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始祖鳥記 みんなのレビュー

第6回中山義秀文学賞 受賞作品

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みんなのレビュー17件

みんなの評価4.2

評価内訳

17 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

凛とした人たちと出会える一冊

2001/11/07 17:59

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:3307 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 読み易い本ではありませんでした。いや、正直に言えば、読みにくかったです。しかし、それでも読まされてしまう、強い魅力があります。

 腐敗して力を失った幕府の下で肥え太る商人たち。彼らが独占を続けることで、人々は飢えて死んでいきます。しかし、武士の中から餓死者は出ません。そんな仕組みで凝り固まった世界で、流通革命が起こります。

 その原動力となった、海の男たちが、予想以上に格好良いんです。彼らの生き方に触れることだけでも、読む価値はあるでしょう。
 時代小説が苦手な方も、是非どうぞ。

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紙の本

大空を飛ぼうとする男とそれを見て闘いをおこす男達の物語

2001/02/10 03:43

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:格  - この投稿者のレビュー一覧を見る

 昔、日本にもライト兄弟のような男がいた、という話かと思っていたら、大分違う話であった。主人公幸吉は、動力をもって、自分で空での動きを制御しようとするのは始めからあきらめており、あくまで、凧に乗って、高いところから長い時間かけて飛び下りることを考えていただけであった。もっとも、鳥の羽の大きさと体重のバランスを計り凧の大きさ、重さをきちんと設計しているところなど、ライト兄弟より100年以上前のことを考え合わせると、やはり天才だろう。この話まではきっと事実なのであろう。
 しかし、純粋に空を飛ぼうという気持ちが、凶作と幕府の悪政にうちひしがれた人々によって、幕府に立ち向かう象徴とみられたことから、藩によって捕らえられてしまう。ここまでが第一部だ。
 そして、悪政になんとか立ち向かおうという気持ちはあるものの、できていなかった男たち、塩屋の伊兵衛、船乗りの源太郎は、幸吉と出会うことによって、幸吉自身はなんらの具体的な手助けはできないのだが、男たちの気持ちを奮いたたせ、闘いを起こしていく。しかしながら、幸吉はいつしか、平穏な暮しに戻っていくものの、..
 天真爛漫とはちょっと違うが、とにかく一途な気持ちによって、直接説得するわけでもないのに、なんとなく、周りの心ある男たちを熱くさせ、闘わせる男。いそうでいて、なかなか実際にはいない性格ではないか。
 悪人がほとんど登場しないのも気持ちがいい。
 裁判を行う富田清兵衛。芭蕉に通じ、幸吉の気持ちを理解する。それでいて、死刑にはしないが、けじめのために厳しい判決をくだす。そして、幸吉の周辺の者にはほとんど刑を課さない。
 舵取りの杢平。いったん引退してからも、新しく蝦夷に航海ができることを知り、海を求める血をしずめられず、再度、海に戻っていく。
 幸吉がただ者でないことをすぐに見破る仁右衛門。そして、素性をただちに調べ上げるものの、口を閉じ、幸吉の面倒をずっと見ていく。
 幸吉の甥、幸助もまたいい。分かっていても止めない。男を知っているのだ。
 素晴らしい男たちばかり。気持ちのいい小説だ。

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紙の本

「通好みの作家」のままでは勿体無い!

2001/02/03 00:59

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mau - この投稿者のレビュー一覧を見る

 飯嶋和一は、これまで私の中では「上手いけど地味・渋」の作家だった。丹念な構成力や描写力は言うこと無しなのだが、物語の自走性というか、流れに気持ち良く身を委ねることを拒否させるような頑なさを感じていた。

 しかし今回はハマったあ。冒頭の蜃気楼の場面から大凧が空に舞う場面、大海原に真紅の旗が翻る場面…次々と頭の中でイメージが映像化されていく。

 ハッピーエンドとはいかないまでも、前向きな物語展開も好感が持てた一因。登場人物のひたむきさもわざとらしさがない。
 特に主人公・幸吉の「飛ばずにはいられない」衝動は、日常生活の中で誰もが押し殺している欲望の顕れであり、物語への感情移入を容易にしている。

 もう「通好みの作家」のままでは勿体無い。より一層のブレイクを!(…でも寡作だから無理かな…)。

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紙の本

始祖鳥記

2000/10/24 21:46

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:螺旋 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 行いの全ては、止むに止まれぬ思いの末に、己が己の為にすること。ならば善行もなければ悪行もない。事の善し悪しは利害がからむ他人が決めること、とは昔も今も変わらぬ浮世のならい。
 
 「お前のためを思えばこそ」と、親が子に尤もらしく因果をふくめても、「それはあんた自身が安心したいからでしょ」と、子は親の身勝手を手もなく見抜く。
 「子のため」「親のため」「世のため」「人のため」「お国のため」はたまた「組織防衛のため」と、大儀も名分もひと様々だが、立派な名分であるほどに、それを言っちゃーお仕舞いよ、言わないうちが花なのよとは、これも人の世の常。始祖鳥記の登場人物たちがいくら立派な行いをしようと、決して口にしないのが「人のため」というこの一言。

 豊かな生を全うするには、豊かな心持ちで生きるがいい。人に先んずる事も、人より利する事も、他と比して己の貧富を確認することも真の豊かさへと通じるものでないことなど重々承知はしていても、市井の凡人はただ仰ぎ見るばかりで、たどり着くさえ難しいその境地。
 
 だが、難しくはあっても決して不可能ではないその場所に、己を見いだし、力まず、奢らず、飾らぬ自然な佇まいのうちに、かつてこの日の本を、誇り高く颯爽と駆け抜けた人達がいたことを、「嵐を越えずに咲いた花などない」その花の軌跡が、人の心に刻み込んだ陰影の深さ、滴り落ちた色彩の鮮やかさとを描いて、この『始祖鳥記』は間然とするところがない。

 飢饉と悪政に疲弊した時代とそこに生きた人々が、抑制された筆致で端正に造形される。無常観は諦観や諦念と馴染みやすいが、この作者の無常観にはそれらを拒否し、より能動的な力となって主人公の行動を支えるという新鮮さがある。
 
 年代記の体裁をとりながら、それぞれのエピソ−ドを象徴するような名場面をイマジネ−ション豊かに用意し、重い素材もグラフィティ−感覚で軽やかに演出するセンスの良さと確かな力量。例えば、暮れなずむ空のはるか高みに、金色に輝く凧が一つというビジュアルの見事さ。塩、船、凧などの素材の意外性、考証の明確さや、描写の新鮮さから、書かれたことの背景に沈み込んだ書かれなかった言葉の膨大さが伺える。
 
 自分の仕事に誇りを持ち、志と共に生きることによって生まれる尊厳が、やがて周囲に少なからぬ影響を与え、人を動かす見えない力になるのだとしたら、「空飛ぶ表具師」備前屋幸吉の翼同様、飯嶋和一の誠実な仕事振りにも、その確かな力が満ちているようだ。

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紙の本

日本経済新聞2000/3/19朝刊

2000/10/21 00:17

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:野口 武彦 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 鳥のように空を飛びたいという夢想は人類に普遍的であり、江戸時代にも「鳥人」幸吉という男が飛行機の発明に夢中になった話が語り伝えられている。
 『始祖鳥記』の一編は、この人物の数奇な半生を描いた物語である。時代は江戸中期の天明年間から文化の初年まで。日本の十八世紀最後のほぼ三十年にあたる。備前児島に生まれた幸吉の行状をなぞるだけだったら通常の奇人伝で終わるところを、作者は塩商人と廻船の船頭という二人の副主人公を配することによって、作品の世界を思い切り広げることに成功している。
 天変地異が相継いだ天明期は、諸国の飢饉をよそに幕府と癒着した問屋商人の営業独占が民に災厄をもたらしていた時代でもあった。生活必需品である塩及びその廻船の独占を打破すべく、二人の男が立ち上がり、幸吉との不思議な接点がかたちづくられる。民衆からはヒーロー視され、権力には罪人視される幸吉に発奮して、舞台は雄大に千葉の行徳と備前岡山とを結ぶ行動半径を機軸としてひろがる。
 作者が寡作であるのもむべなるかな、この長編小説には技術史、塩業史、海運史の知識がよくぞ調べたという感じでぎっしり仕込まれており、文章はもう少しあそびがあってよいくらいに緊密であり、ちょっとへんくつな文体に独自の風格がある。
 天変があれば人妖が出現するという言い伝えの通り、これらの三人は反・独占の流通革命をめざす闘士といった面持ちで活躍する。世界は陸から海に溢れだし、さらに空に向かって開かれる。幕府政治の腐敗と独占価格に対抗する男たちの物語にはぐんぐん引き込む力があるが、それ以上に、主人公の幸吉が身の破滅を覚悟で大凧にぶらさがって飛ぶラストシーン。ついに日常生活にあきたらず、空に呼び戻されるこの結末には、達成感とわかちがたい孤独の悲哀がこもっていて印象的である。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000

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2006/09/14 21:35

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2009/04/30 20:18

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2009/09/26 13:13

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2010/09/28 14:04

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2009/09/21 12:13

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2011/09/24 13:49

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2013/01/04 00:57

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2015/01/25 17:40

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2017/06/04 21:50

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2017/08/28 21:23

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