紙の本
自国第一主義が蔓延る今だからこそ、読むべき本だと思います。
2017/05/19 11:46
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書『私の仕事』は、著者の緒方貞子さんが難民高等弁務官事務所
(UNHCR)のトップ、高等弁務官に就任していた1991年から2000年までの十年間の著者自身の記録についてまとめたものです。
着任直後に直面したクルド難民危機を始め、世界各地の紛争や難民危機に緒方さんがどう立ち向かったのかを知ることができます。問題発生と同時進行、あるいは直後のタイミングで書かれたものが大半だけに、読者は大国の指導者や紛争の当事者を相手に事態の改善を試みる交渉の緊迫感や紛争の現場に身を置いたような臨場感を味わうことができます。
しかし、本書の魅力はそれだけではありません。
平和の構築するためには何が必要か、どんなことが問題となっているのかについて的確に分析されています。十年以上も前に書かれたことがほとんどですが、現代社会にも通じることが本書に多く載っています。
緒方さんが、理想に陥りがちな人道主義、平和主義といった概念を現実の課題として受け止め、事態の改善に向けて何が必要かを構造的に分析した上で、具体的な解決策を見出すという現実的な姿勢を取るためだと思います。
本書の中で、特に注目に値する文章があります。
「もし、このたびのテロに対する戦いが、もっと深い、相互依存と連帯感に裏付けられなければ、将来、安全で安定した世界が出現する保証はありません」
「ここ数年、私は日本とアメリカの両国において内向き志向が進んでいることに不安を募らせてきました。国際的責任という意識が皇太子、外交政策がポピュリズムに左右されるようになっていると感じていました」
「日本の指導者は日本の国是についての明確な感覚を失いました。内向き志向はナショナリズムを産み、外交は沈鬱な国内のムードを反映するものとなりました。日本の経済も安全もグローバルな基盤に依存しているという認識が失われてしまいました」
日本だけじゃなく、アメリカやヨーロッパ、中東、朝鮮半島に代表される世界各国の現状を的確に表現していると私は思います。
また、上に挙げた三つの文章を見てわかるように、世界が平和になるためには、国民一人一人の意識を変える必要があると思います。だからこそ、できるだけ多くの人に本書を読んでもらい、平和な世界を実現するためには、日本人として、あるいは地球に住む一人の人間として何ができるのかを考えてほしいと思います。
紙の本
もしご存命だったら
2021/09/30 14:03
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投稿者:扇町みつる - この投稿者のレビュー一覧を見る
今の新型コロナ流行のこの状況を見たら、何とおっしゃるだろうか。
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本気で仕事します。
2017/09/08 19:56
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投稿者:ら君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
全身全霊を込めて、最上級の仕事をやり遂げる方の言葉は、たいへん重かったです。
背筋が伸びました。
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すばらしい
2022/04/06 18:20
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
国連難民高等弁務官として活躍されていた緒方貞子さんの歩みが、生き生きと描かれていて、素晴らしかったです。
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総理大臣の曾孫さんでしたか
2024/03/16 17:51
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投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今まで国連難民高等弁務官の仕事内容は知りませんでした。
TVなどで緒方さんの仕事を紹介され、本書を読みました。
仕事内容の難しさ、超人的な忙しさ、国際機関の職員で組織のトップの責任の重さ。
本当に素晴らしく、すごい人だと改めて知りました。
日本人として誇りに思います。
浅学の私ですから、緒方さんが私と同じ岡山県出身の犬養毅首相の曾孫だと初めて知りました。
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
国際人の業績が綴られているが正直前半の日記は致命人名などの羅列であまり理解が進まない。国際課はある程度必要性を感じるが著者の思想とは合わない部分もある。解説はその功績をわかりやすくしてある。
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緒方さんファンのための資料の寄せ集め的な感じになっている。学者出の難民高等弁務官だからこそ見える視点や、現在の世界でどれだけ難民問題が深刻であるのか、それに対してどのようなアプローチを国連が行なっているのかについて浅く知るにはいい。ただ、専門用語や特に情報味のない記述が多く、前提条件として世界における難民問題や国連機関の機能を知った上で読むべきだったと持っている。
緒方さん自身の真剣な思いを読み取ることはでき、そういった意味で希望の枠ものではある。
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中満泉さんの著書「危機の現場に立つ」を読む中で、国連難民高等弁務官として中満泉さんに多大な影響を与え、また強烈なリーダーシップを発揮して猛烈に活動される緒方氏が登場していたので、ご本人の目線から見た世界が気になり読了。
彼女の事は、犬養毅を曾祖父に持つという事すら知らなかった。ただ、国際的にいうと彼女が国連難民高等弁務官に就任した時には実質無名で、中満さんの同僚は「こんな無名の人が高等弁務官なんて、もう終わりね」とまで言ってのけたらしい。
彼女が就任したのは91年なので、私は生まれて大した年月経っていなく、当時の情勢は肌感としては分からない。
就任してすぐに取り掛かられたのはクルド難民危機であったと言う。
冷戦後の世の中で、国対国であった武力紛争が国内紛争に変容していった頃だ。
変化に対応するため、現場に大きな裁量を渡し、いくつもの大きな判断と決断をされていった。その中で、常に判断の拠り所となったのは、「救わなければならない」という基本原則(プリンシパル)。これを守るために、行動規範
(ルール)を変えることにしたという。
残念ながら、この本に書かれている1991年〜2001年ほどの際に激変して世界的な問題となった難民問題は、それから20年経った今も決定的な解決の糸口は見つかっていないように思う。
それでも、わたしたちは、考え続けなくちゃならないし、関わり続けなくてはいけない。
「いくら島国だって日本だけカンフォタブルではいられないから」。
その通りだ。
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元国連難民弁務官緒方貞子さん逝去
日本人初の国連難民高等弁務官として10年間職務を全うされました。ご冥福をお祈り申し上げます。
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雑誌や新聞で緒方貞子さんが寄稿した記事がまとめられた一冊。
最初に、2年間の日記から始まります。日単位で、欧米、日本、アフリカ、アジアを行き来し、その間に、各界トップとの会談、難民や避難民のいる現場への訪問、スタッフとの打合せ等を次々とこなしていかれています。スピード感とエネルギーに圧倒されます。
オリジナルの本は2002年に刊行されています。今読んでも、今書かれた本のように感じながら読むことができました。
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思考も行動も、実践的な方だということをあらためて知る。
冷戦後の世界、自分がまだ世界について知らないとき、このような激動の国際社会で日々奮闘していた一人の日本人の女性がいたことを、これからも忘れずに生きたいと思った。
一人の人間にとってはあまりにも大きすぎる困難に直面したような場面で、彼女が下してきた決断と背負ってきた責任の偉大さに改めて圧倒されると同時に、明確な基本原則というぶれない軸があって、それらの選択や行動が積み重ねられてきていることを学んだ。
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平和ボケしている日本、しかしパワーバランスが崩れつつある現在、読んでおくべき本だと思う。が、本書の構成がしっくりこない…。それから、なかなかに難解。。。
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カテゴリ:図書館企画展示
2019年度第5回図書館企画展示
「追悼展示:緒方貞子氏執筆本等」
展示中の図書は借りることができますので、どうぞお早めにご来館ください。
開催期間:2019年11月1日(金) ~ 2019年12月23日(月)
開催場所:図書館第1ゲート入口すぐ、雑誌閲覧室前の展示スペース
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今年になっての報道だったと思うが、米国タイム誌の世界に影響を与えた過去100年分の「ことしの女性」に、1995年の「ことしの女性」として緒方貞子さんが選ばれたというニュースを聞いた。
昨年緒方さんの訃報のニュースが流れたことも記憶に新しく、追悼出版として書店での平積みされているのを見たこともあり、今回は草思社版を図書館で借りて読んだ。
※図書館は新型コロナの感染拡大防止のため、予約と受け渡しのみで館は閉鎖中だ。
日本人として女性初の国連難民高等弁務官を務められた緒方貞子さんについて、タイム誌は「小さな巨人という異名を持ち、手ごわい交渉人として知られた」と紹介していた。
緒方さんは、1991年1月に国連難民高等弁務官(UNHCR)を拝命し、2月にジュネーブに赴任し、それから2000年の末に退任するまでの10年間、任務を果たされたが、その後も米国同時多発テロ(2001.9.11)を契機として、アフガニスタンの難民帰還及び復興支援に貢献したと述べられている。
今回は、返却期限が迫ってからの着手となり、ほぼ走り読みとなってしまったが、緒方さんの多忙な職務生活と、難民問題に立ち向かう志のようなものを感じながら読んだ。
冒頭から、緒方さんの仕事に対する考えが現われている言葉を拾ってみた。但し、今から約20年前の情勢下における記述であり、現在はそれをベースとしてさらに取り組みは進んでいるのだろうと想像する。
「国家の権力によって領土を完全に保全し、国民の生命の安全を完全保護できる時代は終わった」
「紛争が起こる前に、飢え、病気、宗教的民族的差別、社会的不公正で苦しむ市民を直接支援する国際的な仕組みを作らなければ、この地球上から難民がなくなる日は来ない」
「私の判断の拠り所となったものは、ただひとつ彼ら(湾岸戦争収拾後のイラクにおけるクルド難民)を「救わなければならない」といことであった。この基本原則(プリンシプル)を守るために、私は行動規範(ルール)を変えることにした。
「常に難民という犠牲者の保護者として、保護を実施するための交渉に当たる。次に、保護者としていろいろなところへ行って拠出金を含む支援を集める、これが私のしてきたことである。」
「人間の安全保障というのは、安全保障を人権、人道、保健衛生、開発、環境、教育等幅広い人々の営みの側面から考えるものである」
***
「ジュネーブ忙中日記」として、1993年、1994年夏までの緒方さんの活動日記が記載されていた。タイトルどおり多忙でかつ重要な仕事をこなされる日々が綴られている。その忙中にも、ご自身の安らぎの時間を忘れられていないのがさすがだなと感じた。
面白いと思った記述。
1993年12月7日に、元国連事務次官の明石康氏と朝食をとられたことが書かれた内容。
「明石氏と朝食。九時、フランス語。九時三十分、副高等弁務官。官房長と毎朝の打ち合わせ会議」
日本人どうしなのにフランス語で会話されている!! それに朝ごはんがたった30分間。あっという間だ。
1994年1月7日の日記。
「九時、羽田孜外務大臣。九時三十分、藤井裕久大蔵大臣。一時三十分、鈴木俊一東京都知事表敬訪問。十時、テレビ朝日「ニュースステーション」久米宏のインタビュー。
登場人物に時代を感じる(笑)。
***
冷戦前と冷戦終焉後とでは、難民対策も変化した。一口に「難民」といっても、単一民族国家の日本にいてはあまりイメージがわかない。しかし世界には、何千万人という数の難民が現に存在する。
「政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者」というのが定義的なものらしいが、例えば冷戦終焉により、①これまで国外に逃避していた難民が故国へ戻るとか、②民族的対立のあった国家が崩壊しあらたな難民が生み出されるとか、③政治的不安や貧困から逃れたいと安定を求めて移動する難民など、膨大な単位で発生し、それらの難民を暴力(攻撃)から守り、経済的に保護し、命をつなぐのが緒方さんたち国際難民高等弁務官の仕事だ。
同じ地球上の、あるいは同じ国の人間どうしが、どうして殺し合いをするような対立をしなければならないのか。また無垢の人々が命を奪われなければならないのか。そういう根本的な問題があるが、緒方さんは、こう述べられているところがあった。
「戦争はいけないと叫んでみても実際に戦争があって、一番弱い人達が犠牲になっているのだから、まずは目前の被害者を保護しなければならない。その上で状況がよりよくなるチャンスを作っていく方が実践的である。」
「国家の安全保障から人間の安全保障へ」という講演もされている。
緒方さんは当時、「世界の難民の半数以上は子どもである」と述べ、難民が祖国に帰ったとき、また国内避難を終えたとき、新しい生活を立ち上げ暮らしていくためには「教育」が必要であると主張し、2000年に「難民教育基金」を創設されている。
「彼らの人格、忍耐力、勇気を祝い、明日への夢を約束したいのである」と述べられていた。
まさに、人間一人ひとりに焦点をあてた安全保障の基礎を築いた、偉大な日本人女性であったのだなと感じた。
最後の章では、「世界へ出ていく若者たちへ」と題して、語学力と合わせて、好奇心を持つことの重要性を主張されていた。
「人間は仕事を通して成長していかねばなりません。その鍵となるのは好奇心です。常に問題を求め。積極的に疑問を出していく心と頭が必要なのです。」と。この言葉は、どんな仕事も通用する言葉であるように思う。
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あまり詳しくはしりませんでしたが、何となく尊敬する
世界で活躍している日本人として、緒方貞子氏の
イメージを持っていました。
いろいろな活躍や、アグレッシブな考えにふれて
感銘を受けましたが、一番のところは今の私と同じ、
ちょっと上の年齢で、国連難民高等弁務官に就任
(引き受けれられて)して、それからの
非常にアグレッシブな行動に脅威を覚えました。
自分もこのままでは、まだまだこれから。と思える内容でした。