紙の本
はたして、私は何者なのか?
2001/02/24 22:17
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投稿者:谷池真太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
という謎の音で始まり謎の音で終わる物語。
主人公は正木法医学博士と正木精神科学博士に弄ばれ、自分が残虐な殺人者ではないかと疑い、両博士のどちらかの子ではないのかという疑念にとらわれる。また、狂人の絶世の美女の許嫁にさせられる。
だが、本人には全く覚えがないことである。覚えているのはブーンという電気時計の音によって起こされた朝からの数時間の記憶だけである。だがそのたった数時間の記憶さえも、自分を狂人ではないかと疑う彼にとっては、絶対のものだという保証はない。しかも、いま、見ている風景さえも正木博士によって狂人の幻想だと否定されてしまうのだ。
そう、彼は、科学の手によって、マインドコントロールを受けているのである。あの“ブーン”という音は電磁波によって発生している音なのだ。電磁波を一定期間受け続けると脳が変調を起こすことは、携帯電話の普及で一般的になった。ちなみにほかの高・低周波でも同じような現象は起こりうる。変調を来した脳に恣意的な情報を刷り込まれ、彼はマインドコントロールされているのである。なお、このことについては荒俣宏『パラノイア創造史』に詳しい。
こういった、何が真か偽か、狂いかまともか、わからない状況で、主人公である「ポカン君」は必死に自分が何なのかを問い続ける。だが、彼に決定的な「了解」はやってこない。何かをつかんだ、その瞬間にブーンという音によって結局は無に帰するのである。彼は自分が何者なのか、知ることはできない。そして読者も、狂人である彼の視点で書かれた物語を読んだところで、何が真実で何が虚偽なのか窺い知る術はないのである。
紙の本
ドグラ*マグラを読んで
2001/01/15 13:51
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投稿者:ユウ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『黒死館殺人事件』、『虚無への供物』、『匣の中の失楽』と並んで日本4大ミステリーに数えあげられている。
著者の夢野久作自身は出版された時『十年考え、あとの十年で書き直し書き直し抜いてできたものです。五回読んだら五回共に読後の気持ちが変わる事を請け合います』と話している。1935年発表の作品なのだがまったく古さを感じさせず私達を奇妙な世界へ運んでいってくれる。
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ここはさっき通ったばかりの道で
消毒のにおいが脳みそにこびりついて
くらくらしてきた
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奇書。おぞましい狂気の小説。等と宣伝されがちの『ドグラ・マグラ』であるが、本当はそれは間違いである。この本を読んで気が狂う人間などはいない。この本を読んで、自分が元来狂人だったことを悟るだけで!夢野久作は途方もないものを残して死んだ。作者の解説を待たずして作品は日に日に巨大化し怪物と化している。久作の研究者たちは、最早、自分が久作教徒の熱心な信者であることを隠さなくなったばかりか、己こそが新教祖であると宣伝し始めたではないか。中国古典、都都逸、復讐と怨念のメロウドラマ、パンクオペラ、科学袋小路、DNA解析。現代でも難解な人間精神の暗がりに、作者は読者を引っ張りこんで、あは、あは、あは、と不気味に嗤う。憐れな子羊に久作は手を差し伸べるわけでもなく、遠くの方で、指を指して嗤い転げる。なんて愉快な眺めだろう、これが観たくて俺はこの小説をやっつけたんだからな、と言う久作の声がこの小説を開く度に私の耳には響く。痛ましいフリを装った文学似非愛好者たちを一網打尽にするべく書かれた悪魔の所業。すなわち悪魔というのは人間のことであると高らかに宣言するこの小説は、健全で、日本語で書かれ刊行された美しい美しい、寝言なのである。
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角川版は表紙が怖すぎるので、私は現代教養文庫版。中身はというと、正に奇書と呼ぶに相応しい。
記憶を失った男。彼を取り巻く狂気を孕んだ精神の世界。そこで明かされる真実は次の瞬間には虚実と化し、読み進めるうちに心の迷宮に迷い込むような感覚に囚われる。
人によっては強烈な読後感を残すだろう。そんな人は、この本を読んだ後に少し変わってしまうかもしれない。そんな本です。
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天才だ、天才。違う、キチガイか。そうだ、キチガイだ。デリケートな思春期の子は、こんなの読むと思考が歪んでしまうかもしれないのでR指定。あちしは歪んじゃいましたから。大好物。
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聞きしに勝る奇書。売り文句の「読むと頭がおかしくなる」というのも、そんなことはあるめぇと思いつつ最後まで読んだら本当に可笑しくなるかと思った。
アンポンタン氏の演説がとても魅力的。精神は脳にあるのではなく、体中の細胞一つ一つにあるのである!
なるほど!
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買ってから15年経ってやっと読めた
チョンガレ祭文のとこで何度挫けたことか…
再読することがあれば確実に飛ばすな
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難解なようで単純。巷で言われる読むと狂うなんて事はまるでない。
が、確かに作者の狂気具合は読み手に伝わってくるし、
少々意味不明な表現も面白いと思う。
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ミステリー小説の決定版。このドグラまだらを知らずしてミステリーを語るな、と言いたい。10年間、推敲を重ね何度も書き直さた。これほど完成度の高い小説はない。
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読破したら必ず精神に異常をきたす・・・と言われる
ご存知、伝説的な奇書。
読み終わったあと別段(自分では)異常を見受けられなかったので
ちょっぴり残念に思った。
もはやこれはレビューなんて書けるシロモノじゃないと承知しているので
自分の受けた感覚だけを記すが
とにかく本作は、70年以上昔に書かれたものとは思えないほど
スピード感にあふれ、色彩豊かで、深い。
伊達に10年かけて書いてない。
同時進行・過去進行でさまざまなジャンルの話題が展開するさまは
パラレルワールドに招待されたかのような感覚。
医学要素、ミステリ要素、ホラー要素・・・とまさにカオス状態だが
なぜだろう、読後は「楽しかった」の一言に集約される。
完全理解はできなくても
ザッピングに慣れた現代人ならある程度楽しめるのではないだろうか。
まぁ、万人受けするとは思えないので積極的におすすめはしないが。
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青空文庫のものをダウンロードしてiPhoneで読んでる途中。でも、これは紙媒体の方がよかったかも。。
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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近代小説の中の俗に「黒い水脈」と呼ばれる潮流の源流とされる作品の一つ。私小説的伝統とは正反対の作風で、無駄なまでの熱気と衒学趣味を帯びた反リアリズムを徹底。ややもすれば冗長な伏線に裏打ちされた奇奇怪怪な筋書きは忍耐強く読み通さなければ理解することは困難です。読了を断念しました。気が向けば再読しようかと思います。
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精神病棟における、記憶を失った青年が主人公の物語。
そのため、主人公自身が誰であるのかを推理しながら読み進めていくのだが、途中難解な論文や遺言を読む部分が多く、挫折しそうになる。
しかし、その後は本文に戻り、徐々に謎が明らかになっていき面白くなっていく。
明らかになっていくとはいえ、なかなか真相が捕らえずらく、結局は考えれば考えるほどにわからなくなっていく。そんな奇妙な小説。