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一般書

ロマネ・コンティ・一九三五年 六つの短篇小説

著者 開高健 (著)

精緻玲瓏の文体で描きつくし、絶賛された六つの作品。この作家長年の旅と探求がもたらした、深沈たる一滴、また一滴。古美術にふさわしいヴィンテージワインを前にして、作家の脳裡を...

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ロマネ・コンティ・一九三五年 六つの短篇小説

税込 440 4pt

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商品説明

精緻玲瓏の文体で描きつくし、絶賛された六つの作品。この作家長年の旅と探求がもたらした、深沈たる一滴、また一滴。古美術にふさわしいヴィンテージワインを前にして、作家の脳裡をかすめる映像は鮮明、濃厚ながら瞬時に茫漠とした虚無へと変貌する。作家の体内で熟成された、食、阿片、釣魚など、官能の諸相、その豊饒から悲惨まで、散文表現の頂点ともいうべき成果がこの名短篇小説集である。川端康成文学賞を受賞した「玉、砕ける」を収める。

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評価内訳

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  • 星 3 (8件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)

さすが

2022/11/09 21:24

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:マー君 - この投稿者のレビュー一覧を見る

小説家で探検家?の開高健氏の短編集。
さすが元広告マンだけあって読みやすい。それでいて氏の好奇心の旺盛さが伝わってくる。
さすが。

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食べ尽くし、飲み尽くし

2022/08/29 15:07

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

1970年代の作品集。ごく日常的な情景を描いているようだが、やはり世界が少しづつ変化していることへの敏感な反応があるような気がする。
「玉、砕ける」香港で垢すりの店に行って、帰りに大きな玉になったやつをおみやげにもらったという話なんだけど、行ってくる経緯での現地の友人たちとのやりとりが面白い。その他愛もない会話に紛らして、作家の老舎が死去したという最新ニュースがそっと伝えられる。その「玉」のたとえとしてはひどい話だが、そういうペーソスが持ち味なのかもしれない。
「飽満の種子」サイゴンで外国人向けにアヘンを吸わせる店(?)があるというので、つちかったコネをつたって探し出すのだが、そこに辿り着くまでの過程が迷宮のようだ。コクトーやグレアム・グリーンのアヘン体験を引用したりして、憧れが膨らんでいく。そうなるともう実体験がどんなに素晴らしかろうと、空想のピリオドでしかなくなり、辿り着くまでの過程の方が輝いて見える。
「貝塚をつくる」サイゴンにいる間でも、釣りがやりたいという。釣り場を知っている人間を探して、同好の華僑を見つけ出し、意気投合、釣り三昧を楽しむことができる。とっておきの穴場を教えるというので付いて行くと、その離れ小島に兵役拒否した地元の若者が隠れ住んでいて、その秘密を守れる人物かどうかを見定められていたというわけ。
「黄昏の力」人はなぜ日が暮れると酒場へ出かけてしまうのか。飲むことによって見えないものが見えてくるのだろうか。開高健の場合も、余人には見えない何かが見えていたのだろう。
「渚にて」釧路に住む友人を訪ねて、例によって釣りの話とか食べ物の話とかする。ヘンテコな知人が一人いて、知的なのだが、都市文明とは相入れないような、なんというか開拓民の末裔そのままのような人物を造形したのか、脚色したのか、これと流氷の景色の印象深さが、北海道の強烈なイメージとして提示されている。
「ロマネ・コンティ・一九三五年」超おいしいワインの逸品を開けようというだけの話だが、1970年頃でこういうワイン事情を滔々と並べるのは、世界各国で仕込んできた蘊蓄なのだろう。しかも高くて美味いものを飲もうというのではない、手を尽くして掘り出し物を入手して味わおうという、今風の高尚さや品の良さとは真逆の山師的な挑戦でもあって、グルメとか目利きというよりは、狩猟的な獰猛さをいかに発揮するかにかかっている。そうなると瓶の栓を抜くところまでが主題であって、中身を口にしてからのことは枝葉末節なのか。
巨魚でも酒でもアヘンでも、それを求めるあくなき貪欲さが常に核にあって、ウィットやペーソスでコーティングされているけど、社会矛盾や経済格差をかいくぐり、押し返して、欲求を満たそうとする個々の力が強調されているように思う。それがベトナムだけでなく、日本でもどこでも、そして世界が変容していく中でも普遍的なものだということを発見したとも言える。

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開高健の短編小説を読むなら、この作品がオススメ

2018/06/06 15:36

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る

この短編小説の初出は1978年3月の総合誌「文藝春秋」だから、1989年に58歳で亡くなった開高健にとって晩年というには早すぎて、後期の作品とした方がいいだろう。
 ただ、開高はこの後あまり多くの作品を発表していないので、印象的には晩年期の好短編といいたいところだ。

 この時期の開高は「闇」三部作の最後の作品がなかなか出来ず、困窮を極めていた時期であったが、短編小説は燦然と輝く逸品ぞろいである。
 なかでも、この「玉、砕ける」は内容的にはかつての中国の政治事情とか文学事情がわからないといささか困難だが、作品としての構成がとてもいい。
 ある朝どこかの首都で目を覚ました「私」は日本に帰ることを決断する。「私」はベトナム戦争従軍とか世界の紛争地帯を飢えたように渡り歩いていた開高健自身と思われる。
 開高はベトナム戦争を実体験することで、『輝ける闇』と『夏の闇』という記憶にとどめたい長編小説をものにしたが、あとが続かない。
 そんな倦怠が作品全体にある。
 香港の銭湯で垢すり体験をする「私」はまるで皮一枚はがれるくらいの垢をそぎおとされるのだが、それこそ「私」が抱える倦怠の日々そのものだ。
 それが、この都市を去る直前に北京で中国の文学者老舎が殺害されたというニュースを耳にする。
 そのことを「私」に告げた中国人の不安そうな男の前で、けれど「私」の文章はここにきてまるで生き返るかのように精気にあふれる。
 その時、倦怠の象徴のようであった垢の玉が砕け散る。

 開高健はこの作品で1979年に川端康成文学賞を受賞した。
 名短篇である。

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2010/03/24 12:57

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2010/07/15 11:52

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2011/02/13 08:07

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2012/02/18 04:46

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2012/08/22 00:28

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2014/09/17 16:38

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2017/06/25 19:31

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2023/01/19 15:49

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