紙の本
【探したけど、希望はどこにも無い。あったのは儚い幻】
2023/05/30 23:04
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投稿者:えびし - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学生ののぞみが殺害された容疑で捕まった同級生、ネガの動機を調べる事になった刑事達はその背景の社会の闇に気付く物語。
深夜に起きた首吊り自殺。
捕まった少女に動機を聞いても黙秘を貫くのみで、その不可解さが解決の糸口となる。
そこにあったのは中学生を働かされる圧倒的貧困。
しかし、アフリカなどの飢餓や苦しみがある訳では無い。
不幸を比べる事自体が歪だ。
当事者にしか分からないそれぞれの地獄がある。
信頼出来る大人に搾取される子供達の痛みを想像するしか救いは無いのだ。
紙の本
希望の灯はともるのか
2020/03/15 10:44
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投稿者:ヤマキヨ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書では同級生に対する中学2年生の殺人事件の捜査が展開されます。なぜ同級生の殺害に及んだのか。そこには、児童の貧困、貧困の連鎖、セーフティーネットの実効性などの社会の様々な課題が絡んでいます。このことがステレオタイプ的にとらえられていた主人公たちの人物像の真の姿が明らかになっていくと同時に、事件の真相が暴かれていきます。
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現代日本で困窮する子供とその周辺環境を赤裸々に描くミステリー。
犯人役主人公の冬野ネガ(すごい名前だ)が春日井のぞみを殺害後偽装しているところを警察に発見されるが、頑として理由を説明しない──。
これでもかというくらいにネガの不幸が書かれ、普通に考えれば「こいつが殺ってもおかしくない」くらいの不幸のどん底に落とされるネガ。母親が死ねばよかったのに…。
読んでいる最中も眉間にしわを寄せながら読んでいたような気がする。
真犯人はちょいと強引な気がしますね。
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【教えてください。彼女を殺したのは誰ですか?】十四歳の少女が同級生殺害容疑で緊急逮捕された。少女は犯行を認めたが動機を全く語らない。捜査を進めると意外な真実が明らかに…。
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文庫化。
天祢涼はデビュー作ぐらいしか読んでいなかったので、こういう社会派路線の長編を書いているとは思わなかった。メフィスト賞デビューの作家は本当に幅広いな……。
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「セケン」、「シャカイ」という得体の知れないボヤけた化け物に「チイサナキボウ」が殺されたのだ。
夕方のニュース番組で流れる悲しいニュースの濃い部分を抽出して書き記した、そんな1冊だと感じた。
この小説の中で唯一の救いがあるとすれば、それは「死」ではないだろうか?
しかし、死を通してハッピーエンドを得るはずだった2人ともハッピーエンドを得ることが出来なかった。
悲しきハッピーエンドを迎えることも許されないのが社会なのかもしれない。
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表紙からはもっとライトな感じの物語かと思っていましたが、わりと本格的なミステリでした。
互いに親友と呼ぶ女子高生たち。そのひとりが相手を殺したと容疑で捕まった。刑事としての初仕事で、半落ちでは起訴できないともなれば目をかけてくれる上司に面目もたたない。
そんな中、バディを組まされたのは所轄の女性警官。
なりやら同僚からも疎まれている感じもある。
はたして、この女子高生はなぜ死んだのか、そして自分こそがその犯人だと名乗る真意は?
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日本の貧困家庭に暮らす中学生の女の子二人をメインに話が進む、推理小説です。中盤ぐらいまでは、そんなに大きなトリックはありませんが、中盤から終盤にかけて大きく警察の捜査がすすんで大きな盛り上がりを見せます。トリックなどは、抜群だと思いましたが、それ以上に中学生二人の環境に憐憫の情が湧いてしまいました。貧困がテーマなので、あまり愉快な話ではなかったものの、人にはお勧めしたい一冊でした。
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同級生を殺害したとして14歳の女子中学生が逮捕された。
彼女は犯行を認めつつも「なぜ同級生を殺したのか」という理由を一切語らない。
「あなたには何もわからない」―。動機を必死に探す刑事たちは彼女を取り巻く闇を明らかにできるのか?
子どもの貧困、生活保護、福祉という現在の日本が抱える社会問題に深く切り込んだ1冊。
多くの読者が主人公の刑事の1人・真壁の立場に共感または逆に嫌悪しつつ物語を読み進めることになると思います。
真壁自身も幼少期に貧困で苦しみながらも努力で警察官になった経験があるからです。
しかし物語が進むにつれ、真壁自身の貧困に対する考え方に変化が見られるようになります。
おそらくここで読者も深く考えさせられることになるのではないでしょうか?
ミステリーや警察小説として読みごたえがありつつも、今の日本が抱える貧困や福祉の大問題を各登場人物の生い立ちや言動から多角的に捉え、読者を揺さぶり、深く考えさせます。
最後に筆者から与えられる問いにあなたならどう答えるでしょうか?
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次に読む本を求めてネットを彷徨っていたところ、細谷正充さんが本書に寄せた解説がたまたま目に留まりました。「面白い作家が、凄い作家になる瞬間がある。天祢涼の場合は、本書『希望が死んだ夜に』だ。」という書き出しを読んで、すぐに購入しました。
天祢涼さんという作家さんは今回初めて知りましたが、(細谷さん曰く)本作品はこれまでの天祢さんの作風とは大きく異なるそう。デビュー以降、特異な設定や変わった職業を題材にしたユーモラスなミステリが得意だったようですが、初めて読んだ本書がシリアスな社会派ミステリーだったので、今度は初期の作品も読んでみたいなと。
「神奈川県川崎市で、14歳の女子中学生・冬野ネガが、同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で逮捕された。少女は犯行を認めたが、その動機は一切語らない。何故、のぞみは殺されたのか?二人の刑事が捜査を開始すると、意外な事実が浮かび上がって―。現代社会が抱える闇を描いた、社会派青春ミステリー。」
(―文春文庫 内容紹介より)
同級生の殺害容疑で逮捕された中学生・冬野ネガと、その事件を担当する刑事・真壁巧の視点で過去と現在が交互に描かれ、少しずつ事件の真相が明らかになっていきます。最後まで展開が読めず、また人の心理が丁寧に描写されていて、ミステリーとしてもヒューマンドラマとしても生々しさがあり読み応えがありました。
本書は全体をとおして、「貧困」がひとつのテーマとなっています。
貧困というと、それこそアフリカのやせ細った子どもたちが大きな目でこちらを見つめているような画を想像してしまいますが、誰もがお金に困らず、裕福に暮らしているように見える日本にも実は貧困は存在する。何も考えず暮らしていると見落としてしまうような「日本の貧困」の実情が、本書では鮮明に描かれています。
貧困問題に対して自分に何ができるわけでもないけれど、少なくとも自分の家族や子孫にはつらい思いをさせないように、家族を大切にしながら、きちんと「稼ぐ力」を養っていきたいと改めて思いました。
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舞台が登戸、向ヶ丘遊園、多摩川ということでちょっと興味を持ったけれど、なかなかに重たいテーマ。
貧困が思春期の子どもに与える影響は計り知れない。素直で優秀で未来に夢を持って頑張って生きている子どもたちの希望が死んだ瞬間を考えると本当に胸が痛く目頭が熱くなる。
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貧困をテーマにした社会派ミステリ。
母一人子一人で生活している中学生のネガ。
母は働いてはいるものの生活は苦しく、情緒も安定していない感じ。
そんな中、ネガと同級生の望の死体が発見され
ネガは自分が殺害したと証言している。
シングルマザー家庭の貧困は取り上げられることも多いけれど、シングルファザーの場合だって
貧困に陥る事もあるんだよな、と少し考えれば分かるような当たり前のことに気付かされる。
この問題は一概に誰が悪いと言いきれない分、切なさが増すけれど、
少なくとも子供たちは未来を見ていた。
大人たちがそれに気付けなかったのが何より残念。
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途中まで、自殺されたことで希望が無くなり「自分がやった」と言ってるのかと思ったら…
そこに関しては予想と違ったけど、なんかしっくりこなかった。誰にも感情移入できなかったからかもしれない。
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2020/1/30読了。
帯の通り、貧困問題と青春とミステリーを見事に融合させた作品。
貧乏な中学生が、なんの繋がりもないお嬢様クラスメイトを殺した容疑で逮捕されてしまう。そして、なぜ殺したかを黙秘し続ける。その真相とは…というなんとも心惹かれる入り。
冬野ネガと春日井のぞみの関係性とそれを取り巻く環境を、ミステリー的な伏線を交えつつ見事に落としていた。完落ちです。
めっちゃおもろかった。
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本の虫である父のおすすめ本。
貧困問題が絡まったこの本は想像する力が試される。
殺したのは誰なのか?なぜ殺したのか?少女に何を告げるべきか?防ぐには何ができたのか?そして、今後何ができるのか?
これからの日本で生きるならば確かな希望を創造する必要がある。