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紙の本
「そげん言わんでも、よかろうもん」に共鳴。
2006/08/08 22:47
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
辛口で知られる評論家であり作家の佐高 信氏が、これほどに絶賛した経営者はいただろうか。
佐高氏の論調に慣れた身には大甘とも思える論評に驚嘆するしかないが、ブリヂストンの創業者である石橋正二郎のその足跡を辿ってみると、なるほどと思えるしかない。
著者の小島 直記氏の描く石橋正二郎には城山三郎のヨイショのようでいて、ようでないような曖昧模糊とした感触を覚えながら読み進んでいったが、著者のあとがきでその妙な感触の秘密を知った思いであった。
人物伝に傾きがちな企業の創立の話であるが、どこかオブラートに包まれた石橋正二郎の影が見え隠れしていて、それでいて、それが話の進行を妨げることなく進む不思議さがあった。
そういった中でおもしろかったのは、日本のゴム靴産業が世界の貿易不均衡の対象として取り上げられ、満州国建国の国際問題よりも東洋の新興国のゴム靴輸出超過が問題となっていたことに深い興味を覚えた。
また、今の世の中、人である従業員を人とも思わぬ企業のあり方が問題になっているが、従業員を大切にし、社会に貢献するという姿勢が最終的に企業を大きくするという好例がブリヂストンだったのではないだろうか。
国家の趨勢で進出した海外の工場を撤退するにあたり、石橋正二郎の命で仁義を通すことでブリヂストンは後々の大きな信頼を得るが、直近の利益云々というより、礼を尽くすというのが石橋正二郎の考えだったのだろう。
「そげん言わんでもよかろうもん」という石橋正二郎のひと言が著者のあとがきに出ているが、福岡の人間にはこのひと言の持つ意味がよく理解できる。
後年、銀行出身のブリヂストンの社長の目の前で腹を切った社員がいたが、石橋イズムの下で頑張り礎石を築き上げてきた人間にとっては死をもって抗議するしかなかったのだろう。歯を食いしばって頑張ってきた社員をいとも簡単に組織外に追い出すなど、直参の社員には到底不承しがたい行為だったに違いない。
仮にいかんともしがたい状況にブリヂストンが追い込まれたとき、石橋正二郎であったなら歴戦の勇士とも言うべき社員には誠心誠意謝罪し、ありとあらゆる手はずを尽くしていただろう。
それでも、もめにもめた後、「そげん言わんでもよかろうもん」と石橋正二郎の口から出たなら、社員は抗議の腹切りではなく、振り上げた拳を下ろして無言のうちに会社を去っていったことであろう。
オブラートに包まれた石橋正二郎という表現をしたが、著者がブリヂストンの社内報に連載するために執筆したことが「あとがき」に出ていたことを読んで理解できたが、むしろ、本書の最高の醍醐味は本音で語られた石橋正二郎と著者との人間関係だろう。
「そげん言わんでもよかろうもん」。このひと言がどうにもこうにも石橋正二郎の人間味を濃密に表している気がしてならなかった。欧米流のマネジメントが主流になった昨今、かつてのブリヂストンのような日本流のマネジメントがあってしかるべきと思うが、いかがなものだろうか。
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