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面白かった! 熱い、けれど暑苦しくない、男のロマンの物語だった。感動した! 熱くても「俺はやるぜ俺はやるぜ」と煩いだけの男のロマンは鬱陶しいだけ。もっとずっと知的で、胸にずしんとくる生き方の物語。時代もの(江戸後期)が苦手でなければ是非ご一読を。
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私も“風羅坊”的要素が強いので、恐らく共感されにくいであろう主人公の幸吉の、落ち着く事を怖がる気持ちが何となくわかります。
なので幸吉のように「手に職」があるとやっぱ強いな〜。なんて思いながら読んでました(笑)。
当時の廻船業の様子など、良く描かれています。
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辛いことがあると、読み返す、
私の最も大切と言える本。
兎に角、登場人物がみんな熱い!
何度読み返しても、泣いてしまいます。
でも、これじゃ↑、何の本か分からないですね。
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尊敬するほどの読書量を誇る友人おすすめの一冊。
タイトルから勝手に化石発掘が絡む歴史ミステリ?なんて思っていたら、痛快!爽快!な歴史小説でした。
実在した“鳥人”備前屋幸吉の物語。これはぜひ映像化してほしいです!
江戸中期、天明5年(1785)捕り物の様子から物語が始まります。
備前岡山の城下町に住む銀払いの表具師・幸吉は凧を作り、それに乗って空を飛んだことで捕らえられてしまいました。
ただ飛びたかった、それの何が悪いのか全く解せなかった幸吉は連行される道中、物見の群集から沸きあがる歓声を目の当たりにしようやく意味を悟ります。
幕府の圧政、搾取に苦しんでいた民衆は銀払いにもかかわらず、鵺となって空を飛び池田藩の悪政を指弾したとして幸吉を英雄扱いしていたのです。
第一部は幸吉が捕らえられるまでの半生が描かれ、第二部では「空を飛んだ表具師」のうわさに触れ、それにより幕府、豪商の癒着と搾取に抗おうと立ち上がる地廻り塩問屋・巴屋伊兵衛、新しい航路を模索していた幼馴染で買積船の船頭・源太郎などとの出会い再会により水主となる幸吉。
第三部、船を降りた幸吉は源太郎の弁財船の楫取・杢平の実家のある駿府城下で木綿商いを始め、また斗圭修理、入れ歯造りなどをしていましたが、再び大空を飛ぶところで物語は終わります。
この第二部がとても読み応えがあり、熱く魅力的な男たちがたくさんでてきます。
とりわけ楫取・杢平は頭もよくまさに船に乗るために生まれてきたような男でかっこよかったです。
凧の骨組みの説明や江戸時代の航路などわからないところも多々ありましたが、一気に読めました。
武士が主役の小説は読んだことがありますが、こういった商業、流通のでてくる話は初めてでとても興味深かったです。
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実在だったか…。和製イカロスとかライトスタッフ的な人生の断片の話では無い。彼の人生のほとんどが周囲の人々も含め大河ドラマのように描かれる。漢字を多用した文体。時に説明過多の展開。群像劇のように主人公が交代する構成。かなり難易度の高い小説だったが一度リズムを掴むと、その内容はかなりの面白さ。江戸期の塩の物流や取引の話、和船による海運の話、航海術の話など、様々な物語の要素が盛り込まれていて一粒で二度三度美味しい。ただ、主人公へのフォーカスが甘く、彼の心情や行動の動機がいまいち伝わってこないのが残念。
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日常の「腐臭」への嫌悪、人生転がり続けなければいけないことを学んだ。嗚呼、男のロマン。構成が巧みだ。
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「異常気象、凶作、飢餓、疫病、火山爆発、一揆頻発、と厄災ばかりがうち続いた暗黒の天明期、一条の羽を頼りに寂光の空を駆け抜けてみせた表具師の残像」(著者あとがきより)
実在の人物・初代備前屋幸吉を主人公にした歴史小説。銀払いの表具師でありながら、巨大凧に乗って空を飛び人心を惑わしたかどで投獄された「鳥人」幸吉と、彼に力を得て人生の再起逆転にかけた男達の姿が描かれている。
気風のよい人間味のある登場人物ばかりで、少なくとも誰か一人には惚れること請け合いである。自分や誰かのために世界を変えようと困難に立ち向かう姿には勇気づけられたし、孤独で同じ魂をもつ者同士の邂逅には心が温かくなった。自分の場合は、「繊細な資質を己で鍛え上げる強さも兼ね備えている」(p.348)下代・安太郎を目標にしようと思った。
幸吉が空を飛ぶ理由は、最後の最後に書かれている。ここではふれないが、どちらかというと飛ぶのをとめる側の私でも感得できる理由だった。
著者の文章はさわやかさが持ち味で、時代の闇は描写されても具体的な悪人は登場しない。私は乙川優三郎の格調高い文章の方が好みだが、艱難辛苦の末にようやくひとすじの光明が見えるような乙川作品より気負いなく読めて、読後感もよい。
努力は必ず報われることを信じさせてくれ、第一歩を踏み出す勇気を与えてくれる作品。逆境にいる人にぜひ薦めたい。
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作者の時代考証はすばらしいのだが、時代の描写と、ほかの人物が多すぎ、それは幸吉の人生がそこに埋もれてしまう分量だった。重苦しい、絶望と貧困の中に生きた幸吉なので、それこそ作者の狙いなのかも知れない。この時代に空を飛ぶ夢はあまりに残酷すぎた。それでも、やはり幸吉をもっと描いて欲しかった。
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いい意味で、思っていた話とは違った。Amazonの紹介文を読んで、「天地明察」のような、夢を追いかける男を描いたわかりやすいエンターテイメントだろうと勘違いしていたのだ。主人公の幸吉が空を飛ぶのは、けして何かの意思表示ではなく、ただ純粋に飛びたいという気持ちからだ。でもそれは暗黒の天明期に必死に生きている市井の人たちを象徴するかのような行為だ。印象的で素朴な人生が幸吉の周りにいくつも姿を現しては消えていく、そういう人生の集合体みたいな本だった。飯嶋さんという作家を知って本当によかった。
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今まで読んできた飯嶋和一の本の中で、一番スムーズに読み進めることができました。
それでも3日かかりましたが。
江戸時代、凧を使って空を飛んだ男がいたことは知っていました。
だから全編彼の話かと思ったら、やっぱり飯嶋和一、いつもながらストレートな話運びにはなりません。
“鳥人”幸吉が空を飛んで、そしてその後の顛末…までが第一部。
舞台は備前〈岡山県〉の児島。
第二部は行徳(千葉県)の塩問屋・巴屋伊兵衛、備前の船持船頭・福部屋源太郎などが、幕府に取り入って儲けを独占する御用商人に一矢報いるために、それぞれに己の心を奮い立たせながら仲間を増やしていく話。
“鳥人”幸吉はその場にいますが、前に出て来ることはありません。
そもそもなぜ幸吉は空を飛んだのか。
それは飛んでみたかったから。
ただ、それだけ。
しかし周囲はそう思わない。
空を飛び、「イツマデ、イツマデ」と鳴く鵺になぞらえる。
悪政に耐えるだけ、豪商たちだけが得をする世の中はイツマデ続くのか。
イツマデ堪え忍ばなければならないのか。
イツマデもこのままでいいのか。
幸吉はただ飛んでみたかっただけなのに、幸吉の行動に背中を押された人々が、少しずつ少しずつ、世の中を変えようと動き出す。
この第二部が一番長い。
第三部は再び幸吉が空を飛ぶ。
しかし読みながら蛇足では?と思っていた。
けれども、幸吉のつぶやく最後の一言を読んで、この一言のために幸吉は飛ばねばならなかったし、第三部が書かれねばならなかったのだと腑に落ちた。
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私の知能が著しく低いため、読了するのがひたすらに苦痛であった
未開の専門的知識をどうにかうまく飲み込むためにはどうすればいいんだろうナ
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面白い!
先日、古書店で手に取ってパラパラと見た所、江戸後期に巨大な羽のような物を作って空を飛んだ「幸吉」という人物を主人公にした小説。遠い昔、学研の「科学」か「学習」のどちらかで見たような記憶が…。
読んでみると、実に良質な歴史小説だった。主人公は幸吉だが、彼の運命が流されて行くように、何人もの人物のエピソードが、リレーのバトンのように連なっていく。最終的にそのバトンは幸吉へと戻っていくのだが、次から次へと現れる人物は、誰もが江戸後期という時代の風に翻弄され、吹き流される木の葉のようだ。幕藩体制は時代遅れの軋みが露わになっているし、沸騰する貨幣経済は全ての人を巨大な資本主義の渦に投げ込む。そんな中で「飛ぶ」という一点のみを最後まで突き詰めた幸吉の生き様が私達の胸を打つ。
人間の尊厳とは何処にあるのか。そんな事を考えさせてくれる、良質の歴史小説に久しぶりに会いました。手に取ってみて良かった。『あたり』を引きました!