日本銀行の役割と責任を自らの経験から説いた書です!
2018/10/13 11:52
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、セントラルバンカーとして39年もの時間を費やした白川氏による日本銀行の役割と責任についての論考です。著者は1972年に日本銀行に入行され、その後、2008年から13年までは日本銀行総裁という最も責任のある立場にもおられました。そうした人生での経験を通じて改めて知った中央銀行としての日本銀行の役割と責任について、自らの考えや経験、さらに苦労などを振り返りながら、自身の半生に沿って語られた傑作です。外部の人間には到底想像もつかない、とても興味深い内容です。
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投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日銀の元総裁白川方明氏の回顧録である。経済や金融について詳しくない者の一人だが、この本を通じて改めて金融政策の難しさを感じた。日銀の業務や使命に関して、理論と現実、全体と部分、短期と長期などの多様な軸の中で、総合的な視野、実証的な分析、学究的姿勢などによる取り組みは強く共感できるし、本の内容もなんとか理解できる。
日本銀行の中央銀行としての役割や目的について熟考し、行動していく著者の態度は一貫している。第3部のところの中央銀行の組織論は現代の他の組織でも通用できる議論ではないかと思う。
一方で現在の日銀の対応状況を見ていると、元総裁の教訓が活かされていないばかりでなく、手段が目的化し、思考停止状態に陥っているように思える。現総裁も将来退いたら回顧録を著して、後世に教訓を伝えていく義務があるのだろう。
戻ってこの回顧録、700ページをこえる長編ものなので、読む終えるのに一苦労する。広く一般の人に著者の考え方を知ってもらうようコンパクトにまとめた本の出版も期待したいところである。
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投稿者:ペンギン - この投稿者のレビュー一覧を見る
厚いし、表紙の文字もおカタイ感じなんですが、中身はびっくりするくらいわかりやすいです。中央銀行の仕事がどう大変なのか、共感できるところがたくさんありました。言葉も丁寧で、日頃いかにアカウンタビリティーを重視してお仕事されていたかが伝わってきました。
事実と誠実に向き合うという事
2019/02/02 11:29
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投稿者:kei - この投稿者のレビュー一覧を見る
序章の筆致に惹かれて購入。
著者の日本銀行における経験が、その時々の考えや意思決定と共に綴られている。
在任時は、金融危機や大震災など困難な状況が続いたものの、その中で、目の前の状況だけでなく、将来に対してどのような心持ちで仕事に取り組まれていた事がよく分かる。
メディアを通じた人物評では知る事が出来なかった側面を知る事が出来たことが嬉しかった。
大部だが、折に触れて読み返したいと思う著作です。
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著書の総裁時代の国会答弁が論理的で端正だったことに感銘を受けていたので、その考え方や行動原理を知りたくて購読した。目的は十分に達せられた。
各論については種々の立場や意見について網羅的な解説があり、その中で自分の取る立場や思いが明瞭に記されている。特に、それが誰の意見であるかを明示するところが著者らしい誠実な態度だ。
何が正しいのかなどわからない、という懐疑主義がこの本の全体を貫いている。読者の中には正解を明示してくれない態度に業を煮やす向きもあるかもしれないが、私にはそれが著者の謙虚さに感じられた。学者の話が好きな人にはお勧めできると思う。
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こうも万感胸に去来し、静かな充実感を持って読了する本があっただろうか。
強くお勧めしたい名著。
白川前日銀総裁が、ご自身の中央銀行生活を振り返って著した大著。700Pを超える圧巻のボリュームながら、読みやすく、読書が得意とは言えない私でも、一気に読み進めてしまった。
日銀というと金融政策が注目されがちだけど、この本は、題名にも表れている通り、金融政策のみを論じるのではなく、著者が自身の経験を踏まえて、広く中央銀行のあり方について考えを述べている。本文を読み進めるごとに、こうした印象は強くなっていった。
本書の大きな特徴の一つが、上述の通り、読みやすいこと。著者が当時直面していた経済・金融情勢について論じる際にも、過度に複雑で、技術的な議論はなされておらず、基本的な経済学の知識だけでも相当程度理解できるような書きぶりになっている。また、金融政策に留まらず、中央銀行の業務・あり方について広く議論していることが、わかりやすさやとっつきやすさにプラスとなっている側面もあると思う。
僕自身は最近になって金融政策について少しずつ勉強を始めているところで、この本は中央銀行論や金融論、さらには一仕事人としての生き方についての示唆に富んでいるという意味でも非常に有益だった。
中央銀行の業務や意義については、高校の政治経済の授業等で学ぶものの、多くの人にとって決して身近ではないだろうし、かなりの程度未知の存在だと思う。
しかし、いやむしろだからこそ、一人でも多くの人にこの本が届き、中央銀行や経済政策に対する理解が深まり、なおかつそのより良いあり方について、社会的な議論が盛り上がるきっかけになればと、そんな壮大なことまで願ってしまうくらい、心に響くものがあった。
それと同時に、本書において、静かな語り口は静かながら、著者の熱く確固たる信念と矜持が窺える点や、一貫して理論と実際、理想と現実等々の間で絶妙なバランスを取りながら議論が進められている点から、著者の人となりに想像力が及び、一仕事人として、白川さんのようでありたいとも感じた。
おそらく、白川さんに限らず、社会を牽引する重責を担う人の多くは、こうした立派な仕事人であるだろう。
そうであるならば、僕も少しでもそのような人に近づけるよう、本書から窺える白川前総裁のお人柄を具体的な理想像として持ちながら、精進していきたい、と思った。
ここまで色々感想を述べたけど、一言で言えば、とにかく面白い(interesting)な一冊。
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冒頭の、アイスクリームの話、嬉しかっただろうなぁ。それにしても白川さんらしい1冊。包括的でいて、緻密で、慎重。とっつきにくい内容もかなりありますが、金融政策の立案と遂行がどれだけ泥臭いかは分かるし、組織の長として直面するプレッシャーや求められる体力と責任感の程も分かる。
「自己弁護と他人への批判と誤解されること」への不安を乗り越えて執筆された白川さんには感謝。今後もこういう本がたくさん世に出てほしいなぁ。黒田さんも書いてくれないかな。一般市民や学生を読者層にするのであれば、新書くらいのボリュームのものも出していただきたく。。。
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前日銀総裁の白川さんの回顧録。ほぼ文字で埋まった730ページの大部。新年早々読了に2週間近くかかった。まずは、疲れた、というのが読了後の感想。しかしながら、改めて白川さんは大変な時期を日銀総裁として過ごしたんだなぁと気づかされます。2008年の春、衆参捩れの政争の結果として副総裁から総裁代行を経て総裁に。さっそくリーマンショックが発生して、民主党政権の誕生。やがてギリシャを発端とした欧州債務危機が発生する中、2011年には東日本大震災と原発事故。そして在任期間終了間際の2012年末には再度の政権交代で自民党安倍政権が誕生。安倍政権の日銀一体化路線の末に本来の在任期間より少し早めに総裁を辞任。まぁ大変な五年間だったろうと思います。
前半は日銀の勤務してから総裁になるまでの部分と総裁の5年間のことについて。後半は中央銀行の役割とか、独立性とは何かとか、国際通貨制度(為替)、デフレ現象と景気のこととか、テーマ毎に考察されています。回顧録的な部分では日銀が何をしている組織なのだとか、総裁は何をしているのか、政治との関わりなどが分かってそれなりに面白いし、後半の考察もそれぞれ興味深い。ある程度のマクロ経済や金融、会計に関する知識がないと読むのは辛いでしょう。学術論文ではなく一般読書も読めるように書かれていますが、かなり専門的な内容も語られているものの、専門用語の分かりやすい解説などは一切ないので。
なるほどと思ったのは、中央銀行(日銀)に通貨発行権があることが意味することの説明。通貨とはもともと金などの資産の預り証なわけで日銀にとっては負債(借金)。しかも利子が0の借金。一方、中央銀行も利子付きの資産(例えば国債だとか民間銀行への貸し出し)を有しているので、(マイナス金利で限り)どんな状況でも必ず利ざやのために利益がでるということでした。そして、利益から人件費などの経費を引いた残金が毎年国庫に納付されているそうです。中央銀行に限らず、銀行という存在自体に広くある程度当てはまることなのかもしれないけど、得心しました。
日銀の役割は「物価の安定」と「金融システムの安定」とのことです。金融システムの安定に関しては、あまり一般に認識されてはいないけど、技術的な問題でもあり、どんどん向上しているようです。でも、グローバル経済の進行する中、物価をコントロールするのにどうすれば良いのかはまだまだ分かっていないようです。国家間の政治も絡んだ複雑系ということでしょうか。将来にわたって物価がある程度予測できないと資本主義経済では投資が冷え込んでしまうわけなので、物価の変動をなるべく小さくコントロールするの日銀の仕事。そしてコントロール可能な範囲の変動に納めることができなくなると条件が変わって未知の世界になってしまうようです。ある意味、日銀の仕事は裏方であって、資本主義経済の下で皆が安心して経済活動を行えるような環境とインフラを整備することであるようで、金融危機や不景気が起きたときには、正常な状態に戻るまでの衝撃を和らげる時間稼ぎを行うことができるに過ぎないということのようです。だから、経済活動自信の活発化とか、生産性、経済成長率の向上のようなことは、政��の問題であって、日銀がそのような政策を後押ししたり邪魔しないようにはできるかもしれないけれど、経済が成長しなくなった原因を除去して対策をしなければ、当然ながら日銀だけで実質的なことはできない。ということでしょうか。
最終章でも断られていますが、白川さんが総裁を辞任してから今まで、つまり黒田総裁の異次元緩和5年間のことについては具体的には言及されていません。直截的には何も述べられてはいませんが本書を読むと、「私が考えていたとおり、お金をじゃんじゃか市場に供給したって物価は上がらなかったね」という思いが他の章を読めば分かります。安倍政権になって円高から円安に向かったのも、どうもその前年からユーロ危機の収束によってジョジョに始まっていたようで、単にそれを少しばかり加速させたきっかけに過ぎないようです。いずれにせよ、日本経済、財政の現状は、いろんな意味で将来世代からお金を借りて時間稼ぎをしているような状態なので、労働人口も減っていく中、これからどういう国になっていくのかを本気で考え、それに向けて着実に進んでいくことが必要であると感じました。
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総裁就任後に直面する、リーマンショック、欧州通貨危機、加えて、東日本大震災等。改めて知る、激動の時代における中央銀行における種々の決断の重さであります。ポールソン回顧録等と合わせて読むことをおすすめします。いわゆる、リフレ派、に対する懐疑的な見方にも、なるほど、なるほど、であります。現在の日本経済が抱える、少子化、高齢化、持続可能な財政等、という厳しい現実についても、理解を深めることが出来る良書であります。星4つです。
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筆者が一般市民はもとより、エコノミスト、マクロ経済学者、政策担当者を読者として念頭に置いてると書いてあるが、まさにそれらの人にとって必読書であると思う。筆者についてはいわゆる「リフレ派」との論争が記憶にあるが、浅学菲才ながら、自分としては筆者の主張の方が論理的で納得感のあるものであった。また、安倍政権のもとで発表された政府・日本銀行の共同声明について、後の日銀の金融政策に関する制約にならないよう苦心された様子が書かれていたが、その苦労が現総裁によって水泡に帰したと感じているが、筆者は現在の金融政策をどう思っているか知りたい。
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白川元日銀総裁の超大作。実際に750ページ以上あって本が安定して「立つ」。今年の年末年始はほぼこいつに費やしてしまいましたが、いい時間でした。
さて、副題に「セントラルバンカーの経験した39年」とあるとおり、本書は白川氏が日銀に入行してから総裁時代までを、当時の状況に立ち返って書かれた本です。総裁時代には、リーマンショック/欧州通貨危機/東日本大震災と激動の時代を経て、アベノミクスに突入します。積極的な金融政策を政治・社会から求められ、日銀が批判にさらされた時代でもあります。
リーマンショックの際、日本の銀行はサブプライムローンをはじめとする、いわば「怪しげな証券」をあまり保有していなかったこともあり、金融システムへの影響は限定的でした。しかし、実体経済の回復は遅く、回復に時間を要することになります。そして低成長、低インフレの時代が続き、「デフレ議論」が活発になっていきます。
「…日本のデフレ議論は、日本経済にとって不幸なことであったと思う。その最大の理由は、日本経済の直面する問題の原因が物価の下落にあると断じたことである。」(p320)しかも、「デフレは貨幣的現象」とされたので、中央銀行が正しく金融政策を行えば万事解決するという考え方から、日銀に対して積極的な金融政策をするよう大きな圧力がかかります。安倍自民党の選挙では、それが大々的に選挙公約とされてしまう。構造改革や財政再建が本当は必要なのに、それには痛みが伴うので、中央銀行が選挙の道具にうまく使われて、先延ばしにされてしまったのかもしれません。
このような状況のなか、中央銀行総裁には判断が求められます。本書では、当時の状況を振り返りながら、どういう決断をしていったのか、あるいは本当はこうしたかったのにという思いが語られます。人によっては(特にリフレ派の人にとっては)、言い訳ばかり書いてる本、と捉えるかもしれませんが、今後の金融政策を理解していくうえで、大きな示唆を与えてくれる本であることに変わりはありません。
中央銀行のやっていることはなかなか市民に理解してもらえません。非伝統的金融政策なんてほんと分かりにくい。だからこそ政治の道具になったりもします。だけど、この本を通じて少しでも、中央銀行の賢明な理解が広まることを期待します。
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2019年1月27日図書館から借り出し。全758ページ、二週間で読めるかな?
2019年2月6日読了。
読み終わったときに深いため息とともに、久しぶりに満足感と、どこかしら心地よい疲労感と高揚感を覚えた。
プロフェッショナルとして日本銀行総裁の職務に誠に真摯に向き合った姿が本当によくわかる素晴らしい本で、よくぞ書き残してくれたという感謝の思いが強く湧き上がる。
同時に、情報公開法等や守秘義務の制約もあり、書ききれていないことがあることは冒頭に断りが入れられている。
なろうことなら、死後公開という条件付きでも更に詳しい事情を書き残しておいたもらえば、この先、経済学を志す若き人々に一層貴重な財産となるに違いない。
その以前に、この丁寧に書かれた本は、経済学徒のみならず、いささかなりとも金融業界に身を置く者であれば目を通しておくべき本だと思う。
実務に支えられた論理の展開には知的な興奮を誘うものがあり、また経済学の本や論文を読みたくなってきた。
巻末に、浩瀚な参考文献表が付いているから、さしあたりこれが手がかりになりそう。
著者は、最後に「謙虚さ」を強調しているが、たまたま今日の夕方見た国会中継での総理大臣の答弁を見ていると、対極の「傲慢さ」に満ちていたなぁ。
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日本人100人のうち99人が興味のない内容だと思うが、この15年、円債投資、ALMとして金融政策に翻弄され続けている自分にとっては、本当に身近に感じる、貴重な本であった。
今の黒田緩和に対する意見は一切書かれていないが、読めば読むほど、出口のない現在の政策は間違っていると認識させられる。
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あとがきのページの最後までで738ページと、ここ最近で一番長い本だった。しかし実際、著者が日本銀行に勤めたのは39年であることを考えると、一冊の本に書ききれることも限られては来るのだろうと思う。
金融についてはとても疎いため、正直内容の半分も理解できていなかったと思うけれど、実体験に基づく金融を語っているので面白いなと思う部分も多々あった。金融の世界の構図や流れのようなものも知ることができ、同時に一人のキャリアの中でこれだけのことを経験し考え、伝えることができるのか、と個人的に感銘を受けた。
中央銀行と金融政策、そして財政がどれだけ私たちの経済に重要な役割を担っていて、私たちの暮らしに影響を与えるのもであるかが分かったので、もっときちんと勉強して、もう少し理論的な部分についても理解できるようになりたいと思った。
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自分が金融取引に真面目に取り組む前の総裁だったので地味なイメージしかなかったが、本当に深い洞察、信念が垣間見え、大変素晴らしい書籍だった。政治との関係など、普段われわれに見えない点がかかれていて大変興味深かった。後付け説明的なところもあるだろうけど、強い責任感は本物であったと感じさせる。