紙の本
鮮やかな異界入り
2011/08/28 23:00
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ばー - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白い。
表題作と「ペルソナ」の二作収録。
「犬婿入り」で芥川賞受賞。
「犬婿入り」の主人公は、自由人のもう若くない女性。
塾講師の主人公が子供達に聞かせた「犬婿入り」という話と同じことが主人公の身におこる。
場面設定等はどこにでもあるものだが、「なんだか変」という歪みが物語全体にある。
途中から、歪みが、さも歪んでないかのように変容していく。
「犬婿入り」が現実化したように、一般的な、善良で卑小な人間が、どこか違っていく。
その様は、まさに「憑かれて」いくようだ。
何よりすばらしいのは、抜群にその入りがスムーズで歪みの原因が本か私か分からなくなることである。
すーっと変になっていくのである。
こういう異界入りを正常に静かに描ける作家はすごいと思う。
そしてこのラスト!
まったく何も解決していないのに清清しい!
完全に「ラストもやもや系」だが、それでいてそんな不自然なことに自然と納得してしまう自分に驚く。
また、「ペルソナ」でもそうだったが、おそらく主人公の投影かと思われる、主人公の女性がイイ味出している。
非常に、魅力的な文系女性。
そういう点も本書を勧めるポイントの一つである。
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現実にはありそうにない設定なのに、主人公に引き込まれた。
かつて私もどこかでそんなことを思ったり、そんな雰囲気を持つ人に会ったことがあったのかもしれない。
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(2010/10/09購入)(2010/10/10読了)
芥川賞受賞作。
文体は最近の作品の方が好み。
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好き。
読んでいて何度か「読書たのしっ!」となる瞬間があったので、そういう本はやっぱり偉大だと思った。
川上未映子が好きな作家、という先入観があったから好きになったのかもしれんけど、その先入観もひっくるめて好きになれる。
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「ペルソナ」「犬婿入り」、2つのお話が入った短編集。ドイツに暮らす日本人姉弟のお話と、北村塾と太郎のお話。何の説明にもなってませんが、説明出来ないタイプのお話なのです。
身体感覚的にとても面白かった。癖のある文章も物語も、頭ではなく身体で面白いと思った。
とりあえずわたしは血や国籍やご近所のしがらみといった人間と人間の関わりからするりと抜け出そうとするかのような奇妙な物語たちが愛おしい。個体と個体の間にあるものは現実的に無視できないので、どうにかしようとするとどうしても奇妙になってしまうのではないか。わたしにはするりと抜け出したくて抜け出したくてたまらなくなる時がある。多和田葉子もきっとそう、だと思う。
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「ペルソナ」「犬婿入り」の二編入り。「ペルソナ」は多和田さんがまだポリフォニー作家という意識がなかったころだろうか。ドイツに留学している姉弟の生活のこまごまとした、けれどもとても大切な齟齬やこだわりについて綴られている。自分が同じような境遇だったら、すごくさみしいだろうと思った。小さくずれて、小さく落ちてちょっとだけ狂うだろうと思う。
「犬婿入り」。
これは多和田さんの作品におなじみの突き抜けておかしな人(もう人なのかも怪しい)てんこ盛りで面白すぎた。幕切れの電報、最高。
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1993年の芥川賞作品「犬婿入り」と前年に芥川賞候補になった作品「ペルソナ」の2話が入っている。内容と言い文体と言い何しろ独自色の濃い作品で、いずれも似通ってないのも凄い。先日 全米図書賞を受けた「献灯使」とも異質な作品なので驚きました。不思議な作品を得意とする方ですね♪
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『ペルソナ』と『犬婿入り』収録。
どちらも静かで不穏な雰囲気を醸し出す筆致が素晴らしい!
特に『犬婿入り』は不可思議で不穏な空気に満ちている。
静謐な文章ながらその内容は強烈。
だけどちっとも下卑た印象に倒れないのが不思議。
読む人をがっちり掴んで最後まで引っ張ってしまう強い魅力がある。
これは購入して何度も読み返すことに決めた!