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紙の本
「手ごたえのない結婚。不妊。途中までしかかなえられぬ夢。病気。死の予感」等々、明るい話は一つもないが
2000/08/23 00:15
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投稿者:安原顕 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代アメリカの女性作家といえば、長老キャロル・オーツ、中堅アン・タイラー、新人ローリー・ムーアといった名がすぐ思い浮かぶが、日本同様かの国でも、男性作家も含め優れた才能は少なく、新刊が出たら絶対読む! と思える作家は、ほとんどいない。ぼくが最も高く買う作家は、初の短篇集『ストレート・レザー』が出るハロルド・ジェフィ(1938〜)[7月、新潮社より]くらいしかいない。とはいえ、新鋭に出会いたいとの思いは強く、1980年代にデビューしたローリー・ムーアも当然読み、短篇集『セルフ・ヘルプ』(85年、白水U ブックス。このデビュー作、大学院の博士論文として提出したもの)、同『愛の生活』(90年、白水社)、長篇小説『あなたといた場所』(86年、新潮社)と、とりあえず翻訳はすべて読みはしたがピンと来なかった。しかし、最新短篇集『アメリカの鳥たち』(98年)はとても面白かった。「意欲」から「すばらしい母親」まで全12作収録されているが、みな良かった。ここでは冒頭の「意欲」を紹介しておこう。主人公は40歳目前、マイナー映画(中にはポルノまがいのものもある)の女優である。彼女はある時、ハリウッドを引き払って故郷のシカゴに戻り、デイズ・インに週決めで部屋を借り、シェリーを飲み、ファースト・フードを食べる生活をしている。贅肉もどんどん付いてきた。プロデューサーは、しばしば電話をかけ、「早く戻って来い」と言うが、彼女に戻る気はない。彼女は夜になるとブルース・バーに通っていたが、その店でウォルター(ウォルト)と知り合い、たちまち半同棲生活を始める。彼は彼女のタイプではなく、男も、セックスをさせてくれるなら誰でもいいといった不実な浮気者だった。しかし彼女は彼から離れられず、この腐れ縁、当分は続くだろうとの予感で小説は終わるのだ。本作にはこの他にも「手ごたえのない結婚。不妊。途中までしかかなえられぬ夢。病気。死の予感」等々、明るい話は一つもない。にもかかわらず本書は、かの国のベストセラー・リストに顔を出したらしい。「ここにはああいう人しかいない」は、癌になった著者ムーアの息子をモチーフにした短篇、「きみがそう望むなら」は鳥類図鑑『アメリカの鳥たち』の著者、19世紀の自然科学者ジョン・J・オーデュボンの話である。写真のなかった時代には描かれた鳥たちはすべて撃ち殺されたものを写生したのだが、『図鑑』にある歪んだ鳥たちの姿、どこかローリーの小説世界とも通底していると「訳者あとがき」にあった。
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