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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2005.4
  • 出版社: 毎日新聞社
  • サイズ:20cm/477p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-620-10690-9

紙の本

魂萌え!

著者 桐野 夏生 (著)

【婦人公論文芸賞(第5回)】夫の急死後、世間という荒波を漂流する主婦・敏子。60歳を前にして、惑う心は何処へ? ささやかな「日常」の中に、若い人にはまだ想像できないような...

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魂萌え!

税込 1,870 17pt

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商品説明

【婦人公論文芸賞(第5回)】夫の急死後、世間という荒波を漂流する主婦・敏子。60歳を前にして、惑う心は何処へ? ささやかな「日常」の中に、若い人にはまだ想像できないような、豊饒な世界を描き出す。2004年『毎日新聞』連載の単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

桐野 夏生

略歴
〈桐野夏生〉1951年金沢市生まれ。「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞、「OUT」で日本推理作家協会賞、「柔らかな頰」で直木賞、「グロテスク」で泉鏡花文学賞、「残虐記」で柴田錬三郎賞を受賞。

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みんなのレビュー125件

みんなの評価3.7

評価内訳

紙の本

そして私が先に逝くようであればわが妻にこの書を捧げて口では言えなかった感謝の気持ちとあとは魂萌えしてよろしいとの思いを伝えることにしよう

2005/06/13 01:04

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

いつでも、どこにでも灰色のビジネススーツを着ていくような、まじめで実直だけがとりえの、平凡なサラリーマン、定年退職後、ゴルフと蕎麦打ちを楽しみ、健康診断も欠かさない63歳の隆之。
隆之の性格も好みもよく心得て、家庭を守り子どもを育て、地域と仲良く付き合い、夫を支えてきた59歳の妻・敏子。
私はこの種の組み合わせの夫婦ならもっとも身近にいるのでよく知っている。
戦後の民主教育を受けた世代であるから男女同権をわきまえているが結婚した頃は女房とは家庭を守るべきものであり、稼ぎは男に任せろと当然のように役割が決まっていた時代だ。妻の立場からしてもそれに反発することなく結婚とはそんなものかしらと思い込み受容していた。
この結婚観でどうにか継続している夫婦は私にはよ〜くわかるのだ。
新婚の頃はお茶やお花や料理教室に通ったがいつの間にかやめて、みずから楽しみを見つける気構えも根気もなく、ただ、ときどき数人の同じ年代のお友達といわゆる井戸端会議があるくらいで世間知らずの専業主婦が「私の人生ってなんだったのかしら?」と妙に哲学めいたことをつぶやく。
そんなぼやきの心境だって私は充分にわかるわかる。
だいぶ前から 自分が生んで育て、愛おしくてたまらない存在だった子どもたちがまともな家庭を作れる資格もないのに家を離れ、自分に寄り添わなくなった。ときどき帰ってきては憎たらしいことをいわれ、ここでも「よい母親として家事育児に専念してきた。自分の時間とは何だったのだろう」
と述懐する寂しさでいっぱいの母の心境だって私にはわかりすぎるほどわかるのだ。
おそらく私だけではあるまい。この世代の夫婦なんてみんなこんなもんだと言っても言いすぎにはならないだろう。さらに定年を迎える団塊の世代夫婦は今後急激に増加するのであるからこんな夫婦が日本中にあふれるのだ。
隆之が自宅の風呂場でポックリと逝ってしまう。心臓麻痺だ。これだってありうる。
その隆之にはこれも一般にはありうる話なのだが女がいたことが発覚する。女でなくとも女房にはいえないあるいは誰にも言えない、ちょっとうしろめたい楽しみや表面化しない過失なんてものはバブルに踊って、その崩壊も経験したサラリーマンにはだいたいあるものなのだ。
そして世間知らず、根っからの専業主婦であった敏子。夫に裏切られた貞淑な妻の敏子。手塩にかけた子どもたちに顧みられなくなった母の敏子。
悲しみ、孤独、不安、失望、に打ちひしがれながらも、おそるおそる夫の相手に対し女の熱い戦いを挑み、遺産相続にうるさく口を出す息子にはかわいそうだと思いながらも決然と臨む。それは隆之が死んだことで始まった新しい敏子である。カプセルホテルでの他人との出会い、夫の蕎麦打ち仲間との交流、古い付き合いの女友達の本音も見えてきて、今まで全く知らなかった世界が広がっていく。
59歳の彼女は今、飛翔する。妻でもない母でもない一人だけのたっぷりある時間で新たな人生をきりひらく決意を固める。
新たな生命力が萌える。
どこにでもいるオバちゃん(いやもっと身近にいる方かもしれない)がどこにでもある日常生活の中で、地に足をつけた、だから、カッコイイとは言えないのだが、それでも間違いなくこれは「飛翔」である。そのプロセスは当たり前のようであって読者は次の展開が待ちきれないほど劇的なのだ。そして60歳前後のだれもが共感する熟年女性のうれしい「飛翔」だ。
私には桐野夏生の最高の傑作であった。2007年問題、それは団塊の世代が定年を迎えはじめる問題である。この急増する第二の人生を迎える夫婦の群れ、この問題層にたいする警告でもあり、啓蒙でもある。しかもいやになるほどリアリスティックな示唆である。
敏子の再スタートにおしげなく拍手を送るぞ、応援するぞ。

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紙の本

魂萌え世代

2005/05/01 13:36

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:jis - この投稿者のレビュー一覧を見る

主人公は59才の主婦。夫が亡くなり、喪失感に悩まされている時、実は愛人がいて10年間もだまされ続けた事実が判明する。外国にいた長男の帰国や、長女の結婚における騒動と相まって、主人公の混乱は増幅する。それに耐えられず、プチ家出という始めての経験を勇気を持って断行する。その中から色々な人に出会い、新たな人生の出発の準備をする。「そば食べ歩き会」の一員との一度の不倫、友人たちからの慰めに涙する場面あり、無理解を嘆く場面ありと物語は進んでいく。
主人公の喪失感、孤独や夫にたいする失望感。結婚生活とは?子供たちの育て方とは?老年にいたる恐怖など、生活の不安から如何に自らを解放して、自由な境地に至るか。現代のこれからの課題、「老齢化社会」における女性の生き方は如何なるものか暗示されている。魂萌え世代は如何に、これから生き抜くか。
殺人場面とか、性のどきつい描写があるわけでもない。従来の「桐野クライムファン」にとっては、随分指向の違う大人の小説になっている。細部にはっとさせられる描写もあり、さすがに円熟した桐野ワールドを展開している。新たなステージとして、この作品の登場を祝いたい。

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紙の本

書店に並ぶ 『OUT』 を手にしたその日から

2011/11/03 16:16

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る

桐野夏生さんの著書に魅了されてしまいました。
何故そんなに惹かれるのか、もやもやしながら読んでいくと、ストーリーの面白さよりストーリーのなかに潜んでいる彼女の魂に魅了されていることに気づきました。
そしてそこには根幹のワードが潜んでいます。
『グロテスク』は「怪物」。
人は誰しも怪物になりうる危うさを持っていることに慄きました。

『魂萌え!』は「恙無く」。
自宅で倒れた夫・隆之は心臓麻痺で息を引き取り、「恙無く」暮らしていた敏子(59歳)に孤独の影がひたひたと忍びよってきます。
残された家族はバランスを崩し、敏子を苛めます。
追い打ちをかけるように葬儀の後に発覚した愛人・昭子の存在は敏子の精神のバランスを崩しますが、そこは桐野夏生さんの十八番、敏子と昭子の対決は期待どおりでした。
夫を失った女性と夫のいる女性と、また、妻を失った男性と妻のいる男性と、その人間模様は友情であったり恋愛であったりさまざまに交錯し、暴走したり許容しあったりするシーンは身につまされました。

「恙無く」歳を重ねていくということは、ひたひたと忍びよる孤独を受け入れていくことではないでしょうか。

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紙の本

夫に裏切られる、なんていやなもんですよね。でも、家庭に入ると人間てここまで無知になる?なんで自民党はこういう女性を貴いとするのでしょうね

2007/03/05 20:15

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

この本は読まないで死ぬつもりでした。桐野夏生は好きですよ。全部、とまでは言わなくても殆どの作品を読んでるし。でも、誰も彼もが老人のことばかり書かなくてもいいじゃないか、なんて思うんですね。いつも前を向くことをモットーにしている私ですが、年齢についてだけは前を見るより、同じ場所にいたい。ま、仕事で老人ばかり見ているからかもしれませんが・・・
かなり評判だった作品で、文庫化もですが映画化も早かった、そのての話題作には背を向けてもいいかな、って天邪鬼の虫が・・・。それにしても美しい装画です。もう一目みただけで分かりますね。桐野作品といえばこの人、水口理恵子。なんともいえない柔らかな桃色の地に、話の内容を反映させたのでしょう蓮の花を配して、まさに天上的雰囲気です。思わず合掌・・・
主人公はつい先日定年を迎えた夫・隆が63歳の若さで突然逝ってしまい、途方にくれる59歳の妻・関口敏子です。で、そんな母のことを心配するのが短大卒業後、腰の落ち着かない派手な仕事を沢山経て、2年前に家を出た31歳になる長女の美保で、現在、彼女と付き合っているのが同じコンビニでアルバイトをしている年下のマモルです。
で、一時は銀行勤めをしたものの二年で退社、音楽をやりたいからと10年前に渡米し一旦帰国後、再び渡米、古着の卸を始め、親元にも寄り付かず、結婚したものの相手を紹介することもないままに、父の死を知って突然現れ、母親に同居か遺産の法定分与を望むのが長男の彰之で、彼の妻というのが年上の由佳里、4歳と2歳の子供がいて名前はダイアンとネイサンです。
息子の言いなりになることに抵抗感を覚えながらズルズルと押し切られそうになる敏子を励ますのが、高校以来の友人。夫を亡くしたものの、その後はオペラ歌手のホセ・カレーラスの追っかけをやっている山田栄子、夫が第二の職場に勤務し自ら山のような家事をこなし、利殖の才もある西崎美奈子、二歳年下の夫と気侭な生活をし、最近、自宅の一階を改装して店を始めたのが江守和世の三人です。
印象的な登場人物が多いのですが、強烈なのは敏子がカプセルホテルで出会った76歳の老女、フロ婆さんこと宮里しげこと、しげから俳人と紹介されるホテルのマネージャーで48歳になる野田でしょう。こういう人たち、きっといるだろうなあ、って思います。それは全員に共通しているんですが・・・
でも敏子はどうしてここまで何も出来ないのか?って思います。家庭に入ってしまう、っていうのはこういうことなんだろうな、とも。でも、この作品の謳い文句である「剥き出しの女が荒ぶる」とか「若い人にはまだ想像できないような、豊饒な世界を描き出す」っていうのには違和感を覚えます。
確かに、突然、主人公は声を荒げ、ものを投げつけ破壊します。でも、それは単なるヒステリ。「荒ぶる」とは違います。そしてここに描かれるのが「豊饒な世界」であるとは到底思えない。厳しい、とはいいません。それなりの世界ではあるのですが、豊かさは感じません。むしろ現状の延長。男女の問題も、人間関係の煩わしさも、お金の悩みも、騙し騙されもあります。要するに老後、なんていうのは無い。ただただ生きていくということがあるだけ。それを教えてくれます。
で、こういう風に女性を無力のまま、男に頼るだけの存在にしておきたいとするのが政府自民党なんですね。これから脱線モードに入ります。年金では家庭に入った女性が、明らかに働いていない女性に比べて不利になっている。で、国会議員はこれをよしとしている。あえて家庭に女性を閉じ込めようとしています。
で、この考え方と少子化を問題視すること、女性を産む機械と考えることって同根なんですね。
よく考えましょ、この問題・・・

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紙の本

歳をとってひとりで生きていく決心

2010/10/25 22:59

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る

魂萌え(たまもえ) 桐野夏生(なつお) 毎日新聞社

 タイトルの「萌え」からはパソコンショップ街にあるメイド喫茶のご主人様とのたまう十代の女子を思い浮かべ、その世代の物語と予測しましたが、うってかわって、60代以上高齢期を迎える男性・女性の胸にしみいる振り返り人生と高齢者がひとり暮らしを迎えるかよわきときになった状況の人間観察で、心に残る1冊となりました。
 関口敏子さん59歳の夫である隆之さん63歳が、自宅で入浴後心臓麻痺により突然亡くなります。敏子さんに追い討ちをかけるように、亡夫の愛人が登場するのです。敏子さんの高校の同級生である山田栄子さん、西崎美奈子さん、江守和世さんがからみ、さらに亡夫の蕎麦(そば)打ちサークル仲間の元銀行員・結婚詐欺にあったことありの今井さん69歳、元百貨店外商部塚本さん67歳、小久保さん61歳、辻さん57歳がからんで、にぎやかといえばにぎやかではあるけれど、不謹慎なこともある、それは友人とはいわないなどと憤りつつ、それでもいいかと思わせる敏子さんの幸せもある。
 とにもかくにも家の外のできごとのあれやこれやに免疫も抗体もない平凡な主婦である敏子さんは狂いそう、あるいはうつ的になるのです。
 敏子さんはがんばりました。この先はどうなるのだろうかと読み続ける楽しみがありました。500ページほどの長編ですが、2日ほどで読み終えました。敏子さんの息子夫婦には、切れそうになります。彼らの現金類への強欲は際限がありません。敏子さんの娘はまだましですが、それにしても、自分で自分の財産を築きなさいと叱りたい。
 前半は憂鬱なストーリーでした。敏子さんの堪忍袋の緒(お)が切れてからはうれしくなります。苦労人がホテルマンの野田さんです。一見華やかな敏子さんのとりまきメンバーもそれぞれ心の傷を負っています。彼らは今からひとりで生きていく練習をするのです。いつかは、ひとりの日々が続くのです。

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紙の本

ほんとに桐野夏生?

2005/04/21 23:48

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る

夫の急死で突然未亡人になった59歳の専業主婦が主人公だ。
夫を失った傷も癒えないうちに、息子と娘から遺産相続の話を持ち出されたり、夫には生前、愛人がいたことが発覚したり、と泣き面に蜂の状態。
平穏な人生から突き落とされた主人公が、自分の殻を破ろうとして徐々に強くなっていく姿が描かれている。
正直言って、これほんとに桐野夏生が書いたの?と疑いたくなるくらい、59歳の主婦の視点に徹して書かれている。
バラバラ死体も怪物のような女も出てこないので物足りなく感じるファンもいるかもしれないが、多少なりとも老いを意識したことのある読者にとっては、とても怖い本だ。
人生の黄昏期を前にして、たった1人で生きざるを得なくなった時、自分だったらどうするか、思わず考え込んでしまった。
だが、本書の読みどころは人生の苦い味を知った主人公が、人との出会いを通して変化していく、その過程の面白さにあるので、読者の年齢を選ばず推薦できる本でもある。深く共感できるのは、やはり中高年の読者なのであろうが。

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紙の本

いつもの桐野ワールドではないが、安心して読める万人向けの1冊。

2005/05/30 00:16

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

桐野さんの代表作と言われている『OUT』や『グロテスク』のような圧倒的なインパクトはないが、読者に希望を与えてくれている点は他作に例を見ず、作者の新境地開拓の作品だと素直に受け止めたいと思う。
正直、桐野夏生さんの小説を読んでいるというより、篠田節子さんの小説を読んでいるという感じだ。
なんと描かれているのは普通の人間なのである(笑)
主人公の敏子は59歳。
平穏な生活を夫と2人で過ごしていたのだが、冒頭で心臓麻痺で夫を亡くし未亡人となるのであるが、そこからのっぴきならない事実が判明する。
10年来、夫に愛人がいたことが判明するのである。
ただ、本作は亡き夫の不倫問題の是非を問うているのではない。
もちろん、悲しみに暮れる主人公の心の葛藤は垣間見れるが、小説としてのテーマとはなっていないのである。
私は本作をあえて“青春小説”と分類したく思う。ただし、“初老の方の”と但し書きがつきますが・・・
ある意味、長寿大国ニッポンの象徴的な作品だとも言えそうである。
とにかく、主要登場人物(57歳〜69歳の男女)が若々しい!
ポイントは“寄る年波”にいかに対応して行くか。
自分らしさは失いたくないが、世間に順応して行くことも大切なのでしょう。
途中で塚本が敏子にかける言葉が印象的である。
『僕はねえ、悲しそうな女の人を見ると、放っておけないんですよ。女の人は、みんなにこにこ笑ってなくちゃ。女の人にはね、幸せになる権利があるんです。そのために、男は身を粉にして働いているんだから。』
桐野さんの凄さは若い年代の読者が読まれても十分に共感出来る点である。
どちらかと言えばたとえば荻原浩さんの『明日の記憶』のように老後の怖さを描いた作品ではないような気がする。
逆に、いつまでも若々しくと読者にエールを贈っているように捉えた。
まるで“第2の青春”を過ごすかの如く・・・
内容的にはやはり新聞連載(毎日新聞)のご多分にもれず、“無難に書かれている”点は否定できない。
他作に見られる人間の奥底に潜む“悪意”は描かれていないが、じっくり腰を据えて考え楽しめるエンターテイメント作品である。
普段桐野さんの作品を敬遠されてる方には是非読んで欲しいなと思う。
印象的な登場人物は“風呂婆さん”の宮里。
主人公が家出してカプセルホテルに滞在する際に出会うおばあさんなのであるが、曲者である。
彼女のエピソードにはドキリとした読者も多いはず。
あとはやはり亡き夫の愛人昭子とのやりとりは面白い。
特にゴルフの会員権にまつわるシーンは印象的である。
あと、少し敏子の子供たち(美保と彰之)が稚拙に描かれてるのが残念な気もするが“自立しない子供たち”を巧く登場させている桐野さんの力量も認めざるをえない。
そうだ、女性が読まれたら“女の友情”ということも再考させられるのは間違いのないところであろう。
本当に主人公敏子をとりまく周りの女性が巧く描けている。
平凡な人生の中にもドラマがある。
ヒロインを演じた敏子に共感された方も多いはずだ。
いつもと違って寛容で前向きな桐野作品。
桐野さんの入門作としてはオススメの1冊と言えそうだ。
安心して読めます。
活字中毒日記

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2005/05/28 11:39

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2005/07/28 03:05

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2005/09/05 18:10

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2006/02/16 01:06

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2006/01/13 08:32

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2006/09/08 14:20

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