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紙の本
絢爛たる幻、静謐なる怪奇
2001/11/27 14:40
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投稿者:佐々宝砂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
横尾忠則描く表紙が美しい。火焔に巻かれて舞い立つ巨大な鯉に、満開の桜と花火が華を添える。しかし、遠景に見えるのは、川の中でもだえ苦しむ亡者の群だ。よく見れば、炎に灼かれる亡者の姿も見える…
さて、本をひらけば、のっけからただならぬ気配。「色濃い闇が垂れ籠めている。/ なにも、見えない。なにも、動かない。ふだんは、ここは、物音ひとつしない、静謐(せいひつ)の大暗黒に領された死の国である。」 冒頭からこの緊迫感。そして、ねっとりと色濃い闇に、きらびやかな涼しい音色が響く。闇に浮かび上がる、銀の小花の花櫛。舞台の一角が照らされるように、そのまわりだけが明るくなって。
そこまで読んで、私は気づく。普通の小説を読むようにするすると読んでは、いけないのだ。舞台監督になったつもりで、脳裏にくっきりと絵を浮かべて、読むべきなのだ。そのまま舞台にかけられそうな感じがするのに、ト書きのようなポキポキした描写ではない。恐ろしく詩的だ。そこに芝居めいた台詞で登場するのは、夜着に羽織をひっかけた若者と、姫姿に着飾った太夫(たゆう)。続いてていねいだが俗っぽい口調で現代の女優が現れる。三人の台詞から察するに、そこは、通常の世界ではないらしい。女人禁制の魔界なのである。そしてそこの住人は一種の精霊なのだ。肉体が亡びてもなお、消えることなく生きている、妖しい存在。彼等の暗黒の国は、江戸爛熟退廃期の楽屋そのもの。賑やかに騒ぐのは女形、床山、若衆、囃子方(はやしかた)、黒衣(くろご)…彼等は、桜の精気を吸い取って、芝居遊びに桜遊びとしゃれこむ。そんな魔界に、生身の、しかも女が侵入したのだから、無事にすむはずがない。太夫の一人はまなじり決して「いけしゃらくさい、帰れ!」と命ずるが、当の女優とて、伊達や酔狂でこの魔界を訪問したのではない。彼女には、彼女なりの、狂おしいまでの芝居への情熱があった…
こんな要約は本当のところ無意味。贅を尽くした文章の綺羅を味わうべし。私の書評なんか読むのやめて、さっさと『星踊る綺羅の鳴く川』をお読みなさい。申しあげることは、これッきり。サァサ、お早く、お読みあれ。
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