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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2000.11
- 出版社: 新潮社
- サイズ:20cm/316p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-10-590021-8
紙の本
愛の続き (Crest books)
「あなたはぼくを愛しているんだ」−「ぼく」に付きまとい、病的なまでに愛を乞う男。その男の存在すら信じず、「ぼく」の狂気を疑う彼女。孤独と恐怖、強迫的な愛の織りなす奇妙な三...
愛の続き (Crest books)
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商品説明
「あなたはぼくを愛しているんだ」−「ぼく」に付きまとい、病的なまでに愛を乞う男。その男の存在すら信じず、「ぼく」の狂気を疑う彼女。孤独と恐怖、強迫的な愛の織りなす奇妙な三角関係を描く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
イアン・マキューアン
- 略歴
- 〈マキューアン〉1948年イギリス・ハンプシャー州生まれ。イースト・アングリア大学創作科で修士号を受ける。98年、「アムステルダム」でブッカー賞を受賞。
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紙の本
このカバーのジオラマはいい、なにか舞台をみているみたい。でね、現代人の愛って、こんな感じ。ま、何だって聞かれると困るんだけどね
2003/06/17 20:57
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウワッ、参った。男女の愛を切々と描いた作品だと思ったら、ホモのストーカーものだった。私の嫌いなものが、ミックスされてもう、ふらふら。なんて書くと誤解する人が出そうだから、最初に断っておくけれど、タイトルで純愛ものだと思い込むからいけないので、ゲイ小説であると思えばいい。いや、そこまでハードではない、男が男に一方的に思いを寄せられる話だ。どちらかというと、男にストーカー行為をされる男を扱った(くどいなあ)ホラー小説というべきか、単純な分類はできない。
久しぶりに恋人とのピクニックに出かけたジョーとクラリッサ。二人が巻き込まれたのは熱気球の墜落事故だった。気球に乗ったまま飛ばされそうになった少年の救出に向かったジョン・ローガン。浮上する気球から墜落したジョンの死体の惨さと、一緒に作業をしたジョーを包む無力感。惨劇の場で一緒になった青年パリー、彼のジョーに向ける熱に浮かされたような視線。ここまで読んで私は完全に悪酔い状態。どこか変だ、居心地が悪い。これって恋愛小説?
ジョーにかかる無言電話、家の前に無言で佇むパリー、何となくサイコホラー風の展開だけれど、それに引き摺られていく主人公の態度がたまらなくいやだ。パリーへの態度を曖昧にすることで、事件を拡大させてしまうジョー。彼に悪意がないだけに、始末が悪い。それに苛立つのは読者であり、恋人のクラリッサ。ズルズルとパリーの思いに引き込まれていくジョー。その心理が苛立ちをもって描かれドラマは終わるけれど、どうもすっきりしない。それが純文学といえばそれまでだけれど、違和感が残る。
そういった内容に比べて、相変わらずクレストブックの装丁は暖かい。カバーのジオラマは前作『アムステルダム』に引き続きウツノミヤキヨシ、これが本当に夢があって、現代人の孤独まで伝えてくれる。
それにしても、この小説の持つ違和感が、堪らないという読者もいるのだろうなあ、でも私には分らない。快調クレストブックに異色の一冊とでもしておこう。ただし新作『贖罪』、これは文句なしに面白い。伏線の張り方、徐々に見えてくる登場人物の年齢。ちょっと不快な人間関係。そう、マキューアンのミステリ風の構成は、なかなかのものだ。いやいや、それはいつか書くことにしたい。
紙の本
小説のアルチザンから贈られた「小説好き」へのプレゼント。
2001/03/08 12:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作『アムステルダム』はブッカー賞に輝いた作品だが、日本での刊行は先だった。その出来と比較してみると、先に書かれた本書の方が一枚も二枚も技が上だという印象が強い。
『アムステルダム』を前座として、この傑作を読むことになったわけだが、邦訳の刊行順は正解だったなという印象である。
傑作なのに★が四つに留まってしまうのは、マキューアンの作品世界が、一般の読者にとってはどこか敷居が高いというか、閉鎖的な感じがぬぐい去れないからである。
階級意識の残る英国では、この手の小説を読む層は限られているのであろう。特定のインテリを読者として想定しているような雰囲気が漂っている。それが良い悪いとか、大衆にも共感を持てるように…というわけではないが、どの階級をも満足させる古典を多く輩出している国柄だから、物足りなさが残るのである。
初夏のピクニック日和の日、草原で、気球から降りられなくなった子どもの命を救出しようと駆け寄った人々がいる。子どもが運び去られる先には高圧線がある。気球のパイロット1人、駆け寄った5人は上昇を止めようと、必死でロープにぶら下がる。
突風で浮きかけた瞬間、誰かが先に手を離す。続いて4人が手を話す。1人ぶら下がったままの中年男性医師が転落死する。
2001年1月にJR新大久保駅で起きた事件を彷彿させる。人命を救助するため、列車の線路に飛び降りた2人の死。
人命より自分の身を優先した人の悔いを描くのかと思いきや、そこで出会った男性2人のストーカー事件に展開していく。
ド・クレランボー症候群という耳慣れない精神病の一種がある。患者は「自分より相当に地位の高い人物と愛情を交わしており、その人物のほうが最初に恋に落ち、最初に恋を仕掛けてきたと確信している」という妄想愛である。
主人公のジョーは成功した科学ジャーナリストで、自分の容姿にはコンプレックスがあるものの、詩人のキーツを研究する美しい妻・クラリッサと瀟洒なマンションに暮らし、知的生活、愛情に満ちた生活をエンジョイしていた。
とこが、この気球事件でパタパタと彼の人生は暗転していく。
共に気球のロープにしがみついていた若者・パリーに執拗に追いかけ回され、電話と手紙攻めに遭う。
パリーが「ド・クレランボー症候群」だと考えるジョーは、恨みや嫉妬がエスカレートして暴力や殺人に至ることを不安に思う。それを取り越し苦労だと思うパートナーのクラリッサは、彼の不安こそが妄想だと考え、2人の関係は急速に冷めていく。
そんな中、クラリッサの誕生日を祝うランチをレストランでとっていると、隣のテーブルが殺し屋によって襲撃される。それがパリーの仕掛けたことだとして身の危険を確信したジョーは、拳銃を入手することを思い立つ…。
小さな事件が雪だるま式に大きくなっていく悲劇的な展開は、映画などでもよく見られる。が、仕事内容だけでなく、自己や人間関係を科学的に冷静に分析するスタイルを重んじる男性が、精神的に追い詰められていく様子がよく描写されていて、悲劇に凄みを増している。
全体の構成だけでなく、細部まで捉えられた専門知識が小説の複雑な綾をなしていて、職人の技という感がある。
紙の本
絶妙な仕掛けのストーカー小説
2002/01/24 17:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mau - この投稿者のレビュー一覧を見る
簡単に言えばストーカー小説である。しかも男が男を。しかも「あなたのために3分間どころか一生祈らせて下さい」と、文字どおり狂信的な情熱を持って接近してくるのだ。これで怖くならないはずが無い。
しかしマキューアンの面白さはその特異な設定だけにあるわけではない。主人公がそのストーカー男に接触するきっかけとして、冒頭である「事件」が語られるのだが、その事件というのが巧妙というか奇妙というか、とにかくなんとも絶妙なのだ。
本筋と同時並行で語られるこの「事件」の展開こそが、安易な展開に陥りがちな(精神病者としてのストーカーの行動パターンはほぼ一定している。詳細は『ロマンティックは狂気は存在するか』(春日武彦、新潮OH!文庫)など参照のこと)凡百のストーカーものと本書を明確に分ける鍵となっている。
恋愛と狂気は紙一重、という陳腐な結論以上の豊かな物語がここには約束されている。ヒヤヒヤされられる割には読後感は意外とさわやか。良いです。
紙の本
意志の疎通のできない恐怖。
2001/05/18 21:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:miyagi aya - この投稿者のレビュー一覧を見る
お話はもうほとんどこのあらすじの通りです。主人公はある事故がきっかけで自分につきまとうようになる若い男にすっかり悩まされ、なのに同棲している彼女にはその存在すら「空想の産物」ではないかと思われて、ひとり鬱々と考え込むようになっていきます。主人公の男への拒否反応はかなり過剰なもので、その状況や周囲の対応から、読み手としてもまた、男が実在しているのか妄想なのかわからなくなって来るのですが……。
ただし主人公の行動も全く見当はずれという訳ではありません。主人公が男を畏れ、極端に避けようとした原因は、その好意自体よりも男が「相手もまた自分のことを愛している」と信じ込んでいることにあると思います。それは人がどこにも見えない神の存在を盲信するようなもので(実際男は信仰と自分の愛情を絡めて考えているようなのですが)、どんなに「それは勘違いだ。おまえのことなんか知らない」と訴えてみても相手には通じません。それどころか「じらしているんだ」「自分の立場を優位に保つためにそんなことを言っている」なんて逆に責められるのでは、説得しようもないというのが正直なところではないでしょうか。その意思の疎通のできない所が恐怖を生み、追い詰められた主人公はついに不法に銃を購入するまでに至ります。
最後の最後で「愛は続く〜」のコピーの意味がはっきりしてナルホドと思わされました。結局どこまでいっても現実と男の認識の間には隔たりがあって、おそらく何かの拍子に彼が相手と相思相愛になることがあったとしても、やはりどこか噛み合わないままじゃないかなという気がしました。恋愛なんて多少はみんなそういうものだとは思うけれど、まあ強烈ですね(笑)
ストーリー的にはわりに面白かったのですが、主人公が妙にインテリなせいか、男がしょっちゅう宗教の話をはじめるからか、どうもあまり読みやすいとは言えない感じです。最後も主人公と彼女の関係とかが微妙。結構高い本なので、図書館で借りて正解でした。
紙の本
人間のもつ脆さと狂気のサンプル。ひとはどこまで耐えられるのか。
2001/01/26 18:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:井上真希 - この投稿者のレビュー一覧を見る
気が動転するような出来事に遭遇した時、何を見聞きしたか、後になって細部を訊ねられても、人間の記憶ほど不確かなものはない。また、パニックに陥った人間を前にした時、それが深く愛し、信頼している相手であっても、ショックがもたらした狂気に思えて、その言い分を疑うこともある。実際、精神的衝撃を受けることによって、ひとつの想像を事実に違いないと思いこみ、強迫観念にとりつかれる場合がある。そして、何の前触れもきっかけもなく、相手が自分を愛しているとの妄想を抱き、執拗なまでに愛を乞う病的な人間さえもがいる。
すべてを鳥のように、あるいは神のように俯瞰することができたなら、誤解したり、必要以上に傷ついたりすることもないだろうに、人間は混乱の罠のただなかでは、滑稽にももがくしかない。
この小説には、訳者が小説のアーティストでありアーティザン(職人)であると呼ぶ著者が緻密に構築した人間の脆さと狂気のサンプルが、VTRを巻き戻すように冷静な主人公の回想によって高みから描写されている。スリリングに展開する物語に、人間の愚かさと弱さを思い知らされずにはいられない。
理論物理学の研究を断念した主人公ジョーは、今では著名な科学ジャーナリストとして活躍しており、詩人キーツを研究する大学教員の美しい恋人クラリッサと、北ロンドンのマンションで7年越しの同居をしている。6週間ぶりに海外から戻る彼女を空港に迎えにゆき、そのまま野原でのピクニックに直行すると、そこに巨大なヘリウム気球が不時着する。かごの中の子供を救い出そうとしてロープを握ったパイロットが風にあおられた気球に引きずられてゆく姿に、ジョーやパリーなど居合わせた5人の男が駆け寄り、ロープを握って止めようとするが、突風を受け、気球は男たちをぶら下げたまま舞い上がる。誰かが手を離した途端にぐんと上昇し、怖くなったジョーらがロープを離して地面に落ちた結果、ひとりだけ握り続けた男は上空へ連れ去られ、力尽きて目の前で落下死してしまう。
自分が最初に離してはいないはずだ、全員があと少し握っていれば風は止んで気球は降り、死者は出なかったと、罪の意識に苛まれて不安定な精神状態になるジョーに、深夜、パリーから愛を告白する電話がかかってくる。以降、電話と手紙攻勢、尾行、玄関での待ち伏せとストーキングをエスカレートさせるパリーに身の危険を感じるが、クラリッサはまともにとり合おうとせず、ふたりの仲は冷え、警察にも相手にされないと知って追い詰められたジョーは、孤独に立ち向かうことを余儀なくされるのだった。
訳者によれば、本書の原題《Enduring Love》には、「持続する愛」と「愛に耐える」のふたつの意味があるという。ジョーが事件の「余波(aftermathアフターマス)」として語るパリーの妄想といい、うまく関係を保とうとして呻吟するカップルの心理や、ロープを最後まで握っていた男の妻が亡き夫に抱く疑念といい、愛は持続し、人間に忍耐を要求するのだ。 (bk1ブックナビゲーター:井上真希/翻訳・評論 2001.01.27)