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商品説明
ありえないことなど、ありえない。不思議なことも不思議じゃなくなる、この日常世界へようこそ。七階を撤去する。廃墟を新築する。図書館に野性がある。蔵に意識がある。ちょっと不思議な建物をめぐる奇妙な事件たち。現実と非現実が同居する4編収録の最新作。【「BOOK」データベースの商品解説】
廃墟は現代の癒しの空間。だが、人が住んでいる偽装廃墟が問題になり…。表題作ほか、ちょっと不思議な建物で起こる、奇妙な事件たち。現実と非現実が同居する、三崎ワールドの魅力あふれる4編を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
七階闘争 | 5−58 | |
---|---|---|
廃墟建築士 | 59−88 | |
図書館 | 89−161 |
著者紹介
三崎 亜記
- 略歴
- 〈三崎亜記〉1970年福岡県生まれ。「となり町戦争」で第17回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。ほかの著書に「バスジャック」「失われた町」など。
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紙の本
廃墟からたちあがるもの
2009/09/19 23:23
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルからして不思議なものを発している。廃墟を建築する人、その字面から想像するにゴミを進んで作り出す人、意味の無いもの必要とされないものをわざわざ作り出すという仕事を生業とする人が最初、浮かび上がった。
本書に収められた4編はどれも廃れて世間から見放されかけた、いわば廃棄物化直前の建物にまつわる守り人たちの物語だ。
様々な「建築物」とそれを存在させてきた「人」の存在があり、その関係が崩れた時に何が起こるか。ほんの少しファンタジーの入ったパラレルわーえうどのような世界で、私たちはいくつかの物語を知ることができる。
「七階闘争」巷で7階における犯罪が急増したため全面撤去する危機に陥った七階と七階を愛する人々の市議会との闘争。
「廃墟建築士」廃墟に魅せられ廃墟を純粋な芸術として建築し続ける道を選んだ孤独な建築士。
「図書館」とある田舎の寂れた図書館に「夜の図書館」を公開するため赴いた蔵書の調教師。野生化し図書館を飛行本たちを調教するが、あることから暴走を始める。
「蔵守」中にある何かを守り続けることに存在意義を見出し誇りを持つ蔵守人と蔵そのものの心が交互に一人称で語られていく。次第に近づく「終わり」をもたらす略奪者の存在に対峙しそれでも守り続ける彼らにそれぞれの結末と新たな蔵が続く。
どれにもいえることは、それら建築物に見せられた守り人たちは、常にその存在の純粋さを主張し本来の純粋な素晴らしさ、美しさ、存在意義の大きさを訴え続けているということだ。
そしてその訴えも含め、彼らは何かを求め探し続けている・・・そう、何かを「し続けている」。
・答えの無い問いを発しながら、歩き続けよう。-姿の見えぬ「誰か」を見極めるために。(七階闘争)
・造り続けることを自らに課す日々。~命事切れるその瞬間まで。(廃墟建築士)
・決して追いつけぬ決して寄り添えぬ存在に惹かれて生きる~どこに向かっているかも解らぬ闇の中で私は私を見つめ続けた。(図書館)
・理由は解らずとも守ること守り続けることそのことにこそ意味がある行為も存在するんだ。(蔵守)
建築物は人がいて始めてその存在を認識され、存在意義を持つことが出来る。そしてそう与える「人」自身は、終わることの無い何かに向かい何かを探し続け、守り、追い求め、焦がれ続けている。
本書に登場する世界はどれも現実離れしたファンタジーが少しだけ含まれている。奇妙な法律やちょっとありえない認識が当たり前に通っているあちらの世界で存在する建築物たちはやはり(私たちからすると)虚像でしかない。けれどこの物語は、そんな虚像を真剣に追い求めている人々の純粋な物語なのだ。
どれもいっそすがすがしいほど淀みなく気持ちの良い読了感を与えてくれる。それは夢中になって何かをし続けていく彼らの姿が現実世界の私たちにとって純粋で美しく、羨ましくさえあるからに違いない。
そして彼らの姿こそ本来の人間の姿だと信じたい。
彼らの目に廃墟たちが、時には飛行し、時には意思を持つ「本来の姿」で見えていたように。
紙の本
築くこと。壊すこと。実はどちらも必要だと気付いて、ようやく「人」は第1歩。
2009/10/21 02:35
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はりゅうみぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
久々に「本」に感動した。
毎回「面白かった」だの「感動した」だのと書評書いてませんか?とつっこまれそうなので早々に種明かしすると、今回は「本」そのもの、つまり装丁に感動したのだ。
なんて繊細でアーティスティックな装丁なんだろう。
硬質のトレス紙(と思う)でカバーリングされた本作は、カバーと本体が合わさって初めて1枚の表紙「絵」として完成する。どちらかだけでは本の題名さえ読みとれないような凝った印字・構成だ。
そして本のタイトルが「廃墟建築士」?う~ん、鳥肌ものの完成度。
本を活かし愛するのは「書き手」と「読み手」だとつい考えがちだが、この本からは普段見過ごしがちな「作り手」の愛を感じる。
作品の本質まで見極めたデザイン。誰かがこの本を手にする機会が少しでも多くありますようにとの作り手の祈りさえ伝わってくるようだ。
手にした時うかつにも涙が出そうになった。まだ読んでもいないのに(笑)
「作り手」がここまでの愛を注ぐ作品が面白くないわけがない。
この本には期待などしない。確信だけ持って読み進める。
ほらね、やっぱり面白い。
撤去される「7階」と運命を共にする女性。
崩れ去る「廃墟」を設計する建築士。
想いの結晶=本・「図書館」を躾ける調教師。
守る物のない「蔵」を守る蔵守。
本作に収められた4編のお話には自分の信念のために命を賭ける人物が必ず出てくるが、彼らの信念はすべて「建造物」と深い係わりがある。
建物とは人を守り野生と切り離すもの、ある意味人である証だ。
そこに人では持ちえない不思議の「力」を加えて、結果作者はこの世でもあの世でもなく、清もあり濁もある独自の世界を創り上げてしまった。
作者は溺れることなく「世界」を語る。
そこで起きる荒唐無稽を事実として淡々と語る。
だからこそ、さりげなさに潜む真意・彼らが一念に命を賭する意味を一層深く考えてしまう。
そして賭した命は無駄にはならず、想いを継ぐ者があらわれるという各話の結末。
これは作者の考える殉教者の記録、聖者の列伝「黄金伝説」なのだと思う。
伝説は更に伝える。
(おそらく文学の世界で)彼らのように生きていこうと思う書き手の決意を。
彼らのように、殉ずるに値する信念を今あなたは持っていますか?という読み手への問いかけを。
作り手の祈りも、書き手の意志も、読み手の懐疑も、最後は綺麗に重なって同じところに辿りつく。
辿りついた答えに、救われる。
紙の本
この世界は癖になる
2009/06/04 21:55
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さあちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
自宅近くに古いローカル線がある。廃線となったその場所には遊歩道ができており人々は散歩したりジョギングしたり思い思いに行き交っている。そぞろ歩きにはぴったりの場所だ。途中に駅舎が当時のまま残されており休憩できるようになっている。夕暮れ時にホームにたたずんでいるとふと周りに電車を待っている人達がいることに気が付く。やがて遠くのほうから幽かな汽笛が・・・静かにホームにはいった電車は人々を乗せて過ぎていく。一人ホームに残された私はいつかあの電車にのって行くことを夢見ている・・
そんな不思議なそして懐かしい気持ちにさせる作品集である。決しあり得ぬ世界なのになぜかありそうな世界。遠いようで近くにある。狭い路地を抜けると行きつけそうなそんな雰囲気漂う世界を描き出している。さあ心地よくこの世界に身をゆだねようではないか。きっと浮遊感漂うこの感覚が癖になるから。
紙の本
タイトルが気になったら読んでみるといいですよ
2016/04/29 20:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
奇妙だけれど心惹かれる
私たちの現実と地続きに存在しそうでだけれど
感じられても触れることができない日常。
穏やかな描写の中に確実に潜む怖さ。
自分が当たり前だと信じているものを
いつから、どうしてそう思いだしたのか?
と問われているようでした。
紙の本
夜間開館行ってみたい。
2015/12/27 10:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作は廃墟を建築する人の話(まんまだけど)。
廃墟は都市や国の成熟度を測るものであり現代人の癒しの空間としても機能している施設でもある。こういう発想面白いなぁって思いました。
短編5本入ってます。私は「図書館」が結構好きかな。
夜間開館で本が野生に目覚めてしまいます。本がバタバタ飛ぶんですよ。
そんなのが見れるなら夜の図書館にも行ってみたい。