紙の本
出版社の下手な紹介文に}。でも、小説の中味は○。両方併せて★四つ
2006/03/30 21:08
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
草思社から小説というのも珍しいけれど、藤原薫の装画がなんともコミックノベル風というか、少女小説風で、その内容との乖離に、カバーだけでこの本に飛びついた少年少女は驚くのではないでしょうか。
「藤崎可南子は就職活動中。希望は出版社、漫画雑誌の編集者だ。
ところがいざ活動を始めてみると、思いもよらないことばかり。「平服で」との案内に従って豹柄ブーツで説明会に出かけると、周りはマニュアル通りのリクルートスーツを着た輩ばかりだし、面接官は「あーあ、女子はこれだからなあ」とセクハラまがいのやる気なし発言。これが会社?これが世間てもの?こんな下らないことが常識なわけ?悩める可南子の家庭では、また別の悶着が・・・・・・。
格闘する青春の日々を、斬新な感性と妄想力で描く新人作家、鮮烈デビュー作。」
がカバーの紹介文。
今回は、この紹介文だけを攻撃します。まず藤原可南子には政治家であるお父様と、義母、そして腹違いの何とも魅力的な弟である旅人がいます。そして恋人は、彼女の脚を美しいと褒めて止まない西園寺さんです。その西園寺さんは、奥さんこそ亡くなっていますが、息子夫婦と孫もいる老人です。
川上弘美『センセイの鞄』の主人公と先生の歳の差どころではありません。あの本が出たのが2001年、この本はその一年前の出版。こっちの恋愛ドラマのほうが面白い。それを就職の話一本に絞ってしまった紹介は、あきらかに戦略のミス。それから、父親の職業である議員は重要です。後継者探し、というのが全体を通じて流れる通奏低音みたいなもので、これを抜きに話は全く展開しないからです。それを紹介で省くな!
それから紹介の言葉。最初は、「リクルートスーツを着た輩」という引用というか言葉ですね。特に「輩」にカツンとくる。この言葉をしをんは、文中で一度も使ってはいません。ましてや「あーあ、女子はこれだからなあ」という面接官の発言は、どこにもないのです。無論、セクハラまがいの言葉はあります。やる気のない発言もあります。でも「 」書きする以上は、文中の言葉を使うべきでしょう。
そういう意味では「これが世間てもの?」という言葉もセンスが無いです。「これが会社?これが社会ってもの?」くらいが正しい。少なくとも、「世間」という言葉を就職試験関連のところで、しをんは使っていません。「悩める可南子の家庭では」も噴飯。可南子は家長でもなんでもない、一人の娘でしょ。ここは「家」こそが正解。
最後にカツンときたのが「斬新な感性と妄想力で描く新人作家」の「妄想力」です。一体、だれがどこで妄想しているってんだい、草思社のおっさんよ!です。これは就職ドラマなどではありません。大学卒業を間近に控えた、漫画を読むのが好きな女性の愛と苦闘を、ユーモアも交えながら淡々と描く青春学園ものがたりです。
無論、小説本体は面白いのです。誰からも好かれる弟旅人と可南子との関係、『せんせいの鞄』ほどべとべとしない老人との恋、同じく就職問題とそれより卒業ができるのかと悩む同級生の二木や砂子、情報君たちとの学園生活、政治家や後援会といったものの喰えなさ、就職試験でみせるK談社と集A社の面接官の態度の違い。
この本が出たとき、大して騒がれはしなかったのでしょう。こんなに面白い本が、何故?いうまでもありません、出版社の売り方の問題。少女小説風のカバーと内容のアンバランス、ちょっとずれた紹介文。才能を殺すのは、売る側の問題もあるのです。
投稿元:
レビューを見る
藤崎可南子は就職活動中。希望は出版社、漫画雑誌の編集者だ。ところがいざ活動を始めてみると、思いもよらないことばかり。「平服で」との案内に従って豹柄ブーツで説明会に出かけると、周りはマニュアル通りのリクルートスーツを着た輩ばかりだし、面接官は「あーあ、女子はこれだからなー」と、セクハラまがいのやる気なし発言。これが会社?これが世間てもの?こんな下らないことが常識なわけ?悩める可南子の家庭では、また別の悶着が…。格闘する青春の日々を、斬新な感性と妄想力で描く、新世代の新人作家、鮮烈なデビュー作。
投稿元:
レビューを見る
就職活動に、家庭の問題に、恋愛に、迷い悩みそれでも前を向いて歩いてゆこうとする大学生・可南子の物語。
出版社の就職試験のくだりに懐かしさを覚え、はるかに年上の男性との恋愛にほのぼのしつつちょっと切なくなり、可南子のぐうたらなさまに親近感を抱き、テンポの良い文章と飽きさせないストーリーで、最後までおもしろく読んだ。
投稿元:
レビューを見る
とにかく愉快、面白い!考えさせられる事があまりなく、サラっと読めました。思わず声をあげて笑ってしまうお話しで、ラストも爽やかで良かった!
投稿元:
レビューを見る
本編が始まる前に、一話の物語が語られる。どうも堅固な塔で日々を過ごしている幼い王女が、婿選びをするという物語らしい。ジャングルが舞台の物語が終わると、いよいよ本編が始まる。いきなりなんだ!? と思われる導入に謎めいたものを感じてしまった。
全体のストーリーは主人公である可南子の就職活動を軸にして回る。そこに少々複雑な家庭環境が混ざり、相続騒動も入ってきてなんだか馴染めない。はっきりいって、家庭内の相続騒動関連のイベントは蛇足だったように思える。僕はそこだけは納得がいかない。
人物設定が面白い。可南子の周りを取り巻く人物は個性的な人が多い。70歳代の「彼氏」である脚フェチのおじいさん、ゲイの二木君、恋多き乙女である砂子、彼らとの関係を追うのが楽しい。それに筆者の個性的な「妄想筆記」が花を添えているからなおさらだ。気に食わない男性面接官との対話中に、彼を妄想の中でけちょんけちょんにのしてみたりして楽しい。筆者の書き方にはいままでの作家にはない新鮮な感動がある。若さともいえるぶっとびようだ。
女性の就職活動が難しいとは聞いていたが、本書を読むとそれがリアルに感じられる。筆者自身就職活動中に見出されデビューしたというから、現実の体験が元になった現実味がある小説になったといえよう。就職活動中の学生などはハマること間違いなし。
投稿元:
レビューを見る
講談社ぼろくそに言ってて、この人はもしかしたら講談社から出版してないのかなーと思ったらやっぱり出してなかった。
ちなみ集英社もなかった。
投稿元:
レビューを見る
歳も近いし、実家も近い…三浦しをんのデビュー作。
後にエッセイとかもよく読むようになりました、そしたらエッセイに頻繁に登場する「あんちゃん」が前の同僚のアンリちゃんと発覚。とか不思議な縁が。
いつも応援している作家さん。
投稿元:
レビューを見る
主人公、藤崎可南子。趣味は漫画父は入り婿の政治家。実母は他界。義母。腹違いの弟、旅人。本家の血を引くのは自分だけ。跡目会議。70歳の足フェチ爺さん。ホモの友人。出版社の入社試験、K談社(1次面接)、集A社(二次集団面接)、丸川(最終面接)ですべて不合格。
投稿元:
レビューを見る
三浦しをんのデビュー作。
大学生の藤崎可南子は漫画が大好きなので出版社への就職活動をするのだが、思いっきり場違いな格好で試験会場へ行ったりする〜ここはかなり実体験のようです。
就職試験で書いた文章で才能を認められてデビューしたという経歴なので、最初に出てくる短い物語がそれなのでしょう。
でもそれだけではなく、政治家一族の複雑な家庭の話でもあり、書道家の老人との恋も出てくる、若い娘が次第に大人になっていく時期の話。
一つ一つの描写はデビュー作にしてはかなり上手くて、ユーモラスな距離感とほどほどの心地よさがありますが、要素の絡み具合がぱさっとしていて、そんなに濃厚なまとまりがないので、どうも何の話なのか掴みにくくなってるみたいですね。
タイトル、表紙、コピー、けっこうばらばら?
すでに文庫で出たようなので、買うならそちらでも良いと思いますが、この表紙絵が好きなのでこっちの画像を入れておきます。
投稿元:
レビューを見る
まあまあ。オマケで☆三つ。冒頭の作中作が良くできているからアレをうまく使ってほしかった気もする。「漫画的」の域を出きっていない。しかしそのユーモアのセンスに○【図書館/060915】
投稿元:
レビューを見る
評価が難しいー。就職活動中の女の子の話やねんけど、政治家の娘だったり恋人がおじいさんだったり・・。腹立たしい面接官は実際出会ったしすごい共感できた。
投稿元:
レビューを見る
三浦しをんさんはエッセイが大好き。ぶっ飛んでいる感じがいいんだけれど、小説は一味違う。でも、この「格闘する者に○」はエッセイに近いテンポで進んでいきます。のん気に見えて難しい家庭環境だとか、複雑そうに見えて純粋な恋愛だとか、ふざけているようで意外と真面目な就職活動だとか。楽しい事が詰ったお話。弟の旅人の存在がいいね。おじいさまとの恋愛もほろりとさせられる。
投稿元:
レビューを見る
就活中の女の子が日々を過ごしていく話です。何だか就活の話なんかは、ああそんなもんだよなーと納得してしまったり、そんなこともあったなーと共感したりしました。話はいろいろな問題も絡めながら黙々と進んでいきますが、さっぱりしてて楽しく読めました。
投稿元:
レビューを見る
登場人物がすごく魅力的。主人公だけでなく、周りの人々も含めて全員が、です。主人公・可南子の素敵な(?)妄想っぷりに笑って、ちょっとズレてる父親の行動にも笑って、親友・二木くん&砂子との会話にはうん、うん、そういうことあるよね〜と頷いて、恋人・西園寺さんとの恋模様には涙して…読後感は、本当に“お腹いっぱい”という感じでした。
本のタイトルも初めは「?」と思っていたのですが、読んでなるほど、納得です。
投稿元:
レビューを見る
読みやすい。就職活動中の風呂敷よりも大きな未来への不安や、鉄骨よりも太い根拠のない自信を想い出した。一生懸命、毎日、時間を埋めていたはずで、すべてが鮮やかにも見えていたのに、意外にこうやって過去形っぽく読むと、のほほんとした時期にも思えてしまう。迷える子羊たちがくるくると自分の廻りをまわっているようだ。だけど、それが一歩目なんだと思う。どこにも行けないでぐるぐる廻っているだけの時間が、最初で最後の大人への猶予期間なんだと、後になって解る。