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紙の本
やはり岩田規久男は凄かった
2004/03/19 00:25
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:子母原心 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「80年代後半から90年代はじめにかけての日本の金融政策は、好況から一転、奈落の底ともいうべき大不況下に突入していった大不況期前後のアメリカの金融政策と基本的に同じ問題を抱えていると、著者は考えている」「80年代後半から90年代はじめにおきた、上は13%から下はマイナス0.6%というマネーサプライの乱高下をもたらした原因は、金融政策にあり(中略)本質的にはマネーサプライをコントロールしなかったという点で同じ問題を抱えていると、考えられる」(まえがきより)
1993年7月の時点でこの見解は、恐るべき慧眼といえる。ただでさえ、当時はバブルの発生とその崩壊ー不況の原因は日銀の金融政策にあり、という見解は少数派だったのに、それを述べるのみならずアメリカ大恐慌との類似性を指摘しているのだ。後に大恐慌研究の成果を共有しているという米プリンストン大学のマクロ経済学者チーム(バーナンキ、スベンソン、ウッドフォード、ブラインダー、そしておなじみクルーグマン)が日本の経済停滞をこうした大不況期の需要不足になぞらえたのも政策提言をしているのもなんら不思議ではない。
本書が指摘している「日銀理論」とは、実体経済に「受動」する形でマネーサプライを操作するやり方のことである。実体経済の現状に対して、日銀の金融政策が「主体的」に影響を及ぼすことができないというのだ。景気が過熱している時、日銀は「金利を十分に上げているので我々にできることはない」と述べて実はマネーサプライの大量増加を看過し(これがバブル期に発生した)、不況期には金利を十分に下げているのでこれ以上の金融緩和は出来ないと述べながらマネーサプライの激減を看過する(これが90年代から今日まで延々と続いている)という事態が発生したのだ。
この、バブル期の日銀の金融政策の失敗は、実は過去にも「前科」があり、それが1973−74年の大インフレーションである。これを指摘したのが岩田規久男の「師匠」にあたる小宮隆太郎だった。この当時の大インフレというと今でも石油ショックに因るものだと思っている人も少なくないだろうが、日銀の過剰流動性に原因があったのだ。
本書は実はある研究者が「裁判記録のように読みにくい」と評したようにリーダブルではない。基本的なミクロ・マクロ、金融論の知識に加えて、日本の金融政策システムの慣習/制度の知識が(実はこの知識が重要)ないと本書の理解はむつかしい。本書は現在でも刊行されている「新しい経済学」シリーズの一冊であるが、
本来はやはりこうした日銀の金融政策のみに絞ったものではなく、若手の世代の研究者が最新の知見に基づいた経済理論を解説しなければならないのかもしれない。しかしながら、今の日本でそういうものをかける人がいるのかというと…。
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