泰平ヨンの未来学会議〔改訳版〕 みんなのレビュー
- スタニスワフ・レム, 深見 弾, 大野 典宏
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2017/07/03 23:02
またも絶望の未来
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
幾多の冒険で著名な宇宙飛行士泰平ヨンは、地球で行われる未来学会議に招待される。議題は人類の人口増大について。宇宙旅行が広く行われるようになった時代でも、人口増大は深刻な問題らしい。貧富の格差や、食糧難といった社会的危機の原因がそこにあると言ってもよい。会議の行われる中米コスタリカの超高層ホテルの中でも外でも、様々な政治、文化の勢力が、主張を繰り広げ、そもそも国自体がクーデターの危機にあり、アメリカの軍事介入がお約束のように迫っている。
巨大な会議が混乱の中に開催されると思う間もなく、ホテルは反政府側のテロか、政府軍による鎮圧か分かるすべもないが、銃による攻撃とともにガスの攻撃にさらされる。その周辺にいた人々は、ガスの作用によっていわれのない悲観主義にとらわれ、またひどい楽観におちいり、その交互を繰り返し、大混乱におちいったホテルから着の身着のままで逃亡せざるを得なくなるが、もはや誰一人として起きている事実を知ることもでくなくなっている。朦朧とした意識が冷めると、ヨンの眼前には、高度に発達したガスのテクノロジーで人々が幸福に暮らす未来図が現れていた。テロにより肉体を損傷したヨンの体は冷凍保存されて、医学の発展した未来に復活させられたのだ。
こんなインチキスペースオペラ風なんちゃって感満載な展開が、ヨンが地上にいてさえ巻き起こってしまったのだが、好奇心旺盛な彼は次々に変なほころびを引っ張り出してしまう。ガスとコンピュータによって制御されたユートピアであるはずの社会だが、いやもうそれは、ほころびどころではない、抱腹絶倒の実態が待っている。
それを笑うのは簡単だ。だが我々の未来に待っているのがそんな世界でいいのかということが問題だ。
むしろガスとコンピュータに制御されたディストピアだった方が、どんなにましか。
そしてこの小説が書かれてから40年以上経った現在でも、人口問題も環境問題も、解決どころかますます悪化しているのが現実なのだ。その一方で化学物質や人工知能などのテクノロジーはますます日常を深く侵犯し、テロリズムは際限なく拡大している。この作品の描く世界に、むしろ現実の方から近づいて行ってるではないか。
それは予言性というよりは、この作者なら普遍性と呼ぶのだろう。
テクノロジーの進歩について予言的な作品を書いたSF作家はたくさんいるが、文明、あるいは人間知性の進む方向性を見定めてしまうのは稀有だろう。現実のゆるやかな進歩の延長上といえばそれまでだが、テクノロジーの進歩と知性の進歩を並行に進むものと考えがちなところを、その速度差をきちんと認識しているところが、いつもながらのレムの手際というか、読者を喜ばせないスタイルだ。それでも泰平ヨンの図太くものほほんとしたキャラクターの親しみやすさでまったり読み進めて行って、最後にすべてが絶望に向かっていることに気づいて愕然とする展開は恐ろしすぎる。
2022/12/06 09:22
薬物主義が蔓延る恐ろしい世界
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本では「泰平ヨンシリーズ」と呼ばれている作品の2作品目、古いものから順番に「航星日記」「未来学会議」「現場検証?」「地球の平和」、映画化もされたレム氏のおそらく一番有名な作品、「ソラリス」(ソ連の映画は邦題が「惑星ソラリスだった」、私の好きな映画の一つ)のような重苦しいSF、そして泰平ヨンシリーズ「航星日記」のようまほら吹き話と作品の幅が広いが、この作品はどちらにも触れていない怖い作品だ、未来学会議に参加しているヨンたちを過激派のテロが襲う、逃げ惑うヨンは冷凍保存され未来への送られる、しかしその社会は薬物主義が蔓延る恐ろしい世界だった、はたして、その世界は薬が作り出した幻影なのか、実在の世界なのか、結末は予想通りであったが、このような世界だけは願いさげだ
電子書籍泰平ヨンの未来学会議〔改訳版〕
2017/02/07 22:54
32年ぶりに再読したがやはり面白い
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投稿者:かんけつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
幻覚剤が当たり前になったグロテスクな未来。精神化学全盛のユートピア。とにかくどんどん出てくる薬の名前が傑作なので、訳者の苦労が偲ばれる。ラブレーあたりの芸も継承されているのかも。当然ながらのオチなのでそれがあっけないと言えばあっけないかな。
2016/12/30 22:03
下らないよう
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投稿者:yukiちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
学生時代に読んだレムは衝撃的だった。
「エデン」「ソラリス」「砂漠の惑星」「枯草熱」「捜査」「星からの帰還」「天の声」etc.
当時流行ってた、サンリオSF文庫でもお世話になりました。
「泰平」シリーズも結構気に入っていたが、この本はさっぱり意味が分からなかった。
自分が成長したからか、当時の自分が天才的読者だったのか、そこのところは分からない。
ただ、この本が映画の原作に相応しいかと聞かれれば、プロデューサーには、「馬鹿なことを言ってんじゃない。金をドブに捨てるようなもんだ。」と教えてあげたい。
天才レムにも、どうにもならない題材があるんだってこと。
とにもかくにも、レムも亡くなって久しいこったし、下らない作品でこれ以上名声を汚すことが出来ないのが救いか。
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