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紙の本
「トロイの落人がローマの祖」という、当時の人々も楽しんだに違いない壮大で心躍る叙事詩は「平家物語」や「太平記」の雰囲気。七五調の翻訳。
2010/08/25 17:26
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ローマ帝国の由来」の物語である。書かれたのはカエサルの後を継いだアウグストゥスが皇帝の時代。「イリアス」に描かれたトロイア戦争の後日談にあたり、破れたトロイア人はアエネーイアスを頭にイタリアに逃れ、ローマの祖となったというのである。
イタリアに現住していた種族との戦いに勝つまでを描くのだが、イタリアにたどり着くまでにも、カルタゴでの女王ディードーとの別れなど、沢山の物語がある。「オデュッセイア」の中でオデュッセウスに目をつぶされた一つ目の巨人も登場し、ホメロスの二大作を踏まえて描かれている。
戦記物語であり、冒険物語であり、力を確立しつつあった国家ローマの建国物語でもある、当時の人々も楽しんだに違いない、壮大で心躍る叙事詩といえよう。
本書の訳は「七五調」の文体と言うのが特長である。声を出して詠みたくなる文章である。ギリシャ語やラテン語の叙事詩も、韻を踏み語調を揃えて耳に心地よい形式になっているそうなので、本来はやはり「語る」文学であっただろう。本書の「七五調」訳も、正確さは犠牲になっているかもしれないが、本来の「語られる」ことを目的とした作品の雰囲気を伝える工夫の「意訳」と考えて良いと思う。 ただし、筋書きは散文調の訳(風濤社版しか読んでいないが)の方が分かりやすいかもしれない。
戦の場面では、装束の記述や参加部族とその長の名前が長々と語られる。後の世の人々が、自らの由来につながる固有名を聞きたいと思う気持ちは、民族や時代を超えた普遍性なのであろうか。こんなところは日本の戦記文学「平家物語」「太平記」を想起させる。いや、まさにローマ人にとっての「アエネーイス」は、少し昔の日本人の「平家物語」や「太平記」のようなものだったに違いない。
最近ル・グインの「ラウィーニア」を読んだのと、こちらも復刻版がでたのを機会に読んでみた。「歴史物」そして「語り物」文学の普遍性も考えさせられ、いささか古い雰囲気の七五調訳もなかなか刺激を与えてくれるものであった。
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