世界インフレの謎 （講談社現代新書）

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欧米各国がインフレ抑制のため金利引き締めを進める中、一向に金利引き締めに舵を切ろうとしない日銀に対する世間のバッシングが強くなっていますが、この本の内容を踏まえると、現在の日銀のスタンスは間違っていないのではないかとも考えさせられます。

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インフレの原因はウクライナ戦争ではない。
物価上昇は２０２１年ごろから始まっていた。
パンデミックによる行動変容が原因

フィリップス曲線が機能しなくなった。
失業率を1%ポイント改善されると、インフレ率が0.1%ポイント上昇する

しかし今回は失業率が2%改善する間に、インフレ率が2%から5%へと高まった。

今回のインフレは需要の過多ではなく、供給の過小にある。

トレンドの変化
１９７０年代にはモノ消費の割合が50%だったのが２０２０年は31%に減少。
パンデミックによってそれが35%まで急激に増加。
産業間の移動が追いつかない

モノ価格がサービス価格との比較で上昇している。

「価格硬直性」によりサービス価格が下がらない。
なぜならコストの大部分を人件費が占めており、その賃金が硬直的だから

米国や欧米などの企業は供給網と安全性、安定性のためにリショアリング（生産拠点の近隣国移転）を考え始めている。
それによって世界貿易の停滞による、インフレ押し上げ効果

日本の実質賃金（名目賃金を物価で割ったもの）の伸び率は0.1%で下から数えて5番目。
名目賃金は最下位の伸び率マイナス。
まずは名目賃金からあげるべき。

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マクロ経済のお話は、どこに「真理」があるのか、わからない。大まかな「ことわざ」のような定石の考え方はあったとしても、それが全ての局面を説明できるわけでもなく、結局、論者ごとの立ち位置によって、さまざまに色彩の異なる、それらしいことを言っているようにも思う。数理的に扱う場合も、おそらく計測の限界があり、基本恒等式を検証することはできても、動的なシステムの真の挙動を十分な精度で説明することも難しいし、振動周期やオーバーシュートの予測を実現させることはできていないのだと思う。帰納的な見解の集合でしかないのかもしれない。

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コロナ禍以後のインフレや日本の慢性デフレについて、平易に解説した良書。

「サービス経済化の反転」や労働者の行動変容の話などは特に面白かった。

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2022年64冊目。264ページ、累計17,351ページ。満足度★★★★☆

著者は日銀出身で現在東大大学院経済学研究科教授。黒田日銀総裁の国会答弁でも著者が行ったアンケートが参照されるなど、今注目の人

本書は、現在、世界を取り巻くインフレなどの状況について、著者の思考の変遷も含めて簡潔に提示

読んで損はないだろう

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　ズバリ気になっていたことなので、本屋で見かけて即購入しました。モーサテではほぼ毎日、米国の利上げ動向、それに反応する市場について報道されていますが、そもそもなぜインフレになったのか気になっていました。
　非常にわかり易い本でした。日本の物価、賃金がともに上がらない理由は、消費者、企業、労働者の絶妙なバランスで成り立っていたということや、日本だけインフレが進まないと消費者物価が取り残され安いニッポンとなってしまうということ等、わかっているようでわかっていなかったことも理解できました。
　現在のインフレはコロナをきっかけにした供給サイドの不足に原因があるようです。従来まではインフレの原因は需要サイドの過熱が要因であり、その対策はインフレバスターと呼ばれたボルガー議長時代からはじまりノウハウの蓄積もあるのですが、供給サイドの不足により生じたインフレ対策のノウハウはありません。現在行われている各国の利上げは、手探りで行われているようです。
　サービス消費からモノ消費へと再び需要がシフトしているという記事をよく目にしていましたが、これもインフレの要因の一つとなっているようです。サービス消費の需要は減っているので価格が下がってもいいのですが、サービス産業に掛かる費用は人件費が中心の為、価格が下がりづらいです。下がるべきところが下がらず、上がるところだけ上がるのでインフレの影響が大きくなっています。またサービス消費からモノ消費へのシフトが、コロナによって突然に、同時に発生した為、資本の移動もスムーズに行われませんでした。なるほど、普段見かける記事を、これもまたインフレの要因だと深く読むことができるようになりました。
　いま日本では、原材料の高騰や円安を背景に価格改定を発表する企業が相次いでいます。この30年間、日本は固有のインフレ予想率の低さと、値上げ嫌いにより物価も賃金も全く上がらない国となっていました。この慣習がいま崩れようとしています。価格改定に合わせて、企業が賃金増加へ舵を切ることができれば、慢性デフレからの脱却となります。賃金が上がることがなければ、それはただの実質所得の低下となります。その場合は対策としては消費を抑えることしかできなくなり、消費が減退し景気後退、スタグフレーションとなります。この二つのシナリオの瀬戸際に日本はあります。所見としては、価格改定に踏み切った企業は、決して業績が良いわけではない為、今後どのようになるか非常に心配です。日本人の考えからすると、ある企業が価格改定し、消費者に負担を強いた上で好業績を発表して従業員の給与を上げるというシナリオは反感を買うのではないかと考えます。原材料の高騰が影響ない企業や、円安が有利に働く企業が先んじて賃金を上げていただきたいです。私は原材料の高騰の影響を諸に受けてしまう業界に勤めておりますが、現在の状況では、何としても賃金は上がってほしいです。
　こちらの本を読んで、今後、インフレや中央銀行の金融政策に関する記事を見かけた際に一歩深く読み取ることができるようになりました。

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コロナによる供給不足によるインフレ。
難しいことを解りやすく記載している。
日本は異常なんだなと思える。
最終章はちょっと難しい!

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まさに現在進行形で起こっているインフレをあつかっている。2022年10月20日発行。おそらく脱稿が8月くらいではないか。11月になって米国CPIが単月データながら落ち着きの兆しを見せてドル円相場も少し様相が変わってきたが、まだこのインフレの行く先は見えない。読むなら今のうちの本だと思うが、後から答え合わせも面白いかも。タイムリーな出版で立派。

まずは日本の物価が欧米を時間差で追いかけていくのか、それともぜんぜん違うルートをたどるのかに注目したい。

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パンデミック後の行動変容を自ら選択した結果、人類が社会科的経済的な行動を変容した結果、今のインフレが起きていること、日本のデフレ脱却のチャンスなこと。わかりやすくまとめられていている良書。