紙の本
あらゆる側面から読むことを可能にさせてくれる楽しい博物誌。
2006/05/24 13:48
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これぞフランス!
というエスプリのつまった一冊。
その一例をお目にかけようか。
「白鳥」
前半の記述は、いかに彼が水の上を美しく滑り、
雲をつついては空しき影を追うては疲れ…、
死すべきことを暗示する。
ところが一転、「おいおい何を言っているんだ」
彼が泥の中から蚯蚓をほじくり出し、
肥え太ることが暴露される。
何という落ち。
あるいは「孔雀」
来るべき結婚式に羽根を広げる彼。
そのもったいぶった様の描出は、まさにフランスユーモア。
おいおい、何を知ったようなことを言っているんだ。
ーはい、その通り。
でも、この本を読んで(或いはぱらぱらめくって、でもいい)いると、
何だかいっぱしのフランス気取りになってしまうんです。
ふふん、フランスってやっぱりいいわね…コジャレているわね…
紙の本
言葉遊戯
2002/05/29 11:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もくもく - この投稿者のレビュー一覧を見る
ルナールと言えば、「にんじん」の作者ですね!
新潮文庫で読むのがおすすめ。表紙もキュートだし、なんと言っても挿絵はボナール!
ところでこれは小説なのかな? ジャンルはよくわからないけどちょっと詩っぽいです。ショーとショートという感じでもあります。蜘蛛とか白鳥とか蟋蟀(コオロギ)とか葡萄畑(ぶどうばたけ)とか蚤(のみ)とかいろいろなタイトルがあって、そこに、1,2ページでコメントがくわえられています。ひねくれているって言うか、独創的って言うか、読んで本当に興味深い。
例えば、『決して立派ではない、私の馬は、むやみに節くれ立って、目の上がいやに落ち窪み、胸は平べったく…(「馬」より。以下略)』という感じ。
自然に対する暖かな視線なんてものはないし、生物学的な見解もないです。あるのは、この毒舌というか辛辣な批評。でも妙に的を得ていて面白い。この言葉遊戯がいいんです。
紙の本
好みがわかる
2019/05/01 17:03
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投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者の好みなのでしょうか。
ものすごく解説が短かったりするものもあって、なんだかクスリとしてしまいます。
こんな風に世界が見えている人もいるのですね。
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好きと言うか、賢治作品と並ぶ程愛してやまない本。なんてハイセンスな言葉の群れなのでしょう! 「鹿」のお話を一番読み返しているかな…。
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えーと、山田正紀の「超・博物誌」が大好きなので何となく買って読んでみました(笑)
著者は「にんじん」が代表作として知られる、19世紀フランスの詩人・作家です。ハイ、あの赤毛の少年が主人公の、赤毛のアンと同じような話なのかな?と思って手に取った夢見る少女の心にトラウマを残すあの「にんじん」です(大爆笑)
この博物誌は、作者の周辺にある自然、主に動物について書き記した散文のようなモノです。一つの項目は長くても文庫で3ページ、短い項目の場合は数行です。ワタシの持ってる文庫版では、全ての項目に扉ページと挿絵のページがついているので、活字の割合が物凄く少ないです(笑)
【例】「蛇」の項目
1ページ目:タイトル扉「蛇」
2ページ目:本文タイトル「蛇」(改行)「長過ぎる」←本文コレだけ
3ページ目:蛇の挿絵
4ページ目:次のタイトル項目を扉ページ(左側)にするためのページ合わせの余白。ページの真ん中に変なマークが一つ。
ぉぉぉぉぉ…!4文字の為に4ページ…!
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なぜか購入。
一目惚れに近い感じです。
当初の目的は、西洋人が虫についてのエッセイが、どのように表現されているのかと言うことだったのだけど。
文章で表現される、不意に訪れる静寂。
様々な生き物に対する、柔らかい目線。
素晴らしいとしか言いようがないです。
一番のお気に入りは 『蝙蝠』
夜の娘たちと表現された、哀しげな習性が、ヒットしました。
それと『兎』
死が訪れる瞬間を飾らずに表現。
他にもイロイロ。
目的の昆虫に対しての目線はやはり西洋的な感じがするのだけど、俳句のような短い文の表現が面白い。
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自然、禽獣を詩的な観察眼で描き起こすルナールの優しいまなざし。水底の泥から溜息のように上ってくる蛙、水面にのぞく淀んだ沼の腫物。孔雀の花婿、もう予行演習も何度もした。花嫁はまだ来ない。中庭の階段を美しい裾をたくし上げながら、結婚式は明日に延期されるだろう、と思っている。
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詩のような、短歌のようなやさしくリズミカルな短文。
アイロニーに満ちた生物たちの日常を描いている。
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表紙に惹かれて。イメージが水面の波紋みたいに連なってゆく。そこにアイロニーとユーモアが加わって、自分は全てとらえきれているのか不安になってくる。
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うまいこと言うね世界チャンプ。
ボナールの挿絵も味があっていい感じ。
「蝶」 二つ折りの恋文が、花の番地を捜している。
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レビューが良いので読んでみたけど私には ちょっと…と、油断してたら「栗鼠」で吹出してしまいました。久々に笑った。やっぱり面白いです。
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ゆるりとした、博物誌。家畜や身の回りの動物たちなんかをひとつずつ、一頁にもならないすこしずつの言葉で書いている。
たまたま手に取った本だったけど、こういうものも好きだ。
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作者の観察眼はすごいな。ねこがめちゃめちゃかわいかった。あと、蝙蝠の生まれ方がすごくメルヘンちっくでときめいてしまった。
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博物学的な本かと思って手に取ったんですけどね。ぜんぜん違いました。
農村で暮らす作者が身の回りの動植物を独自の表現で書き綴っており、
その表現の妙を楽しむような趣向になっています。
ある種の詩集みたいな感じですね。
とはいえ、荘厳な雰囲気ではなくユーモラスな文体なので、
独特な挿絵と相まってくすりと笑わせてさせてきます。
パンチがある訳ではないですが、
ほのぼののんびり楽しむには良い本です。
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何となく手にとってパラパラめくって「へび - ながすぎる。」の一文が目に入った時、これは読むべき本だと思いました。
ジュール・ルナールが独自の観察眼で身近にいる動物や昆虫について綴った随筆集です。ファーブル昆虫記のような学術的な要素はありません。例えば先述の通り「へび」の項目は「ながすぎる。」この一文で終わりなのです。
「めんどり」の次にくる「おんどり」の正体、「くじゃく」が待っているもの、「毛虫」と薔薇の関係、「ちょう」や「りす」を表した見事な修辞、「こうもり」が生まれるわけ。
哀しかったり可笑しかったり厳しかったり優しかったり、こんな文章を私も書いてみたいです。
訳者あとがきに「訳してはおもしろくないことばのしゃれ」とありました。フランス語が分かって原書を読めればもっともっと楽しめるのだろうと思います。