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紙の本
数年に一度、読み返す度に怖くなる。
2006/09/21 11:00
8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
70年以上前の作品なのですが、描かれた「空想された未来社会」は読み返す度に怖くなります。我々がどんな社会に生きたいと思っているのかを考えてみる材料として、この小説は少しも旧くなっていきません。読み継がれていって欲しい一冊です。と、言って、決して難しくはありません。楽しめる空想小説です。
ここに書かれた世界と、現在の世界と照らし合わせてみます。未だ「壜からヒトが生まれた」というニュースは聞きませんが、シャーレの中で受精卵から発生を進める技術も進んできました。発生のどの時期にどんなホルモンが出ることが適切か、などということもかなりわかってきています。感情のメカニズムも随分と解明され、「うつ」などの精神治療に役立つ薬も実用化されています。年を追うごとに、この小説の中で描かれている技術はその当時予想されていたことを忠実に延長して考えられたものだということ、そしてその方向に科学技術は「順調に」進んできているのだ、と確認させられます。それだけに、このお話の結末の怖さにも真実味があるのです。
一人の青年がこの社会の総帥と文明についての対話をする場面があります。文化や宗教について、今も変わらない議論を我々は続けていることに気付かされます。「われわれは人びとが古いものに惹きつけられることを好まないのだ。われわれは人びとが新しいものを好むことを望んでいる。」という総統の言葉。日々、流行に新しいニュースに惹きつけられては、すぐに少し前のものにさえ関心を失ってしまいがちな今のわたしたちはこの空想世界の人達とどれほど違うのでしょう。同じように新しいものを好むことを望まれ、引き回されているのではないでしょうか。
「(あなたたちは)辛抱することをおぼえる代わりに、不愉快なものはなんでもなくしてしまうんですね。・・・耐え忍びもしなければ戦いもしない。」と言い残し、青年はこの社会に背を向け、独り昔の原始的生活を始めます。この言葉は私たちの生き方を鋭く突き刺してきます。
それでもなおこの社会は青年を放さず、青年の「奇妙な生活」をカメラが、好奇の眼が追いかける、という青年の結末はとても哀しいです。追いかけてきたテレビカメラマンの言葉は「そりゃ、もちろん、わたしのほうの読者がとても興味をもつだろうと思うんですが。」。明日、この言葉が私にかけられてもおかしくないと思う世界に今生きているのが怖い。こうやって、いくつの物が追いかけられ、忘れ去られたでしょう。大事なものも忘れてしまっているだろうことを思うと、さらに怖くなるのです。
1932年にこの「未来社会を空想した」小説は書かれました。ヒトラーが、ムッソリーニが大統領になった年、満州国建国宣言がされた年です。現在の私たちの世界は、ハックスリーが当時考えていたところからどう変わってきたのでしょうか。楽しみながら読んで、考えてみてください。
紙の本
実兄への警告
2011/10/16 15:42
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間は受精卵の段階から培養ビンの中で「製造」され「選別」され、幼年時代から受けた巧妙な洗脳により、自らの「階級」と「環境」に全く疑問を持たず、生活に完全に満足している。親子関係もなく、家族関係もなく、夫婦関係もなく、性交渉は完全に自由である。全ての欲望は満たされ、不満や不安を抱く要素は全くない。万が一、ストレスが溜まった場合は「ソーマ」なる薬によって副作用なしに快楽を味わえる。人々は激情に駆られることなく常に安定した精神状態であるため、社会は完全に安定している。まさに楽園であり、「すばらしい世界」である・・・・・・一見したところでは。
しかし鼻持ちならぬ階級意識と人間の尊厳性を踏みにじる管理統制によって作られた楽園の欺瞞は、保存地区=<野蛮>からの来訪者、ジョン青年によって暴かれるのであった・・・・・!!
背筋の凍り付くような戦慄のユートピア社会を描き、救いのない結末を提示することで圧倒的な迫力と衝撃を持たせることに成功した反ユートピア小説の金字塔。実兄ジュリアン・ハックスリーらの優生学思想の危険性(現実に、ナチスのホロコーストの理論的根拠として機能することになった)に警鐘を鳴らすに留まらず、人間社会の進路をも鋭く問うた問題作。T型フォードの大量生産で名を馳せた自動車王フォードが神様になっているという皮肉はちょっと笑える。
バイオ・テクノロジーが進展し、精子バンクが(主にアメリカで)隆盛を極める現在、オルダス・ハックスリーの80年前の懸念はより一層、切実なものとなっている。
紙の本
すばらしい新世界
2001/09/30 16:28
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あんぱん - この投稿者のレビュー一覧を見る
すばらしい新世界という題名だがこの題名は皮肉である。この本に描かれているのは人類が繁栄を極め、人間が完全に管理された世界なのだが、そこには真の自由はない。イギリス生まれのハクスレーの傑作。