投稿元:
レビューを見る
何度よんでもわからず
樹影譚はこれで三遍読んだことになるが、今まで一度もぴんとこなかった。
今回、おなじく出生の秘密を扱った「横しぐれ」を読んで、何かわかるかも知れないと思ったが、やはりわからなかった。
私は「横しぐれ」のほうがわかるし、おもしろいし、退屈しない。
川端康成文学賞の選評も読んでみたが、納得させる評はなかった。
おなじ賞では、ほかに筒井康隆の「ヨッパ谷への降下」が私にはわからない。
投稿元:
レビューを見る
村上春樹の短編の本で取り上げられていたので読んだ。
表題作は、これまでに読んだことのない奇妙な作品。うまく説明できないが背筋がゾッとするような小説だった。土俗や血縁にまつわる呪術的な空恐ろしさがヒシヒシと伝わってくる感じは、昨日読了した遠藤周作「沈黙」との対比もあってか、かなり深く印象に残った。
基本的に旧仮名遣いで、ところどころ旧漢字が混ざる(全てではない)のもかなり目を引いた。
投稿元:
レビューを見る
少し詰めが甘い青年がデートに行く話と、木の映った影にまつわる作家の話と、友人から買った夢を本当のことのように人に話しそれに振り回される話が入った短編集。
それぞれ、テーマらしいテーマが見えづらかったが、何かが足りないこと、細い縁の繋がりについて、人を騙すことなのかなと思った。
とにかく描写や文章が上手く、不条理なことが起こっても納得感が出ていた。一つの風景描写でいくつもの感情が解釈できるような表現をしているところもあり、読んでいて引き込まれた。回収されない伏線らしきものがあったりもするけれど、何故か気にならないことすらあった。伏線ではなく物語の背景の一つなのかもしれないとさえ思えてきた。特に、「樹影譚」は今までに読んだことのない感じの作品でとても面白かった。
ただ、最初の短編ではランボーの詩の知識があれば分かるようになっているところがあり教養が要求されるが、最後の短編では先生が書いた日射病に関しての論文(おそらくパウロ[当時サウロ]がダマスコへ向かう途中のことだと思う)が間違って書かれていた。もしかしたら主人公がよく分かっていないという描写なのかもしれないが、教養を要求する割には…という印象を受けた。
また、これは谷崎潤一郎の小説でも見られたことだけど、「樹影譚」中の文章で一箇所、どこの視点から話しているのかが分からないところがあったのが没入感を阻害していて残念だった。4.4。
投稿元:
レビューを見る
村上春樹がどこかでおすすめしていた本。
丸谷才一の本を読むのは初めてだが、解説でも言われている通り、「上手い」と思った。
旧仮名遣いはあまり気にならなかった。文章自体が平易に書かれているからだろうか。
「もう秋だ」という台詞、どこかで読んだことがあると思ったが、ランボオの詩らしい。ランボオの詩は読んだことがないのに、なぜ読んだ覚えがあるのだろうと思ったが、たぶん高橋源一郎の小説に出てきた「ヘーゲルの大論理学」が持病の「突発性小林秀雄地獄」の発作を起こしたときの台詞だな。
投稿元:
レビューを見る
円熟のタッチで描かれた、三つの物語。
何となく、樹影譚→夢を買ひます→鈍感な青年、の順で読みました。
とても良い作品群で、まさに小説に浸っているな、という感覚に満たされました。ことさら、鈍感な青年の締めくくりにゾクゾクとして、鳥肌が立ちました。もちろん、戦慄の部類ではなく、芸術的感動のようなものからです。
素晴らしかった。
さらに丸谷作品を読みたいと感じます。
シンプルな感想になってしまいますね、あまりに美味しいものを食べると、美味しいとしか言えないように。