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商品説明
足りないことを哀しまないで、足りないことで充たされてみる。注目の「心の掬い手」が、しなやかに紡ぐ渾身作。偶然、同じ時間に人気レストランの客となった人々の、来店に至るまでのエピソードと前向きの決心。【「BOOK」データベースの商品解説】
偶然、同じ時間に人気レストランの客となった人々の、来店に至るまでのエピソードと前向きの決心…。注目の「心の掬い手」が、しなやかに紡ぐ渾身作。『小説推理』掲載に加筆修正して単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
宮下 奈都
- 略歴
- 〈宮下奈都〉1967年福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年「静かな雨」で文學界新人賞佳作入選。ほかの著書に「スコーレNo.4」「太陽のパスタ、豆のスープ」など。
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著者/著名人のレビュー
大好きな小説は読み手...
ジュンク堂
大好きな小説は読み手のこころの拠り所となる。立ち返ろうと思ったとき、本はいつでもしずかに待っていてくれるからだ。そんな本にまた出会うことができた。
誰かが足りない、ということ。かけがえのないひとの不在。今までいったいどれだけのひとがこの感情に苦しめられてきて、これからもかなしい想いを抱えるのだろう。付随する後悔や虚しさに溺れ続けるのだろう。涙を流すのだろうか。
けれど、その耐え難い苦しみから抜け出せる日はきっと誰にも訪れるのだ。今はもういない誰かを苦笑いしながら、微笑みながら思い出せる、そんな日が。再会できることもあるかもしれない。もう決して会うことのできない別れであっても、共に過ごした思い出がある。不在に縛られるのではなく、温かに相手の幸せを、亡きひとの在りし日を思うことができたなら、きっと一歩を踏み出せるはず。
きっとだいじょうぶ。宮下作品はいつでもそっとそうささやいてくれる。誰かの足りない誰かに、そしてわたしの足りない誰かにも、この作品が届きますように。
書店員レビュー
評判のレストラン「ハ...
ジュンク堂書店郡山店さん
評判のレストラン「ハライ」。
そこに予約を入れて終わるという一貫した構成の六編で、
とにかく読みやすく、2時間弱で読み終えてしまいました。
人は誰かを失い、誰かと(時として新しい自分自身とも)出会う、
その繰り返しの中で生きています。
足りない「誰か」とは、過去にいるとも、
未来にいるとも言える存在なのではないでしょうか?
「ハライ」への予約は、
その足りない「誰か」と向き合い、
それを受け入れて前に進もうとする決意を象徴するものであると感じました。
そして、気付かされます。
決して「誰かが足りない」=絶望ではない、と。
雑誌担当 有我
特別な日に特別な人と...
ジュンク堂書店ロフト名古屋店さん
特別な日に特別な人と訪れるレストラン。そんなお店で過ごす、かけがえのない時間。さて、レストランに予約をいれた人々は、特別な日に至るまでにどのような物語があったのでしょう。ある人は大切な人を思い出すため、ある人は新しい一歩踏み出すため、ある人は本当の自分を見つけるため。思いの詰まったレストランで、大切な人との待ち合わせの時間まであと10分。読み終えたとき、あなたの目の前にはレストランでの素敵な光景が広がるのことでしょう。また、物語の登場人物たちはそれぞれの失敗を抱えていますが、本当の失敗とは何なのか。この本はそんな失敗に悩む人たちに勇気を与えてくれます。
担当 清水
人気レストランにた...
ジュンク堂書店千日前店さん
人気レストランにたまたま同じ日、同じ時間に予約を入れていた客たちの、そこに至るまでのエピソードと、前向きな決心を描いた短編集。
「誰かが足りない」
ある程度生きていると、きっと誰の心にもそんな部分はあるのではないかと思います。
そんな心の「足りない」を、時にえぐるように、時に癒やすように紡がれるこの作品。
けれど「足りない」哀しみを描いているわけではありません。
失って得た「足りない」も、いつかその背中を前へ押してくれる。
「足りないこと」がいつかあなたを充たしてくれる。
それまでとはほんの少しだけ新しいあなたに変えて。
それは例えば、読書に興味の無かった私が、その影響で本を読むようになり、今こうして書店員になっているように。
過去が、現在の背中を、未来へと押してくれる。
そのことに、やさしく気づかせてくれる作品です。
(卯)
紙の本
これを読んで気持ちが軽くなる人もいるだろうな
2016/09/01 01:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
これを読んで救われるとはまではいかなくても、気持ちが軽くなる人がいて、それは若いと言われる人たちなのだろうなと少し羨ましいような気分です。
人を応援しているような作品を作り出すは、簡単なようでとても大変な仕事だろうな。
紙の本
自分自身の“ハライ”を見つけるために手元において何回も読み返したい作品。
2011/11/04 22:44
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
地方の駅前のロータリーにあるれんが造りの古い一軒家の人気のレストラン“ハライ”にくしくも同じ日の同じ時間に予約したお客さん6人のそれぞれの来店にいたるまでのエピソードを描いた連作短編集。 思わず自分も7人目のお客さんとして行きたくなるのですが、作者は過去を振り返りつつも未来の重要性を教えてくれます。 レストランって言えばお洒落なイメージなのですが、内容的には総じて少し重いですね。一冊読み終えて最後に心が軽く前向きな気持ちになれます。特に「予約2」は秀逸。
初出 “小説推理”を大幅な加筆・修正。
宮下さんの最新刊です。これでコンプリートですね。
個人的には『よろこびの歌』と同じぐらいベストの評価をしたく思います。
この作品は読み終わって幸せな気分に浸れる小説ですね。
まあ宮下さんの作品すべてがそうと言っても過言ではないのですが、まず「予約1」から「予約6」まで 本当にバラエティに富んだ主人公が登場します。
中には風変わりな人も登場します、たとえばビデオを撮っていないと部屋の外に出られない青年や、人の失敗の匂いを感じてしまう女性など。
身近に同じような悩みの人を見つけることができれば共感度が強いですね。
私が最も感動した「予約2」の認知症の老女の話なんかは結構リアルです。
帯に書かれている“足りないことを哀しまないで、足りないことで充たされてみる。”という言葉がジーンと来ます。
いつも死んだ夫が身近にいるのですね。そしてまわりの家族との距離感が絶妙に描かれています。
各話、それぞれの事情で悩んでいる人物に出くわし、読者は知らぬ間に共感して行きます。
やはり“ハライ”という名の店のもたらす役割が非常に重要です。
ハライという店は、いわば各話の登場人物たちの“心の支え”でもあり“最終目的地”でもあるわけです。
そして読み進めるうちに次の話はどういう風に着地点をつけてくれるか、安心して作者に身を委ねてしまうのですね。
ラストの爽快感は青春小説の傑作である『よろこびの歌』に負けるとも劣らずのものでこれは読んでのお楽しみということにしときましょうか。
読んでいる時点では前述した“心の支え”そして“最終目的地”であるハライも、読み終えた時には“新たな幸せへのスタート地点”でもあります。
そして読者はおのずと自分自身の身近に“ハライ”のような店を探してしまいます。
そして少し付け加えると、本作は手元において何回も読み返したい作品です。
他の宮下作品以上に本作は2回目あるいは3回目読んでみてもその素晴らしさが薄れないと思います。
なぜなら、最後に次からは6組のお客さんがどのようにハライに集結しているかを初読以上にじっくりと見守りながら読めるからです。
これってかなり幸せで充実した読書時間を満喫できそうです。
逆に時間のないときやちょっと落ち込んだりした時は任意に1つの物語だけでも読んでみてもいいかもしれません。
そうしたら自分の荒んでいた心がすっと落ち着くと思います。
最後に本当に偶然ですが、この作品10月31日に読み終えました。
プロローグをもういちど読み返しました。
ちょうど7人目のお客さんになれた気分で最高の読後感を得ることができました。
さて誰とハライに行こうか(笑)、自分の行きつけの店を架空“ハライ”とみなしてます、いつのまにか。
まるで作者に幸せをお裾分けされた気分です。
紙の本
今年 多くのものを失ったひとに捧ぐ
2011/12/14 22:56
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰かが足りない、というタイトルは、一見寂しげだ。それなのに、表紙はとても明るい。一方からさす陽に照らされた一つのテーブルと椅子、準備されたナプキン。これから、このレストランにお客さんがやってくる、その直前を撮影したかのようだ。
本作は短いエピローグとプロローグに挟まれた六章から成り、それぞれの章タイトルは「予約1」「予約2」…のようになっている。エピローグとプロローグの語り手は同じだが、正体は明かされぬまま、各章に移る。章毎の語り手は全て異なっているが、共通しているのは、彼等が全て10月31日に「ハライ」というレストランに予約を入れるということだけだ。さて、「誰かが足りない」とレストランの予約がどう結びつくのか、気になってきましたか?
「望月の欠けたることもなしと思えば」と読んだのは藤原道長だが、私たちの人生は、喪失と獲得の間を行ったり来たりしている。そしてたいがいの場合、喪失から抜け出すほうが難しい。本作の主人公たちも同じだ。恋人に去られてしまった男性、伴侶を失って記憶も薄れつつある女性、幼馴染にうまく気持ちを伝えられなかった女性、過去から抜け出せない引きこもりの男性、不思議な力を持ったがために“失う”ことに敏感になってしまった女性。だが何らかのきっかけや葛藤を経て、彼等はその喪失感を乗り越えたり、喪失を受け入れていく。乗り越えたことのいわば最終試験として「ハライ」の予約がある。なかなか予約を取るのが難しいんですよ、というコメントがあるが、喪失感を乗り越えてゆくにはそれなりの苦労があるんですよ、といいたいのだろう。
この作品のエピローグには、ある章の主人公によるこんな独白がある。
「絶望じゃない。ただの失敗なのだ。(中略)どんなに大きな失敗をしても、取り返しがつかないほどに思えても、いつかは戻る。人生を下りることではない。そこからまた這い上がれる。這い上がる間の景色もまたいいような気がしているのだ。(p174)」
震災と原発事故で、今もなお打ちひしがれている人に、この言葉が少しでも届けばいいと思った。
紙の本
失ったものを取り戻したら、おいしいものを食べに行こう
2012/04/09 16:33
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
駅前のロータリーにある小さな古いレストラン「ハライ」。
とてもおいしくて予約がとりにくく
行列が絶えないお店です。
そこに予約をする人たちの、6つの小さな物語を収録。
登場する人たちはそれぞれに
「喪失」を抱えているのに気づかず、
空疎な日常を送っています。
元彼女、幼馴染、死んだ夫、両親、叔父など
確かに大切ではあるけれど、
いないことに慣れてしまえば慣れてしまえる存在。
しかし、みんなどこかでなくしてしまった人たち。
それがふとしたきっかけで
自分には「誰かが足りない」と気づかされます。
そんな切ない不在をゆっくりと語りかける著者にのせられて
物語を読む幸せを久しぶりに味わいました。
紙の本
この本に最大級の賛辞を贈る。せつなく、そして優しくなれる傑作。
2017/05/17 00:33
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなにも強く心が震えるのは久しぶりだ。
せつなさに揺さぶられて胸がいっぱいになり、咽元にこみあげ、
目がしらまで熱くなってしまう。
心を動かす作品はたくさんあるけれど、この作品はせつなく始まり
優しさに昇華する物語である。
だから心に必要なものということが分かる。
興奮を抑えつつ、本の紹介に入ろうと思う。
すでにのめり込み過ぎているので、うまく伝えられないかもしれない。
少なくとも、誰かがそこまで気にいった作品とは、どんなものだろうと
考えてもらえれば嬉しい。
プロローグ、予約1~予約6、エピローグ風で構成される。
六篇の短編集で、一つのテーマに沿った連作である。
連作といっても、全ての話をかっちりとは接続せず、大きな
柔らかいものでくるんだまま終わる。
柔らかいものとは、プロローグで出てくるレストランのハライである。
予約を取るのも難しい人気店である。とても落ち着いた雰囲気で、
全てが親しげで、懐かしく思う場所である。
プロローグの一場面。
レストランの席につき、メニューを眺めつつ店内を見渡す。
そして他のテーブルの不自然な空席を見つける。
誰かが足りない。そんな考えがよぎる。
本編で、いろいろな形のせつなさが綴られている。
キーワードは、誰かが足りないということ。
その心が、情感たっぷりの文章で押しよせる。
心を丁寧にすくい取る文体から、上品さが醸し出されている。
心理描写が抜群にうまい。
わざとだと思うが、少しすっ飛ばしぎみの表現もある。
それでも心の中にすぽりとはまってくるから不思議だ。
登場人物たちの誰かが足りないという気持ちが、レストランのハライで
とても素敵に昇華される。レストランでご飯を食べる話ではなく、
そこに至るまでの起伏を楽しむ作品だ。
いくつかの話で、心の壊れそうな人物が登場する。哀しくなる。
でもそれは、自分たちの心の中にある弱さを、見えやすく形にされた
ものであって、決して破壊にはつながらない。
傷ついた心が、落ちそうな淵から再生していく様は、きっと何度
読んでも飽きることがないだろう。そこがこの物語の最大の魅力だ。
本を読んだ後は、こういう気持ちにならなければという想いを、強く
再認識した作品である。最大級の賛辞を贈ろう。