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紙の本
「物語」を読むことの楽しさを再認識させてくれた『レベッカ』
2001/10/14 23:09
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投稿者:ヒロホフ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒチコックの映画でもおなじみのこの小説は、僕が個人的に考える「物語」のありかたの理想のような作品だ。
文庫本で上下2巻、700ページにわたるこの本の3分の2ほどが、伝統的な英国の田園小説のような、一見何の変哲もない話のようにゆったりと進行する。そのほとんどが古株の家政婦による新妻いじめのような内容だ。
しかし、それがまったく退屈ではないのだ。それどころか、面白くて思わず物語の世界に引き込まれてしまう。世間知らずでナイーブな娘の一人称で書かれているため、本好きの文学少女的な側面をいまだに残しているような作者の繊細さが、そのまま主人公の感受性としてリアルにこちらに響いてくる。
それに、サスぺンスの醸し出し方がなんともいえず絶妙だ。謎が解けてがっかりのトリックのようなものではなくて、人間そのものの不可解性・悪魔性という部分に焦点をあてているので、深みがあり、読後に忘れ得ぬ印象を与えてくれる。
そして、後半の3分の1は物語が急転直下、目まぐるしく動き出し、クライマックスに向かって面白さは一段と加速する。そこでは、これまで脇役だっだ登場人物がそれぞれ重要な役を演じはじめる。プロットがよく練られている証拠である。
この作品には、すぐれたエンターテイメントの要素がすべてそろっているといってもいい。主人公が苦難を経て成長をとげること。魅力的な謎があり、そのサスぺンスが最後まで持続すること。視覚的で印象に残るイマジネーションに充ちていること。個性的でビビッドな登場人物が無駄なく配置されていること。動的で盛り上がるクライマックスがあり、ラストにあっと驚くようなツイストがあること。何よりも、話に物語としてのリアリティがあること、などなど。
蛇足だが、これが書かれた時代には、あまり露骨な性的表現が許されていなかったことが、かえってこの作品にとっては良かったのではないだろうか。レべッカという女性の淫靡さが仄めかされているだけで、実際の行為は描かれていないのだが、それが余計に想像力をかき立てて、彼女の特異性や魔性を際立たせる結果になっている。
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