紙の本
日本史をひっくり返す面白さ
2002/05/20 09:12
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投稿者:Snake Hole - この投稿者のレビュー一覧を見る
この「柴錬立川文庫」,前説によれば,柴錬さんは「徳川末期に奇人として知られた五味錬也斎なる兵法者がひそかに書き残せし『兵法伝奇』なる奇想の書」を偶然入手した。大正のころ,大阪で講釈師が当てた「立川文庫」のネタ本であろうけれども,その講釈の方は「天賦乏しき者の書写なれば,今日すでに読むに堪えず」,五味錬也斎の「豊かなる仙才」を正しく世に伝えるものとは言えぬので,「天賦なきはかの講釈師と五十歩百歩」ではあるものの (と謙遜している) ,この柴田錬翁が現代文に作り直し,「現代知識階級をして手にとらしむる」ものである。……いやこの前説は名文だよ。全部書き写したいくらいである。
とにかくまさに荒唐無稽,猿飛佐助は天目山に自害して果てた武田勝頼の忘れ形見,背中に瘤のある異形の若者で戸沢白雲斎に育てられた。この師が宿敵地獄百鬼によって死んだ後,遺言にしたがって真田幸村に仕えることになる。霧隠才蔵はシャムに渡った山田長政の紹介でその佐助と腕比べをしようと渡航してきた紅毛の異人。三好清海入道は大盗石川五衛門の一子で太閤の隠匿した軍資金を狙い,塚原卜伝の息子彦四郎は淀君と通じて秀頼を産ませ,その秀頼の妻となる千姫は,柳生石舟斎の次男新三郎によって子供の時に摺り替えられた彼の娘であり,この新三郎自身が腐刑に処された石舟斎がその師上泉伊勢守に頼み込んで自身の妻に産ませてもらった偽りの子であったという……。この段落だけでいくつ日本史がひっくり返ったか分りますか?
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柴錬の怪作、快作。佐助以外の勇士では、三好静海入道(石川五右衛門の子)、霧隠才蔵(カンボジアから来た白人)、根津甚八(趣味人の海賊)の人物造形に特色がある。十勇士以外の怪人物も続々登場。NHKの往年の名作人形劇『真田十勇士』の原作。
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猿飛佐助は武田勝頼の落し子だった。戸沢白雲斎に育てられ忍者としての才能を存分に発揮した。真田幸村の家来となり日本中を股にかけての大活躍。美女あり豪傑あり決闘あり淫行ありの大伝奇小説
2009.5.13読了!
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猿飛佐助は武田勝頼の落し子だったと言う設定ではじまる本書。
戸沢白雲斎に育てられ忍者としての才能を開花させた猿飛佐助が、真田幸村と言う主を得て活躍する。
佐助主人公の戦国ものは実は珍しい。単純に荒唐無稽で面白い。
NHK人形劇の原作だそうですね。
そちらも観てみたいです。
次作にあたるのが同文庫「真田幸村」
幸村にあって佐助にない表紙画像…まぁ主にあればそれでいいのか。
デザイン同じだしな。
↑と、思っていたらようやく表紙がアップされましたね!
もちろん幸村と同じデザインですが。色違いです。
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佐助
・十五歳(初登場時)
・武田勝頼の落とし子
・大きな丸い目、両頬にえくぼ、天性の愛嬌に恵まれた貌だち
・背中に大きな瘤を背負っている
・善良に過ぎる、誰からも愛される性質
幸村
・三十歳(初登場時)
・白雲齋曰く、「清廉潔白の名将」
・気高くうつくしい、大阪中の女が憧れる面貌
・佐助曰く、「天下無双の智慧者」
幸村に懐く佐助が最大限にかわゆいです。
主をすこしでも悪く言われると、烈火の如く怒る佐助。
人を殺すのが好きではないのに、幸村から「おまえには打ち取れまい」と言われると、「誓って奪ってまいります!」とむきになる佐助。
海が好きで日の本から出てみたかったけれど、幸村に家来の誓いをしているからと断る佐助。
佐助!!
物語は、幸村が探偵で佐助が助手のような……。
何かあれば幸村が命じ、それを佐助が実行して話が進むということが多いです。
呼ばれてのこのこ出現する佐助が可愛い。
ちなみにこの佐助、船が苦手です。
結論→是非読むべし。
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この本を読むきっかけは、昔やっていたゲームからどういう人なんだろうと疑問を持ったこと。猿飛佐助は武田勝頼の落とし子というのを初めて知った。人に好かれやすそうな性格をしており他にもいろいろなことを知る、そんな本でした。
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ちょっと文体が苦手かもです。
続きのようなもので真田幸村バージョンのもあるのですが、
そっちには手をつけませんでした、ごめんなさい。
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久しぶりにこういう本読んだなぁ。
なんか凄い妖術と、昭和の時代劇エロ。フェミニストが憤死しそう。
色んな人物が替え玉だったり別の父親の子だったり。
真田幸村が秀麗極まりない怜悧な知将で、佐助は短躯の背中にコブがある善良は男で、武田信玄の孫。
とりあえず真田幸村編も読んでみよう。
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初めて読んだ柴田錬三郎作品。独特の文体と難しい言葉に多少戸惑ったが、これはこれで味がある文章だった。内容も奇想天外で面白かった。
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佐助の生い立ちと幸村に仕えるまでの話が軽くあって、それ以降佐助や幸村に関わるさまざまな人物の話がオムニバス的に続きます。そのため、佐助と幸村の出番は多くはありません。でも、美貌の智将幸村と、矮躯だけれど優れた忍者・佐助のキャラクターには魅力がありました。主従関係という目で見ると、言葉少なな幸村の唐突な命を二つ返事で引き受けて難事もするりと成し遂げる佐助、というやりとりに、信頼関係が現れているように見えました。随所に現れる佐助の態度からも、主を慕う様子が見て取れます。
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猿飛佐助、霧隠才蔵、三好清海入道などなど、忍びの一冊。
戦闘場が少なく、随分と放蕩具合が多い。これが、痛快劇なのだろうか。
がっかり感は否めないが、こんなにも日本語があったのかと言うことに改めて驚かされた。
慣用句、四字熟語、単語、漢字、と。
物語の内容よりも、そちらの方が勉強になりました。
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猿飛佐助という名そのものに滑稽味を感じるのは、猿に対して失礼だろうか。しかし、この忍者を媒介にして語られる小説には、飄々としたユーモアも全編に滲み出ている。ファンタスティックな忍術奥義の決闘と、エロティックな場面の頻出は当時の読者層を容易に想起させる。『梟の城』と「忍法帖」シリーズ。昭和30年代の「忍者ブーム」が起こった社会的背景は何だろうかと考えたり、KOEIの『太閤立志伝』を遊びたくなったり。