワイリーとか・・・
で、今回、話が締まった最大の要因は、前作で警察官としてよりも社会人として考えられない暴走ぶりをみせた法月大智と、何でも人のせいにして怒りまくる愚かな弁護士さやかの大馬鹿父娘が殆ど登場しないことです。はっきり言って、この二人の動きは、物語からリアリティを喪失させ、緊迫感あふれるべき物語を、日本のドタバタホームドラマレベルに落としていました。その不要な部分がなくなっただけで、話は様変わりします。勿論、良いほうに。
それと読者を(私を、と言ってもいいのですが)喜ばせるのが、三人の作家、失踪した藤島憲と、20歳のとき「『蒼』文芸新人賞」を受賞してデビューしたものの、二作目以降が書けずに忘れられた純文学作家で、藤島の高校時代の友人・村上崇雄、藤島の作家仲間で、40歳でデビューした時代小説作家の花崎光春といった一癖も二癖もある男たちの存在です。
でも、何といっても今回、圧倒的な存在感を示すのが井形はなです。彼女は道警の期待の星といわれていましたが、警察官と離婚したことが祟ったか、二年限定で警視庁に出向させられ、警視庁捜査一課の長野のところで研修中で、高城たちの捜査に協力することになります。小柄なタンクみたいな女性で、色気を感じさせませんが、彼女の後半での活躍ぶりは見ものです。そして、高城との距離感がいい。ベトベトせず、男と女ではなく、あくまで職場の仲間として動くのが心地よいのです。
薄皮を剥ぐように回を追って徐々に現われてくる分室室長・阿比留真弓の私生活は次の『裂壊』で、よりはっきりとしてきますが、この巻でもその片鱗はうかがえます。ここらは、ランキンんのリーバス警部とジル・テンプラーの関係を思わせ、高城の娘・綾奈の行方とともに、このシリーズ全体の核になっていくようですし、私もそれを楽しみにしていきたいと思っています。全20章で、文庫としては京極夏彦本を別格にすれば、かなり分厚い本ですが、一気に読めます。
それにしても、この出版ペースは偉い。しかもです、『邂逅』でレベルを落としはしたものの、あとは人物の動きも整理されて、物語から冗長感が失せ、尻上がりに調子を上げているのは凄いとしかいいようがありません。このまま突っ走れば、エライことになりそうです。ともかく、この作家からは目が離せない、そういえることだけは間違いありません。願わくは、著者がメタボ腹のデブではないことを願って、筆をおきましょう。
相剋
2009/12/30 20:22
凄い小説か?って聞かれれば、違うって答えざるを得ません。でも、面白くないわけではない。なんていうか質の高いテレビドラマの世界。だから、ハマります。分厚くても一気に読める快感!
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
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全く知らない作家でした。とはいえ、うっすら気づいていなかったわけではありません。知っていながら無視していた人でした。堂場瞬一っていう名前がよくないんです。私の中では何故か、新堂冬樹と童門冬二と同列なんです。敬して遠ざける、というか無縁というか。しかもです、カバーデザインがダサイ。これって安っぽい事件小説でしょ。
ところがです、ものの弾みっていうのがあるんです。長編命の私には、この本の厚み、いえ頁数が気になるんです。つまらなきゃ途中で止めればいいじゃん、そんな気持でついつい手が伸びて・・・。或る意味、運命的な出会いとでもいうのでしょうか。感動はしません。描ききってないなあ、これってシリーズでダラダラ続くんだろうな、って思うんです。でも、悪くはありません。むしろ、ハマル、と言ったほうがいいかも。
カバー後には
*
捜査一課から失踪課に来た協力要請。情報提
供して消えた目撃者捜しだという。筋違いと
主張する高城を制し、阿比留は法月と明神に
捜査を命じる。時を同じくして、少女が失踪。
友人が訴え出るものの、親族以外からの捜索
願は受理できない。だが、少女の家族の態度
に違和感を感じた高城は、醍醐と共に非公式
に調べ始めるが……。 書き下ろし長編
*
とあります。
主人公は高城賢吾、45歳。新たに設けられた失踪人捜査課三方面分室の管理職にある警部です。7年前に7歳の娘・綾奈が行方不明になり、以来、発見されていません。その時、高木が仕事を優先したために対応が遅れたこともあって、結婚生活は破綻。今も生死不明の娘のことを思って悔やんでいます。
ちなみに、高城の所属する失踪人捜査課三方面分室ですが、刑事部失踪人捜査課は桜田門の本庁にありますが、大三分室は渋谷中央署に間借りしています。仕事の特殊性、構成員が寄せ集めであり、わけありのところがあるので、他の部署からは白い目でみられています。だから、室長の阿比留真弓は、手柄を立てて本庁復帰を願っています。
ちなみに、阿比留は自分の上昇志向を隠すことはしませんが、権力に迎合するタイプではありません。とはいえ、自分のことを部下に明かすこともなく、彼女の家庭のことも、執務室に飾られているものの、部外者には決して見せられることのない写真のことも高城は知ることはありません。
で、娘のことを引き摺る高城が担当させられることになったのが、もし娘が生きていれば同じ学年の少女の失踪事件でした。少女の名前は里田 希、15歳、生活指導が厳しくて有名な杉並区黎拓中学三年の、資産家の娘です。物語ににはありがちの美少女で、しかも成績優秀、天才とまで言われ、将来の東大進学は確実視され、春から有名進学校に行くことになっていました。
少女の失踪を警察に届けたのは、希の中学三年の友人の一人・川村拓也で、友人代表で動いていますが、恋人というわけではありません。一方、希の父親で、IT関連の上場したばかりの会社デジタルプラスワン社長・直紀は、杉並区の4億ともいわれる豪邸を構えていますが、普段は家に帰らず会社に寝泊まりし、娘がいなくなってもその習慣を変えません。希の母親で、30代にしか見えない愛華、娘の失踪について沈黙を守り通します。
高城は、3人の子持ちで、間もなく4人目が生まれるという体育会系の、返事は決まって、「オス」という俊足の部下・醍醐 塁とともに希の行方を突き止めようとしますが・・・
高城の自堕落な生活ぶりにはあまり感心しません。同じ警察ものでも海外のR・ヒル「ダルジール警視」、P・ラヴゼイ「ダイヤモンド警視」、R・D・ウィングフィールド「フロスト警部」たちは、デブで薄汚くて汗臭いにもかかわらず、そのバタ臭さがかえって魅力となっているのに、高城にはそれがありません。ユーモア感覚の欠如、文化の香りがしないことなどが大きいと思います。
そういう意味で救いは、失踪人捜査課三方面分室の他のメンバー、「オス」の醍醐塁であり、合コン命の六条舞であり、舞にいいように扱われる森田純一であり、わけあり風の室長・阿比留であるわけです。ちなみに、杉並事件を担当する法月大智ですが、心臓の病気で倒れるまでは、捜査1課にこの人ありと言われた名刑事ではあるものの、弁護士である娘・はるかともども魅力はありません。
私としては、もっと話が凝縮した感のある横山秀夫の作品や、人間の掘り下げが見事な英国の警察物のほうが好みですが、案外、日本人には堂場のこのくらいのお話のほうが好まれるのかな、なんて思います。繰り返しますが、悪くはありません。それにしても高城の娘はどうなったのでしょう。気になって仕方がありません。やはりハマル可能性、大です。
波紋
2011/12/17 19:36
前作『裂壊』で、家庭問題が表面化したせいで上昇志向とやる気を無くしてしまった阿比留真弓っていうのは、なんともお話から緊張感を奪うっていうか。このまま行ってしまうんだろうか、なんて心配をしてしまいます。そして、今回のテーマはロボット?
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
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出れば何となく手を出してしまう堂場瞬一作品、特に文庫書き下ろしは単行本に比べてそれだけで費用対効果が高いので、水準作であれば十分元を取った気持ちになれるのが精神衛生的にもいいようです。この堂場効果はバカになりません。売れるとなると、すぐハードカバー、という出版社側の戦略も分からないではありませんが、堂場の作風からも今の形式がいいんじゃないでしょうか。それにカバー、なかなか頑張っているし。で、中公のシリーズのカバーデザインは、博学で読者を圧倒した松田行正が担当。
カバー後の内容案内は
*
ある事件で昇進の道を絶たれた阿比留は、法
月の異動を止めようとせず、失踪課内部には
亀裂が広がりつつあった。腐る高城に法月は
五年前に交通事故現場から消えた男に関する
事件の解決を託す。高城の調査が始まった直
後、男が勤めていた会社で爆発事件が発生。
犯行声明には失踪した男の署名が記されてい
た! 書き下ろし長編第六弾
*
となっています。ここで、初めての人もいるでしょうから、内容案内に出てくる阿比留真弓からせ詰井していきましょう。彼女は失踪人捜査課三方面分室室長ですから、組織のトップです。上昇志向をはっきりと見せますが、といって権力に迎合するタイプではありません。とはいえ、部下のご機嫌をとって、プライベートなことを明かすことはありません。
後で説明する高城より三つ年上、とあるので48歳ですからテレビのBossに登場する天海祐希を想像すると、ちょっと違います。年齢もですが、阿比留には華やかさはありませんし、なにより疲労がにじみ出ている感じがします。ある事件で、とあるのは前作『裂壊』のことで、家庭問題が表面化したせいで、その上昇志向も影を潜め、無気力に近い状態で、室の雰囲気をぶち壊しています。
法月とあるのは失踪人捜査課三方面分室から、このたび渋谷中央署警務課に異動する老刑事です。心臓の病気で倒れるまでは、捜査1課にこの人ありと言われた名刑事だったせいでしょうか、他人の忠告に耳を傾けず、上司の命令にも逆らうという頑迷なジジイ。はっきり言って、普通の職場で最も嫌われるタイプで、身体を気遣われて暇な失踪人捜査課三方面分室に来ていたという事情があります。娘さやかが弁護士で、何かというと父親の不健康は警察のせいだとねじ込んでくる嫌味な女で、この父にしてこの娘アリ、と言ってもいいでしょう。
その法月の異動に不満なのが、高城賢吾、サブタイトルから窺がえるように、このシリーズの主人公で失踪人捜査課三方面分室の刑事、管理職にある警部で45歳。7年前に7歳の娘・綾奈が行方不明になり、仕事を優先したために対応が遅れたことを今も悔やんでいます。聴き取り捜査などでは、決して自ら相手に情報を与えず、一方的に得ようとする姿は警察の傲慢さを見せ付けます。とはいえ、組織内ではオープンなタイプですが、今回は秘密主義に徹し、行動に一貫性が感じられず、女のことばかり考えています。イメージダウンですね。
で、高木が今回託された事件で失踪した人間というのが、長崎健生です。五年前に首都高で交通事故にあったものの、そのまま現場から失踪、行方不明になった天才的ロボット工学者で、ロボット開発で有名なビートテク社に勤務し、二足歩行制御技術の研究では、ノーベル賞をとってもおかしくないと言われていました。健生をその道の第一人者にさせたのは、30年前に交通事故に遭い、脊椎をやられ、以来車椅子生活を送る母・満佐子の存在です。長崎の研究は、この母にあるいてほしいという思いから始まったものです。
長崎には妻・詩織がいます。港学園大学で米文学を教える、全体的に夫思いのしっかりした女性で、特に冷静だとか、或いは近寄りがたい、といった印象はありません。堂場は人物の容姿について描写をしないという困った癖がありますが、詩織についても年齢や容貌についてはよく分かりません。どうやって健生と知り合った、といった記述もないのは、読書の喜びを殺ぐといいたいところです。ちなみに、港学園は以前、『邂逅』で高城たちが捜査をしたことのある因縁の学校です。
いつものようにチームで動きますが、今回は小杉公子と長野威が予想外の姿をみせるのが面白いです。事件後とに、主人公以外の脇役を交代交代で活躍させる、というのはシリーズものの常道でしょうが、それが上手く出ているといえそうです。ただし、六条舞ですが、せっかく前回みせたいい部分が、この話に生きてこないのは勿体無いところ。