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3 件中 1 件~ 3 件を表示

石川淳最高の短篇

2006/01/24 19:03

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る

それほど数を読んではいないが、今のところ石川淳最高の短篇(だと私が勝手に思っている)「鷹」含む中篇集。
「鷹」は再読になるがやはり傑作。

「ここに切りひらかれたゆたかな水のながれは、これは運河と呼ぶべきだろう」

この一行目を見てもそうだが、石川淳には水を書き出しに含む小説が多数あり、「至福千年」の「まず水。」や「普賢」の「盤上に散った水滴が変り玉のようにきらきらするのを手に取り上げて見ればつい消えうせてしまうがごとく…」や、「佳人」の「…わたしはわたしはと、ペンの尖が堰の口ででもあるかのようにわたしという溜り水が際限もなくあふれ出そうな気がする…」などといった一行目にあふれ出す水のエレメントは石川淳のイメージを決定づける重要なものだ。作中にしばしば出てくる水は、川にもなり波濤にもなる人々の運動のエネルギー、何にも囚われないという束縛を逃れ出る無定型の自由、といった印象とつながっていく。

「鷹」で描かれるのも、そういった運動の極点、革命運動の一場面である。幻想的というか、謎の光に照らされて明日の新聞の文字が浮かび上がるとか、“明日語”(エスペラントが元ネタか?)という不思議な言語など、SF的ガジェットを用いた諷刺小説の体裁を取っているところは非常に魅力的。

だが、それ以上に面白く、興味深いのは、作中に出てくる少女像である。
キュロットスカートをはいていて、男のようとも形容され、中性的なイメージを持った少女が、鞭をしならせて登場する。男勝りの苛烈な性格で、ヒロイックな少女というのは中篇「修羅」や「狂風記」のヒメをことさら持ち出すまでもなく、石川淳に顕著なキャラクターで、ここに出てくるキュロットの少女もその一類型に分類され得るだろう。

しかし、なかでも「鷹」が突出するのは、キュロットをはいて鞭をしならせ、その姿に主人公国助がうっとりとなってしまうところで、ここに現れるジェンダーの妙な混乱、直截に言うと倒錯的な性癖が面白すぎるところだ。中性的な少女、鞭、叩かれることを想像しうっとりする男。

この少女がラストで革命の象徴のように、鷹に変貌し翼を月夜に広げる場面はたとえようもなく感動的で、「鷹」のすばらしさを決定づける名場面だろう。

少女はつまり革命のエネルギーを一身にまとう存在であり、その存在がキュロットスカートの少女という点がこの小説に妙な(変な?)魅力を添えている。石川淳という和漢洋の教養を縦横無尽に繰り広げる孤高の文人の手による、革命燃え=萌え(?)小説である。1953年の作。

そういえば、石川淳というといま書いたように和、漢、洋、の素養を持ったと強調されるが、そこでなお強調されなければならないのは、そのような素養、教養からもまた逃れ出ようという意志であり、その意志の現れたる、ぶっきらぼうで破壊的な文体だ。俗語をとりまぜ硬軟のバランスで文章に起伏を持たせ、さらには車を“カー”、銃を“ガン”と地の文で呼ぶ(この本ではなく、「狂風記」でだが)妙な茶目っ気が素敵だ。

いわば原哲夫式劇画漫画のような世界観ながら、核心にキュロットの少女のような「萌え」風キャラクタを持ってこれるところが石川淳のすごいところだと思う。革命的英雄主義、とこれを貸した知人は言っていたが、石川淳にとってその「英雄」とは決して男に限られない。

「壁の中」から

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石川淳の「精神の運動」に身を任せよ!

2019/02/12 12:39

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:燕石 - この投稿者のレビュー一覧を見る

「鷹」と「鳴神」「珊瑚」の三編が収録されている。これら三編に共通するキーワードは、「叛乱」であり「革命」だ。 だが、必ずしも「叛乱」側や「革命」側が「正義」として描かれているわけではない。「叛乱」側や「革命」側も最後はあっけなく消えてしまう。

石川淳の小説の魅力は、何と言ってもそのスピード感のある文体だ。
「珊瑚」は以下のようにの始まる。

厚い樫の大扉の、鉄の鋲をうったかんぬきがしなうまでに、外側から押す力と、内側で支える力とがそこに烈しくせめぎあった。ぶつかってくる力を邪険に刎ねかえす扉の音に、殺気がこもった

「誰が」「いつ」「何を」「どうした」という説明がいっさい省かれているため、読者には何が起こっているのか全くわからない。それでも、大扉がものすごい力でぐわんぐわんと傾いでいる様子は伝わり、しかも、その大扉の周りには「殺気」がこもっている。いったい何が起こっているのか?気になってくるから先に進まずにはいられない。
更に数行を読み進むと、炎に追われ大扉に向かって怒涛のように人が押し寄せてきているということがわかる。その力が先の大扉に加わっていたんだということがわかる。ところが、大扉に押し寄せる人たちが「あけろあけろ。」と言う。それに対して扉の中の人間は「入れるな。悪党どもを門内に入れるな。」と言う。それで悪側と正義の側が提示されたのかと思いきや、すぐに次のような文章が続く。

号令をかけているのは隊長なのだろう。「悪党ども」とはたれのことか。そうわめいた当人、どうやら絵にかいた小悪党の片割とも見えるつらがまえであった。

「当然知っているはず」の作者が、「隊長なのだろう」なぞと、随分あやふやな書き方をしている。さらに「悪党ども」と叫んでいる当人が「小悪党の片割とも見えるつらがまえ」をしているとあるから、読者はますます混乱してしまう。
こんな具合に謎をどんどん提示していくのと同時に、物語も冒頭から異様な盛り上がりを見せる。たった2、3ページの間に、火に包まれて押し寄せる扉の外の人々とそれを阻止しようとする人々との壮絶な戦いが始まって、終結する。甘ったるい文章しか書けない当代の小説家であれば、これだけで優に一つの話をでっち上げるのだろうが、石川淳はそれをたった数ページで描く。

こうして、石川淳の「精神の運動」に身を任せた読者はぐいぐいと引っ張っられて、あっという間に結末まで行ってしまう。

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2010/03/09 04:42

投稿元:ブクログ

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