「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
- カテゴリ:一般
- 発行年月:2000.4
- 出版社: 草思社
- サイズ:20cm/237p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-7942-0960-6
紙の本
格闘する者に○
著者 三浦 しをん (著)
女子大生・藤崎可南子は就職活動中。希望は出版社、漫画雑誌の編集者だ。ところがいざ活動を始めてみると、思いもよらないことばかり。格闘する青春の日々を、斬新な感性と妄想力で描...
格闘する者に○
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
女子大生・藤崎可南子は就職活動中。希望は出版社、漫画雑誌の編集者だ。ところがいざ活動を始めてみると、思いもよらないことばかり。格闘する青春の日々を、斬新な感性と妄想力で描く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
三浦 しをん
- 略歴
- 〈三浦しをん〉早稲田大学第一文学部卒業。ホームページBoiled Eggs Onlineにて、読書エッセイ「しをんのしおり」を連載中。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
いまどきの就職事情。
2001/05/25 11:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みやぎあや - この投稿者のレビュー一覧を見る
ちょっと個性的な、だけどいかにも今時の大学生の就職活動と、家族のお話。テーマの重さからは考えられないくらい明るく前向き(そして後ろ向き)な人々の姿が鮮やか。
文章の軽さ、テンポの良さに、作者の若さというか、今の漫画世代の人なのだなということを感じます。可奈子の友達、交際相手のおじいさん、家族、父親の秘書など登場人物の魅力は大きい。だからといってキャラクター重視になりすぎている訳でもなく、漫画っぽく読ませながら微妙に文学の香りがするあたりも読んでいて気持ち良かったです。
紙の本
出版社の下手な紹介文に}。でも、小説の中味は○。両方併せて★四つ
2006/03/30 21:08
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
草思社から小説というのも珍しいけれど、藤原薫の装画がなんともコミックノベル風というか、少女小説風で、その内容との乖離に、カバーだけでこの本に飛びついた少年少女は驚くのではないでしょうか。
「藤崎可南子は就職活動中。希望は出版社、漫画雑誌の編集者だ。
ところがいざ活動を始めてみると、思いもよらないことばかり。「平服で」との案内に従って豹柄ブーツで説明会に出かけると、周りはマニュアル通りのリクルートスーツを着た輩ばかりだし、面接官は「あーあ、女子はこれだからなあ」とセクハラまがいのやる気なし発言。これが会社?これが世間てもの?こんな下らないことが常識なわけ?悩める可南子の家庭では、また別の悶着が・・・・・・。
格闘する青春の日々を、斬新な感性と妄想力で描く新人作家、鮮烈デビュー作。」
がカバーの紹介文。
今回は、この紹介文だけを攻撃します。まず藤原可南子には政治家であるお父様と、義母、そして腹違いの何とも魅力的な弟である旅人がいます。そして恋人は、彼女の脚を美しいと褒めて止まない西園寺さんです。その西園寺さんは、奥さんこそ亡くなっていますが、息子夫婦と孫もいる老人です。
川上弘美『センセイの鞄』の主人公と先生の歳の差どころではありません。あの本が出たのが2001年、この本はその一年前の出版。こっちの恋愛ドラマのほうが面白い。それを就職の話一本に絞ってしまった紹介は、あきらかに戦略のミス。それから、父親の職業である議員は重要です。後継者探し、というのが全体を通じて流れる通奏低音みたいなもので、これを抜きに話は全く展開しないからです。それを紹介で省くな!
それから紹介の言葉。最初は、「リクルートスーツを着た輩」という引用というか言葉ですね。特に「輩」にカツンとくる。この言葉をしをんは、文中で一度も使ってはいません。ましてや「あーあ、女子はこれだからなあ」という面接官の発言は、どこにもないのです。無論、セクハラまがいの言葉はあります。やる気のない発言もあります。でも「 」書きする以上は、文中の言葉を使うべきでしょう。
そういう意味では「これが世間てもの?」という言葉もセンスが無いです。「これが会社?これが社会ってもの?」くらいが正しい。少なくとも、「世間」という言葉を就職試験関連のところで、しをんは使っていません。「悩める可南子の家庭では」も噴飯。可南子は家長でもなんでもない、一人の娘でしょ。ここは「家」こそが正解。
最後にカツンときたのが「斬新な感性と妄想力で描く新人作家」の「妄想力」です。一体、だれがどこで妄想しているってんだい、草思社のおっさんよ!です。これは就職ドラマなどではありません。大学卒業を間近に控えた、漫画を読むのが好きな女性の愛と苦闘を、ユーモアも交えながら淡々と描く青春学園ものがたりです。
無論、小説本体は面白いのです。誰からも好かれる弟旅人と可南子との関係、『せんせいの鞄』ほどべとべとしない老人との恋、同じく就職問題とそれより卒業ができるのかと悩む同級生の二木や砂子、情報君たちとの学園生活、政治家や後援会といったものの喰えなさ、就職試験でみせるK談社と集A社の面接官の態度の違い。
この本が出たとき、大して騒がれはしなかったのでしょう。こんなに面白い本が、何故?いうまでもありません、出版社の売り方の問題。少女小説風のカバーと内容のアンバランス、ちょっとずれた紹介文。才能を殺すのは、売る側の問題もあるのです。
紙の本
社会性に悩みがちな就職学生と「元」就職学生に!
2001/12/26 05:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:森うさぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る
わたしは今ひとつ社会性というものに乏しいらしく、就職活動が出来なかった。
リクルートスーツとかセミナー会場は恐怖の対象以外の何ものでもなかく、さらに、某社で圧迫面接なる「いじめ」に限りなく近い面接を受けた。そのとき軽い発作が起きてしまい、そこで就職活動をあきらめた。しばらく心身が不調になり、蒲団から出られなかった。しかし正直に言えば、ホッとしたのも本当だ。できないものはできないのだと開き直ることもようやくできて、大学をあとにすることができた。その後、持ち合わせている社会性をなんとか活用して日々を生きている。
三浦しをんさんの『格闘する者に○』は女子大生が就職活動をする小説だ。政治家一族の長女に生まれた可南子は、漫画が大好きで漫画編集者をめざし、出版社を受験する。就職活動での奮闘する合間に、ちょっと複雑な家庭の事情や、一族の跡継ぎ問題、ゲイに目覚めたばかりの同級生、可南子の「恋人」の老人、西園寺さんとの交流などが描かれる。
作者も出版社をめざして就職活動をしたらしい。それゆえか、イニシャルや仮名で登場する出版社の就職試験や面接にはリアリティーがある。反面、可南子の周りの登場人物たちはどこか現実離れしていて、漫画のようだなと感じた。
でも、それはマイナスじゃない。たぶん、この小説にはそういう仕掛けがあるんだと思う。作者は漫画を愛し、漫画の世界にオマージュを捧げるような小説を書きたかったのだ。漫画が好きなら漫画を描けと言われそうだが、漫画には「絵」というとてつもなく高いハードルがある。絵が苦手で、なおかつストーリー作りの才能があり、小説を書くだけの文才に恵まれれば、きっとこんな小説が生まれるだろう──この『格闘する者に○』を読んで、妄想気質の私はそんなことを思った。漫画と本を分け隔てなく享受して育った私のような人間にはなじみやすい世界だ。
私がこの小説の中で好きなのは、少女漫画風の「地方の政治家一族」のエピソードだ。
可南子の生みの母は可南子を生んで死んでしまった。父は入り婿で、再婚して息子が生まれた。つまり、一族の血を引くのは可南子だけ。その正統性を引き受けるつもりなんかこれっぽっちもない可南子だけど、「血」が家族をぎくしゃくさせていることに無頓着なほど鈍感でもない。親族と後援会の人たちが集まる「跡継ぎ決定会議」での波乱をきっかけに、それぞれに相手を思いやる気持ちが、実は彼らを縛ってきたのだとそれぞれが気付く。このエピソードはとてもよかった。彼らの間に「家族」の絆めいたものがやっと芽生えてくるのだ。「家族」大嫌いな私も、ここのところではなぜかホロリと来た。
一見、ふざけているような『格闘する者に○』というタイトルだが、実は、就職活動中の、あるトンデモないエピソードから取られている。そのエピソードが含んでいる毒と、前向きに生きようとする可南子とその周りの人々に「格闘する者」が重なる。彼らに「○」をあげようというすてきなタイトルだと思った。
三浦さんはこの小説がデビュー作だという。その後、すでに数冊の小説、エッセイを書いて好評とのこと。たしかに将来性豊かな書き手だと私も思った。その三浦さんの原点として、まだ読んでいない方にはお勧めしたい。