紙の本
受験参考書として利用するだけではもったいない本
2010/09/18 20:06
24人中、24人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小西甚一は、日本中世文学において確固たる研究業績をあげている学者だ(った)〔 『文鏡秘府論考』により日本学士院賞を35歳で受賞。1999年(平成11年)、文化功労者。2007年5月26日、肺炎のため死去、享年91。〕が、この本は高校生のための大学受験参考書である。しかし、知識を詰め込み暗記するための本ではない。日本の古典文学を読み解き理解する方法と大学入試問題の答を導きだす方法とが、並行して同時に組織的体系的に説かれている。受験参考書として利用するだけではもったいない本である。
通常古語辞典の巻末に付録的に掲載されている、昔の服装や建築などについて初めにその概要が解説されている。昔の生活や風俗を知り、その環境のもとで昔の人がどのような感情・考えをもっていたのかを知り、そのうえでそれらがどのように表現されたのかを理解する。そのように教える順序がよく考えられた構成になっている。文法の枝葉末節に拘泥せず、文意を大胆に掴むで合格点をとる方法と、曖昧な理解では減点される可能性のある文法や現代語訳のための重点項目とが、学習塾の先生が語りかけるような冗談も交えた口語体で解りやすく説明されている。
長年にわたり入試問題を出題し採点してきた経験が生かされている。研究者と教育者とが一人格のなかで共存している、日本の大学教授としては稀有な存在である。
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「伝説の…」と称された名参考書。ぜひ、学びなおしに向けて!
2019/08/06 20:32
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ムダ話のように見えるところが、大きい目でながめれば、けっしてムダではないのである。要点だけギッシリならべたって、頭に入るわけがない。要点が要点でなくなるからだ。要点を要点として把握するためには、まわりに「要点でないこと」がどうしても必要なのである。なるほど、時間が惜しいだろう。しかし、いそがしいときほど「あそび」が貴重な意味をもつ。文庫となった今、読み物として面白い。小西甚一先生は 旧仮名遣いと新仮名遣いがもめたときに、そうした揺れを一切問題とせず、新旧どちらでも同じ表記ですむ語だけで一冊の本を書き上げることの出来た、言葉遣いの奇跡的な名人だった。
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受験生にはもちろん、社会人にとっても十分に古典を楽しめる内容になっています。
2020/04/14 09:42
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、受験生から長らく「古文のバイブル」とも言われ、親しまれてきた名参考書の復刻版です。同書には、古文読解のためのテクニックはもちろんですが、古の住居や服飾を通じて、古典作品の背景を知り、それによって古典の中に息づいている当時の人々の感性を理解することができることの重要性が説かれています。ですから、受験生はもちろん、社会人の方々にも充分に楽しんでいただける内容となっています。内容構成は、「第1章 むかしの暮らし」、「第2章 むかしの感じかた」、「第3章 むかしの作品」、「第4章 むかしの言いかた」、「第5章 解釈のテクニック」、「第6章 試験のときは」となっており、とても興味深いものとなっています。
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週刊文春2010.2.25号「文庫本を狙え!」609で坪内祐三が紹介。本屋を5軒回ったが、品切れ。アマゾンで予約したが、こちらも品切れで増刷待ち。定価1,575円だが、新古書で買うと二倍以上の値がついている。きょう、成城学園駅前Corty2Fの三省堂を覗いたら、うれしいことに増刷ができていた!2月10日第一刷、2月25日第二刷だから、ずいぶんなスピードで売れている。名著が復刊し、こうして多くの人が選び購入し読むのはすばらしい。経済低迷時代の副産物のように僕には思える。本を読むのは、収穫の割にお金がかからず、かつ心を耕す時間も少しはできたということだ。世の中の方向性も定まらずフラフラしているときは、こうした名著と時間軸を越えた対話をしたくなる人が増えるのではないか。「日本文学史」も同時に購入しておく。
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小西甚一『古文の読解』(ちくま学芸文庫)を読む。
今年2月10日に復刊され、本屋からあっという間に姿を消した。
わずか3ヶ月で既に第5刷。
僕は2月25日発行の第2刷を購入した。
毎日少しずつ楽しみながら読んで、連休でまずは一回目の読了。
武藤康史の愛情がこもった解説によれば、
小西甚一はあらゆる時代の文学史に通じた
途方もない学者だった。
(p.535)
小西の恩師である能瀬朝次(のせあさじ)教授は
小西著『梁塵秘抄考』の「序」にこう書いた。引用する。
君の熱心な博捜ぶりは、
君の親友をして資料餓鬼という渾名を呈上せしめ、
君も欣然としてこれを承認した。
実に餓鬼の如き物凄い研究ぶりであった。
そしてそれは大学時代から現在に及んで、
すこしも変わらない。
(『古文の読解』pp.533-534)
その小西が大学受験生のために三冊の参考書を書いた。
『古文研究法』『国文法ちかみち』、
そして本書『古文の読解』である。
著者自身の「はしがき」にこうある。
それも、ギューギュー詰めの内容と
眼の色を変えながら格闘するのでなく、
のんびり散歩するような歩調で、
たのしく古文の合格点を取ってもらいたい。
およそ三十年間、入試の出題と採点をしてきた罪滅ぼしに、
この本を書いた。
受験生のための参考書と侮っては判断を間違う。
大人たちが自国の古典に親しむための、
愛情あふれる、かつ頭脳経済的な(小西の造語)著書である。
500ページほどの例題、解説などを読むうちに
目の前の霧が晴れてゆく。
これまで遠くにあった日本の古典の姿が徐々に見えてきたのだ。
これから古典の森を散策する際にも、
ナイフやコンパスを手に入れたようで心強い。
有難いことだ。
高校生、受験生に独占させておくにはあまりに惜しいと
これまで古典に親しめなかった大人たちが
この本に手を伸ばしたのもなるほどうなずける。
次は小西がひとりで書ききった伝説の辞書
『基本古語辞典』(大修館書店)を復刊してほしい。
「復刊ドットコム」]にもリクエストしておいた。
(文中敬称略)
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私が学生時代に使ったのは、同じ著者の「古文研究法」で、昭和58年の改訂78版が書棚に見つかった。殆どの参考書類は捨ててしまったが、残しておいた数少ないものの一冊にこれがあったということは相当気に入ってたのだと思う。
本書も「古文研究法」も参考書としてもちろんよい出来なのだけど、読物としてもなかなかよさそうなので、現役の学生でない人でも楽しめるのではないかなぁ。
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10/06/06。
私の時代にはこの本はまだなく、同著者の洛陽社『古文研究法』を使っていました。非常に勉強し甲斐のある本だったと覚えています。本屋さんに平積みされていて、手に取り買ってしまいました。
試験で満点とらなくてもよい、合格点をとればよい、との前書きの言葉、これって、読書人に対してもまた、100%わかんなくてもよい、わかんなければ辞書を引けばなんとかなる、とりあえず合格点くらいの理解はできるようになっておきなさい、との言葉であると思う。しかし、実は合格点というのは、そんなに低くはないというところが味噌なのかも(笑)。
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文庫化されたのに気づき、購入し、しばらく積読状態であったが、今回ようやく読み終えた。受験の時に昔の版は自室の参考書専用の本棚に並んでおり、その時は最後まで読み終えたどころかほとんど買っただけであった。その本は実家を取り壊した際に処分してしまった。というわけでほぼ初読という状態であるが、このような内容であったのかと驚いた。特に英語で古文を理解するなどとは、ある程度両方できなければ理解不能である。おそらく受験の時にも買ったはいいが読まなかったのは、私にとって必要とするような内容ではなくパラパラめくってみて、本書だけで受験を突破するのは無理だと感じたのではないか。確かに今読んでも、これとは別に基礎的な古文の参考書や古語辞典・単語集がないと役立たないように思う。もっともそのことは著者もプロローグで断っている。今、受験とは関係なしに読んでみると、改めて古文の難解さを感じるし、よくこんな勉強をしていたなと感心する。受験テクニックや受験生としての態度・心構えについても触れているのが、今風の語りかけ型参考書の走りとみなされるであろう。
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読みやすい.
実際に古文が読めるようになるには,文法書を読んで辞書を引く必要があるんだろうけど,古文へ取り掛かる足がかりにはなると思う.
とくに背景の知識などは,国語便覧とかに載ってるぐらいだけれど,それよりは面白く読めて頭にも入る.
受験生ではなく興味があって読んだだけなので受験に向いているかは不明.
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一応受験生のための古文講義という体になっている。
古文の読解についてのTipsを例題を交えながら解説していき、本著の最後で受験対策のための方法論を述べている。
私自身は受験生とは全く無縁なので、最後の受験対策の部分は流し読みしたが、それまでの内容は、古文好きの私としては結構満足がいくもの。
古文を読むにあたっての歴史的背景の説明。また文法などを時には英語と対比したりしながら解説している。
もちろんすべてを網羅しているわけではないが、一つ一つのトピックスに対して深く掘り下げていく感じ。
内容としては先に述べたように、受験生の古文対策という体になっているため、その部分で星ひとつマイナス。
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昭和37年に最初に出版された、高校生用の参考書であったらしい。しかし参考書というイメージからはやや遠く、楽しい読み物といったスタイルを通している。
いきなり平安時代の文化誌的な記述、寝殿造りの構造とか、着物のかたちから始まる。古文の文法はいつ始まるのか?と思っていたら、155ページからの第4章でやっと始まるのである。
極めて平易なので、途中で投げ出さずに読み通すことができるだろう。しかし「この1冊で古文が全部わかる」というのは違う。著者も最初から、この本は学校で使っている教科書や古語辞典を横に置いて読むように、と注意喚起している。
くだいた言い回しがなかなか、昔古文が苦手だった私にも親切だし、英語との比較などがおもしろい。助動詞「む」は英語の「will」だというくだりは、なるほどと思った。
それにしても高校の古文の授業はなぜあんなにつまらなかったのだろう? 3年間のうちのごく限られた時間で、そもそも平安時代の文法をマスターするなんていうことに無理があるのではないか? 源氏物語なんていう、高校生には土台無理と思われる難しい文を細切れに抜き出さずに、たとえば竹取物語のような本を時間をかけて読み、何度も再読して、その過程で意味や文法を学ぶようにした方が、絶対いいに決まっている。その方がおもしろくて興味が持続し、身にもつくだろう。
たかが3年間、週に1回くらいの授業で平安文学を読みこなせるようになるよう、文法単語をたたきこもうという教育制度が間違っているのである。古典に親しむ気持ちがあれば大人になってからもゆっくり学びながら、古典を読んでいくことができる。
受験制度がアホらしいのだ。
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「受験国語」とは時として、そのテクニックめいた解法からか、俗っぽさを揶揄することばとして用いられるわけですが、なるほど、かつて「受験国語」は高尚なものだったのかもしれない。本書は1962年に出版された学習参考書の復刻ですが、筆者である小西先生は後の筑波大学名誉教授。つまり研究者サイドにあるということです。古くは国語教育研究誌にだって受験国語に関するレポートや記事が見られる。しかし、現在ではかつてのような受験国語研究は主流にない。もっとも石原千秋先生など、研究者が受験国語に言及する例はあるけれど。
さて、そうは言っても、俗なる受験国語だって進歩はしているらしい。というのも、本書に書かれている内容だって現行の学習参考書では既にフィードバックされている。今の学習参考書の多くは予備校講師という「俗な」方々によって執筆されている。しかし、今の俗な方々が書いている内容はかつての高尚な研究者の書いている内容と「≒」で結ぶことができるのですな。だとしたら、受験国語を「過去の遺物」と言うことはできるとしても、それは決して「俗っぽい」わけではない。受験国語に「学問的な正しさ」を持たせようとする思想に、僕は辟易とする立場なのだけれど、そんなことをしなくとも、受験国語は一つのファクターを構成しているのです。それこそ、ポストコロニアリズム的な「未開の地は西洋と並立に語るべき」というのと同様、受験国語であろうが、国語研究であろうが、それは並立に置かれているものなんじゃないのかなー。
そんなこんなで、本書の内容は現行の受験国語から見れば、決して目新しいものではなく、「名著」と言われるのに理解はできるものの、「実用性」は薄い。妙な言い方だけれど、一種のファンアイテムっていう感じ。
【目次】
はしがき
プロローグ
第一章 むかしの暮らし
第二章 むかしの感じかた
第三章 むかしの作品
第四章 むかしの言いかた
第五章 解釈のテクニック
第六章 試験のときは
エピローグ・アンコール
重要事項語句索引
所収例文索引
解説 武藤康史
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古文なんか25年も読んだことがない.要するに大学受験以来である.本書は受験生向けの「受験のテクニック」書である.といっても最近の受験テクニック書とは異なり,本物の国文学の先生が書いている本なので,それなりに読み応えはある.いかんせん,読む方が年も年なので,小西先生の期待に添えず,ただ流し読むだけなのだけれど,それでも英単語になぞらえてその単語の本来の意味を説明する所などは目から鱗である.英語力は25年前から比較して確実に向上している分野なので,今となっては良く理解できるが,受験生の時に英単語の本来の意味を理解できたかどうかと言えば疑問だなあ.
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古文は、ある程度読みなれていると思っていたが、まだ甘かった。
はっとさせられることもあった。
その三点を下にまとめておく。
・二つ以上の語句がならびの修飾をするとき、上の用言は連用形になる
・「の」には「で」と訳すものが二種類ある
・文節関係のある語どうしは、縁語とはみなさない
二つめの「の」の話。
「で」と訳す「の」の一つは、いわゆる「同格」の「の」。
これはよく知られているし、私も知っていた。
もう一つの「の」。
日国大と、広辞苑二つ引いただけでも、大混乱をきたしてしまう。
同格の用法の発展形(日国大)の方だと思われるが・・・
文法学者ならぬこちとら、やはり正直、同格と何が違うの?と思ってしまう。
今の学参と比べれば、「見やすい」造りではない。
でも、今の学参にはない密度の濃さ。
今の受験生たちは・・・これ、読むのかしら?
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うーん、そうなのか。
受験生当時は現代国語は苦手だったが、古文は外国語のノリで機械的に得点できた。しかし、その面白さはいまいち感じられなかった。
この時代背景等を知っていたら面白かったかも知れない。
でもやはり受験は受験なのかな。
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住居・服飾などを通じ作品の背景を知り、様々な古典作品から「もののあはれ」に代表される人々の感性を学びながら、当時の時代背景が詳細に理解