紙の本
国家権力の横暴と戦い抜いた税理士・飯塚毅
2006/03/15 01:56
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hisao - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和30年代末 租税法律主義を掲げ 最強の国家権力、国税庁・検察庁の卑劣な攻撃に不撓不屈7年間の闘いを挑みついに完全勝利を勝ち取った税理士・飯塚毅先生の伝記です。
ちょっと善玉悪玉論に傾くきらいは有りますが、さすが高杉氏はこの小説で“飯塚事件”で争われた“税”の諸問題からドイツ哲学に通暁する先生の“租税法”本質論迄かみ砕いて教えてくれています。
私も若気の至り、うろ覚えの“税法”を武器に幾度か税務署員に噛みつき当局の恫喝にあった事もあります。
幸いか不幸か私は税理士では無かったので差ほどの問題にならず、税務署も適当なところで妥協してくれましたが、もし税理士本人から噛みつかれたら当局も面子がありますから大変な事になっていたろうと今更にちょっと冷や汗ものです。
“面子”を至高とし最終的には絶対的権力で強迫する“官僚”に正面から闘いを挑み勝ち抜く事が如何ほどに困難で恐ろしい事か。
国税庁高官の怒りをかって兵站を断たれた飯塚先生が、当初涙を飲んで当局に頭を下げ妥協の道を探られる姿がかえって現実味を帯びて迫ります。
官僚が守らねばならぬのは“面子”ですが、民間職業人が守らねばならぬのは顧客であり家族です。時に“官僚”の“面子”に追従する事もありましょう。
23才にして禅門“見性”を得た先生の信条は大乗仏教経論の“自利とは利他をいう”でした。
“社会のために精進努力の生活に徹する事が自利すなわち本当の喜びであり幸福である”
その大意は脱落心身、心身脱落、宇宙原理と一体化した禅的境地を含むそうです。
その様な難しい事はさておき私には“他を利する事をもってはじめて己を利する事が出来る”資本主義社会の基本原理のように思えます。近頃この原理が忘れ去られようとしています。(ちなみに私の勤務する会社の企業理念はGIVE & TAKE、似ているかなと思うのはちょっと僭越なこじつけでしょうか?)
余りにも理不尽な国家権力の横暴に晒された時、高潔な先生が職と命を賭けて”守らねばならぬもの”の為に毅然として立ち上がります。
税理士は徴税下請機関か、顧客である中小企業の擁護者か?租税法は脱税摘発の為にあるか、権力から身を守るためにあるか?
壮絶な“法廷闘争”で見事勝利を収めた飯塚先生は、公認会計士資格、法学博士号を取得、その後数々の租税法立法にも貢献されていく事になります。
正しい法律の適用による正しい納税を目指す先生にとって”正規簿記原則”による”記帳”が前提になります。
しかし零細企業主にとって正規簿記による“記帳”は結構難しいものです。
結果的にそこにも税務当局がつけ入ります。なあなあで課税を負けて貰っているつもりが意外と高く付いている事が有ります。租税法そのものに“記帳”出来ない中小企業の“悪意”を前提にしている部分もあります。
早くから中小企業に於けるコンピューター会計導入の有効性に着目していた先生は昭和46年電算センター“TKC”を創設する事で税理士と納税者の全国的組織化をも成し遂げる事になります。
この小説は近々映画化されるそうです。
もう少し早く飯塚先生の存在を知っておれば、私も目的意識を持ってもっと身を入れて会計の勉強をしていたのにと、いささか残念に思いました。
紙の本
映画化された、実名経済小説。
2008/10/20 23:23
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画化された、実名経済小説。
国家権力と戦う税理士の姿を描いたものです。世にいう「飯塚事件」です。
時代は昭和40年代。現代よりももっと、国家権力が露骨に国民を支配していた時代。
税法という法律にのっとって、申告処理を行う一税理士が主人公です。その主人公である飯塚氏があることから事件に巻き込まれていきます。その大きな原因が、大蔵省キャリア官僚からの私的怨念。エリートの恨みは恐ろしい・・・。
上巻では、国家権力により追い込まれていく主人公の姿と、一方で権力に立ち向かう姿が対照的に描かれています。
人間は弱いものです。どんなに正論を主張しても、周りの大多数から否定されるとどんどん自信がなくなっていくのです。
主人公である飯塚氏の心理も揺れ動いている様がよくわかります。くじけそうな時に一番助けてくれるのは・・・やはり家族なのですね。
経済小説なのですが、家族愛も全面に出ている小説。
龍
http://ameblo.jp/12484/
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役人の税理士への復習という形の作品、役人の権力をかさにきたやり方に非道を感じ、それに耐える主人公に拍手をしたい
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権力は、抗う者には容赦なく牙を剥く―。税理士・飯塚毅は、中小企業のためにとった税務手法を否定され、当局を相手に訴訟を起こした。だが、横暴な大蔵キャリア官僚は、それを許しはしない。メンツのためだけに、飯塚の顧客へ理不尽な税務調査が行われ、さらに彼の事務所には検察の捜査までもが及んだ。それでも男は権力と闘いつづけるのか。生きる勇気を与える、実名経済小説。
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上下セットでの感想。
飯塚さんのような税理士さんばかりなら理想的なのですけどね。
現実はそう甘くはないだろうな。
主人公に非がなさ過ぎて、逆に面白みがなかった。
でも、その家族が強いなぁと思った。
奥さんも息子さんも、誰も「もうやめなよ」なんて言わない。
家族の信頼ってすごいね。
終始、これ、ノンフィクションなんだよなぁ・・・って思いながら読んでました。
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国家権力による凄まじいまでの暴挙には戦慄を禁じえない。不撓不屈の魂を持つ税理士の戦いの結末は。08.6.8読む。
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あの会社は戦ってきたのか。
ただCMで見てただけの会社が今日の会計基準を創り上げてきたと思うと見方が変わる。
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…権力はいつでも横暴である。
“気に食わない”という 標語の元、
一介の税理士・飯塚毅(TKC創業者)をなぶりになぶる。
国税庁はそのメンツの保持のためだけに権力をふるい、
執拗な嫌がらせ税務調査を繰り返す。
ついには検察も同調し、逮捕者四人を出すに至る。
心身ともに疲労の極み…これほどまでに高圧的な
そして卑劣な権力の行使があるであろうか。
が、真実は一つ、男は戦い続けた…不撓不屈の精神で…
会計、税務が分からないと読んでもチンプンカンプン。
国会答弁、法廷論争などなど…およそ退屈な小説である。
が、しかし…確実に勇気をもらえる実名小説だ。
(下巻書評に続く)
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BS映画で放送されていて、なんとなく見ていたら、すごく細かいところが気になって、
図書館にあったので借りて読みました
私らしくないジャンルで時々睡魔に襲われながら、
しかし冤罪というか、ありえないほど真面目に仕事している一税理士に降りかかった災い
個人的な恨みを買ったようなことで、読みながらハラハラせずにはいられない
どこから見ても羨ましいような人にもいろんなことがあるんだろうと思わせられた、
考えさせられる作品です
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DATEVの創業者、ハインツ・セビガーは遠来の異邦人にさしたる関心をしめさず、儀礼的な訪問ぐらいに受け止めていたが、、、
物語は飯塚がDATEVとの竣工式典でのスピーチの際に飯塚事件が出来した往時を思い出すところから始まる。
学んだこと・気に入ったセリフ★
・税理士第一条の「税理士は中立な立場において」が「独立した公正な立場において」に修正されたのは飯塚の高い見識、高い志に裏打ちされた提言がなくしてはあり得なかった。
・飯塚は那須の名刹、雲巌寺の植木義雄に師事していた
・別段賞与は大企業に比べて経営基盤の脆弱な中小企業の経営者及び従業員を救うためにつくられた
・飯塚の理想主義的厳格さは企業風土からずれている面は否めないし、
水になじまない面もないではなかった
・刑法に犯罪意識なきものはこれを罰せず、との有名な規定がある。
犯罪意識がなければたとえ殺人の事実があっても無実になる。だが犯罪意識の有無は客観的に決定される
・飯塚が某税理士の審議をして反感を買ったことが飯塚を兵糧攻めにするアクセルを踏む動機づけとなった
・泣く子を地頭には勝てないと相場が決まっているもの
・飯塚が家族、関与先のことを思い断腸の思いで妥協して詫び状や嘆願書を認めるが当局は矛を納めない。しかも嘆願書の修正を強要され死刑執行の認諾書めいたものを書けるわけがない
・同一の経済取引が国税局によってまったく逆の判断になるのは課税体系の混乱、自家撞着も極まれり。 抗議文を送ったが梨の礫
・中小企業が年末に控えて業務多忙の時に国税局に弾圧的かつ拷問的な税務調査をされる→飯塚はやめろと訴える→不正行為を認めろと脅す
・税務調査中止の見返りとして飯塚会計事務所の関与先の一挙大量解約を計画中ということで波木が親切ごかしに電話をしてきたが、信憑性もさることながら飯塚サイドなのか敵サイドなのか分からない
疲労困憊の極に達している
・飯塚は和尚さんの教えに従い三十杯の水をかぶることを日課としていた
・自分に累が及ぶと考えるのは当然
・歯むかう学生を当局が不問に付すはずがない
・飯塚さんには地方労働委員会の中立委員を委嘱したいのですが
・粒々築いてきた社会的信用が一朝にしてゼロになった
・暗に求めたつもりだがこれは黙殺された
・いまさら哀訴嘆願でもないと思う
・最終的に飯塚事務書から四人の逮捕者が出る
関与先に波紋が広がり顧問契約が相次いだ
・事実に反する供述書に署名捺印を強要され、後難を恐れて応じてしまった・・等、税務当局挙げての弾圧は凄まじい勢いで拡大した
・飯塚事件の弁護活動に心血を注がせる動機づけになったと思える
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自分の無知をさらけ出しますが、下巻でこれは実話であのTKCの話なんだと知りました。
TKCの名前は聞いたことがありますが、その創設者の話だったとは・・。
内容は本当に感動し、かなり感化されました。
故飯塚毅と言う人間の存在を初めて知り、その高潔で自利利他と言う思い。
それが現TKCでも変わらず経営理念として掲げられている。
TKCと言う会社の素晴らしさも感じ、本当に自分の無知が恥ずかしいです。
何気なく買った本でしたが、読み終えて故飯塚毅と言う人間が作った世界に僅かながら入り、感動しました。
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ノンフィクションです。
「マジで!?」と随所に突っ込みを入れたくなる、
潔癖で非凡な男の物語です。
こんな人に特にオススメ
・困難と立ち向かう勇気が欲しい人
満足度について
★★★★= 100~120点= 期待通り
以下、本の内容に触れます(ネタバレあり注意!)。
あらすじ
TKC創業者、公認会計士・税理士の飯塚毅の清廉で壮絶な生涯。
上巻は、生い立ちから飯塚事件の勃発までを描きます。
感想
ノンフィクションであるということは、
多少の脚色があるとしても、実際にあった話なわけですが、
飯塚さんが凄過ぎて、あんまりリアリティーは感じられません。
例えていうと、戦国時代や幕末の偉人伝を読んでいる様でした。
飯塚さんは、不用意に敵を作ってしまったことで、
大変な目に遭うわけですが、
そこから私が学んだことは、
例えそれが正しいことでも、つつがなく推し進めるためには、
それなりに段取りがいるってことです。
気を付けないと。。。
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一税理士と税務当局との闘いを描いた実名小説。
TKC創設者のことが、あまりにも完璧でカッコよく描かれ過ぎてる気がしないでもないが、TKC創業にもつながる飯塚氏の理想は興味深く読める。
飯塚氏のような高いレベルではなくとも、理想や理念を持って行動できる人間に近づきたいものである。
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会計士/税理士である飯塚の正義と国家権力との闘いを描いた作品。
実在の人物をモチーフにしており、非常に共感できる部分がある。
権力との戦いという観点でいうと、以前読んだ「沈まぬ太陽」と相通ずる部分が多いと感じた。(沈まぬ太陽は社内権力との戦いがテーマ)
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なんで世の中のおじさん達は愛読するのだろうと
高杉良の小説を購入。
結構おもしろい!!。
この本は、中小企業の賞与に関する取り扱いに
関して国税庁等と戦った実在する公認会計士「飯塚毅」
に関する小説です。(飯塚毅はTKCの創設者です。)
小説を読むと分かりますが、人間としてしっかりした
人は仕事上でもしっかりしてるんですね。