アメリカのジレンマ 実験国家はどこへゆくのか みんなのレビュー
- 渡辺靖(著)
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2016/01/11 17:35
アメリカのリベラルと保守について、よく分かる良書。
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投稿者:たまがわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
素晴らしい本。
読み応え十分で、内容も非常に充実しており、納得感もある。
今まで頭では分かっていても、どうも腹ではよく分からなかった、
アメリカのリベラルと保守の思想と、その歴史的、文化的背景について、よく理解できた。
個人的には、オバマ大統領について論じた第四章以降が、やや退屈に感じたが。
「はじめに」で、
『本書ではアメリカの「戦後民主主義」をよりフェアに振り返るよう心がけたい。』
と書いているが、それは成功しているように思われる。
アメリカの保守とリベラルは、アメリカの歴史のなかで生まれたものであり、
日本の今後の政治思想は、アメリカのそれの猿真似などではなく、
日本独自の歴史の文脈に基づく対立軸により、今後作っていくべきものなのではないかと、本書を読んで思った。
以下、本文より引用・・・
アメリカの保守は、市民によるセルフ・ガバメント(自己統治)を強く重んじる。
片や、リベラルのほうは、自由放任はかえって人間を不自由にする、つまり、
「真の自由を実現するために政府が必要だ、中央権力による一定の介入はそのための手段だ」と考える。
アメリカからすると、「日本の保守というのはいったい何なのか?中央集権体制を維持していくのか、
それとも小さな政府を志向していくのか?」と、現実を見れば見るほど分かりにくくなっている。
第二次安倍政権では控えているようだが、第一次政権時代の「戦後レジームからの脱却」というスローガンは、
その真意が何であれ、アメリカにとっては相当ショッキングなものだった。
戦争責任を受け入れるという、戦後日本が国際社会に復帰する際の基本的な合意に背くと映るからだ。
それまで政府による介入は「自由」にとっての「障壁」と考えられてきたが、大恐慌を境に、
自由放任主義は格差拡大や市場の暴走を招き、かえって人々を不自由にしかねない、むしろ政府による一定の介入こそが
真の「自由」を保証する「手段」とみなされるようになった。
これがアメリカ流の「リベラリズム」の考え方である。
レーガン保守革命以降、保守派とリベラル派のイデオロギー対立、共和党と民主党の党派対立は先鋭化の一途を辿り、
「分裂するアメリカ」「二つのアメリカ」「文化戦争」といった言説が盛んに飛び交うようになった。
そして、それは「黄金の五〇年代」の解釈とイメージをめぐる主導権争いの果ての姿でもあった。
アメリカの所得格差は先進国のなかでは最も大きく、ガーナ、ニカラグア、トルクメニスタンとほぼ同水準にある。
(中略)大恐慌を引き起こした一九二〇年代末以来の格差である。
(中略)カリフォルニア大学の調査によると、二〇一二年までの三年間で増えた所得の九五%は上位一%の富裕層に流れ込んだという。
カンザス州出身の著述家トマス・フランクは、(中略)一九九〇年代以降、それまで民主党支持が多かった
同州の労働者が急速に共和党支持へと転向した点に注目した。
彼らはなぜ財界・富裕層寄りとされる共和党に票を投じるようになったのか?
世界の全人口の五%に満たないアメリカ人が、収監人口では五分の一以上を占めている。
アメリカでは大麻はリベラルの象徴だ。(中略)
ここでもLGBTのケース同様、市場拡大による経済効果や取り締まりのコスト削減が説得力を持っている。
それ故、同じ保守派でも経済保守は社会保守よりも許容度が高い。
リバタリアンに至ってはリベラル派左派と見紛うくらい前向きだ。
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