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エレナー・スターン
「『 光はすでに暗いものを更にくらく見せるだけだ 』とスロヴァックは言っているわ。なぜ、彼はそんなふうに感じるのかしら?」
ポール・グレーヴズ
「人生は生きているもののことなど気にもかけない、と知っているからですよ」
(P.238)
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日本人作家にはない物語の構成で、新たな感想を抱くことが出来た。
ただ、翻訳なので原語のまま読めたなら、評価は☆5個になっていた気もする。 翻訳では、あらすじは追えても最後のどんでん返しにインパクトがどうしても弱くなってしまう気がする。
とは言っても、今まで翻訳なしで読んだことなどないので、勝手な想像でものを言っているだけではあるけれど。。。。。
姉を殺された作家に50年前の殺人事件の顛末を物語として書いて欲しいという依頼が舞い込む。
その事件は犯人が捕まらず終わってしまい、殺された少女の母親がどうしても悔いが残るという手紙をその舞台となったリバーウッドの現主人に送ったことがきっかけとなる。
主人公の作家ポールは50年前にその場所にいた関係者のアリバイや行動を生きている人間には直接会い、またその事件を担当した刑事の残した資料を元に推理を重ねていく。
ポール自身が姉を殺された時の記憶が事件を追うごとに重なり、自分を追い詰めていく。
そんな時同じリバーウッドに宿泊していた女性脚本家エレナーと知り合い、一緒に調査を進めることになる。
この事件はナチスドイツの人体実験というとんでもなくスケールの大きなものにまで話が広がり、この事件の真相が明かされると共に、ポール自身の姉が殺された事件の真相までが読者に明かされる。
読みづらい本でページが進むと言う感じではなかったが、
ラストは一気読みしてしまい、途中ホラーでもないのに怖かったりドキドキ感があったりした。
何より読後感が今まであまり味わったことのないような良かった感と、疑問、怒りが入り混じったような感じがした。
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「かなり怖い」「衝撃の結末」という紹介文句に惹かれ、読んでみたけれど……ま、期待が大きすぎたかな。でもたしかにページをめくる手は止まらず、かなりハイペースで読んだ方。
作家である主人公グレーヴズは故郷に近い田舎町リバーウッドの女領主に呼ばれ、昔ここで殺された少女フェイの事件の再調査を依頼される。もちろん女領主が彼を見込んだのには理由があって、グレーヴズには子供の頃、何者かに姉をなぶり殺しにされるという悲惨な過去があった。
みんなに愛されていたはずのフェイはなぜ、そして誰に殺されたのか? リバーウッドを調べていくうちに領主のディヴィス家の秘密が徐々に明るみに出てくる。と同時にグレーヴズも姉が殺されたときのことをどうしても思い出さずにはいられなくなる。当時、姉の死体を発見したグレーヴズには決して誰にも話せないことがあり、そのことが大人になった今も彼を苦しめ続けていた。やがてフェイの死の真相にたどり着いたとき、彼はついに初めて他人に姉の事件の真実を明かすのだった……
え~、フェイの死にまつわる秘密は想像を越えるところからいきなり持ってこられた感じで、イマイチ腑に落ちないというのが正直なところ。かわりにグレーヴズが抱えていた秘密はじつにヘヴィで、これはまあ感じようによっては「かなり怖い」とも思う。個人的にはあの夜のことをもっと詳しく語ってほしかった
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米原万理の「打ちのめされるような小説」に丸谷才一の「笹まくら」と比較され、気の毒くなくらいきめが粗いと評されてしまっているのだから、私がまた、日影丈吉の『女の家』とくらべてしまうのは筋違いかもしれない。
『女の家』のしっとりとした、それでいて人間の暗い部分、記憶のおぞましさの恐さが迫ってくるのにはかなわない。
たまたま続けて読んだ私のせいかもしれない。
ミステリー作家の少年時代の過酷な経験と作家自身の作品とまた別件、50年前の少女殺害事件の謎が交互に記されていくそのストーリーは、それなりに夢中に読ませるのだけれど、過去と現在を交錯させる手法に頼りすぎているのかと思う。
解説によると、薄皮をはぐようなサスペンスと読み応えのあるトマス・H・クックの作品は、次作「心の砕ける音」だそう。いつか読もう。
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この重苦しい気持ちをどう表現していいのか全く分からない。話の構成としては面白いと思ったけど、何だろう…今迄読んだ作品の『闇』とは違う二度と読みたくない、おすすめしたくない本
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まずはこの非常に印象的な表紙に触れねばなるまい
初めに皆さんが本を手に取るにあたっての表紙がその行為に与える影響は如何ばかりであろうかを考えてみたい
私自身のことで言えばかなりの影響があることを認めるのにやぶさかではないし
世にジャケ買いという言葉があることや
このブクログ内においても表紙をテーマにしたブックリストを多くの方が作成していることからも
その影響は(多少のばらつきはあったとしても)非常に大きいと結論付けてしまっても賛同してくれる方もまた多いのではなかろうか
本書の表紙に話を戻すと
冒頭に述べた通り非常に印象的である
非常にショッキングと言ってもいい
小さな子供の足元が力なく垂れ下がっており、否応なく吊るされているであろうことを想像させ
内容についても多くのことを暗示しているように感じられる
果たしてこれはどんな物語なのか!
吊るされている子供は誰なのか!
子供は自殺なのか他殺なのか!
そしてこの表紙間違いなく見たことあるぞ!
『要は既読』なんちて(前置き史上最長)
さて『夜の記憶』です
読んだことありました!
もちろん表紙で気が付いたので読み始める前なんですが気にせず読み返しました
中身忘れてますからね!(読み進めるうちに中身も思い出しましたが)
面白かったんですがちょっと時間かかっちゃいましたね
全体的にもったりしてるというか…
展開がゆったりというかね
展開がゆったりでも先へ先へと思わせる作品はいくらでもあるので自分としてはそこまで早く解き明かしたい謎みたいなんはなかったんかなと思いました
最後まであやふやなままなこともたくさんありましたしね
ただ真相へのアプローチの仕方や主人公の内面の描き出し方に他にはない面白さを感じました
でもですね
ちょっとこの裏テーマというか事件の背景みたいなんをきちっと納得のいく形に仕上げるにはちょっとページが足りなかったかな〜
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久しぶりにクックの小説を読んだ。暗く沈んだ、重厚で美しい文体は各作品に共通している。この作品もそうだった。
主人公はポール・グレーヴスという小説家。少年の頃、両親を事故でなくしたうえに、姉を目の前で殺されるという悲劇にも見舞われる。ある時、彼の小説を読んだ読者の一人から、彼女が住んでいる場所で起きた50年前の少女の殺害事件の真相究明を依頼され引き受ける。調査を進めるにつれ、少女に起こった悲劇が、姉を殺された事件と重なっていく。小説の最後に、主人公は少女殺害事件の謎を解くが、それが姉を殺された事件の本当の悲劇を彼に呼び起こさせ、彼の心はその記憶に耐えきれなくなる。
ミステリーとしての謎解きよりも、主人公のポール・グレイヴスの少年時代に起きた、姉の死という物理的な悲劇と、その出来事が彼に与えた生涯に渡って消えない傷の物語が主なテーマ。小説の最後は、彼が希望に向かって歩めそうな場面で終わり、それが救い。